ブラックワンサマー   作:のんびり日和

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16話

束が3人を見つけたのは偶然だった。一夏達が待っている事務所へと向かおうと途中まではタクシーを使って行き、その後ロアナプラからほど近いバーで降ろしてもらいそこから歩いて行く途中で会ったのだ。

 

「で、君たちが此処に居るのはいっくんに会うためだけにこの街に来たの?」

 

束がそう言うと3人は首を縦に振る。

 

「君たちは馬鹿なの?この街が危険なのは調べればすぐわかるはずだよね?なんで調べもせず此処に来たの?」

 

束がそう聞くとシャルロットが答える。

 

「その、調べようとしたんですがその前にラウラが出発して、その・・・ごめんなさい。」

 

シャルロットが説明し終えると束とクロエはため息を吐く。

 

「調べる暇もなかったと。と言うかそこの眼帯ちゃん。お前軍に所属してたよね?」

 

束がそう聞くとラウラは首を縦に振る。

 

「いっくんのことを調べさせただろう?」

 

束がそう言うとラウラは肩をビクッと動かし観念して白状する。

 

「は、はい。天ノ川が何処に行こうとしたのか気になったのでつい。」

 

「つい?誰だってついてきてほしくない時とかあるよね。それが今日なんだけど。それとお前らいっくんとは友達でも何でもないじゃん。」

 

束がそう言うと3人はうっと言って下を向く。するとクロエが。

 

「お母様、この人たちのことは放っておいて早くお父様達が居る事務所へと向かいましょう。お父様達が首を長くして待ってるはずです。」

 

「そうだね。行こうっか。」

 

そう言って2人はその場を離れようとしたが束はあることに気づく。

 

「あ。そう言えばお前ら専用機持ちじゃん。」

 

そう言って心底めんどくさそうな顔で舌打ちをする。

 

「仕方ない。早く来なよ。事務所まで連れて行ってあげる。」

 

「え?!お母様正気ですか?」

 

クロエが驚きながら聞くと束はため息を吐きながら答える。

 

「もしあいつらが専用機持ちじゃなければ放置するけど、仮にも代表候補生とかだから後で面倒な事が回ってくるのはいっくん達だからね。」

 

そう束が言うとクロエは納得が出来なかったが父親である一夏に迷惑が掛かるのは嫌だから仕方なく頷くしかなかった。

 

そして束達は一夏達が居る事務所へと移動する。

 

数分後、目的地に到着し事務所へと入るとすでにピザとか料理が机の上に置かれておりパーティーの準備は済んでいると分かる。

するとキッチンから一夏が出てくる。

 

「お、いいタイミングで来ましたね。て、なんでお前らが此処に居るんだ?」

 

そう言ってジト目でセシリアたちを見ていると束が説明する。

 

「ごめんねいっくん。本当だったら放置して来るんだったんだけどこいつら仮にも代表候補生とかだからこいつらに何かあったらいっくんにも面倒が掛かると思って連れてきちゃったんだ。」

 

そう言って束がへこみながら言うと一夏はそっと束の頭を撫でる。

 

「そう言う事でしたら俺は何も言いませんよ。」

 

そう言って一夏は目線を束からセシリアたちへと移す。

 

「今回は束さんに免じて許すが次は無いからな。」

 

そう言って一夏はキッチンへと戻る。それを見ていたバラライカが聞いてくる。

 

「あなた達一夏と何かあったわけ?あそこまで扱い方が嫌々なのは初めて見たわよ。」

 

そう聞かれセシリアは言いにくそうに説明する。

 

「その、色々事情がありまして。」

 

「事情ね。まぁ余り私の可愛い弟分を困らせることはしないでね。」

 

そう言うとラウラは何かを思ったのかこう聞いてくる。

 

「もしや貴女は天ノ川のお義姉さんなのですか?もしそうだったら私も天ノ川の嫁にしてください!」

 

そう言ってきた瞬間全員の口がはぁ?と開ける。

 

「なんで俺がお前を迎え入れなきゃならねんだよ。」

 

そう言ってキッチンから出てくる一夏。するとラウラは説明をしてくる。

 

「天ノ川の言動などは突き放す言動などしてきて時折デレるというツンデレというものじゃないのか?部下がそう言っていたぞ。」

 

「それは特定の人物のことを言って俺は断じてツンデレじゃねえよ。」

 

一夏はそう反論していると座っていたバラライカが立ち上がりラウラの襟を掴み上げ部屋から出て行こうとする。

 

「ダッチ、ちょっと隣の部屋借りるわよ。」

 

「な、なにをするんですか!離してください!」

 

そう叫びながら必死に振りほどこうとするが解けずそのまま連れていかれた。

 

「だ、大丈夫なんでしょうかラウラさんは?」

 

そうセシリアが震えながら聞いてきて一夏は両手を横にして首を横に振る。

 

「命までは取らないと思うけどたぶん大丈夫だろ。」

 

そう張が言う。すると鈴が驚く。

 

「て、貴方は中国マフィアの三合会幹部の張維新じゃないですか!なんで此処に居るんですか?」

 

「うん?俺のこと知ってるのか?」

 

張が鈴にそう聞くと鈴は驚いたまま言う。

 

「だって裏の事情を初めて知ったときあなたの名前が多く出てきたんです。それでそのすごさを調べたら想像以上だったんですし、今見てすごい人物だと改めて分かりました!」

 

鈴は自国の裏の偉人に出会えたことに目を輝かせながら語る。それを見た張は苦笑いになる。

 

「ははは、こいつは驚いたぜ。まさか本国で俺のことが有名だとはな。」

 

一夏はさすが張兄さんだと誇る。そんな光景にセシリアとシャルロットは改めて自分たちは来てはいけない場所に来てしまったと後悔し始めたのだった。そして暫くしてラウラとバラライカが戻ってくる。ラウラは泣きながら「もう部下の言葉を真に受けません。」と言っていた。そしてパーティーが始まり久しぶりに一夏と会ったバラライカや張は向こうの暮らしとかいろいろ聞いて楽しみ、鈴は師匠と談笑したりクロエとお喋りを楽しんだ。他の人たちもそれぞれ料理を食べたり談笑したりと楽しんでいた。セシリアたち3人はとりあえず隅っこで楽しんでいたとのこと。そして夜が更けてき始め、パーティーはお開きとなりセシリアたちはロックの運転でホテルまで送ってもらえるとのこと。一夏はふとあることが気になりセシリアたちに聞く。

 

「そう言えばなんでお前ら此処に来たんだ?別にボーデヴィッヒ一人だけ行かせてお前ら2人はバンコク行くなりすればよかったのに。」

 

そう聞くと2人は苦笑い気味で答える。

 

「その、実はもし天ノ川君に会えたら正式に謝罪しようと思ってたんだ。だからその、あの時あんなことをしてごめんなさい!」

 

そう言って頭を下げるシャルロット。

 

「その、わたくしも謝罪が出来ればと思いまして此処に来ました。本当にごめんなさい!」

 

そうセシリアは頭を下げながら言う。

 

「シャルロットは分かった。だがオルコット、俺はあの時謝罪はいいと言ったはずだが。」

 

「それでもちゃんと謝っておかないといけないんです!あの後1組でもわたくしは孤立気味でしたがクラス代表戦後、クラスの前で精一杯の謝罪をして少しづつですがクラスの人たちとは仲良くなってきたのですが、迷惑と思われるかもしれませんがあなたにもちゃんと謝っておきたいと思ったのです。」

 

そう言ってきて一夏ははぁ~。と息を吐く。

 

「分かったよ。お前の謝罪を受け入れる。だが2度と馬鹿な真似はするなよ。お前もだシャルロット。次はない、そう思っておけ。」

 

そう言って一夏は束たちが乗って待っている車へと向かう。セシリアたちは漸く肩の荷が下りたと思い盛大に息を吐き、ロックが乗ってきた車へと乗りラウラと共にホテルへと帰って行った。




次回予告
パーティーから数日後、一夏、鈴、クロエ、束は日本の旅館へと赴いていた。そして温泉で日ごろの疲れなどをとったり、贅沢な料理を楽しんだりと英気を養っていた。だがその裏で束はある計画を実行しようとしていた。そしてある組織が動き出そうとしていた。

次回楽しい楽しい温泉旅?~さぁ~てのんびりしますかぁ~。~

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