今回は博士〜ズの様子を見て見ましょう
サトシたちが盛り上がる一方で、彼らはというと……
若者組がカロスリーグ鑑賞会を行なっている中、ククイ博士はオーキド博士とともに、サトシ宅にて、サトシの母ハナコの作ってくれたおつまみを食べながら、少しばかり語り合っていた。
「そうですか。サトシが」
「はい。家のことも色々手伝ってくれて、
授業でも一生懸命。下級生の面倒見もいいから、スクールでも大人気ですよ」
「それは良かった。サトシがいると、授業もおもしろくなりませんか?」
「確かにそうですね。いつでも全力体当たりで挑むので、とても見守りがいがあります」
ポケモンスクールやアローラ地方でのサトシの様子を話すククイ博士。オーキド博士は嬉しそうに耳を傾けている。
「しかし、あの子が学校に行くと聞いた時は、実は少しばかり不安もあったんじゃ」
「不安、ですか?」
「その通り。実のところをいうと、今はククイ博士に聞く限り、学校でも慕われているようですが、昔はそうではなかったのです。むしろ、ほとんど友達はいなかった」
「えっ、サトシが、ですか?」
にわかには信じられない、それがククイ博士の素直な感想だった。そんなのは、とてもサトシからは想像できないことだったのだから。
ククイ博士の知るサトシは、人やポケモン問わず惹きつける、不思議な魅力を持つ少年だ。初めての土地、初めての人間関係。それは少年が戸惑い、不安になるには十分なものだ。しかし旅をしていたおかげか、サトシは臆することなく、誰もに対してフレンドリーに接していた。その結果、今ではメレメレ島では、彼のことを知らない人の方が少ないほどだ。
「信じられないとは思いますがな」
「ええ、まぁ。一体どうして?」
「うむ。ククイ博士も今はサトシの保護者ですからな。その時のことを少しお話しするとしよう」
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実はこのマサラタウン、以前はポケモンの学校があったのです。いや、残念ながら、そちらのポケモンスクールほど楽しいものではなかった。基本的には知識を与えるためだけの場でしてなぁ。直接ポケモンと触れ合う機会は、ほとんど与えられていなかった。
わしもそのことが気がかりだったので、時折特別講座として、研究所にいるポケモンたちに会えるようにしていたのです。他にもサマーキャンプを行い、子供たちに自然を知ってもらおうともした。野生のポケモンと仲良くなれるようにしたくてのぉ。じゃが、やはり野生や他人のポケモン。子供達は少し離れてみることくらいしかしなかった。
そんな時じゃったよ。
あのサトシと出会ったのは。
最初に彼としっかりと話したのは、彼がわしのサマーキャンプに参加した時のことじゃった。その頃から明るく、他人思いな良い子でした。
しかし何よりもわしが驚いたのは、どんなポケモンに対しても、恐れることなく向き合おうとするその姿勢じゃった。
小さいポケモン、大きなポケモン、トレーナーのポケモン、野生のポケモン。そんな違いなど、彼は全く気にしておらんかった。どんなポケモンとも仲良くしようと、積極的に動いておったのです。そして、ポケモンたちもそんな彼を気に入ったのか、いつも彼を出迎えてくれた。
その後、孫と歳が同じこともあって、わしはサトシとの交流が増えました。まるでもう一人の孫のように思えるほどに。彼はいつもポケモンの話を聞きに来てくれたのです。
まだ学校にも通っていないうちから、熱心な子だ。そう思ってわしは、孫とサトシの二人に、ポケモンのこと、昔旅した時のこと、色々と聞かせたのじゃ。その時のサトシの目が、またキラキラしていてのぉ。わしも、彼に話をするのが楽しみになりましたなぁ。
そしてサトシは成長し、学校に通うようになった。ポケモンたちのことが大好きな彼は、人一倍トレーナーになりたいと思っておった。じゃが先にも言ったように、そこは理論やトレーナーとしてのルールばかりに重きを置いていたものでな。サトシにとっては、あまり面白くなかったようじゃ。
周りの子たちが立派なトレーナーになるために休み時間も勉強する中、サトシはいつも校庭にある、野生のポケモンのために解放されているスペースに行っておった。そうして彼はポケモンの友達を多く作っていったのじゃ。一体一体の知識は持っていなくとも、彼はポケモンたちに向かい合うように接し、ポケモンたちもそんな彼を受け入れた。研究者のわしも、彼のそのあり方に感銘を受け、最近はいろんなポケモンと体当たり気味に触れ合うようになりましたなぁ。
じゃが、そんな彼のあり方は、周りの子にはあまり理解されなかった。野生のポケモンはゲットするまでは危険なもの、ポケモンが手持ちにいないときは近づくべきではないもの、そう教えられていたからじゃ。もちろん、それが別に間違っているわけではありません。中には確かに気をつけるべきポケモンもいて、関わる時に注意が必要なポケモンもおる。じゃがその子たちには、野生のポケモンになんら恐れることなく接するサトシが、ポケモンたちに受け入れられているサトシが、変わり者に見えたのかもしれませんなぁ。
結果として、残念なことに、サトシは人間の友達は、ほとんど作ることができなかった。学校でもわしの孫以外の子とはあまり話さず、一人でいることの方が多かった。代わりと言うわけではないが、彼の周りには、ポケモンたちがいつもいた。
そして10歳のあの日、わしは旅立つ彼に最初のポケモンを渡した。彼といつもいる、あのピカチュウじゃよ。今でこそ、彼や周りの人間にもフレンドリーなポケモンになったが、サトシと出会ったばかりの頃はそれはもうやんちゃでな。事あるごとに電撃をサトシにも浴びせておった。
じゃが、サトシはわしの思ってた通り、ピカチュウと深い絆を結ぶことができた。旅の中でたくさんの出会いをして、ポケモンと、そして人間とも、絆を育むことができた。旅でできた仲間のことを嬉しそうに語るサトシを見ると、いろんな人の影響を受け、成長しているのが伝わった。その成長が嬉しくもあり、また、楽しみにもなった。
こう言っては身内びいきに聞こえてしまうかもしれんが、彼ほどポケモンを愛し、認めるトレーナーも、ポケモンに愛され、認められるトレーナーもおらんと思っておる。じゃが、そのために人間から浮いてしまったのも、事実。
彼が今、仲間たちとともに学校生活を楽しめているのは、彼が旅で色々経験したことも関係しているでしょうが、ポケモンスクールの授業が、彼にとっても、クラスメートたちにとっても刺激的なものだからだと、わしは思う。
ナリヤにも、そしてククイ博士、君にも感謝しておる。サトシのことを見守ってくれて、ありがとう。
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「オーキド博士は、サトシのことを、本当に大切に思っているんですね」
「それはもちろん。彼はわしの孫みたいなものであり、優秀な生徒でもあり、そして何より、永遠の友達ですからな」
「永遠の、友達……ですか?」
「はい」
チラリと、一瞬オーキド博士の視線が食器棚の上の写真に向かう。赤と白に緑のマークの帽子をかぶり、黒いシャツに青と白の上着。最初の旅の衣装を身につけ、仲間たちとともに笑い合うサトシの写真が、そこにはあった。
何度も思い出す、あの不思議な経験。
時を渡り、混乱した自分とその同伴者。そんな自分たちを、助けようと彼は動いてくれたのだ。
あの木の上、ともに眺めたあの美しい景色は、自分にとっての一生の思い出だ。
そして元の時間に戻り、研究者となった自分。その自分の前に、彼が子供の姿で現れたときは、なんという運命だったのだろうかと、驚き、そして喜んだ。もう2度と会うことはない。そう思っていた友人が、目の前にいるのだから。
だから、自分は見守ろうと思った。自分の友である彼を。彼に言われて関心を持った研究者としての仕事を続け、彼にとっての道標になりたいと。
彼とともに過ごした日々は、やはり楽しく、かけがえのないものとなった。姿や年こそ、自分も彼も違っていたけれども、それでも幼い彼は自分のことを友達のように思ってくれ、また、祖父のように慕ってくれた。
「サトシは、どんなに離れていても、友達なのです」
その言葉に、どれほどの意味を込めていたのかは、ククイ博士には分からなかった。ただ、その時のオーキド博士の表情は、研究者としてのものでも、サトシの保護者的立場としてのものでもなく、一人の少年のような表情に見えた。
なんか、全て伝えきれた感ないですけど、要するに今回は、
オーキド博士のサトシに対する想いについて、取り上げてみました
今回はオリ要素多目ですけど、その辺りはスルーで ^_−☆