貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです   作:カルメンmk2

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 お久しぶりです。

 ちょろちょろと書いていたため、What,s?な部分もありますがご了承ください。

 蒸発なんかしませんよ。ええ、しませんとも!



















P.S

 みんな、FGOの福袋は何が出ましたか? 私はキングハサンとヒロインXが出ましたよ。宝具レベル2だね!!




嵐は去り、ヤツが来る

 

 

 ――そうか。真っ二つにすればいいんじゃないか……――

 

 天啓を得たかのように呟かれたそれは襲撃者らにとって死刑宣告に近いものだった。

 先ほどとはうって変わって、戦闘力や機動力を削ぐ手足狙いから首や胴体を狙う殺意に満ちたものになったのだ。

 ナイトレイドしかり、覆面しかり、二人ともこの世界最強の都市(オラリオ)ではある程度の強硬手段に訴えられ、かつ遂行できるという実力者である。覆面はナイトレイドに実力こそ遥かに劣るがそれ以上の知識がある。ナイトレイドは知識量こそ覆面に劣るがその実力はオラリオで一線級だった。

 戦いにおいて状況(ながれ)を機敏に察知するという経験則(セオリー)は彼らに味方していた。

 

 ――振るわれる剣閃に殺意がのった。ただそれだけ。

 執拗に首を狙われ、時折、袈裟切りを狙ってくる。避けることが困難な攻撃はナイトレイドが防戦一択になるほどに苛烈にして繊細だった。覆面が迂闊に加わろうものなら、足手まとい(じぶん)のせいで均衡が崩れ、その後に屍を晒すことになるだろうと……。

 

 

(これがレベル1? 馬鹿げている………!)

 

 

 死の旋風がナイトレイドに吹き荒ぶのを覆面は黙ってみているほかない。頼みの魔剣も使えるのは残り二つの欠陥品だけ。

 主の忠告を真摯に受け止めるべきであった、と後悔するもそっち(・・・)の装備は足が付く。手持ちの兜の効力を疑うわけではないがそれらを無視するような連中がいるのもまた事実だ。必要以上の手札を晒さずに済めば万々歳なのだから。

 

 

疫病男(ポプヌス)に力は劣るが速度と技量はそれ以上だという触れ込みじゃなかったか? レベル6なのに……)

 

 

 あってはならないはずの状況に、覆面は主の忌避感と危険視をようやく理解した。

 レベル差は覆らないという神々の摂理を破る不届きもの。背神者とさげすまれるべきもの。

 いや、冒険者(われわれ)誇り(プライド)を……希望、熱意、存在理由を土足で踏みにじり、それを許されざる罪と認識しない愚か者!

 

 

(だとしても取れる手段がない。魔剣はもう使えない)

 

 

 単純に殺すだけなら方法はある。その代償として自分も道連れになるという無視できない欠点があるためその手は使えない。

 お前だけは生きて帰ってこいと命ぜられている。ナイトレイドに使わせるのも一つか………?

 

 

(――――そうなればネメシスファミリアとの抗争は避けられない)

 

 

 主曰く、一癖も二癖もある団員をペットか玩具のように大事にしている女神とのこと。共通するのは一人一人を愛でており、その在り様も意志も決意も何もかもを愛おしいのだとか……。

 最近のお気に入りはこのナイトレイドらしく、依頼するときも死なせないことを条件に付けられたそうな。

 ―――あんなところと抗争などしたら一日と持たずに皆殺しにされる未来しかない。

 

 

(仕方ない。あわよくば、とはいかなかったが本命は完遂して見せよう)

 

 

 火花が残す残光が明るい空間を一時だけ強くさせる。

 迫りくる死によくも耐えていると褒めてやりたいほどに、ナイトレイドは凌ぎ続けている。奇襲の先制かカウンターが主体の奴に防戦一方で封じ込めるとはそれほどなのか。攻め込めると思う時ですら攻め込まない。

 残光で軌道がわかる分、武芸に秀でていない自分には手抜きとしか見えないのだが1級にしかわからない駆け引きというものがある? 今の脇腹は切り捨てるにはもってこいだと思うが…………。

 

 ………目的そのものはすでに果たしているのだ。これ以上を望むのは愚か者のすることとしよう。

 あの弓使いのことも調べ上げて報告しなければならない。

 

 

「退くぞ」

 

 

 ――と言っても退けるわけがない。容易く逃げられたであろう数舜前は自尊心と忠誠心で投げ捨てていた。ことに至っては追い詰めて狩る側が追い立てられて狩られる側となっている。

 そのうえで弓使いと(おぞ)ましい幼女の戦いも終息気味になっていた。

 

 もしやすべては(はかりごと)で、今までの栄光は夢なのか。

 我が主はどこぞの神に嵌められたのか。体のいい噛ませ犬にしたてあげられたのか。

 

 思索にふけっていれば、多くはないが少なくはない量の水物が叩きつけられる音がした。

 ナイトレイドが左腕を垂れ下げている。並の金属よりは頑丈な戦闘衣(バトルドレス)からピンク色の肉面や真白いものが血とともに晒されていた。

 それはつまり―――

 

 

(この男………!!)

「間合いは半歩外。服は堅い。―――もう、覚えた」

 

 

 ―――完全に捕捉されたというほかならない。

 ナイトレイドの傷はもはや浅くはない。今すぐにでも高等回復薬(ハイポーション)か離脱後にエリクサーを使わねばならない状況となっている。

 ――――軽度の損失を恐れている場合ではない!

 

 

「敵を祓え!!」

 

 

 これ以上は使わないと決めていた短剣を握りしめ、叫ぶ。

 こんな上層も上層では起きるはずのない強さの風。風の壁と言っても差し支えのないそれは剣姫の魔法を遥かに超えて我々の視界をゆがめた。

 歪む風景の中、あの男が剣を振りぬいたのを最後に我々は人っ子一人もモンスターもいない場所に寸前の体勢のままでいた。

 

 

「逃げ切れた………?」

 

 

 ともすれば、安堵のためか全身から汗が吹き出してくる。先ほどまではさしたる乱れもなかった呼吸がひどいものとなり、短剣を握っていた腕の感覚が無くなって、じくじくと熱を帯びていた。

 吹き出す汗が変装するための衣装を濡らし、湿り気を帯びて貼りつく布をはぎ取りたいとさえ思う。しかしそんなことはできない。いつどこに人の眼があるのかわからないのだから。

 

 それよりもナイトレイドを治療しなければならない。真実を知るものは一人でも少なければいいと思うが、治療もせずに死なれるとその先はネメシスの怒りが待っている。主も神のウソを見抜く力を誤魔化す道具を所望しているがそれは何時できるのやら……。

 

 酷い倦怠感とともにナイトレイドの左腕にハイポーション――――ではなく、エリクサーをかけようと―――

 

 

「―――――――あ……?」

 

 

 ―――としたが、肝心の腕がまるで折れたように直角に垂れ下がっていた。

 握っていた短剣はその特性上、塵も残さず朽ち果てるから気付かなかったのだ。

 ――僅かな部分を残して腕が垂れ下がっていた。そして重さに負けたのかブチりと生々しい音を発てて地面に落ちていく。

 

 

「アガァッ! ぎぃいいいいいいいい!!?」

 

 

 刹那、激痛が走り、家畜の鳴き声のほうがよほどマシと思える叫び声がダンジョンに木霊する。

 腕そのものが斬られたことを意識していないのか残りの血を心臓へ送り出していく光景は(おぞ)ましいというよりは滑稽であった。

 心臓の鼓動とともに一定の間隔で血を吐き出す腕を覆面は悶絶しながら拾う。切断面を体のほうの切断面とくっつけ、半ば狂乱した状態でエリクサーをぶちまけた。

 

 

「か、はっ――――!!!」

 

 

 聞こえはしないが小さなもの―――神の言う細胞とやらがくっついていく音が身の毛をよだたせる。

 傷口も烈火のごとく熱を持ち、真っ赤に焼けた鉄でも押し付けられているのではなかろうかと幻視する。いや、むしろそのほうが幸福であると断言できるぐらいの苦痛であった。冒険者がエリクサーを使わないようにする理由がわかる気がした。

 

 息も絶え絶えにぶるぶるとうずくまっていると石を踏むブーツの音がした。

 咄嗟に投げナイフを投擲しようとすればくっついたばかりでエリクサーが滴る癒着部分に鈍くはない鋭い爪が抉り込まれ、ぐちぐちと肉を抉りつぶされる痛みとそれを直そうとする激痛に絶叫した。

 

 

「見ィーっけた」

 

 

 ―――そして目を覚ましたのは泣きつく仲間と怒りをこらえる主神がいる自室だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 リリルカ・アーデにとって冒険者とは理不尽と暴力の化身である。なぜなら些細な理由で手が付けられないくらいに暴力的になる脳筋(トロール)|だからだ。

 

 

 リリルカ・アーデにとって白い兎と青年は貴重な仲間であった。今は憎むべき相手だ。なぜなら自分でも大切にしていた心を失わせたから。死に物狂いで死なないようにギリギリを生きてきた自分を遊び半分で飛び越えた裏切者(チート)|だからだ。

 

 

 ――――結局のところ…………昔、貸本屋で読んだ迷宮英雄譚(ダンジョンミィス)|は所詮、作り話でしかないということを今になって悟ってしまったのだ。諦観してしまったのだ。閉じこもってしまったのだ。

 だからこそ彼女は白い兎(天才肌)に|ドブネズミ(自分)|の悪意を叩き込んで穢してやると息巻いていた。

 息巻いていたのだった……―――――

 

 

「理不尽すぎる」

 足を狙ったボウガンが避けられた。

 

 

「何故こんなにも差が出る」

 皮装備(レザー)程度なら容易く切り裂く鋼線の中を駆けてくる。

 

 

「なんでそうまでする」

 魔道具の電撃を受けても止まらない。

 

 

「見せつけたいのですか」

 毒煙の向こうから怯まぬ視線を感じる。

 

 

「お前と違うって」

 私に語り掛けてくる。

 

 

「悦に浸りたいのですか」

 綺麗な言葉をかけてくる。

 

 

「弱者に手を差し伸べることで」

 そんなことを無いと目の前までやってきた。

 

 

「どうなんですか!?」

「一緒に冒険がしたいから………君とシグレさんとまた一緒に冒険がしたいから……!」

 

 

 ――僕らは君を探していたんだ!――

 目には見えないし、肌で感じることもできない。

 しかし、見えざる、感じざる衝撃がリリルカ・アーデを揺らした。そんなことのために苦痛を受け続けていたのですか? 思わず口に出た心の声だった。

 

 

「そんなことじゃない。とても、とても大事なことなんだ」

他人事(むかんけい)でしょう!?」

「関係あるよ。僕らはパーティーで仲間じゃないか」

 

 

 彼は酷い有様だ。

 電撃の火傷、手足からは血が滴り、毒によって顔色は悪い。

 満身創痍というほかない、そんな有様だった。

 

 すごいことだ。意志の力で痛みも苦しみもねじ伏せているのだろうか。

 自分には真似できない。できるはずがない。出来ないから劣等感を刺激させられる。

 

 

「これだけ傷つけられているのにまだそんなこと言うのですか」

「これぐらいしか負けないものがないからね」

「あれだけの罠を掻い潜ること自体が強さの証です。場合によっては死ぬかもしれない罠を混ぜてました」

「でも死んでないよ。手加減、してくれたから」

「……………そんなの偶然と未熟の結果でしかありませんッ」

「だって、“死ぬかもしれない”ものだったんだろ? ならそういうことだと思う」

 

 

 心の古傷が痛む―――

 

 

「ダンジョンならモンスターが食べちゃうから。目撃者も霧のせいで出るはずもない。ロキファミリアが動くほどの大ごとでもない」

「ぅ、あ……」

「君は優しい子だよ。とっても優しくて、優しすぎるから辛かったんだよね」

「ち、ちが――」

 

 

 ―――――やめて……。

 

 

「ごめん」

 

 

 ―――――それ以上は……。

 

 

「もっと早く伝えるべきだった」

 

 

 ―――――聞いたら……!

 

 

「僕の………僕たちの家族になってくれないかな、リリ」

 

 

 ―――――私はもうッ……!

 

 

「一緒に冒険しよう」

「―――――私は……『見つけたぞ、クソガキども』ベル様ッ!?」

 

 

 望まれない闖入者の剣が小さく、最短でベルの背中へと振り下ろされた。

 リリルカの悲鳴が闖入者の気をよくさせたがそれもすぐに驚愕から不快感、果てに怒りへと移り変わった。

 腰に収めていたヘスティアブレードが抵抗を感じさせることなく、地面へと凶剣を流したのだ。

 

 

「急に何ですか?」

「――――テメェ……俺を忘れたってのか、アァ!?」

「忘れた?………リリは知ってる?」

「え、えっと前に絡まれて……路地裏でも………憶えていらっしゃらないのですか!?」

「すぐにリリを探し出そうってなったからあんまり……」

 

 

 本当にあんまりなことだった。あんまりすぎて、なんか……あんまりだった。なんと言えばいいかわからないがあんまりだった。

 

 

「し―――――」

「?」

「死にさらせぇええええええええええ!!!!!」

 

 

 やっぱり始まりもあんまりだった。

 

 

 






 随分と遅れてしまいましたが、待ってくれている方々が1500以上もおられました。
 ならもっと早く仕上げろよと言われそうですが、何分、モチベーションがね?

 冒頭の通り、決して蒸発はしないよう心がけていますとも。
 ただ、鉄血のオルフェンズに浮気し・そ・う♪

 というわけで、久々の解説行くよー!



『時雨永嗣』
 ガチ殺すモードに移行した姿は対峙する者に恐怖を与える、なんていうぐらいに殺気立っている。
 一切の容赦なく致命傷を狙うため、相討ち狙いで行くと本当に相討ちなる。下手を打つと自分だけ死ぬなんてことも。
 最後の空振りでは、無意識のうちに空を斬っていた。


『ナイトレイド』
 主人公の猛攻を腕一本で耐えたことから、実力はオラリオで上から数えた方がいいぐらいに位置している。
 戦闘衣はミスリル糸や急所部にアダマンタイトとそれの糸で織られている特注品。これ一つで中型の一軒家一つが家具付きで買える。


『覆面』
 自らの主神に忠誠を誓っているのが窺えるぐらい、非常に打算的で冷静だった。
 ついていなかったのは離脱する際、思いきり腕を斬り落とされていたことだろう。実は、かまいたちに切られたように断面は綺麗だったため、上級のポーションで腕はくっついていたりするのだが……。


『ベル・クラネル』
 原作と違い、かなり図太くなっているし、これからも図太くなる。
 闖入者のことを欠片も覚えていなかったりと割とイイ性格しているのかもしれない。
 だが、リリが仕掛けたトラップを負傷してもかいくぐるという漢解除から見るに、原作の勇ましさの片りんが見えている。
 しつこいようだが、ゲドのことは本当に覚えていなかったりする。


『リリルカ・アーデ』
 漢解除を見てキュンキュンしちゃっている年上さん。
 比較的、短時間で罠を仕掛けられるなど、相当に手先が器用だった。罠自体も避けられるぐらいに致命傷の高いものばかりだったが、ジャックからの情報とこれまでの実力から推定したものからベルの実力を予想していたりする。


『ゲド・ライッシュ』
 あんまりな人。ほんと、久々の登場なのにあんまりな扱いの人。作者もあんまり印象深くないため、あんまりな扱いしかできない。
 

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