問題児に紅茶、淹れてみました(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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5話 箱庭インしました(嘘)

 そうして黒ウサギの話は終わった。

 

「ところでー……庇ってくれたのは嬉しいのですがぁ……」

 

 話し終わると、黒ウサギはしおらしくエミヤに語りかけた。

 

「そろそろ離して欲しいなぁーと思いまして……ああ!別に貴女様とくっついているのが嫌とかではごさいませんよ!むしろとても柔らかなものが頭に押し付けられて気持ちいいと言うか……心が落ち着くと言うか……白…様の気…が…………できたというかぁ…」

 

「ああ、すまないね。忘れていたよ。君の抱き心地がとてもよくて。つい……ね。」

 

「いえいえ!滅相もございません!またいつでも抱いてくれて構いませんよ!!ええ!」

 

 黒ウサギが叫んだ。それを聞いて自己解釈した問題児たちは、

 

「黒ウサギ(淫)ね。」

 

「エロウサギだね。」

 

「いやいや、エロウサギ(淫)だろ」

 

「だまらっしゃい!!」

 

(いや、君のその遊び人ような格好もどうかと思うがな)

 

 そう言って煽り始め、黒ウサギの突っ込みの叫びが周囲の森にこだました。

 

 ____________________

 

 

 その後一段落黒ウサギが興奮した状態から冷め、一同は黒ウサギの案内のもと、箱庭に向かっていった。

 

 

 森の中を進む道中。

 

「おい、お嬢様たち。俺はちょっくら世界の果てまで行ってくるから。止めてくれるなよ。」

 

「ええ。」

 

「わかった。」

 

 そう、十六夜が言い放った。

 黒ウサギは上機嫌で前を歩いて気づいていない模様。そんな十六夜と黒ウサギを交互に見るとエミヤはどうすればいいか迷った。

 

(十六夜を止めるのは悪いし、黒ウサギに言えば止めるだろうしな……さて……)

 

「十六夜。私も一緒に行こう。なに、別に監視しようと言うわけじゃないよ。ないとは思うが、君が黒ウサギたちと合流できないときのために "眼"は必要だろう。それと、二人は黒ウサギに伝えといてくれると嬉しい。」

 

「ああ、別に俺はいいぜ。」

 

「わかったわ」

 

「うん」

 

 十六夜は付いてくると言ったエミヤに了承し、残った二人はどこか興味無さそうに返事した。

 

「んじゃぁ、行くかお姫様。ちなみに俺は相当速いがついて来れるのか?それとも運んでやろーか?」

 

 そう言って十六夜は軽薄そうに手をワキワキさせてエミヤに尋ねる。

 

「安心して欲しい……とは言ってみたが、一応身体の調子を確認したいのでね。少し手加減してくれると嬉しい。」

 

 そう言ってエミヤは、十六夜のセクハラ発言に拒否の意思を返した。

 

「そうか。まあいいや。少し手は抜いてやるが…遅れんなよお姫様!」

 

 そう言って十六夜はコミカルな音とは裏腹に地面を足で砕き、飛んで行った。

 エミヤも彼に引き離されないよう、力強く地面を蹴って移動するのだった。

 

 

 ____________________

 

 森を抜けた世界の果て近くの川の周辺にて、エミヤと十六夜は立っていた。

 

「十六夜、君はかなり速いな」

 

「そーいうお姫様もな。なんだ?それがお姫様のギフトに関係あるのか?」

 

「そうではないよ。いや、貰ったという意味ではそうかもしれないが、まあこの身体そのものの能力さ」

 

「へぇ、詳しいことは知らんがギフトはまた別ってことか?抑えたとは言え俺の速度に着いてこられるなんて相当だな」

 

「そういう君のそれは、ギフトなのかな?」

 

「まあ、厳密には違うがそれの一端てところだな。」

 

「ほう」

 

(英雄並の速度と先のあの力がその一端か……十六夜は英雄の域に片足を突っ込んでるかもしれないな…………と言っても経験不足なので、片足程度だがな)

 

 エミヤはそう分析していると

 

「見つけましたよぉ!」

 

 先程の青髪が、急に緋色の髪に変わった黒ウサギが、憤怒の形相と共にエミヤ達が通ってきた森から凄い勢いで飛んで来た。

 

「あれ?黒ウサギ髪色ちがくないか?」

 

「ふむ……蒼かったあの髪もとても似合っていたが、その朱色もとても君に似合っているよ、黒ウサギ」

 

「あ、ありがとうございます………じゃなくて!何処まで来てるんですか!」

 

「世界の果てまで来てるんですよっと。そういえば黒ウサギ、お前もなかなか速いな。なんだ?箱庭の住人はみんなそうなのか?」

 

「い、いえ!箱庭広しといえど黒ウサギに勝る脚力を持つ生物は中々いないのですよ!」

 

「ふーん。道理で良い脚してると思ったぜ。」

 

「………黒ウサギ。彼は変態だ。気を付けなさい。」

 

「オイコラオヒメサマ?誰が脚フェチだ。どっちかっていうと俺は胸の方がだな………」

 

「やはり変態じゃないか。…こら、胸を触ろうとするんじゃないこの馬鹿が。」

 

 バシッという音と共にエミヤの手が十六夜の手をはたき落とした。

 

「ちっ」

 

 アホな会話をしているがその実、エミヤは内心では黒ウサギを誉めていた。

 

(多分、あの様子だと飛鳥と耀は箱庭に着いてから私たちの事を話したと思うが……それを考慮すればこの短時間で私たちを見つけ出すのは凄いな。獣のごとき敏捷さ。純粋な速さだけで言えばランサークラスの速さか………)

 

 そう黒ウサギを評価した。

 

「ま、まぁ、十六夜さんとエミヤさんが無事でよかったデス。水神のゲームに挑んでしまったかと思って肝を冷やしましたよ。」

 

「水神?」

 

「ーーーああ、アレのことかな?」

 

『まだ……まだ試練は終わってないぞ、小僧共ォ!!』

 

 川の水面で横たわっていた、身の丈三十尺はある巨躯の大蛇が勢いよく飛び出してきた。それは彼女の言う水神だった。

 

「水神……!ってどうやったらこんなに怒らせられるんですかお二人とも!?」

 

「いや、ここに着いたら急に出て来て『試練』がどうとか言い出したから、俺を試せるかどうか試させてもらった……まぁ、結果は大したことなかったがな」

 

「私が何かする前に十六夜が倒してしまったのさ」

 

『貴様ら……付け上がるな人間!我がこの程度で倒れるか!!』

 

 蛇神の甲高い咆哮とともに、巻き上がる風が、川の水を大量に吸い込むかのごとく、水柱を上げて立ち昇る。あの大量の水でできた荒れ狂う水流に巻き込まれたら最後、普通の人間ならば容易く千切れ飛んでいくだろう。

 

「十六夜さん!下がって下さい!」

 

「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺らが売って、アイツが買った喧嘩だ。部外者引っ込んでろよ。」

 

 そう十六夜は傲慢に似た面持ちで宣言した。

 

『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様らの勝利を認めてやる』

 

「寝言は寝て言えよ駄蛇。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者が決まって終わるんだ。」

 

(俺、ら?)

 

 私はもっと穏便に事を構えるつもりだったのだが…

 当事者たちが盛り上がっている中、エミヤは独りごちる。

 

『フンーーーその戯言が貴様の最期だ!』

 

 蛇神の雄叫びに応えて嵐のように川の水が巻き上がる。

 竜巻のごときその水柱は蛇神の背丈をも超えてなお高く舞い上がる。

 竜巻く水柱が三本。

 それぞれがまるで、化物が他を補食するかのように十六夜に襲いかかる。

 

「十六夜さん!」

 

 黒ウサギが叫ぶ。その時、黒ウサギと蛇神は十六夜が粉々になるのを幻視する。

 しかし

 

「はっ、しゃらくせぇ!」

 

 そう言い放って、十六夜は竜巻く激流の中、ただの腕の一振りで嵐をなぎ払った。

 

「嘘!?」

 

『馬鹿な!?』

 

「ほう」

 

 驚愕する二つの声と、感心するような声が一つ上がる。

 それは最早人智を超越した力だった。

 

「むっ」

 

「ま、中々だったぜオマエ」

 

 大地を砕くような爆音。地面を蹴って勢い良く胸元に飛び込んだ十六夜は、そのまま蛇神に蹴りを放った。

 それが当たれば、例えこの大蛇さえブッ飛ばされそうな威力のある蹴りだった。

 当たれば、のはなしだが。

 

「十六夜。この神は先の攻撃を防げば勝利を認めると言ったんだ。それにこの神も既に戦意は無い。」

 

 その瞬間、エミヤも同時に十六夜の目の前に接近し、彼の蹴りを鋭い蹴りで弾きながら言い放った。

 

「あん?邪魔すんなよオヒメサマ?これは俺の喧嘩だ」

 

「君はさっき"俺らの"と言ったはずだが?それに先に一撃いれたのは君だ。そして、この神も一撃のみと言ったんだ。フェアではないだろう?…………それとも、君は相手の戦いに合わすことが出来ないほど自分に自信がないのかな?」

 

 そう言ってエミヤは、美しい銀髪をたなびかて、不敵に微笑んでいた。

 

 

 




あれだね。
問題児っぷりを出す会話がわかんない

ちなみにエミヤさんはこのまま常識?人で行こうかと。

まあ、たまにキャラ崩壊させたいのですがw

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