我、破壊の大王なり   作:白夜の星霊白夜叉

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どうも、精神が病んだ白夜叉です。
豆腐メンタルを抉るコメントをもらい悲しみにくれてます。

テンプレすぎて面白くないのはわかりますが、正直悲しいです。




第10話 白猫は願いを抱く

私が一誠を蹴り飛ばした後。

一誠を女湯に投げたアザゼルを締めた私は温泉から上がった。

 

そして豪華な夕食をとった後、就寝した。

 

そして次の日、朝食を済ませた私たちはグレモリー家の庭の一角、いよいよ里帰りの大元の目的である修行が始まろうとしていた。

 

アザゼルが一人一人にトレーニングメニューを発表していく、そんな中、私には唯一気にかかることがあった。

 

アザゼルの説明を聞くにつれ、ドンドン表情が険しくなる小猫。

 

「だいじょうぶ、小猫ちゃんならソッコーで強くなれるさ」

 

「……そんな、軽く言わないで下さいっ!」

 

一誠の慰めの言葉に苛立ち怒鳴る小猫。

 

そんな彼女を見た私はアザゼルに申し出た。

 

「アザゼル。済まないが少しいいか?」

 

「あん? なんだアルテラ、話なら手短にな」

 

「なに、そう長くならんさ。小猫の修行の件だが、私に一任してくれないか?」

 

私がそう言うと周りのもの達は驚いた顔をしていた。

そんなみんなの反応を知ってか知らずか、アザゼルは返答した。

 

「それはあれか? 俺の訓練メニューにケチつけるってことか?」

 

そんなアザゼルの言葉を私は否定する。

 

「いや、内容はそのまま、私がすることは小猫の訓練の教官。小猫の様子を見て少しメニューを変えるかもしれんが、概ねアザゼルのメニューで訓練をやらすさ」

 

私のその返答に納得したのかアザゼルは一誠達に向き直り続きを話し始めた。

 

アザゼルの説明の間、私だけはずっと小猫の方を見ていた。

 

アザゼルが下した小猫の修行は主に基礎の向上。

周りのもの達と比べればその訓練は地味と言えるだろう。

 

「小猫。私から一つ忠告しておく」

 

「………なんですかアルテラ先輩」

 

私の言葉に小猫は返事を返す。

しかしその目は先ほどの説明の時と変わらず暗かった。

 

「お前にとって、力とは、思いとは、いったいなんの為のものか……それだけだ、ではな」

 

私はそう言うときびす(踵)を返して小猫のいる森から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜小猫side〜

 

 

 

 

冥界にある森の中、私は森の木を殴っていた。

 

アザゼル先生から課せられたメニューをこなし、その後は自己の向上のために鍛錬、これの繰り返し。

 

何度も何度も、いつの間にかそうして修行を始めてから5日がたっていた。

 

けど私はそんなことを気にせずに自らの体を酷使する。

 

『お前は申し分のないほど、オフェンス、ディフェンス、『戦車』としての素養を持っている。身体能力も問題ない。だが、リアスの眷属には『戦車』のお前よりもオフェンスが上の奴が多い』

 

私の頭にアザゼル先生の言葉がよぎる。

 

わかっています。

 

私の拳が木の幹を抉る。

 

『リアスの眷属でトップのオフェンスは現在木場とゼノヴィアだ。禁手の聖魔剣、聖剣デュランダル、凶悪な兵器を有してやがるからな。ここに予定のイッセーの禁手が加わると……』

 

わかっています……

 

私の蹴りが幹にめり込む。

 

『お前が自ら封じているものをさらけ出せ。自分を受け入れなければ大きな成長なんてできやしねぇのさ』

 

わかってます!

 

私は我武者羅に木々を殴り散らす。

 

そして周り木々が倒れた後、私は。

 

「……わかっているんです」

 

そう一人呟く。

 

私が弱いことなんて知っている。

私がグレモリー眷属の中で最弱なのもわかっている。

皆と違ってこれと言って特別な力を持たない。

この身に宿る力を解放すればアザゼル先生の言う通り、強くなるかもしれません。

 

私が抱いているこの想いも晴れるかもしれません。

 

「それでも、私は!」

 

私は一歩を踏み出す。

 

しかし私の体は急に力を失い私は地面に倒れた。

 

癒えない疲労、5日も不眠不休で修行をしていた為、私の体は限界を迎えていた。

むしろこれまで持った事に驚きを感じる。

悪魔になって文字通り人外の力と防御、体力を得た私でも、何日も不眠不休での無理な修行は心身共に疲弊を余儀なくされた。

 

「……まだ……私、は……っ!」

 

しかし私は倒れた体を無理やりおこそうとする。

しかし燃料を入れずに無理やり動かした体は私の意思とは別に一向に動こうとしない。

 

そして動くのをやめた事で突然私を睡魔が襲った。

睡魔に抗う私はアルテラさんの言葉を思い出していた。

 

『お前にとって力とは、想いとは、いったいなんの為のものか』

 

正直彼女がなにを思って私にこの言葉を言ったかわからない。

きっとアルテラさんの事です。

私のこの気持ちを理解した上で私に送った言葉だと思います。

 

私にとって力とは、姉に向ける想いとは……一体、何でしょうか。

 

そしてついに私は睡魔に負けて瞼が落ちていく。

 

眠ってる暇なんてないのに。

 

しかし体は正直で、私の意識は夢の世界へと旅立っていった。

薄れゆく意識の中、私は声が聞こえた気がした。

 

 

 

「……本当に、世話がやける後輩だ」

 

そして私の体を温かい気持ちが包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

私は今、倒れた小猫を膝を枕にして寝せながら本を読んでいた。

 

小猫が修行を始めてから私はと言うと遠くから小猫を見ていた。

彼女の雰囲気から無理な修行をすると察した私は影ながら彼女を見ていた。

特にこれといってやる事はなく飽きなく小猫の修行を見ていた。

 

化け物である私の目から見ても彼女の修行は異常で、その身にあっていなかった。

本来なら間違った修行をしている小猫を止めるべきなのだろうが、私はあえてそれを無視した。

それは何故か……

 

「……ん……ここ、は……」

 

「ふむ、どうやら目が覚めたようだな」

 

私は目が覚めた小猫に向かってそう話しかける。

初めは私の顔を見て数秒ぼうっとしていたが眠気が覚めて状況を理解すると飛び跳ねるように起きた。

 

「……すみません。私」

 

「気にするな、特に苦もないさ」

 

私は小猫の言葉に返事を返し。

立ち話も何だと思い私の前に座らした。

 

そして先程から焚き火で焼いていた魚を手に取ると小猫に手渡す。

最初は遠慮していた小猫だが正直な腹の虫が鳴った事で脱力して魚を手に取った。

 

「………ッ!」

 

焼き魚を口にした小猫はよっぽど腹が減っていたのか焼き魚をガツガツ食べる。

 

まあ無理もない。

5日も飲まず食わずだったのだから腹が減るのは当たり前か。

 

そしてすぐに小猫の焼き魚は無くなり、物足りなさそうな顔をしていた。

 

「お代わりはいるか?」

 

「……いただきます」

 

小猫の言葉を聞いた私は他の焼き魚たちも小猫にあげる。

 

そして数分後、今ある焼き魚を食い尽くした小猫は満足そうに笑顔を浮かべていた。

 

しかしすぐに元の無表情に戻った彼女は立ち上がると私に背中を見せた。

 

「どこにいくつもりだ?」

 

「……………」

 

私の言葉に無言になる小猫、恐らくまたあの無理な修行を再開するのだろう。

しかしそれではダメだ。

このままではきっと小猫は壊れてしまう。

 

「小猫、この際だから話をしよう。そこに座れ」

 

「……わかりました」

 

私の言葉に渋々ながら従う小猫。

さて、ここからは私の出番か、私は覚悟を決めながら小猫に話す。

 

「面倒ごとは嫌いだ。故に単刀直入に聞く。何故そんなに焦る小猫。お前も今のままじゃ強くなれない事はわかっているだろうに」

 

「ッ!」

 

私の言葉に苦虫を噛み潰したような顔になる小猫。

 

「私も少なからずお前の事情は理解している。しかしそれでも強くなりたいのであれば己が身の力を受け入れなければならない。しかしお前はそれを拒む。小猫、お前は一体どうしたいんだ?」

 

「先輩に、私の何がわかるんですか!」

 

私の言葉に小猫は怒鳴り声をあげた。

 

しかしそんな彼女の言葉を無視して私は話す。

 

「そんなもの知らん。私はお前ではない、お前が何を思って何を考えているなんて完全に理解なんてできんさ。そんな私ができる事はお前の話を聞くくらいだ」

 

私に誰かを慰めるなんて器用な真似はできない。

私はどこまでいっても結局、破壊しか出来ない。

そんな私が誰か説教なんて、ヘドが出る。

しかし今の私にできる事は、小猫、お前の心の声を聞くことだけだ。

 

「……なりたい」

 

そして小猫はポツポツと涙を流しながら話し出した。

 

「強くなりたいんです。祐斗先輩やゼノヴィア先輩、朱乃さん……そして一誠先輩のように心と体を強くしていきたいんです。ギャーくんも強くなってきてます。アーシア先輩のように回復の力もありません……このままでは私は役立たずになってしまいます……『戦車』なのに、私が一番……弱いから……お役に立てないのはイヤなんです……」

 

やはりか、私は小猫の言葉でやっと確信した。

私がアザゼルの話の時に小猫の目を見て感じたもの、それはかつて私が見た男と同じ、自分の無力を嘆き、自分の才能の無さに嘆き、力を得るために修羅の道を歩いた男と同じ目であったのだ。

 

私はきっと、小猫に彼奴と同じ道を進んで欲しくなかったのだろう。

だからわざわざアザゼルに小猫の教官役をかって出たんだ。

 

全てを吐き出した小猫に、私はゆっくりと近づき頭に手を置く。

そのことに狼狽するも嫌がる素振りを見せない小猫を見て、私は彼女の頭を撫でながら話す。

 

「ああ、よく話した小猫。残念ながら私は誰かを慰める言葉を持ち合わせていない。だから、はっきりいってやろう。小猫よ、お前は自分が弱いといったな? しかしそれはお前の勘違いだ」

 

「……え?」

 

私の言葉を聞いて惚ける小猫。

 

「やはりか。まあ、自分と他人では見えるものが違うからな。仕方がないといえば仕方がない」

 

「どういう、事ですか?」

 

「そうだな、なら説明しよう。まず小猫、転生前のお前の種族は猫又でその中で希少な猫魈という妖怪であるな。そしてお前が猫魈の力の仙術を使わないのはお前の姉のことがあるから、そうだな?」

 

私の問いに首を縦に振ることで肯定する小猫。

その顔にはなぜ知っているのですか? という気持ちも見て取れたがあえて無視した。

 

「その上で話そう。まずお前が自分を弱いと思っている事についてだが、はっきり言って気の所為だ」

 

「え……そんな筈は……」

 

「そんな筈も何も、まずお前は前提条件を無視している。小猫、お前の駒はなんだ?」

 

「勿論、『戦車』です」

 

「そう、『戦車』だ。戦車の駒の特性は純粋な筋力や防御力の向上。アザゼルも言っていたが今のグレモリー眷属の中で小猫は一番バランスが良い」

 

私の言葉を聞いて首をかしげる小猫。

 

「まだわからんか。お前の戦闘での立ち位置はなんだ?」

 

「それは……『戦車』の力を生かした前衛です。けど私よりも祐斗先輩やゼノヴィア先輩の方が接近戦なら上では?」

 

「そうだな、確かに聖魔剣とデュランダルという破格の兵器を持っている祐斗達は客観的に見て強いだろう。しかしそれでも小猫、純粋な力で言えばお前はグレモリー眷属の中でも一番だ、それこそ『女王』の朱乃先輩よりも」

 

「……え?」

 

小猫は私の言葉に驚いた。

 

まあそうだろうな、眷属の皆ですら気づかない事だ、アザゼルはきっと理解していたが敢えて無視したのだろう。

私が気付けたのも小猫に似た事例を見たことがあったからだ。

 

アザゼルはきっと手っ取り早く強くなる方法として小猫に仙術を受け入れろと言ったのだろう。

しかし人間は過去のトラウマをそう簡単に乗り越えることはできない。

それは妖怪も、悪魔も同じく言えることだ。

 

確かに仙術を使えるようになれば小猫の戦力としての有用性は格段に上がるだろう。

 

しかしそれは違うと思う。

何故なら今の小猫に必要なのはもっと別のものに思えたからだ。

 

「さて、その上で提案なんだが、小猫、お前はまだ、自分の過去と決別できないでいる。しかし今のお前は何を優先してでも強くなりたい。誰にも置いて行かれないために、仲間の役に立つために。そうだな?」

 

私がそう聞くと小猫は力強く頷く。

未だ戸惑いはあるようだがその心は修行を始めた時よりも頑固とした意思を宿しているようだ。

 

「小猫、なら問おう。お前は強くなりたいか?」

 

「はい!」

 

「お前にとって力とは何だ?」

 

「私にとって、力は……みんなを守る力です! そして、私が自分の道を切り開くための!」

 

「私の課す修行は辛いぞ? それこそ今までお前が感じた事のない程な。それでもやるのか?」

 

私はそう小猫に聞いた。

脅しとかではなく、これから私が小猫に進める修行はマジな方で命懸けだ。

 

そんな私の脅しに小猫は……

 

「はい、アルテラさん!」

 

はっきりとそう答えた、揺るぎない意思を感じる彼女の瞳を見た私は思わず笑みをこぼす。

 

「そうか、なら時間も少ないのですぐ始めよう。何、そう難しい事じゃない。小猫、残りの数日、お前にはある武術をおさめてもらう」

 

「武術、ですか?」

 

私の問いに首を傾げながら答える小猫。

 

「ああ、そうだ、そしてこの武術を収めた暁には、お前は自分の過去と決別できる、私がそう断言しよう。さて、本来ならゆっくりと教えるつもりだったがあいにく日が残り少ない。だからな……」

 

私はそう言うと腰を低くして、手のひらを小猫に突き出すように構える。

 

「……いきなりなにをッ!」

 

私から漏れ出す殺気に反応した小猫はすぐに臨戦態勢を取る。

そして私はそんな彼女の疑問に答えるようにこう言った。

 

「なに、よく言うだろ? 体で覚える方が早いと。だからな小猫……」

 

アルテラの姿は一瞬消え、そして次に現れたのは小猫の目の前、いきなりのことで反応できない小猫はかろうじて腕をクロスさせ防御姿勢に移る。

 

そしてアルテラは小猫に聞こえる程の小さな声でこう言った。

 

「死ぬ気で、覚えろよ?」

 

その言葉と同時に防御を無視してアルテラの放つ一撃が小猫を吹き飛ばした。


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