目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

8 / 72
※注意 前話でもあった通り。

この二次物語。原作と結構ズレ在り。

原作知識不足露呈警報発令


『キース団長ぉぉぉ!?』



8話

 

 

 あれから、どれだけ時間がたっただろうか。

 

 イルゼと出会いリヴァイやハンジと出会って壁の中の町へ向かった。

 町では地下へ幽閉されてしまったが、当時の事を考えれば仕方がなかった事だし直ぐに出してくれたから別に問題は無かった。

 

 その後イルゼの情報の『巨人と会話をした』と言う事実を確認する為に、捕獲作戦を計画した。

 

 その作戦に参加する事になって団長のエルヴィンを紹介され、100もの人数を従え、部隊として共に再び壁外へと身を乗り出した。

 

 その結果、8人の犠牲があったが2体の巨人の捕獲に成功した。

 

 エルヴィンの話によれば、犠牲者の数が過去類を見ない程少ないもので、奇跡と言えるらしい。だけど 幾ら奇跡的な数であっても……誰かが死んだ事には変わりない。大小ではない。目の前で喰われてしまったから。

 

 人の死に慣れていなかったからか、身体ではなく精神に傷を負ってしまった。

 だけどイルゼのおかげで 立ち直る事ができて、今 この世界で生きている。

 

 

 アキラ・オーガミと言う名で。

 

 

 どうにも、漢字と言う文字は使わないらしく、オオガミよりもオーガミの方が発音もしやすいとの事でこうなった。僅かでも名前が変わった事で、イルゼが言っていた『新生』と言う言葉が更に身に染みたと言うものだ。

 

 調査兵団のリヴァイ班に所属する事になった。

 

 イルゼはハンジ分隊長が指揮する部隊へと変わった。色々と揉めていた様だがその辺りはよく判らないから省くとする。

 

 そして、数か月が経過した。

 

 

 

―――カン カン カン カンッ!!

 

 

 

 空に響くのは盛大な鐘の音である。

 

「ぁー……、何度聞いても 耳に響くな。この音」

「いい加減慣れろ。何度目だ? そのセリフ」

 

 アキラは 両耳を塞いでいる為、声は聞こえていないのだが リヴァイの口の動きで大体内容を把握した。

 

「ヤなこった。喧しいもんは喧しいし 耳に響く」

「……じゃあ、どうやって中の連中に帰還報告をするつもりだ? 毎度毎度お前が壁をよじ登るのか? 造作もねぇ事だろうし オレは別にそれでも構わねぇ。合図を送る手間も省ける」

「………流石にそれはヤだ。何だかんだで結構しんどい。判った我慢する」

「最初からそう言え」

 

 と言う事で今回も無事に帰還する事が出来た。

 

 今回の目的は巨人達の調査、そして今まで帰還できなかった仲間達の亡骸の確認とその遺品の回収。完璧に上手くいけた……とは言えないだろう。探索範囲を広げて回収する事は何点か出来たのだが、巨人の正体に繋がる情報は全く皆無だった。

 長距離の遠征がまだまだ出来ない段階だから、少しずつ調査範囲を拡大して絞っていく、と言うスタイルだから一度の成果自体はそこまで大きくないのが通常らしい。

 

 そして――扉が開き、潜って町に帰るとその都度大騒ぎだ。

 

 

『英雄の凱旋だ――! 行くぞミカサ!』

『……うん』 

 

 

 巨人たちが蔓延る死の世界へと赴くだけでも十分過ぎる程凄いというのに、調査を終えて帰ってくるのだから、上にある様に英雄視ものも少なくない。子供達からは羨望の眼差しで見られ、大人たちも声援を送っている。

 ……子の親とすれば 英雄視したりするのは構わないが、『調査兵団に入りたい!』と言いださないか 違う意味でハラハラしてしまったりするらしい。

 

『うぉぉ!! エルヴィン団長! お帰りなさい!!』

『今回もまた、巨人どもを蹴散らしてくれたのですか!?』

『一体何体倒してきたんですか!?』

 

 矢継ぎ早の声援の嵐である。

 もみくちゃされないだけ良いのだが……こちらもやはり中々慣れないものだ。

 

「うーん……」

 

 そっとフードで顔を覆い隠した。見られない様に。

 

「こっちもまだ慣れないみたいだね?」

「全くガキだな。いつまでも」

「……いつまでもって何だ! まだ 数回目だろ!? ……オレはこんな経験自体無いんだから仕方ないだろ」

 

 と言う声も凄く小さく、リヴァイはため息を吐いて ハンジは軽く笑っていた。

 

 

 そして目的の1つである兵士達の遺品の奪取。その遺品を家族達に返す事も今する。

 

 調査兵団の凱旋に、兵士達の家族も当然いて 皆その眼には涙を浮かべていた。

 

「……ブラウンの母親に、彼の所持品を」

 

 エルヴィン団長の指示で、荷馬車に乗せていた遺品を取り出した。

 上着に刺繍されている名前、そして腕章の数字で振り分けられている為 直ぐに持ってきた。

 

「……彼の所持品の中にあなたへの手紙が」

 

 それを手渡した。

 涙を浮かべてその胸に抱いて嗚咽を漏らす母親。

 その後は何度も何度も礼を言っていたのだった。

 

 

「………」

 

 無事に対面する事が何よりの成果だ、とアキラは思っている。部隊を率いる様な身分ではないから、勝手な事は言ったりはしないけれど。でも こう言う場面をもう何度も見ているから、改めて心に秘める事にしたのだ。

 

 

――目の届く範囲で 仲間を失いたくない。……誰も死なせたくない、と。

 

 

 異常な力を自分自身の力を過信する訳ではない

 途切れる事のない人達の街道。

 調査兵団である事を含めて エルヴィンの絶大な信頼と指揮力、そして 人類最強と呼ばれているリヴァイの存在もあって非常に人気だった。

 

 そして、その上……。

 

『エルヴィン団長の懐刀って噂の人は何処だっっ!?』

『リヴァイ兵長の片腕、って話も聞いたわよっ!? どんな人っっ??』

『今日こそ教えてくれーーっ! 人類最強の双璧をーーっ!!』

 

 いつの間にかアキラの事も広まってしまっていた。 

 そこまで騒がれるのは本当に得意ではない。だから 民衆の前ではまだ姿を披露した事が無いのである。

 

 今も必死に顔を隠している。……兵士達に紛れているから 見つけられなかった。

 

「いやぁ、リヴァイの声援よりも大きくなりそうだねぇ~」

 

 ニヤニヤと楽しそうに横で笑っているのはハンジだ。

 全く嬉しそうにしないアキラは、ジト目で睨む。

 

「そんなんいらん。……ってか オレの事どういう風に言ったんだよ。おかしくないか? こんな早く広まるなんてよ!」

「それだけ君には期待してるんだよ。団長もそうだけど、私もリヴァイもね」

「雇われ兵士な上、異常な力を持ってんだ。自分の意思や希望よりも優先される事がある。受け入れろ」

 

 リヴァイは別にどうとでも思ってない様子で飄々としている。まだまだリヴァイの方が声援が大きいのにも関わらずだ。

 

「はっ、オレの事 異常な力異常な力って何度も言ってくれるが、リヴァイだって大概だろうが。むちゃくちゃ動き回る癖に。あの装置、めちゃ難しいのによ」

「それはお前は立体機動装置を使ったのが数度だけで ただ経験が足りねぇだけだろ。そもそも 素手で戦えるから緊急離脱以外で殆ど使う必要ないだろ。無意味な事すんなって事で練習も無しで実践投入だったんだ。当然だ」

「それを踏まえても、リヴァイの動きは異常なの。お前こそその辺認めとけ!」

 

 2人の言い争いを傍から見ているハンジ、そしてリヴァイ班の面々は、ただただため息を吐いていた。

 

「……それで、班の皆はどう思う?」

「いやぁ、正直どっちもどっちかと……」

「アキラもスゲェって思ったよ。巨人をぶっ飛ばせるヤツなんざ、マジでいるとは思わないしな。それを踏まえても まだリヴァイ兵長が上だとオレは思うな。立体機動装置を自在に使いだしたら、判らねぇ」

 

 リヴァイ班のメンバーは皆 リヴァイの事を最大級に信頼している。性格にはいろいろとギャップがあったのだが、それを曇らせる程の力量が彼にはあるからだ。

 そんな中で、突然飛び級でもしたのか? と思える様に1人入隊してきた。当初は リヴァイだけじゃなく、エルヴィン団長、ハンジ分隊長も決めた事もあり 了解をしていたのだが 心情的にはなかなか納得しかねた。

 

 リヴァイ班は リヴァイ自身が指名して結成されたメンバーである。

 この場にいるメンバー

 

 ぺトラ・ラル

 オルオ・ボザド

 エルド・ジン

 グンタ・シュルツ

 

 4人に兵長のリヴァイとアキラを含めて現在6名。4人は地獄とも呼べる壁の外での戦いで何度も生き延び成果を残してきた。生き方をも学んできた。それ程のメンバーが集ったエリート集団だと呼ぶ者も決して少なくない。だからこそ、自尊心が少なからず高かったりする(主にオルオ)。

 

「リヴァイ兵長も勿論だけど。……アキラの力もやっぱり凄いよ。本当に凄い。……それに 私はイルゼを助けたっていう成果が一番大きいって思う。最後に頼れるのは 自分達の力を信じて振りぬく事だって。時には切り捨てないといけない事だってあるのに。アキラは それを覆した。戦えなくなったイルゼを守ったんだから」

 

 まだ 色々と言いあっているリヴァイとアキラを見て微笑むのはぺトラだ。彼女とイルゼは馴染みであり、色々と話しを訊いたのだった。(色々と羨ましがられたりもしている)

 

「……確かにな。……壁の外で1年も生活なんて、考えられねぇよ」

「1人だけでなく イルゼも含めてだからな。2人揃って生還するなんて やっぱ異常だよ」

 

 結論は最初から出ている。

 

 リヴァイもアキラも異常な強さだという事である。

 

 そして何よりも類は友を呼ぶとでも言うのだろうか、リヴァイとアキラは馬が合うとでも言うのだろうか、アキラが来てからと言うもの神経質で粗暴で…… 初めてリヴァイと接すれば 感じるであろうそんな姿は少なからず息を潜めている。よく話している。

 いつもよりも――表情が柔らかく見える。

 

「……騒がれたくねぇ割には随分しゃべって注目集めてるぞ、間抜け」

「あっ……。謀ったなリヴァイ」

「ただの自滅だ。アホ」

 

 周囲にもそれは影響を及ぼしている。

 人類最強の双璧は、周りにも安らぎをも与えてくれるというのだろうか、過酷な世界から生還した兵士達は安堵感と笑顔を齎してくれていた。

 

「(ふふ……イルゼが嫉妬する理由も 好きになる理由も、判るなぁ……)」

 

 ぺトラはそんな2人を見て 改めてそう思うのだった。

 

 色々とあって とりあえずさっさと戻りたい気持ちが全面に出ていたアキラは それ以上の交戦はせずに リヴァイから距離を取るのだった。

 

「全く。ほんと飽きないね? 2人は」

「あのアホが突っかかってくるだけだ」

「リヴァイにも原因はあると思うんだけどなぁ?」

「黙って進め。クソメガネ」

 

 今回の成果を中央に伝える為に 調査兵団たちは進む。

 

 巨人からこの世界を取り戻す為に……戦い続ける。

 

 

 

 

 

 

「でも、やっぱり信じられないなぁ。アキラが20歳だっていうの」

「あ、それ オレも思った。どーみても10代前半だろ? その顔は」

「あー確かに。これじゃ ウチの息子の方が年上にも見える」

 

 

 

 だが着実に近づいている。

 それは 今は知らない知る由もない未来の話。

 

 

「うっせーーっ、ウソなんかつくか! っていうか 実際の歳なんか判らんつったろーが!」

「お前の方が煩い」

「ぶっ! コラぁリヴァイ! 舌噛むトコだったぞ!」

 

 

 訪れる更なる修羅の世界。平和が崩れる足音。

 

 

「はぁ、ほんと小便くせぇガキだな」

「いつも舌噛んで無様になるオルオよりはよっぽど格好いいけどね」

 

 

 

 

 

 

 破滅の足音は 着実に近づいている。その事に この場の誰も気づく事は無かったのだった。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。