問題児に紅茶、淹れてみました(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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久しぶりに更新!
エミヤちゃんのキャラが相変わらずぶれぶれなのでご了承下さい。てか口調が女と男で筆者が彷徨ってる。アレですわ、男の方思い出しちゃう。


アンダーウッド防衛戦

 アンダーウッド根本の上にて、エミヤとフェイスレスは座って流れる大洪水と夜空に光る星を眺めていた。

 

 あの後、ジンに決断の時間を与えるためにエミヤはレティシアと黒ウサギに彼を任せ、周辺の見張りをするためにこうして地上に上がってきたのだ。

 ちなみにフェイスレスは、「関係ないので私も上に上がってますね」と言って勝手に付いてきた。

 

「昼に見た景色も素晴らしかったけど……星の光に照らされた水飛沫も綺麗だね」

 

「そうですね。ですが、その星に照らされた銀色に輝く貴女の髪も綺麗ですよ」

 

「あ、ありがと……………前々から思ってたけど、君はよくそんなことが言えるね。いや、私が言えたことでは無いんだけど……」

 

 エミヤはフェイスレスの言葉に少し頬を染め、後半の声が小さくなりながらも返答を返す。

 

「君はアレだ。不毛だと思わないのかな?私のような男口調の同姓にナンパ紛いな台詞を吐いて。そう言うのは男性……はちょっとおかしいけど、異性に言うものではないかな?……まあ、私は男なんぞに言いたくないけど」

 

「そうですか?私は普通だと思いますけど。綺麗な人に綺麗ですね、と言って何が悪いのでしょうか?」

 

「いや、悪い訳じゃ無いんだけど……なんというか、そう堂々と言われると恥ずかしいと言うか……」

 

「恥ずかしいのですか?可愛い人ですね」

 

「…………」

 

 エミヤはこれ以上話すと、さらに墓穴を掘りそうなので黙ってしまった。その彼女ようすを見てフェイスレスはさらにおかしそうに微笑む。

 

(……なんというか、レティシアが大人の姿になったときも感じたけど、私はこの姿になってから年上の女性に弱いのだろうか?精神年齢も下がったような………年下や幼女には勝てるのに……)

 

 エミヤは、性別が変わったことによって起こった現象に落胆していると、微笑んでいるフェイスレスから声がかかった。

 

「ところで、あの場にいなくてよろしかったのですか?私が見る限りあの少年はまだまだ未熟。修羅場を潜ってきた貴女もいた方が、より確実だと思うのですが」

 

「ああ………まあそこはあの二人に任せるさ。箱庭の世界ではそれこそ私は未熟者。なら、余計な事を言ってこれ以上場を掻き回すより、こうして監視に就いていた方が良いんだよ」

 

「そうですか……」

 

 フェイスレスはそんなことは無いと思ったが、本人に何か考えがあるのならと、その考えを口に出さなかった。代わり別の話に切り替える。

 

「……やはり貴女がノーネームにいるのは勿体無いと思うのですが」

 

「そんなことは無いよ。確かに私は戦闘についてはそこそこ自信があるけど、英雄のような力があるわけじゃない。それこそ凡人の域を出ないさ」

 

「そうでしょうか?少なくとも下層では貴女に勝てる者などいないと思いますが………それに貴女は強力な(ギフト)を持ってるそうじゃないですか」

 

「頼まれれば造るよ?」

 

「フフッ……では、その時にお願いしますね」

 

 その時?とエミヤが疑問に思った直後だ。スゥーっと霧が何処からともなく視界を覆い始め、琴の音色が聞こえて来る。二人がその音の正体に気付いた瞬間、眼下に巨大な黒い影の集団が現れた。

 

「ッ、フェイ!これもギフトなの!?」

 

「………そうですね。どうやら相手は移動系のギフトを持っているようです。しかも瞬間移動並のギフト」

 

 フェイスレスは冷静に相手が持つであろうギフトに当たりを付けた。

 

 このような状況に慣れているフェイスレスの様子は、見ていてとても頼もしい。百戦錬磨のエミヤでも大規模の瞬間転移はほとんど見たことがないのだから。

 

 霧と巨人達が突如現れた異常に気付いたアンダーウッドの守り手達も、霧からうっすらと見える巨人達の数に気圧されながらも、雄叫びを上げて鼓舞の叫び声を辺りに響かせた。

 

「敵襲ー!!!」

 

「巨人共の侵略を許すなあああ!!!」

 

「「「GURAAAAAAAA!!!」」」

 

 味方と敵の雄叫びが一段と増していく中、フェイスレスもその戦に参加しようと腰に力を入れた直後だった。

 

「まったフェイ………何かおかしくないかな?」

 

「?それはどういう…………なる、ほど。身体の影響ですか」

 

 エミヤは身体の違和感に気付き、フェイスレスに待ったをかけたのだ。

 どういう事か、身体の動きが少し鈍いのだ。まるで動きを何かに阻害されているような違和感があるのだ。

 

「これは……霧の影響でしょうか?」

 

「いや、たぶん違うと思うよ。それなら巨人達も巻き込まれているはず。これは指向性を感じる物がある。この動きづらさ………そうだね。身体というよりも、霊格に何らかの抑制を掛けている感じだ」

 

 エミヤがその回答にたどり着いたのと同時に、味方である幻獣種の者達の悲鳴が辺りに響き渡った。

 

「ぐあッ!!」

 

「くそっ……意識が」

 

「GAAAAAAAA!!?」

 

「ヤバイね。味方が壊滅状態だ。気乗りしないがやるしかない」

 

 エミヤは弓を、フェイスレスは蛇蝎の剣を手に取り臨戦態勢に入ると、樹の根から飛び降りて手短にいた巨人達の群れに突っ込んでいく。

 

 二人の接近に気付いた巨人達だったが、彼等は声をあげることすら叶わずはその場で絶命する。

 一体は身体から首を飛ばされ、一体は脳天を撃ち抜かれる。

 

「「「「ブアアぁぁーーーーー!!!」」」」

 

 エミヤとフェイスレスによって仲間が殺されたことで、周りにいた巨人達は怒りを露にしながら二人に襲い掛かった。

 

「ふっ!」

 

「せあ!」

 

「ッカ…………」

 

 がしかし、凡百の巨人が二人の進撃を止められる筈がない。

 先頭にいる巨人から次々と二人の餌食となっていく。その被害が霧の中で加速的に増え、彼等の血飛沫が霧を赤色に染めていく。

 

「見ろ!あの二人がどんどん巨人達を減らして行くぞ!二人の後に続け!」

 

「「「GURAAAAAAAA!!!!!」」」

 

 二人の猛攻を見たアンダーウッド側の指揮官が守備兵の幻獣達を鼓舞する。

 

 逆に二人の参戦は巨人達にとって相当な士気の低下に繋がった。

 突如現れた二人の強敵に加え、敵の士気の上昇。何千といる巨人達もこれには堪らない。

 

 戦力で言えば拮抗しているのだが、やはりエミヤとフェイスレスによる巨人達の被害は甚大だった。

 防衛線を突破していた巨人達は数を減らし続け、どんどん押し返されていく。

 

 それを黙って見守るほど敵も甘くなかった。

 

『ーーーーーーー』

 

「ぁッ…………!」

 

「この音はッ…………」

 

 二人に襲い掛かる倦怠感と意識への揺さぶり。

 琴の音色が聴こえたかと思えば、それによって味方が一気に動かなくなったのだ。

 

 逆に、巨人達は琴の音色を聴いて動きが活性化される。

 

「くそっ、また…………ぐあっ!?」

 

「GIッ…………」

 

 動きが鈍った所を巨人達に再び蹂躙され始め、追い込まれていく。

 

 エミヤとフェイスレスも鈍る身体を叱咤させながら巨人達を倒していくが、それでようやく戦線を保っている程。

 これ以上被害が出ればアンダーウッドの防衛が機能しなくなる。

 

 

 

 それを危惧したエミヤはポツリと呟いた。

 

「…………虎の子を出すときが来たかな」

 

 彼女はギフトカードからとある装飾品を取り出す。

 それを天に掲げると、中に封印されているある少女を喚び出す言葉を告げた。

 

「さあ、君の出番だよアルゴル! 巨人達を殲滅して!」

 

 エミヤの宣言と同時に装飾品から光が発生する。膨張する光が辺りを埋め尽くした時、彼女は現れる。

 

 

「箱庭一の美少女、アルちゃんふっかーつ!!」

 

 

 紫色の長髪に、幼くも美しい容姿の少女が高らかに叫ぶ。

 つまり、いつものアルゴルであった。

 

 濃密な神性の気配が漂う少女が突如現れたことで、巨人たちの群れが一度その存在を確かめようと止まる。

 彼等巨人たちは知能が低い代わり、野生の面がとても強い。だから彼等は本能的に理解したのだ。あの存在は危険だと。

 巨人達が一斉にアルゴルの下へ押し寄せる。

 

「うえぇ! 筋肉ダルマ共がアルちゃんの美貌にアテられてめっちゃ集まってくる!? 絵面的にキッッツ!!」

 

「なら早く使えば?」

 

「ヤー君つめたーい……ま、呼び出された分の仕事はしちゃおっかな!」

 

 アルゴルの目が怪しく輝く。

 直後、霧を射すような光が霧の中を埋め尽くした。

 

 それは石化の呪いの光。浴びればどんな生物であろうと石と化す災厄の光だ。物体をも突き抜ける閃光を避けることはなど、不可能に近い。

 光の直撃を浴びた巨人達は、一人また一人と声を上げることもなく石と化していった。

 

 戦場から音が無くなり、気付いた時には霧も無くなっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれメドゥーサ。ありがとね」

 

「あ、また呼び方戻ってる。いい加減止めなよその呼び方」

 

 敵の居なくなった戦場を俯瞰したエミヤは、終わったことを確認するとアルゴルに労いを込めて声を掛ける。

 だがアルゴルは、エミヤが呼ぶ名前がアルゴルからメドゥーサに戻っていることに気づいて不満そうに返した。

 そんな彼女に苦笑しながら、エミヤは申し訳なさそうにする。

 

「んー……すまないね。でも君の本来の呼び名はそっちが本物でしょ? 私としては、君が醜い怪物とされた呼び名であることに違和感を感じてね。だって君、とても可愛いから」

 

「え」

 

 その一言に、さしものアルゴルも固まってしまった。

 あまりにも自然に褒められたせいなのか、かつてのブラウニーなせいなのか。

 とにかく直球で投げられた褒め言葉に、アルゴルは珍しく動揺してしまった。

 

「そ、そう…………まあ? アルちゃん超可愛いし? それに器も大きいから、ヤー君だけにならその名前で呼ばれても構わないっていうかぁ…………」

 

「ん、そっか。ならこのままメドゥーサと呼ばせてもらおうかな?」

 

 しかし唐変木な性格ゆえ、顔を赤く染めながらそっぽを向くアルゴルの様子など全く気付かないエミヤ。彼女は了承されたと言う意味以外はとくに考えもせず、言葉をそのまま受け止めてしまった。

 

「…………もういい。アルちゃん戻って寝る」

 

 それを見た彼女は再び不満そうな顔でそう言い残し、装飾品の中へと戻ってしまったのだった。

 

 





この先の物語、オリジナル展開マッハでいいでしょうか?
でないと書ける気がしない…………

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