東方書迷録   作:SunoA

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ちっちゃくないよ!


第2話〜そんなんだから小さいんだよ〜

今日も今日とて店は静か。本当に客足が増えない。なんでだろうね?品揃えは割といいと思うんだけど。

 

「ねぇ」

 

外の世界の本なのがいけないんだろうか。幻想郷に無いものとか色々でて面白いと思うのに。いや、逆に無いものだからこそ興味がわかないのかも知れない。

 

「ねぇってば」

 

いや寧ろ本を読む人が少ないということも考えられないだろうか。それは非常に由々しき事態だ。店の存続にかかわる。なんとかして興味を引いて貰わないといけn痛ってぇ!!

 

「無視すんな」

 

殴られた。伊吹瓢で。頭を。なんなんだよ一体。こっちは真面目に考えてるんだから邪魔しないでほしい。今後の俺の生活がかかってるんだ。

 

「どうせ客足なんて増えないよ。諦めたら?」

 

カラカラ笑いながらそんなことを言うこいつは酒呑童子こと伊吹萃香。一応こいつも常連、というか多分1番きてる。だけどやはり客ではない。いつもフラフラきてはお酒を飲んでお喋りしてくだけ。なに?鬼ってそんなに暇なの?というか喫茶店で酒なんて飲むなよ。

 

「他は知らないけど私は暇だね」

 

そういって伊吹瓢の酒を煽る。仄かに香るアルコールの匂いが鼻をくすぐる。あーあーまた昼からそんなに飲んで。もうちょっと抑えなさいよ。そんなんだからいつまでも小さいんじゃないの?

 

「小さい言うな!」

 

「ならお酒やめたらどう?」

 

「それは無理!」

 

もう駄目だなこいつ。アル中だアル中。こんな風にはなりたくないと心底思う。

 

「涼だってお酒好きじゃん」

 

「そんな昼からガバガバ飲む程依存してないわ」

 

そもそも俺にはそんな酒ばっか買う予算はないしね。伊吹瓢みたいなものがあれば別だけど現実はそんな甘くない。

 

カランカラン

 

音が鳴り自然にドアの方に視線が向く。

いらっしゃいませー。

 

「どうもー!清く正しい射命丸ですよー!」

 

入ってきたのは鴉天狗こと射命丸文だった。新聞を抱えてるあたり仕事の途中と言ったとこかな?

 

「いらっしゃい。何か飲む?」

 

「あ、ではアイスコーヒーでお願いします」

 

「へいよー」

 

そんな軽いやりとりをして準備にかかる。この子はうちの店にしては珍しいちゃんと払ってくれるお客さんだ。久々のまともなお客さんで嬉しい限りだね。自分で言っててなんか悲しくなってくるけど。

 

「どうしたんですか?泣きそうな顔して」

 

「なんでもないよ。気の所為じゃない?」

 

泣いてなんかない。泣いてなんかない。

 

「で、今日はどうしたの?」

 

アイスコーヒーを出しながら聞いてみる。

 

「今日の号外をもってきたんですよ。どうぞー」

 

そう言って号外の新聞を1部渡された。

 

「毎度毎度ご苦労様です」

 

「なんか私とは随分と対応が違うね……」

 

少しむくれた萃香が言う。そりゃそうだ。ちゃんと注文してお代を払ってくれる文と、ただ呑んだくれてグダグダしてる萃香との対応が同じわけがない。寧ろこれは当然の対応と言えるだろう。俺は悪くない。

 

「あ、こないだの霧の奴か」

 

号外の内容は赤い霧の異変だった。確かこないだレミリアがなんか企んでたとかどうとか。まぁ異変とかは俺には関係ない話だけどね。多少なり霊力があるとはいえ俺は殆ど戦えないし。

 

「結局霊夢さんが主犯のレミリアを倒して終わっちゃいましたけどね〜」

 

「まぁ要はいつも通りだな」

 

異変やらなんやらは大体あいつが解決する。それが巫女の仕事だとかなんとか。馬鹿みたいな霊力で妖怪だろうが神だろうが蹴散らしていく様はとても人間には見えない。

というかなんでみんなそう異変とか起こしたがるのかね。力の無い俺にはわからん。

 

「なんだかんだでみんな退屈してるんだよ」

 

「お前はいつも退屈してんじゃん」

 

「そんなことないよ。私にはお酒があるから」

 

ほんとそれしか脳がないのかねこいつは。そのうち病気になるぞ。

あ、でも鬼は病気とかかかんないのかな?その辺はよくわかんないや。

 

「私は記事さえ書ければ何でもいいですよ〜」

 

それは随分と仕事熱心なことで。まぁ異変なんて格好のネタだもんね。普段はヤラセとでっち上げだらけの新聞だけど、こういった時だけは嘘偽りなく事実だけで記事が書けるみたいだし。普段からそうすればいいのにね。

 

「失礼なこと言わないでくださいよ。これでも正確に迅速に記事を書いてるつもりなんですから」

 

「つもりなだけだもんな」

 

「つもりなだけだもんね」

 

「そんなことないですよ!」

 

キッパリ言い切った。嘘もここまで堂々としてるといっそ清々しいね。俺には真似できないよ。ほら俺ってすぐに顔にでちゃうタイプだから速攻見抜かれるんだよね。

 

「ほんとなんなんですか、2人して。お代払いませんよ?」

 

「すいませんでした。調子に乗りました」

 

机に手をついて全力で頭を下げる。それは本当にやめて欲しい。そんなことをされたらただでさえ少ない売り上げが更に減ってしまう。たった数百円でも俺には大切なんです。店は常に赤字なんです。勘弁してください。

 

「必死過ぎませんか………冗談ですよ………」

 

「なんか見てて哀れだよね…………」

 

お願いですからそんな可哀想な物を見る目で見ないで下さい。俺のSAN値がどんどん減っていく。しょうがないじゃん、金欠なんだから。お客さんこないんだから。てかこれもほぼほぼ白黒と脇巫女達のせいだ。あいつらがツケを払えば幾分かは楽になる。なんで俺がこんな目に合わなきゃならんのだ。

 

「そいや文は仕事の途中じゃないのか?」

 

無理矢理話題を変える。

あれ以上あの視線と空気にいたら死んでしまう。

 

「これは残りなんで大丈夫ですよ〜。今日の仕事はもう全部終わってます」

 

そういって脇の新聞をたたく。あら、そうなんだ。それは随分と仕事の早いことで。

 

「もうそろそろ涼さんの仕事も終わりですよね?」

 

「んーそうだね。もう夕方だし」

 

時計は7時過ぎを指していた。もうこんな時間か。話してると時間の流れって早いね。俺ももう歳なのかな?なんて、まだ十代だけどね俺。ギリギリだけど。

 

「ならこのあと飲みに行きませんか?」

 

「私もいく!」

 

文から飲みのお誘い。最近飲んでないし嬉しいお誘いではあるんだけど今月はちょっとやばいんだけどなぁ。でもまぁ偶にはいいかな?折角誘ってくれたのを断るのもあれだし。なんだかんだで俺もお酒が飲みたいのです。あとお前は反応早いな。今の今までずっと飲んでたでしょーが。

 

「そうだね、偶にはいこうかな」

 

「おろ?断られるかと思ってたんですが。金欠とか言って」

 

「偶には俺も飲みたいんだよ」

 

「涼も好きだねぇ」

 

「うっせ、お前に言われたくないわ」

 

「ふふっ、良かったです。では待ってるのでちゃちゃっと片付けちゃって下さい」

 

「へいよー」

 

そうして店を落とす準備に取り掛かる。

久しぶりのお酒だ。楽しんでいきたいね。

 

 

 




というわけで今回は萃香と文に登場して貰いました。

次回は飲み回になりそうです。

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