取り敢えず本編をどうぞ。
〜学園side〜
時間は遡りアルテラが魔神を連れて転移した後。
駒王学園では、今回の件について後始末と唯一今回のテロの全貌を初めから理解しているヴァーリを問い詰めていた。
「さて、ヴァーリ。説明してもらおうじゃねえか、あん?」
「まあ、そうカッカしないでアザゼル。けど今回の件については僕もとっても聞きたいところだね」
「それについては私も同感です。さあ、説明してもらいましょうか?」
三大勢力のそれぞれのトップ達に詰め寄られるヴァーリは苦笑を浮かべている。
逃げようにもアザゼルの開発した一時的に装着者の魔力を封印する手錠によって逃げようにも逃げられなかった。
さすがのヴァーリも観念したのか話を始めた。
「……はあ、わかった。で、何を聞きたい?」
「そうだな、取り敢えず禍の団についてだ、あの悪魔は解散したと言ったが本当か?」
あの悪魔というところでサーゼクスやセラフォルーの顔が少し沈んだ。
アザゼルの問いにヴァーリは首を縦に振り肯定した。
「……ああ、概ねあの悪魔の言う通り、禍の団は既に解散している。入っていた俺が言うんだ、見ず知らずの奴よりも信憑性はあるだろ?」
「どうだかな、しかしヴァーリ、いつからだ、いつから禍の団に入っていた」
アザゼルは複雑そうにヴァーリに聞く、その雰囲気を感じたヴァーリは申し訳なさそうにこう言う。
「あー……アザゼルに拾われる前だな、追っ手の悪魔から逃げる時にアルテラに助けられた」
「………え、マジでか?」
「ああ、俺がお前のところにいたのはスパイの意味もあった、まあ、特に何かしろとは言われてなかったから何もしてないが」
「……マジかよ……てかアルテラも禍の団なのか」
だいたい予想していたのかアザゼルの驚きは少なかった。
他のトップ以外の者達は驚いていた。
「厳密には元だ、下っ端の者達は知らないが今、禍の団の者達は二つの勢力に分かれている」
「その勢力というのは?」
ヴァーリの言葉にミカエルが疑問を投げかける。
「一つは今回のテロの実行犯。禍の団では、旧魔王派と言われていた悪魔達の集まりだ。今の名は知らない、リーダーの名前もわからない。まあ、仮定するなら『魔神の団』とでも言えばいいか?」
「そうだな、フラウロスっていう魔神の話から考えると数柱いると思う、しかしだとしたら奴らの主は……」
「まあ、アザゼルの思っている通りだろう。しかし今は不特定の事よりもわかっている事を整理した方がいい」
「……だな、それで? もう一つの派閥ってのはなんだ?」
アザゼルの質問に待ってましたとばかりに喋り出すヴァーリ。
「もう一つは英雄派、主に英雄の子孫の人間たちが集まってできている集団で俺やアルテラが所属している所でもある。主な活動は神器使いの捜索、神器や力によって迫害を受けた子供達の保護だ」
「聞く限りじゃタダの慈善集団だが、本当のところどうなんだ?」
疑り深いアザゼルはヴァーリの説明に納得していないようだ。
その反応も予想していたのかヴァーリは話を続ける。
「いや、目的は人外から人間を守る事だけだ。禍の団に入ったのもそういう者達の情報が入りやすいという理由だった。あんたら悪魔や堕天使が人間にしている仕打ちを考えれば当然と言えば当然だろ?」
ヴァーリの言葉におし黙るトップたち、悪魔の方は本人の意思を無視して無理やり転生させて自分の眷属にしている悪魔も少なからずいる。
現魔王のサーゼクスはそのような事を無くそうと頑張っているが未だ実現できていない。
堕天使は未覚醒の神器使いを保護、または殺害している。
一誠もその被害者の一人だ、赤龍帝の神器を持っていたから堕天使に殺され悪魔であるリアスに転生され眷属となった。
天使側は特にこれといった事をしていないが、その配下の教会の中には勝手に暴走して無実の人間を殺している者たちもいる。
これらのことを考えれば、英雄派のお題目も仕方がないことだ。
「元々旧魔王派と英雄派は良くぶつかっていた。方や人間を下等な生物と見ている悪魔。方や人外に恨みを持つ人間たち」
「成る程、分裂は必然だったと?」
同じ禍の団でもいがみ合うもの同士が敵対するのは必然のこと。
そう思いミカエルがヴァーリに質問をした。
「俺はあまりそのことに詳しくない。しかし必然であったのは確かだ、その上で俺たち英雄派が三大勢力との関係をどうするか、あんたらが聞きたいのはそこじゃないか?」
ヴァーリの核心をつく言葉にトップたちに緊張が走る。
遠回しにいろいろ聞いているが結局のところは自分たちに害があるのかないのかという話になる。
「付け足しておくが、英雄派には【神滅具】所有者が俺が知っている限り三人、幹部たちはアルテラを抜いた全員が神器使いで全員が禁手に至っている。それぞれ最上級悪魔程度なら一人で殲滅できる戦闘能力を持つ。さて、俺たちが三大勢力のとの関係をどうするか。本来ならアルテラの仕事なんだが……」
ヴァーリの言葉は最後まで続かなかった。
学園を突然の地震が襲ったのだ。
あまりに急なことに事後処理をしていたその他の者達、話を聞いていたもの達とグレモリー眷属達は驚く。
「……なんだ、今度は地震か?」
トップ達は突然の地震に驚きこそすれ平静を保っていた。
この地震が起こると同時にヴァーリの顔に安堵の息が漏れる。
「……どうやら、アルテラの方も終わった様だ」
「何? じゃあこの地震は」
「十中八九アルテラの仕業だろう。全く一体何をしたら別空間の余波がここまで届くというのか。けどまあ、これで俺の役割は終わりか……」
ヴァーリはそう言うと腕の手錠を無理やり引き千切る。
そして白銀の羽を出し空高く登る。
アザゼルは自分作成の手錠が壊されたことに少し拗ねている。
「まあ、あれでお前を無力化できるとは思っていなかったが、無理やり壊されるとは思わなかったぜ。まあいい、それで、結局俺たち三大勢力とはどうする?」
アザゼルはこれで話が終わりだと悟り最も重要なことを聞く。
「具体的な干渉はない。今俺たちは魔神派への対応で手一杯だ、なので同じ敵を持つものとして協力関係を築きたいと思う」
「それは、僕たち三大勢力の庇護下に入ると言う事でいいのかな?」
サーゼクスの言葉を受けて、不敵な笑みを浮かべるヴァーリ。
「違うな。俺たちは、悪魔、天使、堕天使に続く第四勢力。人間側としてお前らと対等な関係を築きたい」
ヴァーリはそう高らかと宣言する。
それは本来なら実現することは叶わないもの、人外達からすれば人間は取るに足らない存在として扱われている。
そんな人間と対等な関係を築く、それはまさに歴史に残る事だろう。
スケールの大きい話にトップ達以外の者達は置いてけぼりだ。
しかしそんな重要な事であろうに件のトップ達といえば。
「別にいいぜ、俺個人としては是非良好な関係を築きたい」
「僕たち悪魔も構わない、老害どもがうるさいだろうが……まあ、なんとかするさ」
「私たち天使も構いません。特にこれといって遺恨がある訳ではないですし」
と、以外にも満場一致であった。
これには否定を想定していたヴァーリも目を丸くする。
「……俺が言うのもなんだがいいのか? アザゼルはどうでもいいとして……」
「おい!」
「魔王のあんたが賛成するとは思わなかった」
ヴァーリの言葉ももっともだ、全てとは言えないが少なくない悪魔達が人間や転生悪魔を下等な存在として見ている。
そんな悪魔のトップの一人のサーゼクスが何もなくこの件を肯定したのには誰だって驚く。
「まあ君の言うことも尤もだ、確かに今の悪魔達にもそう言う風潮がまだあるのは知っている。僕もどうにかしようと色々としているが上層部の老害どもが邪魔で未だに上手く実行できないでいる」
それは人間を好いているサーゼクスや現魔王達にとって頭を悩ませていることだ。
「だからね、今回の和平を始まりに悪魔達も変わっていこうと思う。しかし三大勢力との和平では人間達に対する対応が変わることはないだろう。だからこの協力関係を始まりに人間に対する対応を変えるための始まりにしようと思っている」
和平は三大勢力間だけで行われている、その中に人間に対するものはない、結局今回の和平で人間達が虐げられる事は変わらない。
「成る程、つまりは今回の協力関係を始まりに、若い悪魔達の人間に対する認識を改めさせようと言うわけか」
古い時代の悪魔達の認識を変えることは難しい。
なら次代を担う若手悪魔達の認識を変えることで将来この関係が変わるようにしようと言うわけだ。
「そう言う事だ、だから今回の件は此方としても願っても無い事なんだよ」
「わかった、ではこの話はお終いだ。いい返事をもらって感謝する……最後に」
そう言うとヴァーリはグレモリー眷属の方に顔を向ける。
彼が見ているのは一誠であった。
「……………………」
「な、何だよ……」
無言で見つめられる一誠は耐えきれず喋る。
そして黙っていたヴァーリもその言葉を始まりに喋る。
「正直なところ、俺は今の君に期待していない。未だに禁手の力を十全に扱えていない君には、ね」
「何が、言いたい」
「今代の赤龍帝が君であることを俺は酷く悲しく思う。白と赤は争う運命とは言え、余りにも結果が見えている」
それはきっと侮蔑だ、同時に哀れみなのだろう。
人間の母と旧魔王ルシファーの家系の父との間に生まれた自分と、これといって何の力も持たない人間であった一誠。
同じ二天龍を宿すもの同士、しかし今の両者には圧倒的な力の差があった。
戦闘狂とも言えるヴァーリにとってこの件はとても残念に思っていた。
「……だから」
ヴァーリが白龍皇の鎧を纏う。
そして自分の鎧の胸の宝玉を……
「ふん!」
自ら砕き取り出した。
「「なっ!」」
宝玉が取り出された事により鎧が消えるヴァーリ。
「ふっ、思いの外痛いな、まあ仕方がないか。赤龍帝」
ヴァーリは一誠を呼び手に持っていた宝玉を投げつける。
「うおっ!」
いきなりのことで焦る一誠、飛んできた宝玉を拙くも受け取る。
「これは……何で」
宝玉を受け取るとそれがどう言うものであるか同じ二天龍を宿すものとして知っている一誠は困惑する。
「なに、ただの気まぐれだ。だから受け取れ」
「だけど……」
「赤龍帝、いや兵藤 一誠。もし君に守りたいものがあるなら強くなることだ、力がなければなにも守れない。これからの時代を生きるなら、なおさらね」
ヴァーリはそう言うと大きく翼をはためかせる。
「また会おう赤龍帝、いつかもっと強くなった君と戦ってみたいものだ」
ヴァーリはそう言うと魔法陣とともに光となって消えていった。
消えるヴァーリを見つめる一誠は静かにいった。
「ドライグ」
『何だ、相棒?』
「俺は……強くなれるか?」
『お前にその気があるならな』
「……そうか」
そう呟いた一誠の顔はとても晴れやかな表情であった。
〜アルテラside〜
神の鞭、かつてアッティラであったアルテラを表した言葉。
その手に持つ軍神の剣を見たものがつけた名前、そしてその名はまさに的を射ていた。
三色の光の線が宙に踊る。
それはまるで星の様に、しかし星ではあり得ない起動で天を駆けている。
「ははは! うん、いいなこれは、久方ぶりの感覚だ」
楽しそうに巨大な破壊の鞭と化した軍神の剣を魔神に振るうアルテラ。
その一撃一撃が魔神の体を抉り、魔神の一部を消失させていく。
結局のところ、初めに打った宝具の結果は切れたところから引っ付くであった。
疑問が解消されたアルテラは文字どおり魔神柱をサンドバックにして切ったり叩いたりして攻撃している。
しかし案の定ことごとく再生する魔神にアルテラのテンションはこれまでにないほど上がっていた。
今のアルテラの一撃は一つ一つが必殺の一撃、どんな相手もそれを受ければ破壊される。
しかし目の前の魔神は今尚そこにあり続けている。
力を使えば何もかも破壊し尽くしてきたアルテラにとってはこれほど嬉しい玩具はなかった。
あまりに楽しいので宝具を数回ブッパしたくらいだ。
暇を持て余していたアルテラにとってはこれほど楽しい相手は久方ぶりだった。
しかしいつの日も楽しい時間は長くは続かないもの。
無限に再生する敵に消滅させない威力で攻撃するのにも飽きてきた。
攻撃してみてわかった事だが魔神の再生能力は自動的の様だ、その証拠に現在の魔神の意識は飛びかけている。
まあそれも仕方がない、アルテラの一撃は破壊の一撃、いくら無限に再生する魔神でもその痛みには精神が耐えられない。
これがフェニクスという悪魔であれば精神が死んだ時点で再生は止まるだろう。
しかし先ほども言ったがこの再生はあくまで自動的なもので本体の魔神の意思とは関係なく魔力がある限り再生する。
つまるところアルテラに受けた痛みで死にたくてもその不死身とも言える再生能力のせいで死ぬことも出来なければ、気絶しても体を焼く痛みで気絶することも出来ない。
まさに生き地獄、絶対なる不死性が仇となった結果だ。
「さて、それなりに楽しんだことだしそろそろお終いにしようか」
本格的に飽きてきたアルテラは今尚再生する魔神に向けて喋る。
『や、やっと…終わる…の…か…』
おや、どうやらまだ精神が生きていた様だ、凄いな普通なら廃人確定なんだが、さすがは魔神というところか。
『こ、殺してくれ! 早く、早く、殺してくれ!』
あ、やっぱり精神死んでるか? なんか初めの時と全然キャラが違うな。
「ああ、良いだろう。殺してやる」
私は魔力を充填する、今までにないほどの魔力収束に大地が悲鳴をあげる。
そろそろこの世界も限界か、まあだいぶ持った方ではあるか。
充填が完了し可視化できるほどの煌めく魔力が私の剣の柄に収束される。
「さて、最後に言い残すことはあるか?」
『いや、無い…早く殺してくれ!』
異常とも言える死への渇望にアルテラも少し後ずさる。
ふむ、やけに素直だな、傷はもう既に再生しているのに攻撃すらして来ない……ああ、成る程な。
何かに気づいた私は問いかける様に喋る。
「普段の私は力を抑えているんだ、何故かわかるか? 簡単だ、私が力を使えばそれだけで何もかも壊れてしまう。故に私は自分の力を封じることで抑えている。そして今の私はその封印の一つを解いた状態だ、……」
『………? 一体…何が…言いたい?』
急に坦々と喋り出したアルテラに困惑する魔神、しかしアルテラは気にすることなく話を続ける。
「そして枷を解いたことで力と一緒に封じていたスキルも解放された。その名も【魔力吸収】能力は私が破壊したものを魔力に変換して私の貯蔵魔力に吸収するスキルだ。さて、私が何を言いたいかわかるかな?」
私が魔神に聞くと魔神は私が見てわかるほど肌の色が青くなる。
へえ、魔神でも青くなるんだ、ある意味珍しい発見かも。
『何故!……何故だ、一体何故!』
「何を言っているか全然わからんな。まあどうせ私がお前の体を消失させると同時に魂だけ王の元に逃げる腹づもりだったのだろう、その体はあくまでもレフのものだ、貴様はその体に魂だけ入って支配しているだけに過ぎん……残念だったな。私がここでお前を“完全”に破壊する」
『い、嫌ダァ! いやだいやだいやだいやだ!』
私が話を終えるとまるで駄々っ子の様に根を振り回す。
その余波で大地が砕け、私のいる足場も崩れる。
私は後ろに飛び退き暴れる魔神を見つめる。
「ふむ、魔神とはいえ死は怖いか、だがな魔神よ、私はついさっき言ったはずだ……貴様は私が完全に破壊すると。だから、これでお終いだ」
私は静かに剣の柄を天に掲げる。
「……マルスに接続、発射まで五秒」
剣の柄から赤い光が天に昇る。
そして魔神の上空で巨大な魔法陣が現れる。
三列に並んだ円形の魔法陣、それは原初の破壊。
アルテラの持つ軍神の剣の真の力。
「二……一……零、臨界点突破。落ちろ」
そして今、神の鞭がその真価を見せる。
この軍神の剣は、剣であるのと同時に座標を指定するポインターでもある。
そして空に展開された魔法陣は道、天から落ちる星の涙を神の怒りと変える破壊の道。
「
天から落ちる涙の星が、魔法陣を通り神の怒りと化す。
全てを一切合切破壊する破滅の光は魔神を飲み込んだ、それでも飽き足らずに大地をその熱で破壊する。
まさに神の懲罰、天から落ちる光の柱はまさに神の裁きと言えるだろう。
そして数秒後、天から落ちる光の柱はどんどん細くなりやがて消え去った。
光が落ちた大地は破壊され大きな穴が開いていた。
魔力の反応と自分に吸収される魔力で完全に魔神が消滅したのを確認したアルテラは……
「……ごちそうさまでした」
そう、静かに手を合わせるのだった。
荒れ果てた荒野でアルテラは考えていた。
と言うのも魔神を倒したが今更思えばいらん事まで三大勢力に暴露してしまった気もしないでもない。
魔神の事や、禍の団の事、ヴァーリの事は……まあ、ヴァーリの性格上勝手に名乗っていそうではある。
それに今回の出席したのは和平に乗じて私たち人間も協力関係を三大勢力達と結ぶためだった。
うん、私がいなくなった後で三大勢力達に詰め寄られて、柄にもなく困惑するヴァーリが想像できた。
その想像が現在進行形で現実となっているとも知らずにアルテラはため息を吐く。
あ〜、戻るのなんか憂鬱だな、絶対色々聞かれるだろうし。
自分が学園に戻る事で起こる出来事を予想したアルテラは如何すればそれを回避できるか考える。
アルテラの行動原理は楽しそうなら動く、面倒なら傍観する、が主な行動原理となっている。
それを考えると今回の魔神との戦闘は彼女らしくなかったと言える。
まあ、珍しく戦闘の熱に浮かれていたとも言えるが、ともかく自分の行いを振り返ったアルテラ。
そして結局たどり着いた答えとは……
「よし、帰って寝よう」
夢の中に逃げるであった。
人はそれを現実逃避と言う。
そして彼女は転移陣で駒王町に戻り、ホテルを借りて眠りにつくのだった。
はい、ヴァーリは英雄派勢力に入りました。
そして第四の勢力として英雄派が上がりました。
ハイスクールでの人間の扱いが酷いと思ったのでこうしてみました。
作者的にはやっとここまでかけたと思います。