Fate/kaleid blade   作:サバニア

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メディアさんってやっぱり強いですよね。SNの準備万端でもあんな感じですし……。
しかし、初見で開幕ビームにバリア付きって初見殺しもいいところだと思うんですよ……。
今話を書いていたら、自分はとあるゲームで開幕ビームに曝された記憶が蘇りました……。


8話 魔女の庭園

 足を踏み入れた瞬間、5人の頭上――――天空より、人からでは決して生み出せない程の重圧感に襲われていた。

 月は無く、煌めいている星々も無い。

 代わって夜空に在るのは――――闇を凝縮したような黒いローブを纏った人影と格子状に配置された無数の魔法陣だ。

 

「何あれ……」

 

「これは――――」

 

 魔法少女の二人は呆然と呟きを漏らす。

 が、魔術を扱う者たちは言葉を漏らさずとも一目で理解が出来た。

 ――――歪な魔法陣と空を統べている者は……魔術師(自分たち)を遥かに超えている魔術師(魔女)であると――――。

 

 

 魔女は眼下に居る来訪者たちが自分を見て、畏怖に捉えられているのを感じ取ると、口元を吊り上げた。

 彼女たちと一緒に空を見上げ、魔女を見ていた魔術使いにはそれがはっきりと見えた。見覚えがある口元の動作は、彼の神経を尖らせた。

 

 

 ――――それが合図になった。

 

 

「撤退だ! 俺が引き付けてる隙に――――」

 

 準備を! と、言い切る前に、衛宮士郎は臆することなく密集陣形から飛び出した。

 彼は即座に自分たちの不利を認識すると、撤退すべきだと判断が出来たが、敵がそんなことを易々とさせてくれないことも判っていた。

 

 

 撤退の為には入って来た同様にカレイドステッキを使用する必要があるが、それは一瞬で実行が出来ることではない。よって、誰かが魔法陣の展開の時間を稼がなければならない。

 

 

 一匹、群れから離れた獲物に狙いを付けた魔女は、杖を振り翳す。

 天空を覆っている魔法陣が順に禍々しく輝き始めて――――爆撃じみた光弾を降り注がせる。

 そのどれもが必殺の威力を持っている。直撃を受ければ人間など塵も残さずこの世から消え去る。

 

「っ……!」

 

 疾走している最中、衛宮士郎は両腰から引き抜いた双剣で飛来する光弾を弾いていく。

 彼から外れた光弾は地面に着弾し、舗装された道を砕き、瓦礫を飛び散らさせる。

 それだけでも威力を知らしめるのに十分なのに、着弾地点は赤く焦げている惨状はより恐怖を煽る。

 

(柳洞寺の時より威力は小さいかもしれないけど……、数が多すぎるッ!)

 

 光弾の勢いが衰える兆しが一向に見えない。

 際限なく降り注ぐ雨が大地を潤していくのと反対に――――

 際限なく降り注ぐ光は大地を焦土に変えていく――――

 

 未だに公園の敷地内を疾走しながら、光弾を捌いるが……切りがない。

 弾き切れないのであれば、守りを構えれば済む話だ。

 しかし、(アイアス)で防御を構えることは出来ない。あれは“投擲”には絶対の強度を誇るが、繰り出されているのは“投擲”ではない。

 一度でも足を止めれば、集中砲火を浴びせられて蜂の巣にされるのは考えるまでもない。

 

「美遊、シェロの援護を!」

 

「最大出力……砲射(シュート)!」

 

 攻撃が士郎に集中している隙に、美遊はステッキ(サファイア)を力強く振り抜いて、援護射撃を発射する。

 彼女から発射された――――蒼く、鮮やかで、闘志が籠められた一撃は彗星の如く魔女に疾駆していく。

 彼女の攻撃は一撃限りだが、その威力は魔女が降り注いでいる“雨”より高密度な魔力を秘めていて、光弾を上回る威力だ。

 

 

 ――――だが、蒼い彗星は魔女の目の前まで疾駆した所で突如として出現した”壁“に接触した途端、四方八方に流れを屈折させて、逸らされた。

 

「あれは……魔術指向制御平面!? まさかこれほどの規模で……!」

 

 今さっきの出来事を目撃したルヴィアから驚きが漏れ、目が大きく開かれた。

 彼女は遠坂凛と同じく超一流の魔術師であり、自信も持ち合わせているが、その光景に驚かずにはいられなかった。

 

 

 ―――――魔術指向制御平面……それは魔力の流れの方向を制御する魔法陣の一つだ。

 一般的な魔術師ならば、数十センチの範囲に展開する。

 けれども、今、魔女が展開したのはもはや“壁”とも言える程の広範囲に展開した規模だった。

 

 

 規格外の魔術を行使する魔女の姿に、魔術師の二人は冷や汗を流す。

 しかし、それで思考停止に陥らないぐらいの胆力は身に付けている。

 

「ルビー、撤退準備は!?」

 

「もうすぐです! お兄さんを呼び戻してください!」

 

「お兄ちゃんッ!!」

 

 イリヤの叫び声が響く。

 その声に反応して、両腕を振り上げてから疾走する方向を声が聞こえてきた方角へ向ける。

 でも、彼女の声に反応を示したのは他にも居た。

 

「イリヤさん、奴さんこっちに照準を向けました! 障壁の展開を!」

 

 切迫したルビーから言葉が放たれた。

 今まで士郎を狙っていた光弾の照準が、今度はイリヤたちに向けられた。

 ルビーの警告に続いて訪れたのは、光の雨。

 

「障壁最大展開! まずいですね……これでは撤退出来ません……」

 

「ルヴィアー!」

 

「見て判りませんの! わたくしたちも雨宿り中ですわ!」

 

「雨宿りとか悠長のことを言ってる場合かーッ!」

 

 “雨”が二つのグループに分散しているが、グループ間の距離があまり離れていない為に、士郎に向かって降り注いでいた規模と大差ない。

 カレイドステッキから作り出されたドーム型の障壁がかろうじて“雨”から守っているが、一つ粒一つ粒に含まれている熱と衝撃はしっかりと伝わっている。

 

「ちょ! 痛いし熱いよ!」

 

「お兄さんへ向けられていた攻撃の規模からAランク越えの攻撃力だと予測していましたが、想定通りですね」

 

「判ってるなら突破されない魔術障壁を展開しなさいよ!」

 

「それは機能上、無理ですねー」

 

 遠坂凛とルビーが言い争っているが、反対側に居るグループは――――

 

「美遊様、撤退の準備はそのまま。

 今は防御に集中して隙を伺いましょう」

 

「判ってる」

 

「しかし……どうしたものでしょう……」

 

「相手は『キャスター』……正直、相性がよろしくありません」

 

 至って冷静であった。

 

 

 未だに獲物を仕留められないことに魔女は攻撃を止めた。

 それは諦めたのではなく――――次の一手を繰り出す為だった。

 フードに隠されて表情までは読み取れないが、魔女の口は高速に動き、呪文を紡ぐと、

 

「えっ、今度は竜巻……!?」

 

「あ、奴さん、我々とお兄さんの分断を図りましたね。今なら障壁を解除して撤退可能ですが……」

 

 密集陣形から離れた士郎を除いて、4人は螺旋を描きながら吹き荒れる竜巻に閉じ込められた。

 竜巻は瓦礫も巻き込み、外から近付く者を拒む。

 

「美遊様、姉さんの言う通り、今ならば撤退は可能ですが――――」

 

「でも……士郎さんを一人で残すことになる」

 

「…………」

 

 カレイドステッキを持つ魔法少女二人と彼女たちの側に居る二人の魔術師ならば、竜巻に閉じ込められていても、鏡面界を離れることは可能だ。

 だが、彼女たちが離脱をしてしまったら、一人で脱出する術を持たない士郎を残すことを意味するのは、誰もが認識していた。

 その心の隙を刺すように、魔女はトドメの一撃を用意する。

 

「ヤバい……遠坂! イリヤ!」

 

 士郎は外側から叫ぶが、彼女たちには届かない。

 竜巻は彼が近付くことだけではなく、声を届かせることすら許さなかった。

 

 誰もが収束していく魔力から理解が出来た。竜巻を引き起こしているであろう魔法陣に続けて出現した――――積層構造で砲台の発射口を模した魔法陣は、鏡面界の全てを焦土に帰す程の威力を秘めた一撃を発射するのだろうと――――

 

 

「こっ、これは、お兄ちゃんと合流する前にもしかしなくてもDieピンチ!?」

 

「完全に詰みですねー、これは」

 

 

 竜巻の中で少女たちが焦っているを見て、魔女の口元が邪悪に歪んだ。

 

 だがその瞬間――――

 

 弧を描きながら魔女へ襲い掛かる白と黒の軌跡があった。

 

「■■■■!!!!」

 

 魔女のローブが切り刻まれる。

 寸前で襲撃を察知したのか、間一髪ながら左右より襲い掛かってきた二刀を避けた。

 

 ――――あの時。

 両腕を振り上げて走り出す際に、士郎は干将・莫耶を投擲していた。

 それが時間をおいて襲い掛かった。

 

 不意の攻撃に怒りを露にした魔女は狙いを少女たちから少年へ向けるが――――

 

 

 魔女が体勢を崩した瞬間を見逃す訳がない。

 士郎は先手を撃つ為、魔女を狙撃が出来るポイントに移動していた。

 比較的平らな地面に片膝を立てて、弓を上空へ構えている。

 その弓に番えているのは螺旋状の剣だ。

 

(今はイリヤたちも竜巻に閉じ込められている。あれは俺たちを分断するために強固な“檻”だ。

 それに『ライダー』の時と違って『キャスター』は上空。なら――――)

 

 以前――――『ライダー』との戦闘の際は周囲に発生する余波が周囲に居る者に被害を出さないのかを気にして、実行しなかった一撃。

 それが今回の状況ならば放つことが出来る。

 “檻”は余波から中の4人を守り、敵が上空に居るならば地上ほど気を回さなくていいからだ。

 

I am the bone of my sword(我が骨子は捻れ狂う)

 

 呪文が空気を揺らす。

 彼がこの瞬間に解き放とうとしている一撃の殺気に絶句した魔女は回避行動を取ろうとする。

 

「――――“偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)”」

 

 弓から解き放たれた矢は大気を捻りながら、天空へ飛び立った。流星と化した矢は魔女が居た場所を通過するが、勢いは衰えることなく、その後も数個の魔法陣を貫いた。

 

 

「■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

 

 上空では魔女が喘ぐ声を上げていた。

 咄嗟に空間転移をして霊核を貫かれることだけは避けたが、その空間ごと黒いローブは引き裂かれ、肉体はズタズタだ。

 

(装填と速さに割きすぎたな……。避けられたとは言え、威力が足りてない)

 

 士郎は内心で舌打ちをしていた。

 欲を言うのであれば、今の一撃で敵を仕留めておきたかった。けれど、砲撃阻止までの限られた時間で必殺の一撃までは用意が間に合わなかった。

 彼は敵よりイリヤたちを優先して“速さ”を重視したのだ。

 ――――そう、人を“救う”選択を彼は取った。

 

 

 魔女が負傷したことにより、魔法陣は消え、竜巻も霧散した。

 加えて、自身の回復と肉体の復元に魔力を回している。

 この隙に――――

 

「衛宮君――――」

 

 凛から声を掛けられる前に、士郎は彼女たちの許へ走り出していた。

 彼が辿り着いた瞬間、カレイドステッキが詠唱を開始する。

 

「「鏡面回廊一部反転――――――」」

 

 彼らの足元に魔法陣が浮かび上がり、一際力強い光が彼らを包み込んだ。

 魔女の庭園に訪れた者たちが去ると、傷だらけでいる庭園の主だけが静かに残っていた。

 

 

 

 

 ×   ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 

「いやー、何とか一人も脱落することなく帰ってこれましたね」

 

 普段と同じような陽気な声を出すルビーだが、本体は若干焦げている。

 ルビーたちが光弾に曝されていた時間は俺程ではないが、この有り様……。いかに対峙した相手が強大なモノであったのか表している。

 

「脱落者こそしませんでしたが、問題点が山積みですわよ……」

 

「ルヴィアの言う通りね。開幕ビームだけでも頭痛いのに、規格外の魔術の連発とか……」

 

 愚痴を漏らす遠坂とルヴィアさん。

 誰もそれに言葉を返さないが、内心では満場一致で同意してるだろう。

 少なくとも俺はしてる。

 

「あれは魔術の領域を超えていましたね。残念ながら、障壁で相殺なんて出来っこありませんね」

 

「姉さんの仰る通り、あれらは現存しない呪文と魔法陣でした。おそらく、失われた神話の時代の魔術なのだと思われます」

 

「そうなるわよね。なら対抗手段も現代に現存しないでしょうね……。

 それに加えて、魔力指向反射平面か……あれが在る限りステッキの攻撃が届かない。

 ま、一番の問題点は――――」

 

 自分たちが取れる対策を模索している中、遠坂はふと俺の顔を見た。

 彼女が言葉を出さなくとも、俺には何を訊きたいのか判っていた。

 

「聞くだけならタダだぞ?」

 

「お金の心配なんてしてないわよ!!」

 

 遠坂は弱音を吐くことなく、普段と変わらない振る舞いをしていたけど、心配した俺は少しからかうように言った。

 すると遠坂は勢いのいい声を出した。

 にしても、やっぱりこっちの遠坂も金欠なんだな……。

 

「衛宮君、魔術使いと言っても貴方も魔術を扱う者。だから詳しくは訊かないけど、“あれ”はあと何回使えるの?」

 

「敵に放った“あれ”か?」

 

「そう……あれは貴方の攻撃でしょう? 竜巻の所為で行使する様子までは見えなかったけど、私たちの頭上に居た敵へ有効打を入れたのは見えた。

 現状、敵を倒すならそれしかない」

 

「“あれ”は燃費が悪いからな。一日一回が限度かな。

 でも、避けられたらどうするんだよ? 俺の攻撃を避けたのって転移魔術だろ。

 それに、迎撃されてもそれまでだ。遠坂たちが地上を走って注意を引くとしても限界がある。詰め将棋感覚で追い詰められるのがオチだぞ?」

 

 言われなくても判ってると、漏らすようにため息を吐く遠坂。

 

「……そこが一番のネック。どれだけ強力な攻撃を用意しようと、転移魔術で回避されたそこでおしまい。

 穿てば必中の刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)も、空に居る敵には届かないし……。

 カレイド魔法少女なら空を飛ぶことは可能だけど、練習も無しに―――――」

 

「……あ、そっか。飛んじゃえばよかったんだね」

 

 遠坂が言い終わる前に、イリヤの声が聞こえた。

 全員が一斉にイリヤへ視線を向けるが、居た筈の場所に居なかった。

 少し視線を上げると――――何の違和感も感じていない表情を浮かべているイリヤが宙に浮いていた。いや、飛んでいるのか……?

 

「ちょっとイリヤ! なんでいきなり飛んでるの?」

 

「強固なイメージが無ければ浮くことすら困難ですのに……どうして……」

 

 自然と飛んでいるイリヤを目にして、驚嘆する遠坂とルヴィアさん。

 

「すごいですよイリヤさん! 高度な飛行をこんなにサラッと!」

 

「えっ、そんなにすごいことなの? これ」

 

 ルビーも驚きの声を上げる。

 

「魔術師の私とルヴィアでも自由に飛べるようになるまで一日は掛かったわ。そんな簡単な訳がないのに……」

 

「イリヤスフィール、一体どうやったですの……?」

 

 身震いしながら、イリヤに訊く元カレイド魔法少女たち。

 手汗を握っているのか、拳も震えている。

 そんな二人にに対してイリヤは、

 

「だって、魔法少女って――――飛ぶものでしょ?」

 

 まさかの逆質問。しかも即答。

 

「「な、なんて頼もしい思い込みッ!」」

 

 雷に打たれたようなに震撼する二人。

 

 

 リズ……お前の趣味に影響されたイリヤは立派な魔法少女思考を持っているよ……。

 俺は遠坂たちと違って、衝撃を受けるより家で常に寛いでいるメイドの姿が思い浮かんだぞ。なんだか悲しいなぁ……。

 

「負けられませんわよ、美遊! 貴方もすぐに飛んでみせなさい!」

 

「………………」

 

 ルヴィアさん声を掛けられても、俯く美遊。

 心無しか僅かに震えている……こう……関節部分がガタついている人形みたいに……。

 そんな状態でゆっくりと顔を上げるが――――

 

「人は……飛べません」

 

 全く持って正論だぞ、美遊。

 イリヤがリズに感化されないで、セラを見続けて育ったら美遊と同じ事を言ったのかなぁ……。

 

「な、なんて夢の無い子――――ッ!」

 

 再度衝撃を受けたルヴィアさんは美遊の首根っこを掴んで、ずるずると引きずりながら公園から立ち去ろうとしている。

 

「そんな考えだから飛べないのです! 来なさい、次までに飛べるように特訓ですわ!」

 

 よっぽど頭の中がいっぱいなのか、次第に速度を上げならがルヴィアさんは公園を後にして行った。

 

「……取り敢えず、これで戦略は広がるわ。空を飛べるなら魔力指向反射平面の上を行ける。それならカレイドステッキの攻撃が通るし、美遊は『ランサー』のクラスカードを使うことが出来る」

 

「でも、それだとイリヤたちが前衛になる」

 

「今回ばかりは仕方がないわ。衛宮君は空なんて飛べないでしょ?」

 

「それはそうだけど……」

 

 飛行機とかを使わないで飛行なんて人間に出来たことじゃないぞ。魔術師・魔術使いどころの話ではない。

 しかしこうなると、俺には弓で光弾を撃ち落とすぐらいしか出来ることがない。

 これじゃあ立場があべこべだ……。でも、現実は受け入れないといけないのか……。

 

「分かった。次は俺がサポートに回るよ」

 

「出来るの?」

 

「出来る。準備は必要だけどな」

 

「そう。私も他に戦略を練ってみるわね。

 今日はお疲れ様」

 

 遠坂も公園を後にする。

 残って居るのは俺とイリヤだ。

 

「俺たちも帰るか」

 

「うん」

 

 転身を解いて普段着に戻るイリヤ。

 疲れが出たのか、フラッと俺の方へ身を傾ける。

 

「大丈夫か?」

 

「ちょっと……疲れたかな……」

 

 眠そうに口を動かす。

 当たり前だ。公園に在る時計は現在時刻、深夜12時過ぎと示している。

 小学生ならばもうとっくに寝ている時間だ。

 

「帰りはおんぶしてやるから、イリヤは寝ていいぞ」

 

「えっ、いいの?」

 

「明日もあるし、本当ならもう寝てる時間だからな」

 

「じゃ、お言葉に甘えて」

 

 腰を下げて、イリヤが背中を登って来るのを待つ。

 

「えへへー。お兄ちゃんの背中は大きいなー」

 

「まぁ、高校生だからな」

 

 乗ったのを確認してゆっくりと腰を上げる。

 

 

 軽いな。イリヤをおぶって真っ先に感じたのは軽さだった。年相応の成長をしているから不安はないけど。

 続けて感じたのは暖かさだ。子供は体温が高いと言うけど、イリヤは丁度いい具合に温かい。

 子供頃は一緒に寝ていたんだっけと、思い出が蘇ってくる。

 

「――――――」

 

 妹の成長を認識していると思い出に浸っていると、耳元から寝息が聞こえてきた。早くも眠りに就いたみたいで、心底安心しているのか穏やかな様子だった。

 

 

 無数の星々が輝く夜空の下、俺は家に帰るために公園を後にした。

 




やっぱりメディアさん対決だとUBW√が呼び起こされる……。アニメ版でもよかったですし。
さて、第2戦目かぁ……。


話は変わりますが……Apocrypha放送シーズン&キャスト発表おめでとう!!

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