ヒロインズみんな可愛いから描きがいありますね
サトシがアローラ地方に来てから、しばらくたつ。今日も元気にククイ博士の家を飛び出したサトシは、イワンコにあいさつをして、スクールへ向かった。ちなみにリーリエはマオが話があるとか何とかで、一足先に向かっている。
「今日も一日、張り切っていこうぜ、ピカチュウ」
「ピィカチュウ!」
「ん?あれは・・・」
海岸付近を通っていたサトシの目に見慣れた影が二つ入った。他に誰もいない砂浜の上でしゃがみこんでいる女の子と、青い体をしたポケモン。
「お~い、スイレン、アシマリ!アローラ!」
サトシの声を聴き、スイレンたちは顔を上げる。と、目に留まったのはアシマリが膨らませているバルーンだった。練習でもしているのだろうかと考えるサトシ。
「サトシ、ピカチュウ。アローラ」
「アウ、アウ!」
と、アシマリの集中力がこちらに向いてしまったためバルーンが破裂してしまった。こてん、と転がって海に落ちてしまうアシマリ。しかし何事もなかったかのように飛び出してくるあたり、さすがはみずタイプのポケモンである。
「ごめん!大丈夫だったか?」
「うん、アシマリなら大丈夫」
「そっか。じゃあ俺先行くな。また後で!」
「うん!」
アシマリに怪我がなかったことを確認して、サトシは先に学校に向かうことにした。何をしているにしても、自分たちがいては邪魔になってしまうかもしれないと思ったからだ。
学校につくと、すでにほかの四人は到着していたようだ。挨拶をしたサトシは自分の席でリュックを開けた。と、
「うぉっとっと!」
ころり、と落ちそうになったポケモンをキャッチするサトシ。言うまでもなく、つい先日仲間になったばかりのモクローである。本当にサトシのリュックの中が気に入っているらしく、隙あらばいつでも中に潜り込んで眠るようになった。サトシとしてはかわいいやつだな、と特に問題には感じていなかった。が、つい先日、そのことを知らなかったリーリエに、リュックから物を取ってほしいと頼んだ時にいろいろあったのはまた別の話。
「まったく。リュックの中で寝るときは気をつけろよ、モクロー」
そういっておきながらもモクローが起きないように、カバンの中身を取り出してからそっと入れてあげているサトシ。モクローの頭を優しく撫でている彼の父親のようなその表情に、約二名少し赤面していたがそれ以外は特に朝は何も起きず、いつも通りに授業が始まった。
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「明日の課外授業は、海のポケモンたちとの触れ合いがテーマだ。みんなで沖に出るぞ」
と、帰りのホームルームの時にククイ博士から連絡事項が伝えられる。周りを海に囲まれているこのアローラ地方、サトシも一度潜ってはいるが、それでも興奮せずにはいられなかった。
「さて、海といえばスイレンだ。明日はスイレンに、特別講師を頼んでいる。よろしくな、スイレン」
「はい、頑張ります」
「そういえばスイレン、俺と初めて会った時も釣りしてたよな」
「うん、そうだったね」
「この子はね、釣りの達人だからね~。海のポケモンにも詳しいんだ」
友達のことを自慢できるのがうれしいのか、マオが笑顔でスイレンのそばまでやってきた。マオに褒めてもらえてスイレンもうれしそうだ。本当に仲がいいな、と思わず笑みがこぼれるサトシ。少人数で授業を受けているからか、実際クラスメートたちは本当に仲がいい。自分もその輪の中に入れているかな?そんなことも少し思う。
「へぇ~。すごいんだな、スイレンって」
「そ、そうかな?わたし、海のポケモンが好きなだけだし・・・」
「何言ってんだよ。好きなことをちゃんと極められてるってかっこいいし、すごいことじゃんか」
「・・・ありがとう」
「うんうん、スイレンはすごいんだよ!」
その様子をリーリエたちは微笑ましく思い、しばらく見守っていた。そこでふと、マーマネが気になっていたことを問いかける。
「釣りだと、ポケモンに触ることになるよね?大丈夫、リーリエ?」
ポケモンに触ることができないリーリエ。釣ったポケモンもそうだが、今回はライドポケモンに乗って移動するのだ。なかなか厳しい状況にも思える。しかしリーリエは自信満々の表情だった。
「問題ありません!秘密兵器を用意していますから!」
その自信満々な顔と、今の発言。サトシは、なんだか少しシトロンを思い出すな、と思った。
「秘密兵器?それってどんなの?今日帰ったら見せてくれよ!」
「それは、明日お見せするということで」
「でも、それなら安心だね」
アシマリを抱えてリーリエのほうを向くスイレン。が、ここでアシマリがスイレンの腕の中から飛び出し、あろうことかリーリエの膝の上に着地した。本人には至って悪気はないのだろうし、他の人なら特に問題はなかっただろう。しかしリーリエ、それも突然のことだったために、リーリエは完全にフリーズしてしまった。
「わぁぁ!アシマリったら・・・」
「おっと。気を付けてくれよ、アシマリ」
「ごめん、リーリエ。アシマリもごめんなさいだよ」
「い、いいんですよ」
なんとか意識を取り戻すリーリエは、すまなそうにするスイレンとアシマリに気にするなというように微笑みかける。と、彼女は自分の手が何かをつかんでいたのに気づく。どうやらびっくりしたときに無意識に何かをつかんでしまったようだ。前にも感じたことのあるような温かさと心地よさがあるそれは、
「え~と、リーリエ。そろそろ席に戻りたいんだけど」
サトシの手だった。リーリエの視線が動く。手を見て、サトシを見て、手を見る。何度かこれを繰り返したあと、ようやく状況が正しく呑み込めたのか、
「わひゃあ!ごごごご、ごめんなさい!」
と割と大きな声を上げながら手を放した。
「いいって。びっくりしたもんな。しょうがないさ」
サトシは笑って答える。その笑顔を見て顔を少し伏せたリーリエは小さな声で
「ありがとうございます、サトシ」
と返した。
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ホームルーム後、サトシは一緒に帰っていた・・・スイレンと一緒に。
あの後、全員が落ち着いたのを見てククイ博士が最後の連絡と解散の合図をしたのだ。その時に釣竿を持ってくるようにと言っていたが、残念ながらサトシは持っていなかったのだ。そこで家にたくさん釣竿が置いてあるスイレンに一つ貸してもらうことになって、今一緒に向かっている最中だ。
「あの、ちょっと寄り道してもいいかな?」
「寄り道?いいぜ」
やってきたのは砂浜。アローラ地方のリゾートのそれとは違って、このあたりには店もなく、人もあまりいないため、なんだかプライベートビーチのように思えた。
「そういえばさ、朝のあれ、二人で何してたんだ?」
「あれはね、アシマリとバルーンをつくる練習をしていたんだ」
「バルーン?」
『アシマリは、水でできたバルーンを操ることができるロト』
「そうなのか。いつもここで練習しているの?」
「うん。ここ、私とアシマリの場所」
「場所?」
「そう。会ったの、ここで」
そしてスイレンはサトシに二人の出会いについて話してくれた。スカル団にいじめられていたアシマリを、スイレンが助け、そこから二人がパートナーになったこと。それはどこかサトシが今まで出会ってきたポケモンにも似ていて、サトシはそんな中でも二人が出会えたことが、自分のことのようにうれしくなった。
「よかったな、アシマリ。スイレンと出会えて」
「アウ!」
「バルーンの練習、頑張れよ!俺も応援してる」
「ありがとう、サトシ。うまくできるようになったら、サトシも入れてあげる。バルーンに」
「へ?入れるって?」
「夢があるの」
「夢?将来なりたいものとか?」
「うぅん。私の、私たちの夢はね、大きなバルーンの中に私が入って、海の中、どこまでも、どこまでも行くこと。そしたらきっと、誰も見たことない、深海のポケモンにも会えるかも」
スイレンが語った夢は将来像とは違ったが、彼女が心の底から望み、目指しているものなのだということが伝わってくる。毎日毎日、朝も夕方も、バルーンの練習をしているのが容易に想像できる。
「いいなそれ、俺もやってみたいな」
「大きくしようね、アシマリ」
「アウ!」
『でも、アシマリは通常、小さなバルーンしか作れないロト』
図鑑に記されているデータは、これまでに観察されてきた、それぞれのポケモンの総合的なデータ。そこにある情報の正確性は高く、ほとんどの場合はそこから外れることはない。アシマリというポケモンが人が入れるほど大きくて、強度のあるバルーンを作り出すのはほとんどケースがなかったのだろう。けど、
「そんなのやってみないとわからないだろ?スイレンとアシマリならできる!」
『きわめて非論理的な理屈ロト・・・』
ロトムが言うように論理としてはまるで何も成り立ってはいない。サトシが言っているのは結局のところは理屈はないのだ。ただ彼はスイレンたちならその夢を叶えられると、叶えられるだけの努力をしてきたんだと信じているのだ。クラスメートになってからまだ一週間かそこらしか経っていないのに、である。しかし純粋に信じている人の言葉とは不思議なもので、どれだけむちゃくちゃなことを言っていても、理屈や論理をすっ飛ばしていても、人の心に届き、信じられる。
「うん!アシマリ、練習してみよう。今度はゆっくりね」
「アウッ!」
サトシたちが見守る中、アシマリはバルーンを膨らませ始めた。徐々に大きくなるバルーンは、今までにないくらいの大きさにまで膨らんだ。ついに成功したか、と思いきや。バルーンはサトシたちの頭の真上で破裂してしまった。どうやらまだまだ強度が足りない模様。ついでに言うと、サトシたちは破裂したバルーンを形成するために使われた大量の水を直接かぶってしまい、水浸しになってしまった。
『やっぱり、非論理的ロト』
アシマリ、ポッチャマと同じで進化しないのかな?
でもしたらしたで綺麗だと思う