デート・ア・ライブ 風見サンフラワー 作:文々。社広報部部長 シン
恐れていた事態が起こってしまいました。
それではどうぞ
DEM(デウス・エクス・マキナ)インダストリーの臨時社屋の執務室。一人の男がそこそこ値の張りそうな椅子に座り、手に持った書類に目を向けていた。
洗練された刃のように鋭い瞼に挟まれた深淵の闇のような色の双眸、灰色がかった金髪が特徴的な白人。彼はサー・アイザック・ウェストコット。30代半ばの見た目からは想像出来ない手腕の持ち主で、DRMインダストリーが世界に名を轟かせたのは彼の力と言っていいだろう。
ウェストコットは嘲笑していた。自分が手の上で転がされていることに気付かず、のうのうと私生活を送っているであろう『資材A』の顔が絶望に染まるのを想像するだけで、腹を抱えて
不意に、執務室のドアがノックされた。
「入りたまえ」
「アイク、失礼します」
ドアを開けて入ってきたのは長く明るい金髪をまとめ上げた少女だった。
彼女はエレン・
「エレン?どうしたんだい、今日の予定はもう入って無かったはずだが」
「新しい霊派反応が確認されました」
「ほう」
「新型の精霊は空間震を起こさず、静粛現界したようです」
「それは珍しい。だが、君が言いに来るほどのことでもない。……何があった?」
精霊が現れた程度ならばわざわざエレンが言いに来る必要などない。部下に任せるだろう。しかし、エレンが来たからには何か重要なことを言いに来たのだ。
「流石アイクですね」
エレンは少し間を置いて言う。
「実はその精霊は霊力値がマイナス値を示した状態、つまり魔王のままで現界したようです」
「なんだと…?」
ウェストコットは驚きを隠しきれない顔で怪訝そうに呟く。そう、そんなことはありえない
精神に多大なストレスがかかった時など精神に大きな変調があった場合のみ精霊は魔王となる。例えば、十香が魔王になってしまった。それは士道が胸を貫かれた時、士道が自分のせいで死んでしまったという深い絶望感に十香の精神が耐えられずに変調をきたしてしまったからだった。
精神の変調以外にも何らかの原因はあるかもしれないが、それが大前提。それが無いと反転することなどまず起きないだろう。現界前など以ての外だ。
「……誰かが手を加えたのだろう。まぁ、そんな出鱈目なことをやってのけるのは『奴』ぐらいだが」
「それならば私が魔王のところへ出向きます…!」
エレンはウェストコットから発せられた『奴』という言葉に過敏に反応した。感情が無いロボットのような口調から一転、喧嘩してムキになった子供のように声を上げた。
「駄目だ」
「何故ですか!?私が行けば楽勝…でなくとも魔王を倒せるはずです!それに…」
「エレン」
「……ッ!」
自分の提案が却下され、感情が昂ってしまったエレンはウェストコットに名前を呼ばれたことによって諌められた。ウェストコットの見た目には似つかわしくない老獪な雰囲気を持つ一言によりエレンの思考回路は急速に冷やされていった。
「失礼しました、アイク」
「いや、謝ることはないよ。エレンが熱くなるのは仕方ないことだと思う。だが、君が今魔王を仕留めてしまうと『奴』が動き出してしまうかもしれない。それに<ラタトスク>も黙ってはいないだろう。そうなるとエレン、いくら君でも分が悪い。」
「……そうですね、浅はかな考えでした」
「分かってくれたのならいい。今回は偵察機を送って様子見しようか。……ところで、『資材A』はどうなった?」
「『資材A』ですか」
先ほどの張り詰めた雰囲気を感じさせないウェストコットに『資材A』のことを聞かれたエレンは手に持った資料をめくる。
「今日、五河士道と接触したようです。彼女の住居と思われるマンションに五河士道を連れこんだ、と報告されています」
「ふむ、驚くほど予定通りという事か。あれだけ強力な天使を持っていながら……宝の持ち腐れというやつだな。ああ、楽しみだ、あの力が私のものとなると思うと」
「私も待ち遠しいです。アイクだからこそ、あの力を使いこなすことができる」
「そう言ってくれると嬉しいよ。事情はわかった、もう戻っていい」
「では失礼します」
エレンは執務室を後にした。
ウェストコットもエレンを追うようにして執務室から退出する。邪悪な笑みを顔に浮かべながら。
「人生予定通りなんてないのよ、人間。ふふふ…」
誰もいないはずの執務室に声が響くが、その声は誰の耳にも入らなかった。
更新遅くなってしまいすみません。色々あり過ぎて手がつきませんでした。モチベーションも上がらず、書き上げるのに苦労しました。
こんな更新がナメクジなのに見てくださってる方には本当に頭が上がりません。
これからも宜しくお願いします。
評価、感想、質問、誤字報告お待ちしております。