ブラックワンサマー   作:のんびり日和

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えぇ~、実はエダのボスなんですがいい人が思いつかなかったのであの人にしました。


28話

一夏からデータを貰ったエダはヨランダに暫くロアナプラを離れることを伝えアメリカへと帰国する。空港から出てきたエダの格好はシスターの服装ではなくリクルートスーツを身につつ、サングラスを外した状態だった。エダは空港入口で止まっていたタクシーの一つに乗り込み、待ち合わせの場所へと向かわせた。

 

空港から出発して約30分したところにある小さな喫茶店へと到着し、エダは喫茶店へと入る。中はテーブル席やカウンター席などがあり、カウンターには店のオーナーと思われる人物がカップを磨いていた。エダは目的の人物を探し店の奥へと行くと端の方の席でパンケーキを食べながら新聞を読んでいる人物がいることに気づき近づく。

 

「久しぶりだな、エダ。」

 

「えぇお久しぶりです、ブックマン課長。」

 

エダは店員にコーヒーを頼みブックマンと呼んだ男性の向かいの席へと腰を下ろす。

 

「それで、わざわざアメリカに戻ってきて私に渡したいものって何?」

 

そう聞かれエダは持っていたカバンからぶ厚いファイルを取り出しそれを渡す。ブックマンはそれを受け取り怪訝そうに中身をみると体に衝撃が走った。

 

「これは・・・・。なるほど確かにメールとかで送るには危険すぎる代物だな。」

 

「えぇ、ですのでわざわざ此処に戻ってきたのです。」

 

ブックマンはファイルに入っていた紙の束を一枚一枚見落とさないように見入る。そして最後の一枚を読み終わりファイルへと戻す。

 

「これだけの情報をいったいどこで入手したんだ?」

 

「以前報告した少年からです。情報を集めたのはDr.篠ノ之ですが。」

 

エダは店員が持ってきたコーヒーに口を付けそう説明をするとブックマンは納得した顔になる。

 

「なるほど、例の商会に入った元ブリュンヒルデの弟か。してこれの見返りは?」

 

「ある組織の壊滅の手伝いだそうです。」

 

エダは淡々と一夏が要求したことを伝えるとブックマンは真剣な表情になる。

 

「そいつはまたデカい要求だな。本来であれば断るところだ。だが」

 

ブックマンはニヤリと口元を歪ませる。

 

「これだけの情報をくれたんだ。断るのは流石に礼儀に反するな。」

 

「では?」

 

「勿論、手は貸そう。我らがアメリカ大統領だってこいつは喉から手が出るほどの代物だ。それにテロリストを潰すのは我々アメリカの仕事でもあるしな。」

 

そう言って席を立つブックマン。

 

「では私はこれをFBI(連邦捜査局)NSA(アメリカ国家安全保障局)の連中にタレこんでくるよ。」

 

そう言って店から出て行こうとしたブックマンだがふとエダの方に体を向ける。

 

「そうだ、少年に言っといてくれないか。」

 

「何をですか?」

 

エダがそう聞き返すとブックマンは笑みを浮かべながら話す。

 

「“祖国を代表して礼を言う”って。それじゃあな。」

 

そう言ってブックマンは店を後にした。それと同時にカウンターにいたマスターと店員も私服へと戻って店を後にした。実はこの店自体がCIAが用意した架空の喫茶店で店員もマスターもCIAの局員だったのだ。エダは相変わらず用意周到なことでと思いつつカップに残っているコーヒーを飲み干し店を後にした。

 

それからは電撃的展開で武装したFBI、さらに軍のIS部隊がワシントンD.C.に置かれている女性権利団体の本部を襲撃、中にいた幹部達を次々と逮捕していった。そして部屋の奥にいた女性権利団体の創設者の袴田朋美を発見し拘束した。

 

「離しなさい! 私を誰だと思ってるの! 女性たちを開放に導く指導者である袴田朋美よ!」

 

「五月蠅いわね、黙りなさい!」

 

ISを身に纏った女性軍人の一人がそう言って猿轡をさせ、肩に担ぎ外へと運び出す。その後、女性権利団体が犯した犯罪などが世間に公表され世界中は衝撃に包まれた。特に世界中に広まった女性権利団体の支部は捕まることを恐れ、逃亡しようとしたが現地の警察や軍隊によって捕まったり、射殺され次々と女性権利団体は縮小していった。さらに政府の高官になっていた女性権利団体も次々と逮捕されていった。

 

女性権利団体を他の国より先に潰したアメリカでは大統領が男女平等社会を築くと宣言し、少しずつ社会が変わり始めていた。そんなある日ホワイトハウスで仕事をしていたアシュフォード大統領に電話が鳴り、大統領はそれに出ると怒り狂った男の声が響いた。

 

『貴様、どう言う事だ! 私の娘を逮捕するとはいったい何の権限でそんなことをした!』

 

「何の権限ですかって? そりゃあもちろん我がアメリカの利益に反する組織として潰したまでですが。何か問題でもありますか?」

 

アシュフォードは怒り狂った男からの質問に冷静に返答する。それを聞いた男はさらに怒り狂った。

 

『問題だらけに決まっているだろ! 貴様がその席に座れるのは我々が手を貸してやったのを忘れたとでもいうつもりか!』

 

「あぁ~、確かにあなた方が私を操り人形としてこの席に座らせたことは十分憶えています。ですが私はあなた方の操り人形でいるつもりなどはじめからなかったので。」

 

アシュフォードは淡々と返答すると受話器からガラスが割れる音が響いた。恐らく持っていたガラスのコップを投げ捨てたのだろう。

 

『貴様! 私は絶対に貴様を許さんからな、覚悟しておけアシュフォード!』

 

そう言って男は電話を切った。アシュフォードは受話器を置き、席を立ち窓から外の景色を眺めた。その目は鋭く覚悟を決めたかのような目だった。

 

「覚悟しておくのはお前の方だ、亡国機業司令官。いや“袴田源次郎”」

 

世界中で女性権利団体の幹部たちが逮捕されているという情報はIS学園にも届いており近々日本の権利団体も捜査のメスが入るだろうと言われていた。

夜、寮の屋上で束と一夏は夜空を見上げていた。

 

「漸く世界が動き出したね、いっくん。」

 

「えぇ、後は亡国機業を潰すだけですね。それが終わったらみんなとあっちこっち旅行に行きたいですね。」

 

一夏の提案に束は笑顔で頷き、一夏に抱き着く。

 

 

人物

ブックマン(登場作品:ヨルムンガンド)

お馴染み食べること大好きなCIA課長

エダの上司であり、多くの部下たちから慕われている。

 

アシュフォード

アメリカ大統領で亡国機業がアメリカを思うがままに動かすために大統領の席に座らせた人物。最初は人形でいることに仕方がないと思っていたが一夏がエダに手渡した情報によって人形でいることをやめる決意を固め、亡国機業と決別することを実行した。




もっと盛大な逮捕劇とかしたいと思ったのですがなかなか思いつかなかったのでしょぼい逮捕劇になってしまい申し訳ないですm(;_ _)m

次回予告
女性権利団体が事実上の崩壊となって数日後、1年生たちは息抜きと評して京都へと修学旅行へと出発する。一夏達は何事もなく終わってほしいと願っていたが突然の襲撃を受ける。
次回復讐を誓った女性~Mいえ、マドカ。貴女をここで殺す!~

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