東方書迷録   作:SunoA

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今回はガールズトークに近い感じのお話、かな?




第9話〜勘って怖い〜

「はい、これが借りてた本ね。ありがと、面白かったわ」

 

「はいよ、確かに。楽しんでもらえて何よりだよ」

 

年が明けて早くも半月程の月日がたった。時の流れは速いものだね。そんなある日のお昼時、お店にきてくれたのは七色の人形遣いことアリス・マーガトロイド。うちの店では数少ない良識のある常連さんだ。

 

「じゃあ、いい時間だしお昼でも食べてかない?」

 

「今月もピンチなのね」

 

そう言ってアリスはクスクスと笑った。むぅ、別にそういう意味で言ったんじゃないんだけどな。というかここまで自分の貧乏が周りに定着してるのは如何なものなのか。誠に遺憾である。

 

「いんや、丁度お昼時だから誘ってみただけだよ。単に俺が話し相手が欲しかったってのもあるし」

 

基本暇だから話し相手が欲しくなるのです。

それに誰かと食べた方がご飯も美味しくなるしね。

 

「そう?じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

「是非ともそうしてくれ。てなわけで今日はお代はいいから」

 

そう言って調理にかかろうとした時、カランカランっと音と共に店の扉が開いた。

 

「いらっしゃいませー……ってお前か」

 

「何よ、私じゃ悪かったの?……ってアリスもきてたのね」

 

「ええ、こんにちは霊夢」

 

そう言って店に入ってきたのは霊夢だった。いやまぁ別に悪くはないけどさ。お前がくるとロクなことないじゃん。

 

「で、今日は何の用できたの?」

 

「タダでお昼ご飯が食べれる気がしたから」

 

そらみたことか。やっぱりロクなことじゃない。ってかなんでわかるんだよ。勘が鋭いとかそんなレベルじゃないと思う。

 

「いやお前は払えよ……」

 

「何よ、アリスだけ贔屓するの?そんなの不公平じゃない」

 

いやお前とアリスじゃ大分立場違うでしょうが。

常連としてきてくれてちゃんとお代を払ってくれて礼儀正しいアリスと、お代を全てツケで済ませて一向に払おうとしない霊夢じゃ扱いに差が出るのも仕方ないと思う。

 

「はぁ……わかったよ。作ればいいんだろ作れば」

 

とはいえ言った所でこいつは聞かないだろう。

このまま話しても拉致があかないと考え此処は引くことにした。

本当甘いね俺も。

 

「やった!やっぱりきて正解だったわね!」

 

ため息をつく俺とは反対に霊夢は小さくガッツポーズをする。

 

「貴方も大変ね………」

 

アリスが同情の様な哀れみの様な視線を向けてくる。全くだよほんと。とはいえいつまでも嘆いていても仕方ないので、頭を切り替えて調理に取り掛かる。

 

「で、メニューはなんなの?」

 

上機嫌になった霊夢が聞いてくる。

 

「きのこのパスタ」

 

丁度こないだ魔理沙に貰った奴があるし。パスタは作るのも楽だしね。

 

「魔理沙から……ってそれって大丈夫な奴なの?」

 

アリスが不安そうに聞いてくる。

 

「大丈夫だよ、これは前にも食べたことある奴だし」

 

流石の魔理沙も食べれないような物は渡してこない……はず………だよね……多分………。

若干自信がなくなってくるが少なくともこれは前にも食べてるんだし大丈夫だろう、うん。

 

「そう、それならいいけど」

 

まぁなるようになるさ。

それじゃ張り切っていってみよー。

 

 

 

 

 

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「アリスは相変わらず恋愛系ばかり読んでるの?飽きないわねぇ」

 

「いいじゃない別に。趣味なんて人それぞれでしょう?」

 

昼食を済ませて3人で談笑中。

きのこは特に問題ありましでした、美味しかったです。

 

「まぁそれもそうね。涼は普段どんなの読んでるの?」

 

霊夢がそんな質問を投げかけてくる。

んーどんなのと言われてもねぇ

 

「割と幅広く読んでるよ。バトル系漫画から推理小説まで色々と」

 

でもまぁ1番好きなのは推理小説かもしれない。こういうと年寄りくさいかもしれないけど、頭を使う感じのお話はいい頭の運動になるしね。

 

「幅広くねぇ。じゃあアリスみたいな恋愛系も読んでるの?」

 

「え、そうなの?」

 

霊夢の質問にアリスが期待の眼差しを向けてくる。

んー、残念だけど……

 

「いんや、そっち系は特に読んではないかな」

 

「な〜んだ、残念」

 

アリスが落胆の声を上げる。

 

「あら、そうなの。幅広く読んでるのに何でその辺は読まないの?」

 

「んー、なんというか、その辺は男としては手を出しづらいというか……」

 

一応俺も男だしね。少女漫画とか恋愛小説を読むのには若干の抵抗があるというか………。

 

「そんなことないわよ。男の子でも別にいいと思うわよ?」

 

アリスがそんなことを言ってくる。んーとは言ってもなぁ……

 

「と言うわけで読みましょう?今読みましょう?すぐ読みましょう?」

 

お、おぉう。やたらグイグイくるな。普段大人しい彼女にしては珍しい。やっぱりアリスもそっち系の話ができる仲間が欲しいってことなのかな。趣味がわかる人とのお話は楽しいもんね。

 

「わかったよ、また暇な時に読んでみる」

 

「言ったわね?絶対よ?約束だからね?」

 

「わかってるって」

 

次アリスが来る時までには読んでおかないとな。ここまで期待されておいてまだ読んでませんで済ませるのも失礼だしね。それで落ち込むアリスを見てみたい気がしないでもないが。

 

「というか他にそう言った話が好きな子はいないのか?」

 

俺よりも適任なんていくらでもいると思うが。

 

「普段私がよく会う友人達にそんな子いると思う?」

 

そう言われて少し考えてみる。

アリスとよく会うイメージの湧く友人というと、霊夢、魔理沙、パチュリーとか………。あぁ成る程、確かに駄目だわ。

 

「どう?いないでしょ?」

 

俺の表情から結論を想像したのかそんな言葉がかけられる。

 

「確かにいないな」

 

あのメンバーがその手の話をしてることは少し想像し辛い。寧ろ興味すら無さそうな感じだ。

 

「何か失礼な事を言われてる気がするわ」

 

そう言って霊夢がムッとする。

 

「じゃあ霊夢はそういうの読んだりするの?」

 

「いや全然」

 

うん、まぁそうだよね。霊夢だもんね。

というか霊夢に限らずそういったことが好きな子自体幻想郷に少ない気がする。いや、これは流石に偏見か。

 

「と言うわけで次くるまでに読んでおいてね。その時にまたお話しましょ」

 

「りょーかい。ちゃんと読んでおきますよ」

 

まぁ読んでみるいいキッカケになったと思っておこう。

 

「それじゃあ私はそろそろ帰るわ。お腹も膨れたことだし」

 

そういって霊夢が立ち上がる。本当にご飯たかる為だけにここまで来たんだねこの子。ここまでくると図々しいを通り越して清々しいまである。

 

「私もそろそろお暇するわね。帰って研究の続きしないといけないし」

 

そう言ってアリスも立ち上がる。

それにしても魔法使いはみんな研究熱心だねぇ。まぁ熱中出来るものがあるのはいいことだと思うよ。頑張って下さい。無茶だけはしないようにね。

 

「あいよ、今日はありがとね。楽しかったよ」

 

「ふふっ、こっちも楽しかったわ。またお話しましょ」

 

喜んで。

 

カランカランっという音と共にお店に静けさが戻る。

 

「さてっと……どの本がいいかな」

 

そうして俺は、アリスとの次のお話の話題になる本を探し始めた。

 

 

 

 

 




気が付けば前回の投稿から8ヶ月近く経ってしまいました。

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