Infinitum Heroicis Ficta -無限の英雄- 作:燃え尽きた灰
大概魔女の泉3のせい。
7 -金襴銀襴-
ある日のこと、その日のIS学園1年生の話は転校生の話題で持ちきりだった。
「ねぇねぇ、織斑さん!このクラスに転校生が来るらしいわよ!しかも二人も!」
私の隣の席の娘がその話題を振ってきた。
「そ、そうなんだ。どんな人たちなんだろ。」
「さぁ。知らない。でも、そこを含めても楽しみね!うわ、ってやばっ。もうそろそろ
「う、うん。またね。」
隣の席の娘 (名前は忘れてしまった)は夕立のように慌ただしく去っていったのだった。
それから少しして。織斑先生は教室へ入ってきて、「転校生を紹介する!デュノア、ボーデヴィッヒ、入ってこい。」と言った。
すると綺麗な金髪の中性的な少年と、どう見ても小学生な眼帯をした銀髪の女の子が入ってきた。
「デュノア、自己紹介をしろ。」
「シャルル・デュノアです。フランス国家代表候補生をしています。IS学園に僕と同じ境遇の人がいると聞いて転入しました。よろしくお願いします。」
「「「きゃぁぁっっっっっ!」」」
「男の子よっ!」
「しかもイケメン!」
「織斑君とは違った守ってあげたくなる系の!」
「シャルいち、いやいちシャルも捨てがたい!」
「おい、お前ら静かにしろ!まだもう一人居るんだ...ラウラ、自己紹介だ。」
「了解です、教官。ラウラ・ボーデヴィッヒだ。ISを新手のファッションと勘違いし、生半可な気分で扱っている貴様らと馴れ合う気はない。以上だ。」
ラウラと名乗った銀髪の少女はつかつかと一秋のところまで歩くと、不意に一秋を叩いた。
「私は貴様を教官の弟等とは思いたくもない。...ナイフを持ち出さないだけありがたく思え。モンド・グロッソでの凶行、忘れたとは言わさん。」
「なっ!姉さんの弟だということをお前に認められる必要はない!それにモンド・グロッソのことも自分の命を優先して何が悪い?」
「貴様っ!ただでは済まさんぞ!」
「貴様ら、そこまでにしろ。それ以上続けるというのならこちらにも考えがある。」
「ちっ。運のいい奴め。」
それからも事ある毎にラウラは一秋に突っ掛かっていった。なぜ彼女はそんなにも一秋を敵視するのだろう?
一秋は外面がいいからあまり敵を作らない。
だからこそ私のような隠れた被害者でもない限り悪感情を抱かれないのだ。
しかしその疑問は直ぐに解ける。
「織斑一夏。少し話がある。移動しよう、しかしながら些か校内は不案内でな。よさそうな場所があれば案内してくれると嬉しい。」
「じゃあ屋上に行こうか。あそこならあんまり普段生徒も来ないし。」
そして屋上に着くと開口一番ラウラが私に謝罪してきたのだ。
「あのときは本当に済まなかった。私たちのせいで非常に辛い思いをさせてしまった。」
「え、私たち初対面だと思うんだけど。あの時ってどういうこと?」
「第二回モンド・グロッソ決勝戦の日の事だ。あのとき、織斑を誘拐した犯人たちは実は事前に我がドイツ軍が捕捉していた。しかし上からの圧力で動くことができなかったのだ。私は見ず知らずの少女の命や貞操よりも自分の地位を優先した愚か者だ。たとえ今後織斑に恨まれようと構わない。卑怯者の謗りを受けようとも受け入れよう。しかし、どうかこの謝罪だけは受け取ってくれ。でなければ織斑の顔を見るたびに罪悪感で死んでしまいたくなる。」
そう言ってラウラは泣きながら私に謝った。あの件について私はもとより誰も恨んでいない。貞操だって一秋のせいであってないようなものだった。一秋は私にいくつもの
ラウラの心の負担を少しでも軽くしたい。気付けば私はラウラを抱き締めて頭を撫でながら語りかけていた。
「ありがとう、ラウラちゃん。そういってくれるだけで少しはこの世界がましに見える気がする。私は怒ってない。恨んでもない。だからさ。ラウラちゃんも自分を許してあげよう?いつまでも自分を責め続けるなんてラウラちゃんが可哀想だよ。あ、そうだ!いいこと思い付いた!私に許してほしいんだったら私と友達になってよ。」
「わ、私のようなものを認めてくれるのか?私のようなものが友達を名乗っていいのか?」
「もちろん!じゃあ、私は貴女のこと『ラウラ』って呼ぶから貴女も私のこと『一夏』って呼んで!」
「認めてくれてありがとう、許してくれてありがとう。私と友達になってくれてありがとう...い、一夏。」
「これから宜しくね!ラウラ」
こうして私たちは仲良くなり、ラウラは柵から放たれ、一人の人間へとなることができたのだった。
モンド・グロッソの事件をありがたいとは思わないけれど。今ばかりはラウラという大切な友を得ることができた運命にちょっぴり感謝した。