貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです 作:カルメンmk2
さすがにお気に入りが減ると危険だと思うカルメンです。
以前に投稿したエピローグの部分を継ぎ足して、再構成したものですが個人としては淡白に仕上がったと思っております。私の限界、ここにありだね!
終わってみればあっけのないもので、オラリオはその名声をだいぶ落として平常運転に移行していた。
何せ、その大半が荒くれでしかない冒険者が日夜活動する街だ。器物破損に殴り合い。一般人への恐喝、暴行などなどそういったことには事欠かない。
問題は外部から来た部外者たちだ。
本当のモンスターの脅威を知らない、観光や商売目的でやってきた外の人間たちをどう取り戻すか? ギルドが悩ましているのはそれと、治外法権を牛耳るカジノ出資国からの突き上げだった。
もちろん、レベル6の死亡は耳が痛いことだが幸いにして
醜い男より、綺麗な美少女のほうが今後としても影響は大きい。
ただ、殺害の下手人である冒険者の処遇を如何とするか? ヒトの手に負える状況ではなく、神々の
―――でっぷりと肥え太ったエルフのロイマン・マルディールは血の気のよかった贅肉を真っ青に、声とも取れない奇声を漏らしていた。
なお、その隣には青髪のパルゥムが邪魔したら殺すと言わんばかりの怒気とともに、品質の割にくそ高い紙にペンを走らせていた。
「――――森に帰りたい」
「復帰のから第一声がそれか、贅肉ダルマ!! 俺だって、家に帰りたいわ!! むしろ還りたい! 還って、ネットを荒らしつつ、炎上して罵り合う馬鹿どものコメントに添削して、如何に馬鹿で傲慢なのか諭してやりつつ、酒を飲みたい! あー!! 酒が飲みてーなぁああああ!!」
「うっさい。仕事しろ。わしの代わりに仕事しろ。もっと贅肉と金を増やさせろ」
「死ね! 氏ねじゃなくて、死ね!!」
それを仲がいいなー、と見ているのは包容力満載の美女マタ・ハリである。といっても、今しがた彼らが缶詰め状態の執務室に来たばかりだ。
彼女はお疲れ様です、とディアンケヒトファミリア製【24時間働けますか? 答えは聞かない】を差し出した。
それを見た瞬間、二人の顔が絶望に染まるのだが割愛する。
「それでっ! 何か追加報告はあるのかね、ふぅううう!!!」
「当初の通りですわ。一番の損害はレベル6が死んだこと。次点でVIPの荷物が増えていたことでしょうか」
「それはいかんな! フレイヤファミリアでも煽って、突撃させよう。そうすればデカい顔もさせられないぞぉ! 両方共だ!! 共倒れしろプリィイイイイイジッ!!」
「――――ねぇ、キャスター。このお薬ホントに大丈夫なの?」
「YO! マタ・ハリ! 肌の艶もHARIHARI!! 全てノープロブレム! 気分がサイコー、俺もPSYCO! Hoooooooooooo!!」
キィ、パタンッ。
エイナー!
はーい!
ちょっとディアンケヒトファミリアに査察入れてー。
仕事増えますよ!?
こっちも重要だからお願いねー。
あ、ちょ!? マタ・ハリさんのバカぁあああああ!!!
そんなことはつゆ知らず、ヘスティアファミリアの
怪物祭が終わって、はや二日。永嗣は
適切な処置と
ミアハは深くは聞かなかった。霊薬を用意できるようなファミリアがこんな場末の診療所に怪我人を連れ込むはずがない。厄介なことがあるのだろう。
そのことを後日知ることになったのだが、彼は医神であり、オラリオでは数少ない
ヘスティアはというと、助けにも来ない家族が本当に殺されかけて、実際に死にかけているのを見て狂乱状態になりかけていた。運んできたムメーに神威すら使ってことの顛末を聞き出そうとしたぐらいだ。
結果は、こちらの買った恨みが廻っただけというやるせないものだ。
家族ができたのに失いたくはない。彼女はバイトを休んでも看病すると宣言したが、霊薬で怪我はほぼ完治している永嗣に諫められ、後ろ髪を引かれる思いでバイトに勤しんでいる。帰ってくると看病をするのだが、快復へと向かう彼にやんわりと断られるのが最近の日常だ。
もう一人の家族、ベル・クラネルは着々と力をつけていた。
以前のように一人で潜ることになったが今回の一件で大幅にステイタスが飛躍し、浅い部分での力と感覚のすり合わせに終始している。このままいけば、7階層への到達もすぐに訪れるだろう。
気になるのは助けてくれた女性の冒険者がどこの所属かわからないこと。自身の担当であるエイナ・チュールではなく、ハルバルスという男性がしつこく聞いてきたことが頭の隅に残っている。
さて、ベルはそこまで永嗣の心配はしていない。自分も死にかけたが、
そして―――――
「そういえば、神様、シグレさん」
「なんだい?」
「ん?」
「この前、広場でサポーターって、人と契約したんですけど…………いいですか?」
「サポーターかい? んー………そうだね。シグレ君もこんなだし」
「こんなとはなんだ」
―――アイダァ!!? 神様にデコピンするなんて、どういうつもりだい!!?
―――うっさいわ。もう動けるというに、何時までもベッド………じゃない、ソファ生活なんぞしてられんわ!! 早く外に出せッ!!
―――
―――自分の体ぐらい、自分が一番わかっておる! ええい、これからダンジョンに行くぞ、ベル!!
―――ちょ、もう夜ですよ!? それに僕の話を聞いてくださいよ。
「で、サポーターだったかな」
「そうですよ。大分、疲れましたけど」
「本人はふて寝しちゃったから気にしなくていいよ。そのサポーター君は信用できるのかい?」
「イイ子ですよ? もう少し気安いと嬉しいんですけど………」
「そうかい――――待ちたまえ。イイ子?」
「はい」
「…………………まぁ、勘弁してあげるか」
「何か言いました?」
「なんでもないよ。シグレ君も戦線離脱気味だし、僕たちは不安定だ。立場も何もね」
「わかってますって。でも、正当防衛だったんでしょ?」
「ムメー君が言うにはね。ロキも追認してるから、
「肝に銘じておきます」
「よろしい。じゃあ、寝ようか」
「床で………」
「ダメだよ。ベッド一緒に寝るんだ」
「………………はい」
「彼は死んだようだね」
「………」
「んっふっふー。そんな憎悪を向けないでおくれ、可愛いお人形さん。君が望んだことじゃあないか。君はかなえたじゃあないか。だったら――――わかるね?」
「………………………!!」
「くっふっふー。神はみんな善い神だとでも? 残念っ! 神に善いも悪いもない! 君たちが勝手に押し付け、妄想して、願望して、勝手に嘆いただけさっ!」
「…………」
「押し付けられた役目の通り動いているだけさ。復讐も医療も大衆も時も戦争も! 神というのは機構――――まあ、わからないだろうがそういうものだ。そこに
「………………!?」
「あっはっはー! そうだとも。君はそうなる
「―――――」
「おや? 少し喋りすぎてしまったね。まあ、いい。君は何も覚えていない。なぜなら君は私のお人形。可愛い可愛いお人形。
「フレイヤも酷い手傷を負った。
うんうん。
なんとも素晴らしいことだ。
憎悪が渦巻いている。
これこそが世界だ。
これこそが理だ。
さあ始まるぞ。
始まるんだ。
ここが幕開けの時だ!! あっはっはっはっはっはっは!!」
「――――以上が最終的な被害となります」
『………その冒険者はいずこに?』
「ハルバルスからは本拠地に戻っていると。構成員もどのような経由で帰ってきたのかは不明で、ミアハファミリアに立ち寄ったとしか……………」
『……………ロイマン』
「はっ」
『ロキとフレイヤ、ネメシスに監視を向けよ。そしてフェルズ………早急に奴らの隠れ家を見つけ出せ』
「使い魔を放とう。見つけられれば追いかけられる」
『うむ。ロイマン、お前は下がれ』
「ご下命、必ずや果たします。では………」
―――――――フェルズ……。
『―――どう思う?』
「どう、とは?」
『奴らのことだ。目的がわからぬ。もしや――――』
「そうならないよう、最大の注意を払ってきた。隔離もしたし、隠ぺいもした。ロキとフレイヤは予想外だったが修正できる範囲でしかない」
『……………そうか。お前の首尾はどうなのだ?』
「すぐに出るものでもない。時間は………気付かれさえしなければいくらでもある」
『その通りだな。両ファミリアについては私が対応する。お前は予定通りに………』
「承知した。全ては大願成就のために」
『悲願成就のために』
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今回は後書き説明は無しです。思えば、アレが問題だったのだろうか?