ブラックワンサマー   作:のんびり日和

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21話

一夏と鈴、クロエは道場へと行くと既に剣道着を着ている箒と剣道部の部員たちがいた。部員の一人が一夏達に近付く。

 

「初めまして。私が剣道部の部長、矢野真紀奈よ。今日は御免なさいね。彼女何度言っても聞かなくて。」

 

「別にいいですよ。その代わり全力で行かさせていただくので。それで彼女が再起不能になっても責めないでくださいね。」

 

そうクロエが言うと真紀奈は別にいいわよと言う。

 

「それじゃ胴着は隣の部屋にあるから案内させるわね。」

 

そう言って真紀奈は一夏達と同じ2組の部員にクロエを案内させる。数分後剣道着に着替えたクロエが出てきて箒と対面する。

 

「あの時の報いを受けさせてやる!」

 

「そうですか。できたらいいですね。」

 

クロエはそう言って嘲笑うと箒は怒りを露にする。そして真紀奈が開始の合図を出したと同時に攻撃を仕掛けてくる。箒は他の部員からやりづらいから短めの竹刀の方が良いと言われていたのに通常の竹刀で攻撃を仕掛けてくる。しかし怒りで振り方が雑になっておりクロエは難なく躱す。そんな時一夏はあることに気にかかる。

 

「なぁ、あいつの竹刀振ったときの音なんかおかしくないか?」

 

「えぇ、普通の竹刀にしちゃ空気を切る音が大きいわ。」

 

「何か仕込んでいるのか?」

 

そう言うと一夏は試合を止めるべきか悩むとクロエからプライベート回線が届く。

 

『お父様そろそろ片づけます。』

 

そう言って切られた。一夏はそれを聞いてまぁクーちゃんなら大丈夫かと安心する。

 

「そろそろ終わらせます。」

 

そう言ってクロエは竹刀を抜刀術みたいな構えに入る。箒は好機と思い攻撃してくるがその前にクロエが懐に入り胴を決める。

 

「勝負あり、勝者クロエさん!」

 

そう言われクロエは当然と言わんばかりの顔になる。

 

「では金輪際お父様やお母様達に付きまとわないでくださいよ。」

 

そう言ってクロエは胴着を脱ぎに行こうとする。その背後から箒が襲い掛かってくる。だがその攻撃を予期していたのか鈴はグルカナイフを投げ箒の動きを阻止する。

 

「こ、この!」

 

「動くな。」

 

そう言って一夏はP250を箒に向けながら箒が持っていた竹刀を奪い確認する。そして一夏は持った瞬間気になっていたことが分かる。

 

「てめぇ、俺の娘を殺す気だったのか。」

 

そう言われ箒は目線をそらす。真紀奈はどういうことなのか分からずにいて訳を聞く。

 

「あ、天ノ川君どいうことなの?殺すって。」

 

そう聞かれ一夏は箒から奪った竹刀に結ばれている紐を解く。すると竹刀の中から鉄の棒が出てくる。

 

「?!な、なんでそんなものが!」

 

「おおかたこいつがクーちゃんを殺すために仕込んでいたんでしょ。」

 

そう言われ真紀奈はクロエに頭を下げる。

 

「ごめんなさいクロエさん。もう少し早く私が気づいていればこんな試合止められていたのに。」

 

「いえ、最初の攻撃であの人が竹刀に何らかの細工をされていたのは気づいていましたし、あんな攻撃に当たるような軟な鍛え方はしていないので大丈夫です。」

 

そう言われ真紀奈は少し安心する。そして先ほどの抜刀術について聞く。

 

「あの抜刀術って誰に教わったの?」

 

「あれですか?あれは」

 

少し言いづらそうになった後クロエは笑顔になり

 

「内緒です。」

 

そう言われ真紀奈は詮索はしないでと言う意味かと捉え、深くは聞かなかった。そして箒に体を向ける。

 

「篠ノ之さん、今日限りでこの部から出て行って。」

 

そう言われ箒は聞き間違いかと言わんばかり驚愕に染まった顔で返す。

 

「剣道は己の心を鍛えるための物で決して人を殺すための物じゃないわ。もう貴女は竹刀を握る資格なんてない。さっさとこの部から出て行きなさい!」

 

そう怒鳴られ箒は壁を殴ってからその場から出て行く。

 

「良いんですか?」

 

一夏がそう聞くと真紀奈は仕方ないと言った表情になる。

 

「彼女が片腕になったと聞いたときは少しは大人しくなると思ったけど逆に悪化しているとは思わなかったもの。仕方がないわ。」

 

そう言われ一夏はそこからは何も言わずクロエと鈴と共に部室へと戻る。

 

 

 

 

その頃、生徒会室では生徒会長である楯無がロシアのIS委員会から怒られていた。

 

『全く貴女は何を考えているんですか!先ほどDr.篠ノ之から『今度同じようなことをしてきたらIS止めるからな』と警告されたのですよ!万が一止められた時、貴女は責任が取れるのですか!』

 

既に数時間に及ぶお説教を受けており楯無は既に深く反省をしておりずっと頭を下げる作業を繰り返していた。

 

「はい、はい、本当に申し訳ありませんでした。もう2度こんなことを起こさないようにします。はい、はい、本当に申し訳ありませんでした。では失礼します。はい。」

 

そして漸く解放され椅子にドカッと座り深く息を吐く。

 

「漸くかいほ~うされた~。虚ちゃ~んお茶ちょうだ~い。」

 

そう言って生徒会書記の布仏虚にお茶を淹れてもらおうとしたが

 

「自分で淹れてください。」

 

そう言われ楯無は気まずくなる。

 

「・・・まだ怒ってる?」

 

そう聞かれた瞬間虚は持っていた鉛筆を握力で折る。

 

「当たり前です!下手をしたら御家が潰されたかもしれなかったのですよ!そこのところを分かっているのですか!」

 

「う、うん分かったから落ち着いて。」

 

「落ち着け?これが落ち着けますか!あんなふざけた企画を考えていたなんて。知っていたら手段を選ばず止めていたのに。」

 

そう言って頭を抱えながら息を吐く。

 

「ご、ごめんなさい。」

 

楯無は自分の従者がここまで凹むとは思っていなかったのだ。

 

「第一、どうしてあんな企画を立てたんですか?」

 

そう聞かれ楯無は説明する。

 

「天ノ川一夏君の親戚については知ってるわよね。」

 

「はい、1人はブーゲンビリア貿易と言う貿易会社を営んでいるロシア人女性でもう1人がケーブルテレビ配給会社、熱河電影公司を営んでいる中国人男性と聞いています。」

 

「そう、けどそれは表向きの顔。裏は全然違うわ。」

 

そう言われ虚ははい?と首を傾げる。

 

「ブーゲンビリア貿易はロシアンマフィア、ホテルモスクワの支部。そして熱河電影公司は国際マフィア三合会の支部。」

 

そう言われ虚は驚く。

 

「まさか彼がその2つの組織と繋がりがあると思っているのですか?」

 

「えぇ。だって彼のその親戚、かなりの有名人だもの。ホテルモスクワはバラライカ、三合会は張維新。この二人は虚ちゃんだってよく知ってるでしょ?」

 

「は、はい。冷酷非道で有名ですからね。まさかお嬢様はそれであんな企画を立てたのですか?」

 

「えぇ、彼と繋がりを持てたら裏の情報網を更に広げられる。そう思ったんだけど・・・。」

 

楯無はそこからは顔を下に向ける。虚はすぐに察する。

 

「まぁあんな企画を通そうとすればあぁなりますね。」

 

そう言って今朝のことを思い出す。

 

「おね~ちゃ~ん、もう終わったから行ってもいい?」

 

そう言ってきたのは本音だ。本音は生徒会役員で生徒会に届いた資料などを整理する手伝いをさせられて部活に行けずにいたのだ。

 

「あら珍しく早く終わったわね。」

 

「うん!さっきかんちゃんから連絡があってISが出来たから今から部室で打ち上げをするってメールで言ってたんだ~。」

 

そう言うと楯無は机に手を音を立てて立ち上がる。

 

「あ、ISが出来た?!だってまだ機体の半分も出来てなかったんじゃなかったの?」

 

「うん。かんちゃんがいっちーが造った部活に入ってからいっちー達に手伝ってもらいながら作ってたんだ~。しかも篠ノ之先生に時折教えてもらいながら~。」

 

そう言った瞬間、楯無と虚は驚く。

 

「し、篠ノ之先生が手伝った?!」

 

「本音それは本当なの?」

 

「うん。けど直接ISに触りながらじゃなくてかんちゃんが設計した構図をこれでいいかどうか確認してきた時にアドバイスしたりとかだけだよ。

 

「そ、そう。」

 

「それじゃあ私行くね~。」

 

そう言って本音は生徒会室から出て行く。その後ろ姿は楽しみなのかスキップしているかの様な感じだった。

 

「そう、簪ちゃんは天ノ川君の部活に。」

 

そう言って楯無は椅子に深く座る。

 

「まだ仲直りが出来そうにありませんか?」

 

そう言われ楯無は小さく首を縦に振る。

 

「はぁ~、早く仲直りできるといいですね。」

 

「他人事みたいね。」

 

「はい、他人事ですから。」

 

そう言われ楯無はうっ!と言い息を吐き赤くなり始めた空を見上げる。




次回予告
簪のISが完成してから翌日、簪のIS『打鉄弐式』の稼働テストの為アリーナに行く一夏達。そしてその背後を付ける楯無。が、直ぐにばれる。その後稼働テストをするはずがいつしか姉妹ゲンカへと変わる。楯無は止めておいた方がいいと言うが簪は何か秘策があるのか頑なに拒む。そして姉妹ゲンカがきって落とされる。
次回壮大な姉妹ゲンカ~いつもいつもストーカーみたいなことしてきて正直気持ち悪かったのよ!~

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