アニメだとまだ他の可能性もありそうですけど
しばらく森を歩くサトシたち。周りの様子を伺いながら、サトシは一人の様子に気づいた。集団の一番後ろで少し怯えるようについてきている彼女。確かに前からポケモンに会うのであれば、そこにいるのが彼女にとってはベストかもしれない。しかしこの森ではどこから来るか、それこそ後ろから来てもおかしくない。
「なぁ、リーリエ」
「はい?なんですか、サトシ?」
「俺のすぐ後ろに来ないか?」
「ん?」
「わ」
「えっ」
「へ?」
「えっ、えぇと」
「ど、どうしたのサトシ?いきなりそんなこと言うなんて?」
「いや、ここってどこからポケモンが出てきてもおかしくないだろ?だから俺がリーリエの前、マオたちで左右、カキが後ろから周りを注意して見ていたら、リーリエも急にポケモンが現れた時に安心かなって。ピカチュウ、悪いけどロトムと前歩いてくれるか?」
「ピカ」
「確かにな。いいんじゃないか?」
「うん」
「なるほどね〜」
「ほらほらリーリエ、こっちこっち」
「マオ、引っ張らないでください。きゃ」
マオに手を引かれて前のめりになったリーリエが、つまづき転びそうになる。地面にぶつかると思い衝撃に備えて目を瞑る。ポスン、と想像していたのとは違う柔らかい感触にリーリエは驚いた。目を開くと
「大丈夫か?」
サトシの声が少し上からした。サトシが受け止めてくれていた、というよりも自分がサトシに倒れ込んでいた。顔が熱くなるのを感じながらも慌てて姿勢を正す。
「だ、大丈夫です!」
「そっか。ならいいけど」
「ごめんね、リーリエ」
「い、いえ。あの、サトシ、ありがとうございます」
「気にすんなって。よーし、次のポケモンはどこかな?」
サトシは既にポケモン探しに意識が向いていた。白い肌ゆえにわかりやすい変化、リーリエの顔が少し赤いのにマオは気づいた。
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森を散策することさらに数分、サトシの前の地面から一体のポケモンが顔を出した。
「あー!あの時見失ったポケモン!」
『アゴジムシ、幼虫ポケモン。むしタイプ。大きな顎で樹木を削り、樹液をすする。普段は地面の中で暮らす』
「アゴジムシか、よーし。ピカチュウ、ゲットしようぜ!」
アゴジムシはなかなか手強い。ピカチュウのアイアンテールを顎で弾き、糸を吐いて動きを止めようとしてくる。
「ジャンプして、10万ボルト!」
「ピーカチュウゥ!」
渾身の一撃が決まった。体が痺れているようで動かないアゴジムシ。すかさずサトシがモンスターボールを投げる。ボールの中に入るアゴジムシ。あとはゲットできるかどうか。だが、
「あぁっ!?」
アゴジムシはゲットされず、ボールから飛び出して地面に潜ってしまった。しかし戦いから逃げたわけではないようで、付近を潜っている跡が見える。
「ここは、アイアンテールで地面を。いや、それだとみんなが危ない。なら、ピカチュウ。アゴジムシが出てきたところを狙って、でんこうせっかだ!」
周囲に気を貼るサトシとピカチュウ。アゴジムシが飛び出てきたのは。
「ひゃあっ!」
リーリエのすぐそばだった。思わずマオの後ろに隠れるリーリエ。
「もう、あい変わらず怖がりなんだから」
「ここ、怖くはありません。わたくし、学びの対象としてポケモンが大好きで、」
とここでマオとリーリエを壁にしたかのような状態でアゴジムシがピカチュウへ糸を吐いた。でんこうせっかを使って初撃をよけたピカチュウ。そのまま攻撃しようとしたが、攻撃に驚いたリーリエが後ずさり、ぶつかりそうになったピカチュウの動きが止まってしまった。そしてその隙に、アゴジムシの吐いた糸が足に巻きついた。
「ピカチュウ!」
『丈夫なアゴに注意ロト!』
しかしうまく身動きが取れないピカチュウはアゴジムシの攻撃を食らってしまった。さらに先のミミッキュとの戦闘での疲労もあり、倒れてしまった。逃げていくアゴジムシ。
『ピカチュウ、ダメージ確認、ダメージ確認』
すぐに駆け寄るサトシたち。本人は笑顔で大丈夫と一鳴きしたが、回復させたほうがいいのは見てわかる。
「あたし、ポケモンセンターに案内するよ」
「頼むぜ、マオ」
「サトシ、俺たちはスクールに戻って、ククイ博士に事情を伝える」
「サンキュー、カキ」
ピカチュウを抱えてポケモンセンターに向かおうとするサトシ。そこへリーリエが申し訳なさそうに声をかけた。
「あの、サトシ。ごめんなさい」
「え?」
「わたくしが邪魔をしてしまったせいで、ゲットも、ピカチュウも」
「気にすんなって。大丈夫だから」
「ですが、」
「大丈夫。チャンスはまたあるし、ピカチュウだってポケモンセンターですぐに元気になるよ。心配すんな」
「あの、わたくしも一緒に行かせてください。やっぱり、その、わたくしのせいで・・・」
「わかった。リーリエがそうしたいなら、一緒に行こう。いいよな、マオ」
「うん。それじゃあカキ、あたしたちが行くこと、伝えておいてね」
「案内なら一人でもいいだろ。まぁ、いいけどな」
というわけで、サトシ・マオ・リーリエはピカチュウを連れてポケモンセンターへ、カキ・スイレン・マーマネはポケモンスクールへ戻ることとなった。
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ポケモンセンター。ピカチュウをジョーイさんに預けたサトシは、そのお手伝いをしているハピナスとキュワワーと触れ合ったり、裏のバトルフィールドでゲッコウガとともにバトルに挑んでいた。これをチャンスとばかりに、マオは少し気になっていることを聞いてみることにした。バトルフィールドのサトシとゲッコウガのことをずっと眺めているクラスメートに。
「ねぇリーリエ?ちょっといいかな?」
「はい、なんですかマオ?」
振り向くリーリエ。ちらりとマオはサトシのほうへ目線を向ける。相手のハッサムのシザークロスを難なくかわすゲッコウガ。キズぐすりを使っているとはいえ既に3戦目、だというのに全く疲れを感じさせないゲッコウガはすかさずつばめ返しを決めていた。サトシはバトルに集中しているようで、まだしばらくは時間がありそうだ。そう判断したマオは本題に入ることにした。
「リーリエ、なんだか急にサトシと仲良くなったよね?朝だって一緒に登校してきていたし、何かあったの?」
「いえ、その。昨日少しお話をしたんです」
「お話?」
「はい。その時にスカル団がまた現れて」
「スカル団が!?大丈夫だったの?」
「はい。サトシがゲッコウガと一緒に助けてくれました。1対9のあの状況で、サトシは逃げようともしないで、大丈夫だって言って。それに、本当に勝ってしまったんです」
「そうなの?サトシやるじゃん!」
「はい。そのあと、わたくしがポケモンに触れずにいることについて少し。そしたら、サトシは協力してくれるって言ってくれました」
サトシのことを話すリーリエは、彼女が大好きだというポケモンについて話す時よりも、どこか嬉しそうだった。その様子にマオは一つの仮説を立てる。これはこれは、もしかすると・・・
「よかったね、リーリエ」
「はいっ!わたくし、頑張ります!・・・た、たぶん」
「お~い二人とも、ピカチュウたちも元気になったし、戻ろうぜ!」
いつの間に受け取りに行ったのだろうか、サトシが肩にピカチュウを乗せながら歩いてきた。
「おっけー」
「はい」
「ゲットはまた明日挑戦だな!明日はスクールもお休みの日だし、絶対ポケモンゲットするぞ!」
三人は急いでスクールに戻り、その後の授業を受けた。
放課後、並んで帰りながら何かを話している二人。それを見ながらマオは少し考え事をしていた。リーリエが変わり始めている。それも、この数日間だけで。理由はきっと、いま彼女と一緒に帰っているあの少年。何をしたのだろうか。考えてもわからない。確かにバトルは強いし、ポケモンに対する愛情も深い。でも、それはカキだってそうだし、ポケモンを好きなのはスイレンやマーマネ、自分だって変わらないと思う。それでも、リーリエは彼の影響を受けて、確実に変わっている。
「サトシって・・・本当はどんな人なんだろう」
ヒロインたちみんないいですよね
皆さんはどの子が一番好きですか?