ブラックワンサマー   作:のんびり日和

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7話

アリーナの一件から数日後、一夏と鈴は寮でのんびりしているとTV電話の呼び鈴が鳴る。

 

「もしかして例のことが分かったのか?」

 

そう言いながら一夏はTV電話に出ると画面に束が映った。

 

『やっほ~いっくん、鈴ちゃん久しぶり~。』

 

「こんにちは束お姉ちゃん。電話をかけてきたということは例の転入生のことが分かったの?」

 

『うん。あの金髪オスカル君の戸籍を調べたんだけどそれらしい戸籍が無かったんだ。それで顔で検索したら見事にヒットしたよ。』

 

そう言うと画面の半分にその人物の情報が映し出された。そこには顔写真と名前、性別などが書かれていた。

 

『名前はシャルロット・デュノア。性別は女性でどうやらデュノア社社長の愛人の子供らしいよ。』

 

「愛人の子ね。てか女性なのになんで男の格好で入ってきたのかしら?」

 

「恐らく男で入ってきた方が警戒心なく近づけると思ったんだろう。まぁあれで男の変装してますって言うのは無理があると思うけどな。」

 

「言えてる。あれで男って無茶があるわよ。一度あんたに笑顔向けた時の顔なんてほぼ作り笑いだったから気味が悪いって思っちゃったわよ。」

 

『確かに!ベアちゃん越しに見たけどあれは気味悪いね。』

 

「と、とにかくあいつが女性ということは俺の専用機に関する情報を引き出そうと何かしらの接触があるかもしれないから注意しておくよ。」

 

『うん、そうして。もしハニトラ紛いのことをしてきたらすぐに連絡してね。束さん自らそいつを葬りに行くから。』

 

そう言われた一夏は苦笑い気味に

 

「その時はお願いします。」

 

『それじゃ束さんそろそろ切るね。またね~。』

 

そう言って束は切った。

 

「さてあいつはどう動くのか要注意だな。」

 

「そうね。さてそろそろ寝ましょうか。」

 

そう言われ一夏は自分のベッドに入ると鈴も一緒に入ってきた。

 

「な、なんで俺のベッドに入ってくるんだ?」

 

「偶にはいいじゃない。別にエッチなことをする訳じゃ無いんだから。」

 

そう言うと鈴は目を瞑り寝始める。一夏はため息を吐きながらも一緒に寝ることにした。

 

~数日後~

ある日の放課後、一夏はまっすぐ寮へと帰ろうと廊下を歩いていると前からシャルルことシャルロットが壁にもたれるように立っていた。そして一夏に気が付き駆け足気味に近寄る。

 

「何か用か?」

 

「ちょっと相談したいことがあるんだ。」

 

「相談?俺じゃないとダメなのかよ?」

 

「男の方が相談しやすいからさ。その、ダメかな?」

 

「はぁ~、わかったよ。で、俺の部屋でいいか?」

 

「いや、僕の部屋で。僕相部屋の人いないから。」

 

「わかった。」

 

そう言って一夏とシャルロットは部屋へと向かった。一夏は部屋に向かう中ある2つの推論を考えていた。1つがデュノア社の人形になっているのがつらいから助けてほしいと言ってくる。2つ目がハニトラをしてくる。もし後者だった場合は排除しようと考えていた。そして部屋に到着する。

 

「さぁどうぞ。」

 

そう言われ一夏は中に入るとシャルロットはこっそりと鍵を掛けた。

 

「で、相談事ってなんだよ。」

 

「あのさ、一夏。」

 

そう呼ばれ一夏は振り向くと制服などをはだけさせたシャルロットがいた

 

「実は僕ね、女なんだ。もし君が君のISの情報をくれたら僕のこと好きにしていいよ。」

 

シャルロットがそう言うと一夏は盛大なため息を吐く。シャルロットは一夏のその行動に驚き戸惑う。

 

「な、なんでため息を吐くの?」

 

「あぁあ、自由になるチャンスを潰す方を選んだか。」

 

「え?」

 

一夏の言葉にシャルロットは耳を疑った。

 

(自由になるチャンスを潰した?僕が?)

 

シャルロットは訳が分からずにいると背後の扉が開く音が聞こえ振りむこうとしたがその前に首に強烈な打撃を喰らいそのまま気絶した。

 

シャルロットが目を覚ますと目の前には鈴と一夏がいた。そして自分は後ろに腕を回され結束バンドで拘束されていた。

 

「な、なにこれ?」

 

「そりゃお前がスパイだから拘束したに決まっているだろ。」

 

一夏にそう言われシャルロットはなぜバレたのか分からなかった。だがその疑問をすぐに頭の隅に追いやり拘束を解こうとISを展開しようとしたが出来なかった。

 

「拘束を解こうなんて無理よ。だってあんたのISはここにあるから。」

 

鈴にそう言われその手を見るとラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの待機形態の十字マークのついたネックレストップがあった。

 

「か、返して!」

 

「なんで返さないといけないの?返せば暴れられると面倒じゃない。」

 

そう言って鈴はネックレスを机の上に置き腕を組んだ。

 

「さて、お前の狙いは俺のISの情報だろ?」

 

一夏にそう聞かれシャルロットは首を縦に振る。

 

「そうか。さて本来学園の規則事項にはスパイ行為をした生徒は拘束されると書かれている。だからお前も拘束される。」

 

そう言われシャルロットはその時に出来るだけ罪を軽くしようと考えていると

 

「だがそれは正規に入ってきた生徒に対してだ。お前は名前と性別を偽って入ってきているから正規入学とは違う。つまり規則事項には当てはまらない。」

 

そう言われシャルロットは冷汗が止まらなかった。性別や名前を偽って入った自分は不正入学になる。もし捕まれば強制送還され二度と社会に出ることができなくなる。

 

「お、お願い。このこと黙ってほしい・・・です。」

 

そうシャルロットに言われた二人は

 

「いや無理だし。」

 

「そうそう無理無理。」

 

「ど、どうしてさ!同じ学園の生徒なんだよ?」

 

「はい?不正入学したやつを同じ生徒だと俺は思わないんだが。」

 

「私も。」

 

そう言われたシャルロットはもう八方塞がりだった。

 

「さてと、そろそろ片づけるか。」

 

そう言って一夏は懐に仕舞っているP250を取り出しスライドを引き初弾を込めシャルロットの額に銃口をむける。

 

すると扉をノックする音が響く。

 

「うん?鈴頼む。」

 

そう言われ鈴が扉を開けに行くと扉の前には真耶が立っていた。

 

「あれ、どうして鈴さんがここに?」

 

「いえ、ちょっと。それで山田先生何か御用があったのでは?」

 

「あ、そうでした。デュノアくんはいますか?」

 

そう言われシャルロットは助けてもらおうと叫ぼうとしたが

 

「あ、山田先生ちょっと来てもらってもいいですか。」

 

一夏が中に真耶を招き入れた。

 

「えっとわかりました。それではお邪魔します。」

 

そう言って真耶が中に入り奥に行くと腕を後ろに回され拘束されているシャルロットとその前で腕を組んでいる一夏がいた。その手には銃が握られていた

 

「えっと、これはどういう状況なんですか?それとどうして銃を握ってるんですか?!」

 

「こいつは男性と偽って入ってきたスパイで、俺にハニトラをして俺のISの情報を引き出そうとしてきたので拘束したんです。」

 

そう一夏が言うと真耶は信じられないと言ったような顔でシャルロットを見る。

 

「でゅ、デュノア君本当ですか?」

 

「・・・はい。」

 

そう返事が帰ってくると真耶は頭が痛くなった。

 

「ま、まさかあのメールが本当だったなんて。」

 

「メール?」

 

一夏は真耶が言ったメールと言う単語が気になった。

 

「はい、メールには『シャルル・デュノアは実は男ではなく、女だ。』と言う内容で送られてきたんです。」

 

(誰かが山田先生にメールを送って密告したのか?一体誰が。)

 

一夏は山田先生に一体誰がメールを送ったのか考えていると

 

「山田先生、誰がそのメールを送ってきたんですか?」

 

鈴が聞くと真耶は

 

「それが匿名で送られてきたので分からないのです。」

 

そう言いながら真耶はデュノアを立たせる。

 

「兎に角彼女はこちらで事情等を聴きますので、天ノ川君たちはすいませんが、この事は内密にお願いします。」

 

そう言われ分かりましたと二人は返事をして自分たちの部屋へと戻る。その途中

 

「一体だれがメールを送ったんだ?」

 

「さぁ。束お姉ちゃんに相談してみる?」

 

「そうするか。」

 

そう言って二人は部屋へと戻りTV電話で束に電話をするとすぐに出た。

 

『もっし~、どうかしたの二人とも?』

 

「束さん、実はさっき金髪オスカルにハニトラされかけてさ。」

 

一夏がそう言うとさっきまでの笑顔が消え去った束が映った。

 

「そいつまだ部屋にいる?」

 

「いや、鈴に頼んで気絶させて拘束後、事情を聞いて処分しようとしたんだけど、その前に先生が来てそのまま拘束されて連れていかれた。」

 

『ふぅ~ん。それにしても実にタイミングが良すぎるね。』

 

「そうなんだ。実はデュノアを連れて行った先生のところに匿名の密告メールが届いていたらしくてさ。事前に誰かがデュノアの行動を知っていた可能性があるんだ。だからそのメールは誰が送ったのか束さんに調べてほしいんだ。」

 

一夏がそう言うと束はえぇ~と言った顔になった。

 

『別に誰が送ったっていいじゃん。その金髪オスカル野郎はいっくんにハニトラした時点で極刑なのに。』

 

そう言って調べる気はないと言う態勢の束に一夏は

 

「どうしても調べてくれませんか?」

 

『いっくんの頼みでもこればっかりは束さんはいや。』

 

「頼む、束。」

 

一夏は最終手段として呼び捨てで頼んでみると

 

『はぅ~~~~~~~!いっくんに呼び捨てされちゃって束さんの心はキュンキュンしちゃった~!よ~し、いっくんに呼び捨てされたことに免じて調べてくるからちょっと待っててね。』

 

それから数分後、画面に束が戻ってきて報告を始めた。

 

『その先生のところにメールを送ったのはデュノア社の社長のようだね。』

 

「社長?なんでまた社長がそんな匿名メールを送ったんだ?そんなことをすれば自分の娘は捕まるうえに自分の会社を潰すも同然なのに。」

 

『もしかしたら今回の件、社長は反対で社長夫人の方が強要させたんじゃない?あそこの女、糞風潮(女尊男卑)に染まった奴みたいだし。』

 

「なるほど、自分の娘を守るためにメールを送った。それだったら納得がいくわね。」

 

「だとすると奴は被害者であり、加害者だな。」

 

一夏がそう言うと二人はなぜ?と言った顔で見てくる。

 

「あの時あいつが人形でいるのが嫌だと言っていればこんなことにはならなかった。」

 

そう一夏が言うと二人はなるほどと納得した。

 

「まぁ、とりあえずあいつは他クラスだし、どうなろうと俺たちにとっちゃ知ったこっちゃないけど。」

 

『「そうだね(そうね)。」』

 

そしていつもの雑談などをして、暫くしてから電話を切り一夏と鈴は布団に入り眠った。

 

一方真耶に連れていかれたシャルロットは生徒指導室にある椅子に座らせられていた。そして目の前にはデュノア社社長の顧問弁護士がいた

 

「それではシャルロットお嬢様。今回の件なんですが社長はあるご決断をされましたので心してお聞きください。」

 

「は、はい。」

 

「社長から伝言で会社には戻らず、日本政府に亡命して助けてもらい自由に生きなさい。とのことです。」

 

「お、お父さんが?」

 

「はい。実は私は社長から夫人には内密に話を進めておいてくれとのことで以前からお二人の亡命申請等を進めていて、すでに申請等は終わっております。」

 

「二人?もしかして・・・・。」

 

「はい。社長も亡命されるとのことです。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「それと今回の件で余り社長のことを責めないであげてください。あの方は自分の娘にどのように接したらいいのか分からないといつも愚痴っておられたので。」

 

そう言われシャルロットは弁護士の言葉に驚く。あの父がそんなことを言っていたことにだ。

 

「では私はこれで。それと今回の件の罰として学園からは学年別トーナメント戦終了まで自室待機とのことなので大人しくお部屋にいてくださいね。」

 

「わ、わかりました。」

 

「では私はこれで。」

 

そう言いって弁護士は帰っていき、残ったシャルロットは監視役の先生に連れられて部屋に帰された。




次回予告
シャルロットにハニトラ紛いのことをされたと報告を受けた束。そしてデュノア社に報復することを決意しバラライカに連絡をする。けどデュノア社社長は今回の件でハニトラをさせたくないということから密告メールを送っていたことが分かったため、社長の命だけは奪わないようにして欲しいとついでにお願いしておく。そして連絡を貰ったバラライカはフランスにいる幹部の一人に連絡しデュノア社夫人と夫人の計画に賛同して動いた奴らの排除をお願いした。

次回番外編その一、グリフォンの尾を踏んだ者たちの末路~我が孫に手を出すとは万死に値する!~

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