異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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どうも、イベ当日朝に取り敢えず別伝締めようと一念発起した天の声です。
(※2015年の話です)

青葉「もうメタコメには突っ込みませんよ! あ、どもー恐縮です、青葉ですぅ!」

イベ終了までこっち更新できないしね、仕方ないね。

青葉「は、はぁ・・・。」

さて今日は何をしようかな。

青葉「ノープランだったんですか・・・。」

わざわざ海軍航空隊の番号附与基準をぶち上げる訳にもいかんでしょ、詳しくはググって下さい。

青葉「今後登場予定の艦娘とかどうですかね?」

うーん、まぁそれについて少しだけ言及しようか。

青葉「あ、するんですね。」

うん。まず登場規則についてですが、作者司令部の図鑑に登録されているかの有無によって左右されます。これを大原則とし、その下に司令部に着任した順、現有艦に名前が無い場合は適宜登場ないし、着任時期を覚えている場合はその時期に登場させる、と言った具合になっています。着任タイミングについては一部例外があります。

青葉「金剛さんなんてその最たるものですよね?」

せやな、着任六日でお迎えしたのを初っ端から持って来てる位だし。

改2についてですが、これについては図鑑登録の有無は問わない事にしていますが、無印がいないものを改2にはしません、出せないから仕方ない。

あと私の本当の初期艦は吹雪です。が、実はろくに使いもせず復帰直後に退役させていたりもします。この作品では一つ大きなポジションについて頂く予定ですので、その辺は期待せず待っててください。

青葉「そうですね。」(役回り知ってるとか言えない・・・。)

あと夕立時雨電ちゃん雪風の4トップで駆逐艦は行こうと考えてます。可愛くて強いとかずるい。

青葉「アッハイ。」

あと次点級の駆逐艦の一部について明言します。

島風・秋月・朝霜・天津風・朝潮、この5隻は島風を除き気紛れによって次点級になる可能性があります。島風は確定です、当然です。

青葉「登坂で勝てない私って・・・」(涙

おう涙吹けよ。(サッ

青葉「はい・・・。」ズビーッ

人のハンカチで鼻かむな。

青葉「あ、ごめんなさい。」

はぁ。戦艦についてですが、ぶっちゃけると今はアイオワ、出演予定がありません。

青葉「えっ、なんでですか!?」

作者英語てんでダメです。

青葉「あっ・・・」(察し

この点についてはコマンダン・テスト及びウォースパイトも該当します。またイベ実装駆逐艦の2割強と初風及び浦波も現在出演予定なしですので・・・はい。(17.01.11時点)

艦載機についてですが、図鑑登録の有無は問いません。そりゃオリジナル装備オンパレだし仕方ない。

青葉「震電改持ってませんもんね・・・。」

言うな『横鎮が震電改持って無いヤーツwwwwww』とか言うな。あれ当の横鎮でも入手困難な代物だから。参加すらしてないから持ってないの当然だから。

青葉「分かってますよ・・・。」

あと33号電探はありますが32号電探無かったりします。(H27 12/4追記:15秋イベ前に出ました)

装備についても艦載機を除き図鑑にある事を前提に色々出す予定です。

重巡軽巡その他は全艦出ます。空母に関しては大型空母は全員持ってますが大鳳がいません。

青葉「まぁ仕方ないですね。」

欲しいけどねぇ・・・。

この辺にしておきましょう。いよいよ着任から一応の安定に至るまでの道筋を示す言わば前振りが終わり、ようやく本編な訳です。

青葉(長い前振りだ・・・。)

では行ってみましょう。


第一部~弔鐘編~
第1部1章~マリアナ沖航空決戦~


2052年5月27日午前6時17分 厚木基地南側空中

 

 

提督「よし、離陸完了、このままサイパンまで2時間半、一気に飛びますかね。」

 

サーブ340改、コード「バルバロッサ」は、搭乗する全員が5時10分起床で身支度を整え、素早く日本を後にした。

 

堂々と離陸する訳にもいかないと言うのが理由であった。わざわざこの時間だけ離陸予定を開けてもらったのである。

 

機体は徐々に高度を上げ南へと飛ぶ。その頃既にサイパンでは敵の攻撃が始まっていた。

 

 

 

午前6時20分 サイパン・横鎮近衛艦隊司令部

 

 

大淀「提督は今どこにいるんです!?このままでは被害が拡大するばかりなのに!!」

 

明石「それが、連絡が付きません、妨害電波が出されています!」

 

執務室では大淀が焦燥感を募らせ・・・

 

榛名「全艦、榛名に続いて下さい!」

 

艦娘全員「はい!!」

 

鎮守府正面では艦隊が出撃・・・

 

柑橘類「くそっ、多い!」ガガガガガガガッ

 

赤松「だな。それになんだこりゃ、なんでペロハチ(P38)や鰹節(P39)がいやがる?」

 

上空では空母と飛行場の航空隊が死闘を繰り広げていた。

 

 

 

提督執務室

 

 

大淀「どうすれば・・・」

 

白雪「上空! 敵重爆侵入!! B-17タイプと思われます!」

 

明石「B17!? この近辺にB-17の基地なんてあったの!?」

 

雷「いえ、無理よ。グアムを奪回した以上、マリアナの南にある島から出撃しないといけないけど、B-17フライングフォートレスの航続力だと、最低爆装じゃないとサイパンまでは来れないわ。トラック棲地では500kg爆弾4発で何とかって所ね、効果は薄いわ。」

 

なぜそこまで詳しいのか。因みに雷は技術局から派遣、白雪は後方担当の為残留という事で出撃していない。

 

明石「じゃぁいったい・・・」

 

白雪「自軍高角砲、重爆1機撃墜!」

 

大淀「間に合わないわね、トンネルに避難しましょう。」

 

明石「はい!」

 

白雪「分かりました。」

 

雷「そうね!」

 

迎撃が間に合っていない以上、大淀達に出来るのは退避することだけであった。

 

 

 

午前6時43分 サイパン飛行場管制塔

 

 

飛龍「攻撃は、司令部施設に向いているわね・・・。」

 

多聞「どうする?」

 

飛龍「・・・とにかく撃ち続けるしか・・・航空隊は全て出払ってるし・・・。」

 

多聞「そうだな・・・。」

 

艤装を持たない飛龍と山口中将は、共に空を見上げて溜息をつくのでした。

 

 

 

午前7時10分頃、サイパン東方沖では、榛名率いる艦隊主力が戦闘に加入しようとしていた。

 

上空では熾烈な空戦が行われていたが、その甲斐もあってさしたる空襲も無く突破したのである。

 

榛名「間も無く戦闘へ突入します、皆さん、用意を!」

 

比叡「了解!」

 

霧島「・・・索敵機より入電、敵艦隊は超兵器級複数を擁するとのことです。」

 

榛名「そんな!」

 

緊張した面持ちの霧島からの報告に、榛名の表情が曇る。

 

綾波「夕立も電もいないのにどうやって!?」

 

綾波の様に一部で狼狽する向きもあった。

 

初春「幸いにも空母は母港待機しておる。ここは隊を二つに分け、注意が陽動に向いた隙に本隊が叩くのが定石じゃろうな。」

 

霧島「いえ、私達はまだ、超兵器級との交戦経験がありません。その状況下で兵力を分散するのは愚策だと思いますよ?」

 

初春「・・・それもそうじゃな。」

 

榛名「・・・なんにせよ、まずは目の前の護衛艦隊から順に倒しましょう。」

 

陽炎「陽炎の出番ね、見てなさい!」

 

不知火「不知火、出ます。」

 

榛名「はい、打ち合わせ通り、先鋒をお願いします。綾波さんと時雨さん、フォローお願いします。」

 

時雨「え、あ、うん、わかった。」

 

綾波「フォロー、ですか・・・分かりました。」

 

榛名は初陣である陽炎と不知火に先陣を任せ、そのフォローにベテランを充てる事でカバーしようとしていた。

 

榛名「では三列単縦陣形成、先頭は中央が私、左列比叡、右列霧島で、かかれ!」

 

一同「はい!!」

 

榛名の号令で、艦隊は三列の単縦陣を形成する。

 

その陣形の先頭に、本来いる筈の直人の姿はなく、夕立や金剛と言った主だったメンバーもまたいない。

 

艦隊はその主力と指揮官を欠いたまま、経験のない、艦娘単独による超兵器級深海棲艦との戦いに、身を投ずることになったのである。

 

その点では彼女らは不運であったとも言えなくはないが、この時の経験が、彼女ら全員を大きく成長させる事にも繋がるのである。

 

 

 

同じころ艦隊上空では、柑橘類隊や赤松隊を中心とした艦隊航空隊と、基地から発進した迎撃機が共同で敵機を迎撃していた。

 

柑橘類大尉はこの時違和感に苛まれていた。

 

柑橘類(なぜ航続力の弱い陸軍機がこんなところを飛んでいる?この近くに敵航空基地があるという報告はない、という事は艦隊からか・・・?)

 

一概に言い切る事は出来ないが、一般的に陸軍の軍用機は航続力があまりない事が多い。特に戦闘機に於いてその傾向が強い。

 

爆撃機であればB-17やB-29、英軍の重爆撃機であるランカスターやスターリング、ハリファックスなど、航続力の大きな航空機は存在する。

 

しかし戦闘機に関して言えば、米軍のP38ライトニングの様な双発機でもない限り、航続力を必要としない為に遠くまで飛ぶことが出来ないものが多い。

 

何せ運用するのは陸軍であり、その目的は陸上の友軍の支援にあるからである。

 

柑橘類大尉や赤松大尉を初めとして、違和感を覚えた者は少なからず存在していた。

 

柑橘類(だが今はそれどころじゃないな。)

 

存在していたところで、出来る事はただただそれを蹴散らす事のみであったが。

 

手近にいる敵のグラマンF4Fを天頂方向から一撃して撃ち落とし、更に返す刀でカーチスP40を、零戦に似合わぬ一撃離脱で撃墜する。

 

松ちゃんこと赤松大尉もまた、格闘戦と一撃離脱で次々とスコアを重ねてゆく。

 

彼女ら艦娘と、彼ら航空隊のこの奮戦が、この後の運命を別ったのである。

 

 

 

午前7時51分 サイパン北方900km付近空域

 

 

提督「あと1時間足らずでサイパンかぁ、大淀待ってるかなぁ~・・・ん?」

 

サーブ340Bコックピットの直人は、前方の水平線上に、何かを認めた。

 

提督「―――黒い筋・・・? 煙か、まさかっ、こちらバルバロッサ、アテナは御座におわすか?」

 

“アテナは御座におわすか”、司令部の無事を確認する為の暗号である。

 

 

“ザザアアアアアアアアアーーーーーーーー・・・”

 

 

しかし向こうからはノイズのみ、この時点で直人は事態を察し、機内放送のスイッチを入れた。

 

 

 

~客室内~

 

 

金剛「~♪」

 

行きと同様機嫌のいい金剛。

 

天龍「・・・昨夜からずっとだよな、金剛。」

 

龍田「・・・そうねぇ。」(ふふふ・・・妬ましいわぁ~^^)

 

と、それを見守る二人。

 

ただまぁ、行きはよいよい帰りは恐いと言いますし・・・

 

提督「“緊急連絡!”」

 

・・・ほらね?

 

提督「“緊急事態だ、司令部が攻撃を受けている可能性がある!”」

 

金剛「なっ・・・!!」

 

さっきまで惚けていたのが嘘の様に表情が引き締まってますよ金剛さん?

 

提督「“全員艤装着装の上待機、空挺降下の用意だけしてくれ。”」

 

伊勢「空挺降下ってまさか!」

 

提督「“客室最後部の床に機械開閉式のハッチあるだろう?”」

 

日向「・・・確かに、あるな。」

 

提督「“そこから艤装を着けて海上にダイブしてもらう。”」

 

因みにこのハッチは直人が局長に密かに頼んだものです。

 

天龍「正気か!?」

 

提督「“低速超低空飛行で降ろすから安心しろ、それとも怖いか?”」

 

天龍「そりゃそうだろ・・・。」

 

金剛「・・・やるしかないデース。」

 

五十鈴「え。やるの!?」

 

祥鳳「ぶっつけ本番なんですよ!?」

 

叢雲「はぁ~、此処でも無茶やらされるわね、全く。」

 

加古「え~、やんのぉ~? 眠い・・・。」

 

新しくきた艦娘達は一様に不安の声を上げる。

 

金剛「私達の帰る場所を護らないと。私達の、貴方達の新しい家なんですから。」

 

五十鈴「!!」

 

金剛のこの一言で、その声は収まり、皆覚悟を決めた様子だった

 

提督「“そうだな、やる以上徹底的にやるぞ、俺も万が一の時に備えて持ってきた脚部艤装と刀で出る。お前らだけで行かせる訳ねぇだろ。”」

 

金剛「言うと思いマシタ。」

 

夕立「やっちゃうっぽい!」

 

提督「“但し今回は防衛だ、引き際を誤るな。これは命令だぞ。”」

 

客室一同「はい!!」

 

伊勢(・・・あれ? この飛行機どうするの・・・?)

 

一人だけ正解な疑問を抱いてましたww

 

 

 

午前9時26分 『榛名』艦隊展開海域

 

 

綾波「う・・・ぐっ・・・!」

 

霧島「これがっ・・・超兵器級・・・!」

 

最上「強さの・・・底が違う・・・。」

 

デルタ「アナタタチニ、私ハ倒セナイワ!」ドォンドォン

 

榛名「―――っ!」

 

 

ドガアアアァァァァーーーー・・・ン

 

 

榛名「きゃああああああああああっ!!」

 

比叡「榛名!!」

 

出動した艦隊は、超兵器の猛威に晒され、皆ボロボロになっていた。

 

響「こんな時に・・・雷がいないなんて・・・」

 

摩耶「諦めんな! 絶対に提督は戻って―――」

 

 

―――ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・ン

 

 

一帯に響いてきたプロペラの爆音。土壇場で、間に合った。

 

扶桑「あれは!」

 

初春「鳥じゃ!」

 

皐月「ジェット機だ!」

 

長月「いやいや・・・」

 

提督「“テンプレやらんで宜しい!www”」

 

一同「提督だ!!」

 

 

 

提督「よーしいくぞ! 総員降下!」

 

金剛「一番乗りデース!」ピョン

 

提督「“分担決めるぞ。まず祥鳳は金剛を空中から援護。”」

 

祥鳳「お任せ下さい!」バッ

 

提督「“五十鈴と叢雲は祥鳳を護衛。”」

 

叢雲「しょうが無いわね・・・やったげる。」スッ

 

五十鈴「え―――私も、戦わせてくれるの?」

 

提督「“ただでさえ人手足りんのだ、全員で戦うんだよ。”」

 

五十鈴「・・・えぇ、分かったわ! 任せといて!」バッ

 

提督「・・・高雄は金剛と突撃、大潮も行ってやれ。」(・・・何かありそうだな。)

 

高雄「はい!」

 

大潮「分かりました!」

 

提督「“島風。”」

 

島風「ん~?」

 

提督「“島風はその快速を生かして最前線で退却困難な友軍を救助、その撤退を援護してくれ。”」

 

島風「了解! 連装砲ちゃん、チビちゃん達! いっくよぉ~!」

 

島風の連装砲ちゃんのハッチの中から、小さな連装砲ちゃんの人形が2つ飛び出し、それが大型化してお連れの小さな連装砲ちゃんになった。

 

島風「島風、出撃しまーす!」ザバッ

 

提督(・・・あれ? 今人形が艤装になって動いてるよね!?)

 

偶然立ち上がったら見えた島風の艤装展開方式。

 

島風は人形使い(パペッター)と呼ばれる能力を持つようだ・・・。

 

提督「あとは全員俺についてこい、出撃!!」

 

お供艦娘6隻「了解!」

 

 

 

提督「・・・自動操縦、自動着陸プログラムセット、よし、リミットまでに出よう。」

 

発動までのリミット2分に設定しているこの自動操縦システムも、わざわざ局長に組んで貰ったものである。

 

機器のセットを終えた直人は、操縦室からキャビン後部に向かう。

 

提督「・・・いくか。ストライダーフレーム、着装!」

 

サブでもっているスマートな外観のストライダーフレーム脚部艤装を装着、更に霊力刀『極光』を差す直人。

 

提督「ハッチ閉鎖リミット15秒っと。紀伊直人、いっきまぁぁーーーっす!!」バッ

 

直人はハッチ閉鎖タイマーを設定して、自らもハッチの外へと身を投じるのであった。

 

普段身に着けない、手の甲に魔法陣を刻んだ白い手袋を着けて・・・。

 

 

 

摩耶「・・・おいおい、自動操縦かよ。」

 

流石常に空を睨んで航空機と対峙している摩耶だけに、機体の状況洞察が鋭い。

 

榛名「もう、大丈夫みたいですね、一旦後退しましょう。」

 

摩耶「だな。全艦後退! 提督達の動きに合わせて退け!」

 

 

 

島風「島風、砲雷撃戦、入ります!」

 

連装砲ちゃん「きゅ~!」ドドォォーーーン

 

イ級「ガアアアアアアッ!」ダァンダァン

 

島風「おっ!」サッ

 

連装砲ちゃん「きゅっ!」ドドォォォーーーーン

 

イ級「ギュアアアアアアッ!!」

 

島風「おっそーい! どんどんいっちゃうよー!」

 

 

ザバァッ

 

 

島風「ん?」

 

提督「呼集(コール)!」

 

その俊足ぶりを生かして戦う島風の隣をすり抜ける直人。

 

その両手には2本のショートソード、左右の手の甲には薄い橙色の魔法陣が展開され、両肩の外側に波紋のような文様の魔法陣が右に3つ、左に二つと全部で5つ、そのうち3つに剣の柄が飛び出ている。

 

極光はまだ抜いていない。

 

提督「せいっ、せやぁっ、どりゃぁぁ!!」

 

次々と敵を薙ぎ倒す直人、砲撃戦をしろと言うツッコミはなしである。

 

リ級「・・・!」ドォォンドォォン

 

提督「ぬっ!」シュルッ

 

直人は敵の砲撃に反応して左手のソードを魔法陣に突き刺し、代わりに1本のダガーを引き抜く。

 

提督「はああああああっ、せやぁっ!!」ガキィィィン

 

そのダガーを砲弾に振り下ろす、敵弾は真っ二つになって直人の後方へ飛び去る。

 

提督「くたばれええええええええ!!」ザバアアァァァァン

 

直人が勢いよく先程のリ級に踏み込む。

 

リ級「!!」ドォォン

 

直人「はあぁっ!!」ヒュッ

 

リ級は砲撃、直人は突きを繰り出す。

 

 

 

 

 

直人「・・・!!」ピッ

 

砲撃は左ほほを掠め、

 

リ級「・・・!!!!」ドシュウウッ

 

直人の突きは、リ級の腹の真ん中を貫いた。

 

直人「ふん、そりゃぁぁっ!」ザシュウウウッ

 

リ級「ッ・・・!!」

 

体の勢いを殺さず乱暴に引き抜いたショートソードで、すれ違いざまにリ級の右脇腹を一閃する。

 

それだけで、事足りた。彼が毎日作り上げた白金製の剣は、種類こそ様々だがナマクラではない。そして、近接武器であれば、霊力の有無に関わらず“深海棲艦であれば”倒す事が出来る。

 

島風「は、速い・・・。」

 

そして戦いながらそれを見ていた島風も、思わず驚きの声を上げる。

 

天龍「そうさ、あいつの剣捌きは人間技じゃねぇからなっと!!」ザン

 

島風「天龍さん・・・。」

 

天龍「ぼさっとしてねぇで目の前の敵に集中だ。いくぞ!」

 

島風「()()()()スピードなら、負けないよ!」

 

 

 

川内「・・・。」

 

その戦いぶりを遠目で見ていた川内。

 

川内(・・・一筋縄では、行かなそうね。)

 

そう心の中で締めくくり、戦列に参加して行くのであった。

 

 

 

午前10時前 空母祥鳳周辺

 

 

祥鳳「敵機来襲!!」

 

五十鈴「対空戦闘は任せといて! 祥鳳さんは敵艦隊を!」

 

祥鳳「えぇ!」

 

五十鈴(こんな私を戦わせてくれた、今だけかもしれないけど、それでも全力で!!)

 

 

同刻 戦艦金剛付近

 

高雄「砲雷撃戦、開始!」ドオオオオォォォォーーーーーン

 

金剛「ファイヤーーー!!」ドドォォォォォーーーーン

 

大潮「大潮、行きます!!」

 

 

 

午前10時過ぎになると、敵前衛は殆どが瞬く間に潰滅に近い打撃を受けて潰走、残りも這う這うの体で交戦を続けている有様の中にあって、直人は6隻を従えて、敵中枢へと突撃を図っていた。

 

龍田「さぁ~て、死にたい船は何処かしらぁ?」ザシュゥゥッ

 

天龍「おらあああぁぁぁっ!!」ズバァッ

 

伊勢「全く、次から次へと!!」ズバァッ ドオォォンドオォォン

 

日向「きりがないな!」ザシュッザシュゥッ

 

夕立「より取り見取りっぽい!! ぽぉぉーーーーい!!」ザバババババッ

 

電「私達の家を壊そうとするのは、許さないのです!!」グシャアァァッ

 

提督「貴様ら深海棲艦が何度攻めて来ようとも、この島は我らある限り渡さん!! 横鎮近衛艦隊ここにありという事を、しっかとその目に焼き付けさせてやれ!!」

 

6人「おおおおおぉぉぉーーーーー!!」

 

斬り、突き、払い、殴りつけ、撃ち、薙ぎ払う。

 

7人がそれぞれの持てる全ての武器を使い、懸命な攻撃を続ける。

 

その事が、勝敗を決した。

 

デルタ「・・・モウ持タンカ、退ケ! 退クゾ!!」

 

 

 

伊勢「敵艦隊、退却して行きます!」

 

提督「よし、敵の動きに合わせこちらも退くぞ。全艦司令部へ帰投せよ!」

 

そこへいきなり通信が入る。

 

赤松「“よぉ~提督~、生きてたかぁ~?”」

 

中々な物言いである。

 

提督「松ちゃんか・・・流石にこの程度じゃ死ねんわい。」

 

加賀「“赤松大尉、その辺にしなさい。うちの子が失礼しました。”」

 

提督「松ちゃんなら一向に構わんよ。それより、状況は?」

 

加賀「“敵艦隊の動きに合わせ、敵の航空部隊も撤収して行きました。しかし、司令部の損害は無視できません。”」

 

提督「その様だ、報告は後で別に聞かせて貰う。今は休んでくれ。」

 

加賀「“分かりました。”」

 

提督「さて・・・戻るか。」

 

そこへ、敵を追撃する体制に移っていた島風が現れる。

 

島風「えー、追いかけなくていいの?」

 

提督「ダメだ、これ以上深追いしてもメリットはない、ここは退くんだ。」キッパリ

 

島風「はーい・・・。」

 

提督「さ、帰るぞー。」

 

日向「まぁ、そうだな。」

 

天龍「動いたら腹減ったぜ、朝飯まともに食ってねぇけどよ。」

 

提督「寝坊すんのが悪い。」

 

天龍「くっ・・・くそぉ、昼は目一杯食ってやる!!」

 

この日の朝実は天龍は夜更かしして寝坊してました。何やってんだよとぼやきながら直人自ら起こしに行ってたりする。

 

龍田「元気ねぇ~。」

 

伊勢「元気じゃなきゃ、大立ち回りなんてやってられないでしょう?」

 

天龍「そうさな。にしてもこの新人は鍛えがいありそうだな、魚雷を槍よろしく突き入れるなんざ、並大抵じゃできんぜ?」

 

提督「え!? 魚雷でパイルバンカー!?」

 

島風「ニヒヒ~♪」

 

はい、やってやがりました。陰でひっそりとパイルバンカー。

 

天龍「こいつは並のチビ共より足もはえぇ。島風だしそれもそうか。40ノットの俊足持ちだったからな。」

 

提督「そうだな~。しっかり鍛えてやるよう頼んどく。」

 

神通「心得ました。」

 

提督「・・・!!」ビクッ

 

唐突に姿を現す神通さん。

 

青葉「司令官、御無事ですか!?」

 

と、ブン屋青葉。

 

提督「・・・何で青葉がいるかは後で聞こう。どうした神通。」

 

神通「いえ、榛名さんから、様子を見に行くよう言われまして。」

 

・・・ふむ、指揮を執っていたのは榛名か。

 

提督「こちらは大事ない。すぐに戻るよ。」

 

神通「分かりました、では。」

 

・・・それだけかい。

 

青葉「司令官、お疲れ様です!」

 

提督「取り敢えず戻りながらいる理由は聞こうか。」

 

青葉「はい!」

 

こうして直人は戦闘を終え、取り巻く艦娘達と共に、司令部へと戻っていったのであった。

 

戦後に直人はこの時の戦闘について、青葉にこう漏らしている。

 

『マリアナ沖航空戦に於いて、戦闘に直接的な決着をもたらしたのは水上部隊であったが、そこに至るまでの道を拓いたのは、ひとえに母艦と基地の航空隊と、留守を良く守った艦娘達の尽力であった。』

 

 

午前11時7分 横鎮近衛艦隊司令部敷地内

 

提督「明石さん、どう?」

 

明石「うーん・・・工廠施設への損害は軽微です。ただ入泊設備と資源倉庫に爆弾が集中投弾されていたみたいで、その煽りで技術局“周囲”も酷い事になってます。」

 

提督「・・・どゆこと?」

 

明石「1発も直撃してないんです。どうやら当たりそうなのを全て撃ち落としたらしくて・・・。」

 

提督「だ、誰がさ?」

 

明石「主にワールちゃんですね。」

 

提督「ワールちゃんて・・・」^^;

 

ワール「誠にもって遺憾の極みね。」

 

明石「うっ、ワールちゃん・・・。」

 

噂をすればなんとやら、である。名の呼ばれ方に遺憾の意を示してはいるが。

 

ワール「はぁ、もういいわ。技術局に被害はないわ。それより酷いのは造兵廠とその隣のドック。入泊施設の打撃は主にそっちの事ね。」

 

提督「マジすか・・・。」

 

明石「はい、暫く提督向けの艤装用弾薬や銃弾の供給は滞るかと・・・。」

 

提督「いや、それについては気にしなくていい。命あっての物種であるという事を念頭に入れてくれ。」

 

明石「分かりました、復旧に全力を尽くします。」

 

明石の報告に続き、大淀が報告をする。

 

大淀「司令部施設についてですが、他に寮の一角が被害を受けた程度で、中央棟は辛うじて無傷、艤装倉庫も被害軽微です。」

 

でないと俺が困るわ、と心の中でぼやく直人。

 

提督「それは何より、窓ガラスの破損は折を見て修復でいい。まずは施設自体の修復に注力する様に。あと新人教育も徹底すること。」

 

大淀「了解しました。」

 

そう言って大淀も持ち場へ戻っていく。

 

飛龍「あっ、提督!」

 

提督「はぁ・・・まぁ、報告の雨だよな。」

 

飛龍「仕方のない事ですね、こんな事になっちゃいましたもの。」

 

代わってやってきたのは管制塔で航空隊を指揮していた飛龍である。

 

提督「航空隊の損失などはどうだった?」

 

飛龍「18機が撃墜され、数機がダメになりましたが、それ以外は大丈夫でした。ただ、飛行場周辺施設にダメージが出まして、駐機中の航空機が何機か。あと、バルバロッサはちゃんと降りました。」

 

提督「それは何より。」

 

飛龍「改めて提督、出頭ご苦労様でした。」

 

提督「ん、ありがと。飛龍こそ、防衛戦お疲れ様。」

 

飛龍「ありがとうございます。やれるだけやってみました。」

 

提督「それでいいと思う。不得手な事に全力を尽くすのもいいけど、出来る事には限度があるからな。」

 

飛龍「そうですね。さーて、まだまだやること一杯ですね。」

 

提督「そうだな、しっかり損害を修復しないと。」

 

飛龍「はい!」

 

飛龍共々一念発起していたのでした・・・。

 

 

司令部に何時もの様な賑わいはない。かといって瓦礫運びをしている艦娘も、最初から迎撃に出た艦娘の中では殆どいない。

 

どの艦娘も大小様々な損害を受けて、入渠待ちなのである。

 

辛うじてほぼ無傷で健在なのは・・・

 

響「はぁ・・・後ろに構え過ぎたかな。」

 

綾波「酷くやられましたねぇ・・・。」

 

長良「瓦礫片付け頑張ろ、綾波!」

 

扶桑「はぁ・・・まだまだ大変ね・・・。」

 

この4名だけである。

 

 

 

提督「手酷くやられたもんだ・・・。」

 

直人が考え事をしていると・・・

 

金剛「どうしたんデース? ボンヤリしてますヨー?」

 

金剛がやってきた。

 

提督「・・・瓦礫運びの方は大丈夫か。」

 

金剛「えぇ、ひと段落ついたところデース。」

 

提督「帰って早々ご苦労様だな。」

 

金剛「これ位なんてことはないデース。」

 

電「金剛さん、こっちも手伝ってほしいのですぅ~><」(涙目

 

こう言っちゃ悪いが可愛い、重い瓦礫を懸命に持ち上げようとして1ミリも持ち上がらないので涙目で助けを呼んでる構図とか可愛すぎる(By作者

 

金剛「oh・・・またあとでネ、テイトクゥ!」

 

提督「お、おう・・・。」

 

金剛は急ぎ足で電の元に去り、直人は何をしようかと考え、書類を処理しに執務室へと向かったのでした。

 

 

 

午後10時21分 提督私室

 

 

提督「疲れた・・・。」コトッ

 

直人はライトスタンドの明かり一つで机に向かい、手帳に日記を記し、ペンを置いた。

 

その日思った事などを書き留めておくものである。

 

この日の内容はこのようなものであった。(原文抜粋)

 

 

『5月27日

 

司令部が空襲を受け、所によりかなりのダメージも発生、

艦隊も再び壊滅したが、幸い沈没艦はいなかった。

土方海将の命でここに移転して暫くになるが、

最前線に立つ事は、

幹部会に対する私の影響力を削ぐことになりはせぬだろうか。

幹部会はいずれまた無茶な作戦を立てるだろう。

それにノーを言える者は、土方海将麾下の私以外いない。

明日は先の作戦の統合結果が発表される。

丁度明日の青葉の新聞にも載るだろう。

その文面に異を唱える事も、

幹部会への示威行為として有効なはずである。

しかし今の私に出来る事は、

極力敵の攻勢を抑えつつ戦線を押し上げる事のみである。

非戦論ではないが、無理な作戦は被害ばかり大きく、

故に反対せねばならぬのにそれが出来ないとは、

如何なものであろうか。

提督となって早一月、私の今の立場は、誠に変なもの也。』

 

 

直人は椅子から立ち上がって大きく伸びをする。

 

提督「・・・寝るか。」

 

その時、窓の方から風が吹いてきた。

 

提督「窓は閉めた筈・・・」

 

龍田「閉まってたわねぇ~。」

 

提督「!!」

 

その窓枠に、龍田が腰かけていた。

 

提督「・・・来るならせめて天井裏から来たらどうだ? 外から窓開けて来るんじゃない。」

 

龍田「それより、ちょっと耳に入れておきたい事があってね?」

 

提督「・・・?」

 

何かある事を察した直人は、次の一言を待つ。

 

龍田「今日司令部に着任した子達の中に、独立監査隊の刺客がいるわ。気を付ける事ね。」

 

提督「反艦娘派影の最先鋒から刺客か。諜報人員、つまり暗殺艦か。」

 

龍田「それも、相当に腕の立つ子ね。油断すると、“死ぬ”わよ?」

 

提督「・・・心得た。」

 

龍田はさらに続ける。

 

龍田「あなたが幹部会に明確な反抗意思を示した事で、独立監査隊と牟田口陸将に目を付けられたみたいね。」

 

提督「全く光栄な事だ、出来れば表舞台で有名になりたかったがね。」

 

龍田「フフ、そうねぇ~。」

 

提督「つまり何があってもおかしくはない、という認識で宜しいな?」

 

龍田「えぇ。牟田口陸将は貴方を排斥する気よ。横須賀防備の任から解かれればただの一司令官に過ぎない。艦娘は自分達には“殺せない”けど“記憶操作は”出来るから、あなた一人消せば済むと思ってるらしいわ。」

 

提督「成程ね。じゃぁ見回りはした方が良さそうだな、明日早速始めるとしよう。」

 

龍田「今日はしないの?」

 

提督「腕の立つ刺客だろう? 万全に近い状態で相手にしなければ。生憎まだ死ねんのだ。」

 

龍田「・・・じゃぁ私が今此処であなたを殺すとしたら、どうするの?」

 

軽い脅しであった。が、直人は答えを返す。

 

提督「・・・いや、それは無かろう。あってもこの場で即刻ねじ伏せる、それまでの事だ。」

 

龍田「・・・それは無い、そう言い切れないのが人の心よ。それを覚えておくのね。」

 

そう言い残して、龍田は窓の外へ飛ぶ。

 

提督「・・・。さて、寝よう。」

 

今は兎も角寝る事が先決、そう結論付けて、直人は床に就いたのであった。

 

屋上に不穏な気配を迎えながら・・・

 

 

 

「・・・。」

 

龍田「何をやっているのかしら?」

 

「・・・龍田。」

 

龍田「やめておきなさい? 気分次第では見逃してあげるけど、今夜はダメね。」

 

「いつから・・・あの提督の肩を持つようになったの?」

 

龍田「さぁね? でも、今夜やると言うのであれば、貴方を沈めるわ。」

 

「・・・いいわ。出直す。」

 

龍田「賢明ね。」

 

その晩の直人の命は、微妙な駆け引きで守られたのであった・・・。

 

 

 

5月28日午前10時 提督執務室

 

 

提督「話がある・・・会議室で?」

 

飛龍「はい。」

 

書類作業をしていた直人を突然訪問したのは、基地航空部隊司令官役である飛龍であった。

 

提督「また唐突に何故?」

 

大淀「そうです、提督もそこそこお忙しいのですよ? この時間は。」

 

提督「そこそことは心外な、こき使われてるのはどっちだ。」

 

大淀「サボろうとするのは貴方です。」

 

提督「うっ・・・。」

 

飛龍「お暇になってからで構いませんが、出来るだけ急いで頂きたいのです。敵情について重要な報告が。出来れば大淀さん無しで。」

 

大淀「え!?」

 

提督「・・・極秘か。役に立つのだろうね?」

 

飛龍「必ずや。」

 

提督「・・・了解した。そう言う事なら執務どころではないな。」

 

大淀「ちょっと、提督!?」

 

提督「大淀、完了分の書類、先に鎮守府本部へ送ってくれ。分割である事は通達。」

 

大淀「え、えぇ!?」

 

金剛「アノ・・・ワタシハ・・・?」(汗

 

提督「っ・・・・・・・・・。」(焦

 

飛龍「・・・・・・、・・・? ・・・!」ニヤッ

 

飛龍は納得したらしい、と言うより、どうやら山口中将の仕業らしい。

 

提督「・・・はぁ。」

 

飛龍「分かりました、金剛さんも来て下さい。」

 

金剛「了解デース!」

 

提督「~~・・・はぁ~。」

 

察せられてしまった事に頭を掻く直人であった。

 

提督「・・・いこっか。」

 

飛龍「はい。」

 

 

 

午前10時7分 食堂棟2F 会議室

 

 

提督「それで?」

 

飛龍「はい、この地図を見て下さい。」

 

机4つを合わせた台の上には、サイパン南方、西はパラオ、南はミクロネシア南端、東はトラックに至るまでの範囲の地図。そこには、サイパンを始点として、27カ所の×印に向かって矢印が伸びていた。

 

提督「これは・・・」

 

飛龍「大淀さんには、哨戒と索敵と偽って出した、敵地偵察の記録地図です。結果も資料にまとめてあります。」

 

提督「成程、だから極秘だったのか。」

 

納得した所で飛龍が説明を始める。

 

飛龍「偵察したのは、名も無い島や環礁が大半でしたので、そこにある呼称から、仮称を取ってあります。また、艦攻艦爆用の増槽の試作品が一揃えだけ御座いましたので、それを使いトラック棲地まで偵察を行いました。」

 

提督「随分頑張ったな、で、結果は?」

 

飛龍「まず敵の兵站です。敵は中部太平洋ではトラック島を始点とし、ブルワットアトールを中継してラモトレックアトールに至り、此処が第1の泊地です。更にナルカレクシー、ヤップ島へと通じ、ナルカレクシーが泊地能力のないヤップ島の停泊地を兼ねるようです。」

 

提督「敵艦隊の在泊状況は?」

 

飛龍「はい、報告を統合するに今回の来襲せる敵艦隊は超兵器級要塞艦、それも複数隻を伴い、大規模な空襲を行いました。そして、ストレインジデルタ級要塞艦複数が在泊していたのは、ウルシー環礁。護衛艦隊主力も在泊していたようで、更にラモトレックアトールにも集結する敵艦隊を確認したとのことから、この二つが今回の攻撃の出撃地と思われます。」

 

提督「成程。つまりここを叩けば、ヤップ島は孤立し、トラック島への活路を見いだせるやもしれん、という訳か。」

 

飛龍「そこから先は、提督にお任せいたします。この資料も、提督がお持ちになって下さい。」

 

金剛「出撃しまショー、提督。」

 

提督「ダメだ。作戦は考えておく。ありがとう飛龍。」

 

飛龍「いえ、私は出来る事をしたまでですから。」

 

金剛「提督!!」

 

提督「それでも助かった。ではな。」

 

飛龍「はい。」

 

直人は足早に会議室を去っていく。

 

金剛「提督ゥーーー!!」

 

それを金剛は慌てて追う。

 

飛龍「・・・。」

 

そしてそれを見送る飛龍。

 

飛龍「・・・やれやれ。仲がいいんだか、悪いんだか。」

 

多聞「無理も無い、まだ付き合いも浅いからな。」

 

そしてどこにでもいる多聞丸。

 

飛龍「ですね。行きますかー。」

 

そう言って飛龍も会議室を去るのであった。

 

 

 

5月28日午前11時20分 中央棟2F・提督執務室

 

 

提督「さて・・・ナルカレクシー環礁とラモトレックアトール環礁か。主力はナルカレクシー、であれば必然的にここに出向き叩くしかないな。」

 

執務室に戻った直人は、反撃作戦の立案に入っていた。

 

大淀「大小の損害は一両日経ずに修復できるとの報告もあります、少なくとも今日夜半に出撃すれば、夜明けと共に攻撃できるかと。」

 

提督「それもそうだが、俺が行かなければ制空権は取れんぞ?」

 

大淀「いえ、取れます。昨日彼女ら空母部隊が、それを証明したばかりです。」

 

蒼龍「そうですよ。ここは私達に任せて、提督は休んでいて下さい。」

 

提督「なぜ俺が後方で傍観せねばならない?」

 

蒼龍「えっ・・・」

 

その一言に蒼龍が困惑する。

 

提督「俺は確かに提督たる身、本来であれば後方で勝利の報を待つのみの存在だ。だが我が近衛艦隊はそうではないぞ、何の為の私の艤装であるのか、それを考えてもらうぞ。」

 

金剛「いえ・・・私達だけで行かせて下サイ、提督。」

 

提督が拒絶した所に金剛が食い下がる。

 

提督「俺は卑怯者ではないが臆病者でもないぞ金剛。部下を無責任に送り出し、挙句死なせたとあっては、俺のプライドがそれを許さん。俺も出るぞ。」

 

金剛「提督の気持ちはよく分かるつもりデス。ですが敗れたのは私達で、勝ったのは提督デス。私達に、私達の手による再戦の機会を、お願いしマス、提督!」

 

蒼龍「私も、やられたまま黙っているのは嫌です。提督は確かにお強いですが、その力に頼ってばかりいたら、私達は自分が自分である価値を、見出せなくなってしまいます。私達は艦娘です。本来ならば、提督御自身の身も、お守りすべき存在です。そのお命をむざむざ砲火に晒し、お命を粗末になさらないで下さい、提督。」

 

提督「実績とは、弁舌によって成されるべきではない。弁舌による功績など、虚像すら入り乱れるものだろうが。実績は己が実力によって勝ち取るべきものであって、舌先三寸で作り出すものではない!」

 

直人も譲らず食い下がる。

 

蒼龍「だとしても御自重下さい、提督。」

 

金剛「たまにはゆっくり息を抜いて、報告を待って下さい。きっと、皆で帰ってきますから。」

 

提督「・・・。」

 

直人は数瞬の間を置く。

 

提督「・・・分かった。勝手にしろ。」

 

直人もとうとう折れた。

 

金剛「いいんですカー!?」

 

提督「但し、俺は作戦立案はせんぞ、金剛。自分達の手で復讐戦をするのであれば、自分達の作戦でやって見せろ。言いだしっぺはお前らだぞ、いいな?」

 

金剛・蒼龍「はい!」

 

金剛と蒼龍が執務室を後にする。それを見送る直人の心境は妙なものだった。

 

提督「はぁ~、子を持つ父親ってのは、こんな心境なのかねぇ。」

 

何を言っているんだこいつは。

 

大淀「提督、宜しかったのですか?」

 

提督「ん? 何かおかしなところでもあったか?」

 

大淀「あれだけ出撃すると仰っていたのに、金剛さん達に丸投げされてしまいましたが・・・。」

 

提督「あぁ、いいさ。金剛の言う通りだ。それに、あいつらにも超兵器と戦う経験が、今は必要なんだ。榛名達も一度は敗れた。が、それを糧に勝利し、明日への経験に繋げて欲しいのさ。」

 

と、取り敢えず理由だけ付ける直人であった。

 

 

 

そして、日が暮れた。

 

5月28日午後9時41分、残存艦艇の総力と、修復の終わった艦合せて約40隻が、いそいそと司令部を離れ南西へと去った。

 

 

~提督執務室~

 

提督「・・・いったな。空母は総力編成か。」

 

大淀「夜間空襲を仕掛けると聞いています。」

 

提督「・・・照明弾でも落とすのか?」

 

大淀「そこまではちょっと・・・。」

 

提督「そうか・・・。」

 

因みに、第2次大戦中空母艦載機による夜間空襲と言うのは例がない。日本の芙蓉部隊の様な、艦上機を用いていた夜襲専門部隊こそいるが、芙蓉部隊は地上航空部隊である。

 

空母艦載機隊はもっぱら明るい内に動くのが基本であるとされていた。でないと洋上であるが故に航法が出来ないからである。(着艦に支障をきたす上夜間発着が潜水艦の標的になりやすくなってしまうのも理由の一つである。)

 

提督「さて・・・そろそろ見回り準備した方がいいか。」

 

大淀「見回り、ですか?」

 

提督「幹部会が何をするかなんぞ分からんからな。」

 

大淀「・・・お気をつけて。」

 

提督「うん。」

 

直人は急ぎ足で執務室を去っていった。

 

 

 

午後11時7分 食堂前

 

 

提督「ふぅ~・・・冷えるなぁ・・・。」

 

バッチリ放射冷却しまくっている夜遅くに司令部を巡回する直人。

 

その手には、昨日身に着けていた白い手袋が。

 

提督「極光か・・・。つくづくいい響きだ。」

 

だがこの気配・・・なんだ・・・?

 

直人は心の中に疑念を抱きつつ、見回りを続ける事にした。

 

 

 

襲撃は突然であった。

 

 

午後11時11分 司令部裏ドック

 

 

提督(気配が強くなった・・・)

 

 

ヒュオオオッ・・・

 

 

何かが空を切ってこちらに飛んでくる。

 

提督「!!」ジャキィン

 

直人はそれを鋭く察し、抜刀術で迎え撃つ。

 

ガシイイィィィィーーーー・・・ン

 

何かが極光にぶつかり、その鋭い剣閃で何かを弾き飛ばしたのが直人には分かった。

 

提督「・・・誰か。」

 

直人は黒フードの相手に問う。

 

「紀伊直人、幹部会の命により、貴方を始末するわ。」

 

提督「その声の響き・・・!」

 

直人には正体が分かった。

 

「覚悟・・・!」ダッ

 

相手の手にはクナイと短刀。対して直人は太刀である極光。

 

どちらが有利であるか、これは興味深い応用問題である。

 

一見すると、レンジで勝る極光が有利に見える。が、刀と短刀では取り回しや重量が異なる。さらにクナイは斬り合いより投擲した方が効果が出る武器である。

 

身軽さに劣る刀である極光を持つ直人は、常識的に考えれば最初の一太刀で決めなければならない。

 

提督「・・・そのツラ、見せてもらうぞ!」チャキッ

 

直人は牙突の構えを取る。

 

提督「ハァッ!!」ダァン

 

一瞬で相手の間合いに、そして、直人はコンパクトに相手の首筋を狙う。

 

「!!」

 

黒フードの相手は慌てて回避しようとする。

 

 

スパァッ

 

 

―――パサッ

 

 

提督「・・・。」ニヤリ

 

二人がすれ違って少し進んでから静止する。

 

相手の背後に、フードが落ちた。

 

提督「・・・成程、お前だったか、川内。」

 

川内「っ・・・!」

 

川内はフードを切り落とされたことに気付く。

 

提督「成程、人は艦娘の記憶を操作するには至っていないが、偽の記憶や人格を『疑似的に植えつける』事は出来るからな。」

 

イメージとしては、川内の記憶や人格に覆いを被せて偽の人格をその覆いに植えつけるイメージ。直接操作は出来ないが覆いを被せて欺瞞する事は出来るって事ね。

 

川内「・・・いつから私だと?」

 

提督「・・・正直、龍田の言を信じたくは無かったよ。刺客がいると聞かされた時、心の中で皆を信じていたのに。」

 

川内「存外、甘いのね。」

 

提督「たまに言われるよ。」

 

川内「・・・正体を知られた以上、死んでもらう。」スッ

 

提督「・・・全く、本当のお前を見てみたいものだな。」チャキッ

 

数瞬の沈黙、互いの間をそよ風が吹き抜ける。

 

提督「はあああああああああっ!!」ダッ

 

川内「やあああああああああっ!!」ダッ

 

一瞬早く直人が動く。

 

 

ガキィンキィンキィンキィンキィンキィンキィン・・・

 

 

互いの刃をいなし合う。直人の剣の腕が、此処で冴え渡った。

 

提督「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ・・・」ヒュヒュヒュヒュッ

 

直人の独特な呼吸リズムによって繰り出される刃は、まるで刀の重量を無視したかのようなスピードで、短刀とクナイを全て受け止めいなしていく。

 

時に持ち替え、時に回転させてひたすらに振るう。

 

川内「・・・!! なんて強さ!」ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン

 

川内の短刀も唸りを上げて直人の急所を狙う。

 

提督「余り舐められても、困る!!」ヒュバァッ

 

川内「!!」

 

その川内の至近で放たれた霊力刃、回避は不可能。

 

川内「っああああぁぁぁぁぁぁっ!!」ドシャァァッ

 

吹き飛ばされた川内は、艤装倉庫裏の壁にぶつかりようやく止まる。

 

提督「ふぅ・・・。こんな立ち回り二度と出来るかっての。」シャァーッ、チャキィン

 

納刀する直人。実際直人はこれ以降、太刀で至近距離戦はしなかったと言う。

 

川内「くっ・・・。」

 

しかし川内に傷は無かった。服を切り裂かれ肌は露わになっていたが、目立った傷は無い。

 

提督「・・・立てるのか、これは驚いた。」

 

龍田に食わせた裂衝蒼破刃もどきでもあるまいし。

 

川内「なんの・・・まだよ、まだ終わらない。」

 

提督「・・・はぁ、仕方ない。俺の秘術を一つ、披露しよう。」キュッ

 

直人は手袋をはめ直す。その魔法陣は、赤色に煌いていた。

 

提督「結界制御術式弐式、解除。白金千剣重複発動。」

 

直人は白金千剣にある程度の機能制限をかけている。その一つが、『白金千剣の重複発動』である。デメリットがある訳ではなく、単純に魔力消費が激しい為で、その術式を刻んであるのが、この白い手袋である。

 

術式解除をしない状態で輝く色は薄い橙色である。

 

提督「さて・・・足利幕府14代将軍足利義輝はその死に際、己の収集した名刀を全て畳に突き刺し、1本ずつ引き抜いて敵を斬り、切れ味が落ちればそれを捨て新たに畳より引き抜いて戦ったと言う。」

 

川内「・・・。」

 

提督「それに比するかはさておき、一芸披露仕る。来い!!」

 

川内「おおおおおおおおっ!!」ダッ

 

川内は直人に迫る。その直人の背後左右には、左右5本づつ、剣の柄が魔法陣から引き出されていた。

 

提督「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

直人がその諸手で背後の剣を左右1本ずつ手に取る。

 

そこからはもの凄い技量を見せた。

 

 

ガキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ・・・

 

 

直人は素早さを増した川内の動きに完全に同調し、一撃斬っては取り替え、更に一撃切って取り替えると言う芸当で、凄まじい勢いで斬撃を刻み始めた。

 

余りの速さに、音が連続して聞こえるほどの速さである。

 

川内「なんてっ・・・!!」

 

なんて強さ、その後ろ半分は声に出なかった。

 

提督「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ

 

川内もこの速さには付いて行けず、徐々に掠り始める。

 

切られた髪が舞い、服が浅く斬りつけられる。

 

川内「くぅっ!!」バッ

 

堪らず川内がバックステップを打つ。

 

提督「はぁっ!!」

 

 

―――――二刀十字斬!!―――――

 

 

直人はショートソード二本で川内の身を十字に斬り裂く。

 

川内「うああああああああああっ!!」ザザザザァァァァァァーーーッ

 

気付けばいつの間にか、中央棟の前のロータリーにまで来ていた。

 

提督「・・・全く、これで倒せれば、苦労は無いんだが。」

 

川内「やるな・・・。」ザッ

 

川内は立ち上がる。

 

服と呼べるものは、もはやほとんど原形を留めていないが、頭から血が流れている以外、大した外傷もない。

 

提督「・・・艦娘に人間は殺せるが、『人間に艦娘は殺せない』てのは、些かフェアじゃないよなぁ・・・。」

 

『近接武器であれば、霊力の有無に関わらず“深海棲艦であれば”倒す事が出来る。』

深海棲艦を倒す際、正の霊力があれば有効打を与えられるが、無くても倒す事は可能である。

では艦娘相手にこれを行うとどうなるか。

 

 

艦娘に有効打を与えられるのは負の霊力であるが、これは純粋な力でなくてはならない。つまり、エンチャント(付与)では完全な負の霊力とは言えず、威力が大きく削がれる。

 

更に、霊力を持たない武器では、艦娘にダメージを与える事すら難しい。打撃であればまだしも、銃撃や斬撃ではほぼ無力化されてしまうのである。打撃であっても、致死に至らしめる事は出来ない。霊力を纏わせた剣でも、致死に至らしめる事は不可能なのだ。

 

失血死ならどうであろうか? 正直なところこれもかなり難しい。艦娘の回復力(彼女らに言わせればダメコンだが)は人間よりもはるかに優れている為である。即ち艦娘を殺せるのは深海棲艦だけであり、深海棲艦を殺せるのもまた艦娘のみである、と言い切れる部分がある。最も深海棲艦はヒトでも倒す事が可能ではあるが。

 

川内「人間がここまで強いなんてね・・・。」

 

提督「生憎その辺のごろごろ転がってるような徴用提督と違って、俺は鍛えてるんでね、人並み以上に。」

 

川内「いいじゃない・・・その方が殺し甲斐がある。」

 

提督「なら、一撃で決めさせてもらおう。」

 

 

―――――艤装へのバイパスライン解放、F武装とのリンク、同調開始―――――

 

 

川内「・・・ならば、私の一撃、受けるがいいわ。」ダッ

 

川内が駆け出す。

 

提督「痛いかも知れんが、許せよ。」ジャキィィン

 

直人が鞘から極光を引き抜く。

 

その刀身は、純白の輝きを宿していた。

 

川内「覚悟!」

 

提督「フンッ!」ヒュバッ

 

直人は峰打ちで鋭く川内をかちあげる形で極光を振り抜く。

 

その瞳は・・・

 

 

――――紫の眼光を帯びていた――――

 

 

提督「いくぞ。」ダン

 

 

―――――同調完了、能力限定解放―――――

 

 

直人が空中の川内に向けて飛ぶ。

 

攻撃は一瞬であった。

 

 

―――――一突、二突、三突、四突!―――――

 

 

直人はサイコロの目の様に、突きを“重ねていく”。

 

サイコロの3の目を突く三突だけは左右逆にして。

 

川内「!!??」

 

 

―――――突技・蝉時雨!!―――――

 

 

その瞬間、サイコロの5の目を突く様に、10の正負混合の霊力突きが同時に襲い掛かる。

 

その向かう先には、川内がいた。

 

川内から見れば、一瞬で10回突きを繰り出したように見えたことだろう。

 

川内「ぐああああああああああああああああああっ!!」

 

川内の身体と四肢に全て突き刺さる。

 

提督「フッ。」スタッ

 

川内「くぁああっ!!」ドシャアアアァァァァァッ

 

川内は今度こそ崩れ落ちた。

 

大淀「何事ですか提督!!」

 

そこに大淀と乱闘の音を聞きつけた一部の艦娘が駆けつける。

 

祥鳳「川内さん!?」

 

扶桑「提督、一体何が?」

 

山城「抜刀している!?」

 

提督「はぁ・・・はぁ・・・大淀。」

 

大淀「は、はい?」

 

状況が呑み込めない大淀に直人が毅然とした声で命じた。

 

提督「・・・こいつを・・・川内を・・・地下牢に閉じ込めておけ!!」

 

大淀「は、はい!」

 

地下牢と言うのはこの場所を新造した際に新たに作ったもので、中央棟の真下にあり、その入り口は大淀の無線室にある。なお書籍で読んだ地下牢を模造錬金したものである。

 

提督「扶桑、山城、今すぐ連行しろ。」

 

扶桑「は、はい・・・。」

 

大淀「だいぶ傷付いてらっしゃいますよ?」

 

大淀が川内を見て言う。

 

提督「修復剤を薄めてぶっかけておけ。」

 

大淀「は、はぁ・・・。その代わり、しっかり訳は話して頂きますよ。」

 

龍田「提督は殺されかけた・・・それより他に説明が欲しいかしら?」

 

大淀「・・・どう言う事ですか?」

 

容易ならざる言葉に、大淀の表情が真剣になる。

 

提督「川内は刺客だったんだ。幹部会のな。」

 

大淀「えぇ!?」

 

提督「神通になんと言えばいい・・・?」

 

局長「ナニカト思エバ、川内ハ人格矯正サレテイタノカ。」

 

提督「・・・唐突に現れんで下さい。」

 

いきなり現れたのは局長と雷である。

 

提督「雷、出撃はよかったのか?」

 

雷「金剛さんが、司令部に医者がいないと困るだろうって。代わりに白雪ちゃん連れて行ったわ。」

 

提督「・・・あれま、大丈夫かな―――?」

 

白雪は周囲に比べ戦闘技量が一段劣る部分があり、普段後方勤務が多く、哨戒もそれに合わせ融通しているのだ。

 

雷「―――川内の人格、元に戻せるわよ。」

 

提督「・・・おう、マジかよ。」

 

相変わらず微妙にチートじみているぞ技術局!

 

雷「如月ちゃんが人格矯正を無効にする装置を発案してて、出来上がってるのよ。」

 

提督「・・・成程、欲しいのは実働データか。だいぶ染まって来たな雷よ。」

 

雷「失礼ね。欲しがってるのは如月ちゃんよ。」

 

提督「冗談冗談。」^^

 

雷「もうっ・・・!」

 

緊張が解けたおかげかジョークが飛び出した。

 

川内「紀伊直人・・・。」

 

そこに川内が直人に呼びかける。

 

川内「一つ教えて・・・さっきの一撃、あれは一体・・・?」

 

提督「・・・単なる手品さね。」

 

直人が使ったのは、単なる手品などと呼べる次元の芸当ではない。

 

 多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)――――『現象を複数の平行世界からひとつの世界に取り出す』魔法に最も近い魔術の一つ。

つまり、現実の自分が、横に剣を払ったとする。すると並行世界ではそれが同じになるとは限らず、縦に両断したり、斜めに切り払ったりなど、様々な現象が起きている可能性がある。

 

キシュア・ゼルレッチはそれらの事象を“こちら側”に呼び出す現象の事を差す。つまり、蝉時雨を放った時、極光は1本ではなく10本に増えていた、と言うのが正しい見方である。彼はそれを、艤装―――Fデバイスが超兵器機関の力を起源とする事を利用し発現させたのだ。

 

川内「・・・へぇ・・・あなた、凄いのね・・・。」

 

提督「こんなとこで提督やってる奴が雑魚でどうする。行け。」

 

扶桑「はい。」

 

直人は厳しい口調で命ずる。川内は扶桑と山城の二人がかりで牢へと運ばれていった。

 

提督「・・・雷、如月にこう言ってやれ。『新装置のモルモットを用意した』とね。あいつならこれで通じる筈だ。」

 

雷「モルモット呼ばわりするのね・・・。」

 

提督「殺されかけて怒ってないと思う?」^^#

 

マジギレである。

 

雷「・・・さ、流石に思わないわね。」^^;

 

提督「結構。明日の朝にでもなったら伝えてやれ。」

 

雷「はーい、おやすみ~。」

 

局長「サテ、私モ戻ルカ。」

 

提督「おう、おやすみ。」

 

今日は珍しく何もしない局長、さっさと退散。

 

大淀「提督、大丈夫ですか?」

 

提督「あぁ、なんとかな。」

 

 

ビリッ

 

 

大淀・龍田「!?」

 

提督「!!」

 

音に気付き直人は反射的に左腕を見た。2種軍服の左袖が中ほどから半分切り落とされかけている。

 

大淀「・・・その袖・・・。」

 

提督「・・・最初の一撃の時か。初めて掠られたな、これで。」

 

龍田「流石川内ちゃんねぇ。」

 

提督「・・・正体知ってるなら教えてくれりゃよかったろうが。」

 

もっともらしい事言って見る。

 

龍田「未遂じゃ責任取らせにくいでしょぉ~?」

 

提督「・・・おま、実行に移して罪を確定させようとしやがったのか、俺が死んだらどうする。」

 

龍田「あなたが川内ちゃん程度の相手で死ぬような弱さなら、独立監査隊には勝てないわよ?」

 

提督「・・・。」

 

黒い、こいつどす黒い。そう確信した直人であった。

 

 

 

5月29日午前8時 提督執務室

 

 

青葉「では私はこれでー!」

 

提督「お疲れさーん。」

 

 

バタン

 

 

提督「さて、どんな発表したのかな?」バサッ

 

一悶着あった翌日、直人は執務室で青葉が手掛ける横鎮新聞の1面を見ていた。

 

提督「・・・。」

 

1面は、真珠湾棲地攻撃の公式発表であった。端的にかいつまむとこの様になる。

 

「今回の敵地攻撃には4万数千個艦隊/320万隻以上(1個艦隊80隻換算)が参加し、およそ17万隻程度が沈没したが、代償に敵泊地潰滅の大戦果を得た。艦娘達は世界の平和の為に敢えて命を投げ打ったのである。この戦果に全国の有志が提督に志願する事を期待するものである。」

 

提督「・・・ふざけてやがる。」

 

大淀「・・・?」

 

提督「これを見ろ大淀。命を落とした艦娘に対する哀悼の意がまるで示されていない。」

 

大淀「・・・確かに・・・。」

 

提督「提督の数が足りんのはよく分かる。だがな、その有志を募るのに艦娘の犠牲をただの数値にしていいという法は無いんだ。民主主義国家が聞いて呆れる。大体今の政治家共の・・・」

 

 

 

~ここから先延々と完全な愚痴なので全カット~

 

 

 

提督「ふぅ、スッキリした。仕事仕事~。」

 

大淀「・・・。」(思わぬ本音を聞いてしまった・・・。)

 

普段言えないようなことを普通に言い切ってスッキリした模様。なお金剛さんは今日も遅刻中。(ただし今回の場合は帰投予定時刻に)

 

 

 

なお、この日の朝、地下牢から女の悲鳴が響き渡っていたと言うが、知る人は少ない。

 

 

 

午前9時 中央棟2F・提督執務室

 

 

如月「貴重な実働データサンプル提供、感謝するわぁ~♪」

 

直人は、川内の処置を終えた如月の訪問を受けていた。

 

提督「おめーも研究者気質に落ちよったかぁ~・・・。」

 

如月「失礼ね・・・まぁいいわ。川内さんは元に戻しておいたわ。これで良かったのかしら?」

 

それでよかったのか、その一言に思わず眉をひそめる直人だったが、構わず言葉を続ける。

 

提督「・・・あぁ。あとはじっくり頭冷やして頂くだけだしな。」

 

如月「別の疑似洗脳、かけなくていいの?」

 

提督「無益だ。人道主義にも反する。」

 

そう言下に言い切る直人であった。

 

提督「実働データが欲しいのは分かる。くれてやったのも俺だ。だが図に乗るなよ如月。川内はお前の実験台ではないぞ。問題解決の為の止む無き手段としてお前の力を借りたまでの事だからな。」

 

如月「・・・。」

 

提督「日本は人道主義、民主主義的国家だ。人を、艦娘を洗脳し意のままに操り、捕虜を虐待することなど認められる訳が無かろうが、それを理解するんだな。」

 

如月「・・・そうね。私達がいた、あの頃とは違うのね。」

 

 当時の日本軍は、連合軍兵士を鬼と呼ばわって銃殺すると言う事態がしばしばあった。伊号第8潜水艦も、イギリス商船を雷撃、撃沈し、その乗員に銃撃を行っている。

逆に言えば、雷と電が行ったように、連合軍兵士を救助する、と言う事態の方が稀有であったのかもしれない。では日本軍はどうであったか。

 アメリカ軍艦艇に救助された日本海軍艦艇の兵士は相応の数はいる。が、『生きて虜囚の辱めを受けず』という、陸軍の戦陣訓に影響されての事か、投降する者は少なかったと言う。

人命軽視の精神論国家が大日本帝国であったなら、人道的民主国家が日本国であるとも言えるだろう。

 

提督「これで納得してくれ。」

 

如月「・・・えぇ。分かったわ。では・・・」

 

提督「うん。ご苦労だった。」

 

如月は、執務室を退室した。

 

 

如月(・・・もう。今のを要約すれば、『自分は利用できうるものは全て利用する』という意味とも取れるわね・・・。詭弁とは、この事ね。)

 

 

提督(そうさ・・・利用できるものは利用する。でなければこの戦い、勝てはしない。俺がしなければならないのは、彼女たちに死を以て勝利させる事をしない事、彼女らを護る事だ、それに勝敗など関係はない。)

 

 

如月(いいわ・・・この事は聞かなかった事にしましょう。)

 

 

 互いの思惑はともかくとしても、如月も直人も、その言い分は明日の勝利を思っての事であったことに、異論を挟む余地はない。誰であっても、異論を挟む事は出来はしないだろう。

ただただ、考え方の相違が、生じただけである・・・。

 

 

 

午前9時41分、提督執務室に情報が入る。

 

 

大淀「提督! 艦隊が帰投しました!」

 

提督「そうか、戻ったか!」ガタッ

 

それを聞くなり直人は執務室を飛び出していったのだが。

 

大淀「あぁ、提督!! ・・・はぁ・・・仕方ないですね、あの人は・・・。」

 

 

 

午前9時48分 司令部裏ドック

 

 

提督「・・・金剛!」

 

金剛「テイトクゥー!」

 

横鎮近衛艦隊、帰投である。

 

提督「どうだった?」

 

金剛「沈没艦無し、敵超兵器全滅デース!」

 

提督「・・・!」

 

流石に予想しなかった大戦果に、驚きを隠せない直人。

 

金剛「・・・? どうしたんデース?」

 

提督「あ、いや・・・なんでもない。ご苦労様、金剛。」ナデナデ

 

 

金剛「っ! ンフフ~、頑張ったのデース///」^^

 

提督「あぁ、そうだな。よく頑張った。」ニコッ

 

金剛「サテ、損傷艦は入渠ドックへ、順番は守るのデスヨー!」

 

夕立「っぽい~。」><

 

提督「おや、夕立が被弾か、珍しいな。」

 

夕立「大破しちゃったっぽい~。いたた・・・」

 

金剛「敵にマークされたみたいデス、夕立さん。」

 

提督「そうか・・・そんな中で良くもまぁ帰ってこれたな・・・。」

 

金剛「今回も大暴れデシタ。」

 

提督「夕立、お疲れ様。ゆっくり休むといい。」

 

夕立「じ~~~っ。」

 

提督「・・・え?」

 

突然見つめられて首を傾げる直人。

 

夕立「私も・・・ナデナデして欲しいっぽい。」

 

提督「っ! ・・・はぁ。我儘だなぁ夕立は。」ナデナデ

 

夕立「っぽい~///」

 

・・・可愛い。

 

金剛「・・・フフッ。」

 

提督「・・・?」

 

金剛「さぁ、私は一休みするデース。徹夜で眠たいデース。」

 

提督「お、おう、おやすみ。」

 

金剛「おやすみデース・・・ふあぁぁ~~・・・。」

 

金剛は大あくびを掻きながら寮の方角へ去っていった。

 

提督「よーし、全員今日はもう上がっていいぞ! ご苦労様!」

 

全員「はい!」

 

揃って返事を返す艦娘達だったが、寮や入渠ドックへ向かう艦娘達の中から、朝潮が直人の前に進み出てこう言った。

 

朝潮「いえ、何かお手伝いさせてくれませんか?」

 

提督「え?でも、疲れてるんじゃ・・・?」

 

朝潮「いえ、大したことはありません。」ハァ・・・ハァ・・・

 

提督「・・・普段と息遣い、少し違う癖して何を言う? 休め。」

 

朝潮「っ! ですが―――」

 

提督「命令だ。今日は休め。手伝いなら明日してくれればいい。」

 

流石に疲れている艦娘に仕事を手伝わせるようなことは出来ない直人であった。

 

朝潮「・・・分かりました。」(まぁ、流石に疲れてはいますが・・・。)

 

無理は禁物、これ絶対。皆さんも疲労の付いた艦娘は、しっかり休ませましょう。

 

 

 

5月29日午後9時 中央棟2F廊下

 

 

提督「・・・。」

 

直人は、夜空に浮かぶ月を眺めていた。

 

金剛「oh、提督ゥ、何をしてるデース?」

 

そこに現れたのは金剛であった。

 

提督「まぁ、見ての通りさ。月を眺めていた・・・。」

 

金剛「そうデスカー・・・今日も綺麗デスネー。」

 

提督「あぁ、“月が綺麗だな”、金剛。」

 

「っ!?」///

てき面に赤面して驚く金剛。

(いざ言ってみるとちょっと恥ずかしいな。)

などと直人が思っていると、その間に直人の言葉を飲み込んだ金剛が、彼に言った。

「提督・・・“月はずっと、綺麗なままネ”。」

それを聞いた直人は思いを抑えきれず、金剛を抱きしめていた。

「金剛・・・本当によかった、帰って来てくれて。」

 

金剛「っ・・・勿論デス。私がいなくなったら、私の元から提督が、いなくなってしまいますから。」

 

提督「はは・・・浮気性なのばれてる?」(汗

 

金剛「とっくにばれてマース。」

 

提督「あはは・・・お帰り、金剛。」

 

金剛「ただいまデース、提督。」

 

月明かりの元で、思いを再確認する二人。

 

 

 

“月が綺麗だな”、その意味は・・・

 

 

 

―――“君を愛している”―――




艦娘ファイルNo.66

高雄型重巡洋艦 高雄

装備1:20.3cm連装砲
装備2:零式水上偵察機
装備3:61cm4連装魚雷

横鎮預かりから近衛艦隊に配属された艦娘。
横須賀防備艦隊で建造されたが、土方海将が直人の近衛艦隊に送るべく準備中に嶋田からの申し出があり、結局近衛艦隊に配備された。
特異点揃いの艦隊にあって珍しく凡庸な艦娘。


艦娘ファイルNo.67

古鷹型重巡洋艦 加古改

装備1:20.3cm連装砲
装備2:20.3cm連装砲
装備3:零式水上偵察機
装備4:13号対空電探

横鎮預かりから近衛艦隊に来た艦娘。
艦娘を酷使していたことで解雇された提督の傘下にいた艦娘。
なので人一倍休息に対する欲求が強い。


艦娘ファイルNo.68

祥鳳型航空母艦 祥鳳

装備1:96式4号艦戦(熟練)(対空+3 命中+1)
装備2:99式艦爆(熟練)
装備3:97式艦攻(熟練)

横鎮預かりから配属された艦娘。
横須賀防備艦隊で偶然建造された特異点持ちで、流石に土方海将が扱いかねた為、近衛艦隊に流そうと考えていた所へこれも嶋田からの要請で配属が決まった。
装備以外の特異点は無いが能力が他の同位体に比べて多少高く、伸びしろも多い。今後の成長に期待がかかる艦娘。


艦娘ファイルNo.69

川内型軽巡洋艦 川内改

装備1:20.3cm(3号)連装砲
装備2:20.3cm(3号)連装砲
装備3:隠密作戦用着(回避+10)

土方が嶋田から仲介されて直人に託した艦娘。8人の中で唯一横鎮預かりではない。
元は独立監査隊諜報部内で随一の技量を誇る最強の暗殺屋で、独立監査隊上層部の手によって疑似洗脳と擬似記憶置換の施術を施され、裏で暗躍していた。
独立監査隊独自のルートで入手した装備を持っており、それをそのまま近衛艦隊が譲り受ける事になった事はある意味での皮肉であろう。
嶋田の命により、『紀伊直人が反抗した場合即刻始末せよ』と言う命を受けて横鎮に送り込まれ、嶋田の直人殺害命令を受けそのまま近衛艦隊に潜り込むことに成功、着任2日目に動き出し、見回り中の直人を暗殺せんと試みるも失敗し逆に捕えられ、翌日疑似洗脳等の解除装置の実験台に供され、見事元の人格と記憶を取り戻す。
その戦闘術は超一流で、直人と一時互角に張り合うも惜敗した。


艦娘ファイルNo.70

長良型軽巡洋艦 五十鈴改

装備:20.3cm連装砲

横鎮預かりから近衛艦隊に転属された艦娘。
装備がない状態で横鎮に預けられたが、土方海将の横須賀防備艦隊には同位体が既にいた為、嶋田からの要請を受けて在庫余りの8インチ連装砲を装備させて直人に託した。
過去に何かあったようだ・・・。


艦娘ファイルNo.71

島風型駆逐艦 島風改

装備1:61cm5連装酸素魚雷
装備2:連装砲ちゃん(火力+7 索敵+2 回避+3 命中+4 照明弾機能 島風専用)
装備3(搭載数:2):ミニ連装砲ちゃん(火力+6 索敵+2 回避+1 命中+2 島風専用)

横鎮預かりから直人の元に配属された特異点持ち艦娘。
横鎮所属の提督が偶然建造してしまい、かつその提督が慌てふためいて横鎮に預けてしまった為、なし崩し的に土方海将が預かったのだが、嶋田の要請を受けて、直人なら扱えると信じ託された。
普通の艤装として連装砲ちゃんが一つと魚雷発射管一つがあり、その連装砲ちゃんの格納しているパペット「ミニ連装砲ちゃん」が、人形使い(パペッター)として生まれた島風の第3の艤装である。
更に島風の魚雷は霊力で編み上げた正の霊力の塊である為、恐ろしい威力を誇る。


艦娘ファイルNo.72

朝潮型駆逐艦 大潮

装備1:12.7cm連装砲

横鎮預かり、と言うより近衛艦隊向けに建造された駆逐艦。
特に何の変哲もない元気な子。


艦娘ファイルNo.73

特Ⅰ型(吹雪型)駆逐艦 叢雲

装備1:12.7cm連装砲
装備2:61cm3連装魚雷

横鎮預かりだった艦娘。
何気に五十鈴と同じ司令部にいた艦娘で、その初期艦であった。
その司令部の提督が解雇されたことによって次々と同僚の艦娘が解体・退役されていくのを見送った後、五十鈴と共に近衛艦隊に着任した。
龍田と並んで槍の名人とも噂される。

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