貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです   作:カルメンmk2

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 今回こそは書ききるぞー!!


第一章:老剣士、世界を越えて
儂、英霊になります


 ここは北半球は、日本という島国の冬木というこれといった産業もなく、ただ一人の老人が街のシンボルになっている。そんな街。

 そんな街で、周囲から取り残されたような出で立ちの武家屋敷がぽつんと建っていた。国から文化遺産だとか、保存すべきだから退去して下さいとか。とりま、そんなことをよく言われる家主は縁側に座り、月を眺めていた。

 

 この翁、齢は120を超え、現在の世界で最年長の老人である。翁の生涯において、世界は波乱と騒乱に満ちあふれていた。特筆することはない。人の世は何時いかなる時でも波乱と騒乱と一緒である。

 

 翁のそばには誰も居なかった。いや、この大きな屋敷にも、彼の住む街にもほとんど人は居なくなっている。世界中、どこを見ても似たような状況だろう。

 世界規模のパンデミックや食糧飢饉。一部の独裁者共が始めた暴走を始めとした世界規模の戦争。この国が保ち続けていた平和はとうの昔に終わり、大国に迎合し、国内でクーデターを起こそうとしたバカどもを粛清して大義名分を与えてしまった。

 

 

「気づけばもう、百年以上も昔か」

 

 

 この歳になってもはっきりと見える目は、遠くにある丘を見ている。二十代の終わりごろまでは存在していた古い洋館があり、今は亡き妻が育った家があった。義姉の方はイギリスへ渡り、四十年ほど前に病没してしまっている。妻はそれよりも前に急死し、義姉とその旦那であり、大切な友人が一時どこかへ連れて行ったことが未だに謎である。

 どこへ連れて行ったのか? それを知る者は皆死んでいる。かつてあった高校で巣立っていった同級生は、自分以外にもう存在しないのだ。

 義姉の旦那も彼女より早くに死んでいる。戦地でのことだ。

 

 

「―――ああ……………寂しいなぁ」

 

 

 寂しいなぁ、と思わず呟いてしまう。したって戻ってくるはずもない。でも、呟きたかった。

 妻の位牌に目を向ける。

 プロポーズして、結婚して、子供を授かり、巣立ちを見送って、孫を見せに来て………。

 子供が先に死んで、妻が先に死んで、孫がひ孫を見せに来て、孫が死んで。ひ孫も死んでしまった。誰も居なくなってしまった。

 それでも世界は廻り続けている。失ったものを取り戻すように世界は復興へと向かっている。廃墟となっていたこの冬木の街も家が建ち、まるで豆腐のような家屋がぽつんぽつんと建ってきている。どんな理由か戦場になったこの街は、業者が買い叩くぐらいには価値があったらしく、ゆくゆくは大都市にしてみせると鼻たれの小僧であった市長が演説していた。

 

 

「………………月が綺麗だな」

『あら? 口説いているのかしら?』

「ッ!」

 

 微睡(まどろ)んでいた思考が一瞬で変わる。年齢に見合わぬ屈強な肉体――ではなく、ここ数年で衰え始めていた肉体にしては驚異的な反応と身体能力で飛び退く。

 声のした方を向けば、懐かしい顔の金髪赤眼の少女がこちらを見下すように見ていた。

 

 

「え、衛宮…………?」

『違うわ。誰かしら、それ』

「ならば幻か? それとも……………儂を不愉快にさせに来たか?」

 

 色々な意味で敵の多い自分に誰かが差し向けた刺客であろうか。しかし、この少女からは恐怖は感じても、殺意は感じない。距離を取るこちらに少し寂しそうに見る。

 

『―――少しは期待していたのだけれど……………やっぱり、か』

「―――いやさ、失敬。急に現れたが故、許しておくれ」

『別に怒ってもいないし、寂しがってもいないわよ』

「そういう輩は大概そう思っているものだ。しかし、面妖だのぉ」

 

 

 見れば見るほど、かつての義姉に見える。髪の色も瞳の色も違えど、その見た目というか感じ方が時折見せた彼女にそっくりなのだ。

 高くとまっていたあの立ち姿も。呆れているくせに旦那を気遣うその表情も。結婚を認めてほしいと挨拶にいったときの修羅のごとき形相も。

 そのどれもに、大切な者への想いが宿っていた。贅肉だ、贅肉だとぼやいていたが無駄な贅肉などついておらなんだというのに。――――胸か?

 

 

『不敬よ、あなた』

「やんごとなき身分か? であるならば失礼しますぐらいは言えんのか」

『あのねぇ』

 

 

 額に手をやって呆れてものも言えないと言わんばかりに首を振る。どこか不快感を感じつつも、まぁいいかと自分を納得させるようにため息を吐く少女に、まるで大人に仕方ないと許されるような気分を味わう。

 

 

『はぁ……………なんというか、何か感じるものはないのかしら?』

「何もないな」

『鈍感ね。―――――貴方、もう死んでいるのよ?』

 

 

 ――――なるほど、やはりそうであったか。

 

 

『驚かないのね』

「必要もい。むしろ、さっさと迎えに来いと思わんばかりだったよ」

『普通は死を恐れるものだわ』

「長く生きるとそうでもない。ようやっと、皆のところに逝けるとすら思っている」

 

 

 独りは寂しいものだ。ただ、妻には後を追わないでくれと泣かれたからそうしていたまでのこと。

 

 

「――――いや、違うな」

 

 

 そういう気も起きないぐらいに大変だったからかもしれない。

 何せ、あの日以来、自分は負けなしの剣士である。国から親善大使やら剣道の世界貢献だの言われ、妻が死んでも悲しむ暇もそこまでなかった。何か虚しさを感じる前に教え子たちが先生、先生と慕ってくるから、それが原因だろう。

 

 

「なるほど。独りではなかったのだな」

『そうね。随分と慕われているのだわ』

「そうか」

『そうよ』

 

 

 ここ最近、人が来ないと思っていれば――――単純なことだ。ここは妄想の世界…………死後の世界であったのか。どうりで、なるほど。

 綺麗さっぱりに平地にされた冬木が復興できるはずもなし。この武家屋敷が残っているはずもない。

 

 

『やっぱり妙な魂ね。現実を知って、それでもなお正気を保っているなんて……』

「正気ではない。もう狂っておる」

 

 

 狂っておらぬ人間が、風を裂こうと思う筈もない。

 そうだ。自分の最後は――――

 

 

「斬ったのか」

『驚くことに斬ったわ。神代の人間でもないはずの人間が、文明を圧し潰さんとする大嵐を両断したのだわ。本当にありえないことだわ』

「ふむ。風に至ったか」

 

 

 随分と長い年月を経て、そこまで到達できたようだ。なるほどそうか、なるほど。なるほど……天晴である。実に天晴である。

 

 

「あの小僧は無事だったか」

『死んでいたら、貴方の偉業が世界に知らされるはずもないわ。貴方知ってる? 剣神とか言われて祀られているのよ?』

「そんな上等なものか。ただの死にぞこないの人殺しであるというのに」

『卑下するものじゃないわ。戦いに犠牲はつきものだわ』

「さようか」

 

 

 どうも、この義姉モドキは人とは違う視点を持つようだ。帰ってきて言われた言葉が殺人鬼と罵られたものだが………まぁ、その輩も命の危険が迫ってくればくるりと手のひらを返したが……。

 さて……人でないのなら、この人ならざる者は何用でここに来たのだろうか?

 

 

『話がそれたわ。――――貴方、英霊に成るつもりはある?』

「ない」

『そうよね。成りた――――って、えぇええええ!!?』

「七面倒くさい」

『戦士なら、英雄に憧れるものではなくて!?』

「ないな。赴くままに剣を振っていたらこうなったまでのこと」

 

 

 戦争の英雄なんてものは、どれだけ殺したかぐらいにしかならん。英雄ともてはやされる連中は、全員、望んでなったものではないと思いつつも、仕方がないと受け入れていたぐらいだ。

 誰だって夢があったのだ。自分はただあの日の侍を超えたいと。医者になりたい。野球の選手になりたい。サッカーの選手になりたい。つつましやかな願いもあった。先にも言った通り、自分はあの日の侍を超えたいと思っていた。

 

 

「自分勝手な願い事よ。妻を娶ってからは随分と薄れたが、居なくなったらまたぶり返してきおった」

 

 

 その結末が大嵐を切り裂くという気違いを行ったのだろう。嵐を裂いたとき、空をも割ったのだ。

 

 

「もう一度やれと言われてできる物でもなし。まあ、一度できたのだ。二度目もあるのだろう」

『感傷に浸るのはいいけど、こっちを聞きなさい』

「儂のような時代遅れなど、不必要じゃろ?」

『それは現代が決めることよ。私が貴方を英霊に誘うのは過去のためだわ』

「過去、とな?」

『ええそうよ。貴方の今まで生きてきた時代を守るため…………あるいは、これから現れるだろう獣に備えるために』

 

 

 獣というとアレだろうか? どこぞの動物園からライオンやトラといった猛獣が逃げ出すのか? それとも、人間がまた何かしら引き起こすのか?

 

 

『違うのだわ。人類悪のこと』

「神が滅ぼすべきものでは?」

『神と人は袂を分かっているの。私があなたの目の前にある理由は依り代の縁と冥界の女神だから。この国の女神に無理を言って代わってもらったの』

「神ときたか…………それにしても……うぅむ」

『あら? 今更、命乞いかしら』

「いや、貧相じゃぉおおお!!?」

『どこを見た? いえ、どんなふうに呵責されたいか言いなさい……!!』

 

 

 義姉と同じコンプレックス持ちだったとわ……! ぬかったわ!!

 

 

「話を戻してくれんか? ほら、儂って死人じゃし。冥界の女神とやらならば逃がすことも逃げられることもなかろうよ」

『………覚えておきなさい。人類悪について、だったわね。それはね―――』」

 

 

 人間の社会から生まれた澱み、もしくは積もりに積もった澱で人類社会を滅ぼそうとするものを指すらしい。これは時に獣とも呼ばれ、第5の獣まで倒されているそうだ。

 厄介なのは、人類が発展すればするほど、その負債である人類悪も強大になり、倒すのにはそれなりの代償や労力を必要とする。

 

 

「聞けば聞くほど、物騒な……」

『そしてそれを倒すのは人間でなければならない。今を生きる人でなければならいの』

「ふむん? 儂は死人じゃが?」

『生者ではないわね。でも、英霊ならなければ存在すら危ういところなの』

 

 

 人類悪とは人類が倒さなければならぬもの。いや、越えねばならぬものだ。

 そしてそれは今を生きる最新の人間が行うこと。その倒し方は様々なものがあるようで、血を流さず、救いのある戦いでもって第4の獣は消えたという。

 そんな綺麗ごとのような奇蹟で消える人類悪もいれば、文字通り討たねばならぬような化け物まである。

 

 

「しかしだ。英霊とは偉業を成し遂げたもの。儂は嵐を裂いただけだが……」

『その嵐が人類悪の生み出した脅威なのだわ。知らず知らずのうちに、人類を救っていたの』

「それはそれは………儂の気違いが人を救うとは。長生きはするものだ」

『気違い…………間違いではないわね』

 

 

 応とも、と返事をする。だって、どこの世の中に気紛れで嵐を斬ってくるという爺がいるものか。あ、儂じゃ。

 聞けば斃したのではなく、撃退したというだけらしい。しかし、撃退した結果、人類がさらに発展してもっと強力になるのだとか。尻拭いをしろということだろう。

 

 

「大人の負債を子供に背負わせるわけにもいかんか」

『格好つけてても、震えているわよ?』

「武者震いじゃよ。焦っているわけじゃないからの」

『どうだか』

「年寄りに恥をかかせるんじゃない!」

『私はあんたより年上よ』

「じゃ、BB―――」

 

 

 ジャキン、とこの女神には見たこともないような形の得物が握られていた。そしてそれは儂の首にそえられている。

 

 

『次はない』

「はい」

『よろしい。―――――――――随分と甘いわ。影響されすぎたかしら………………?』

「ん?」

『気にしないで。じゃあ、貴方には試練を受けてもらうわ』

「試練、とな」

『そ……………貴方、いくら英霊候補といっても新しすぎるの。だから、これから現れるであろう人類悪には無力なの』

「……………………お主、女神じゃろ? こう、伝説の武器ー! とか、加護を与える! とか無いのか?」

『あるわけないのだわ。そもそも、人間が神と袂をわかったの。都合のいいときだけ神頼みとか、どう思う?』

 

 

 自分たちで歩いていける。あるいは、自分たちは巣立った―――女神はそう告げた。

 その様子に対して、特に何かを思うわけでもないが、一抹の寂しさというか……………嘆きというか…………人にはわからぬ神特有の葛藤とかがあるのだろう。

 

 

「しゃあないの」

『話のわかる子は好きよ。ああ、恋愛とかじゃなくて―――』

「妻を愛してるから靡かぬわ」

『そう。………………………伴侶は幸せだったのね』

「さぁ、な」

 

 

 意中の相手ではなかったから、彼女自身、心から幸せだったのかはわからん。どうだったのだろうか? そういう不安は生前から何度もあり、如何に気違いとは言え、考えたくないものは考えたくないのだ。

 

 

「それよりも、英霊になる試練とやらを教えてくれ。何かしらあるのだろう?」

『伝説を作ってもらうのだわ』

「嵐を裂くだけではダメなのか?」

『文明が発展した今、理由をつけて解析し、英雄の行いを不可能ではない(科学的に解明できる)とするもの。現代で英雄が生まれない、あるいは生まれ難いのはそういうことでしょう? 』

 

 

 確かに。今の世の中、科学で解明できないものは存在しない。今や月に都市を造るのだと民需高揚に掲げているのもあったか。実際、空など見えないらしいが。

 

 

『かと言って、過去に向かわせることはできない。人理に悪影響を与える可能性すらある』

「じゃあ、なんぞ? どこぞの民族でも絶滅させるか? させたい連中なら三つはある」

『ミサイルに勝てるの?』

「無理じゃな」

『そういった反英霊という可能性もあるわ。でも、それで喜ぶ?』

「ぬぅ……」

『喜ばないわ。狂っていると言っても、良識を持っている。良識があるから正気では耐えれなくて、狂っていると暗示しているだけだわ』

 

 

 ――――こう見えても女神、か。いいや、神は人間に対して興味はないとか言っておったから……。ああ、なるほど。

 

 

「正統派になれ、ということか」

『賢い子は好きよ。好ましいという意味でね』

「茶化さぬわ。それで、過去へ戻るもダメとくればどうする?」

『異世界よ』

「………………………は?」

『正確には並行世界。世界の闇の部分、魔術師と呼ばれる者たちが魔法と称える一つ。並行世界の運営よ。いい? 魔法というものは―――』

 

 

 魔法とは現代科学でも再現できない現象を指す、と簡単に言えばこういうものらしい。時間移動や完全に死んだ人間の蘇生など、確かに魔法や奇蹟と呼ぶべきもの。

 しかも、魔法とは確認されているもので6つはあり、その中でも現存するのは一つだけらしい。何十年か前はもう一つ存在していたが、それも死んだとのこと。

 

 

『この並行世界の運営(第2魔法)で異なる歴史にある世界に行き、生きて伝説を成し遂げてもらうの』

「門外漢だからようわからんが………異世界に送るからそこで伝説作ってこい。こういうことじゃな?」

『正統派の伝説よ。そして、期限は向こうに行ってから死ぬまで。伝説を作れずに死んだら……………貴方は正真正銘、無に帰すことになる』

「ほほぅ」

『今の時点でも霊基は安定している。でも、ただの亡霊の貴方が世界を移動したらそれだけでエネルギーを使い果たして消滅する。行きは私の力で送るけど、帰りは貴方の英雄として霊基の強度が重要なの。世界の壁を突破するための体力みたいなものね』

「あい、わかった。生きるか死ぬかは英雄になるかということか」

『そうよ』

 

 

 死後なぞあるとも思わなんだ。もとより偶然拾ったもの。であるならば、かつての冬木を見せてくれた礼ぐらいせねば大和男子の名が廃るというもの。

 

 

「ならば、善は急げぞ。早速送ってくれ」

『―――無に帰す、というのは貴方が思うよりも恐ろしいものよ。それでもいいのね?』

「くどい! 待つ者も持っていくものも無し。捨てるも失くすも己だけよ!」

『…………………………やっぱり、人間っていいわね』

 

 

 何か呟いていたようにも聞こえたが、いい男というものは女の恥部を見過ごすものよ。気を遣えずして、紳士とはいえず。いや、妻が不躾なことをすると怖かったというわけではなくだな?

 

 

『冥界の女神が言うのもなんだけど…………………挫けないでね』

「剣を振るって幾年月。気づけば嵐も裂いたのだ。挫けぬよ」

 

 

 急にしおらしくなりおって、反応に若干困るではないか。

 そう思うもつかの間、まるで奈落の底に続くような黒い渦が女神の前に現れる。確かに、逃げたくなるような忌避感がある。

 

 

『――――コレをつけていきなさい』

 

 

 金の指輪を渡された。温かみを感じるそれは、紛れもなくかつて妻に渡した結婚指輪だ。

 

 

『加護を付けてあるのだわ。行くときに守りは失われるけど、死んで魂になったとき、こちらに帰還できるように道標になっているの』

「粋なはからい、感謝する。これで勇気も百倍………………否、万倍よ!」

『本当に愛しているのね』

「居るときだけは正気だったからの」

『ふふふ……………あまり甘いのは好きじゃないのだわ。じゃあ、行ってらっしゃい』

「行ってくる」

 

 

 渦に近づけば近づくほどに、冷や汗が止まらず、心の方から凍えるような恐怖が襲い掛かってくる。それでも、妻の指輪の温もりが冷え切りそうな心を恐怖から守ってくれている。

 これは怒られるな。死んだら地獄を抜け出して会いに行こうと思っていたが……………随分と遅れそうだ。

 

 

「女神どの」

『ッ……………………何かしら? 怖くなった?』

「――――行ってくるよ、遠坂」

『――――桜を泣かせたら、承知しないわよ』

 

 

 心残りもなくなった。では、英雄に成りに行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今でも覚えている。たった一人の老人があの嵐(破滅)を切り裂いたことを――

 

 今でも覚えている。空が割れたことを――

 

 今でも覚えている。笑う老人のあの姿を――

 

 からからと笑う老人はこう言っていたのを覚えている――

 

 

 

 

『ははは! 空を割ったか。空を割って、殻を割ったわ!』

『なんとも天晴よ。天も晴れておる。まこと天晴である!』

『そうじゃ。儂は―――』

 

 

 

 

 

 ―――(から)を割ったのだ!

 

 それが老人の最後の言葉だったのを今でも覚えている―――




 というわけで、三度舞い戻ってきたぞと、カルメンです。
 ツッコミどころ満載―――まあ、FGOに触発されすぎて、色んな場所に含まれるかもしれません。そこはこうご期待ということで!
 用語解説行くよー。


時雨永嗣(しぐれえいじ)
 本作の主人公。享年120歳という超長生き爺だったが、嵐を裂いたときに死亡している。しかし、老体とはいえその姿は筋骨隆々といえるほどに引き締まっていたほどでその歳ですら一流アスリートを凌駕する身体能力を誇る。
 出身は冬木だが、すでに地図上から冬木は消えている。思い出の地で余生を過ごしたいと思っていたがそれは叶わぬ願いであった。
 結婚しており、相手は同じ冬木出身の女性で後輩の少女。話からすると、気が触れている永嗣を唯一、正気に戻せる存在だったらしい。気が触れてしまった大きな理由は従軍によるものと、かつて見た剣士の魔技に魅せられたため。

『妻』
 最愛の女性。旧姓は間桐で、その家の唯一の女性だった。意中の人は居たが別の人と添い遂げていき、悲しみの中で永嗣と付き合うようになり結婚に至った。初恋は叶わなかったが永嗣と結婚したことを後悔はしていない。死に際に後を追わないでゆっくり来て、と遺しており、永嗣は律儀に守っていた。

『冥界の女神』
 妻の姉の若かりし頃にそっくりな女神。瞳の色や髪の色が違うこと以外はよく似ている、とのこと。

『彼が過ごしていた冬木』
 亡霊として存在する主人公の妄想世界。実際の冬木はおおよそ人が住めるような状況にない。こうであればよかった、という願いでもあり妄執でもある逃避から生まれた。

『剣士として』
 世界最強と称されるほどの腕前。彼の出現により、世界中に剣道ブームが起き、そして強すぎたがゆえにブームを消し去ってしまった。
 その強さの逸話として、負けないから彼を倒すためだけにルールが7度変更されてなお負け知らずという笑えない話がある。
 ただ、その強さやあるいは真摯な態度に慕うものも相当多かった。強さとして、近接信管の榴弾を感知前に斬るなどありえないレベルの攻撃速度を魔術無しで行える。最後の伝説として国家壊滅クラスの大嵐を一刀のもと空ごと割り裂いた。

『英雄になるために』
 独自の設定として、戦力の平均化―――つまり銃火器の普及や大量破壊兵器の生産能力向上により、英雄が生まれなくなっている。さらにどんなことも科学的に解明できるという科学万能主義によりすべての伝記や偉業に茶々を入れることが多くなっている。永嗣の成したことすら、もっともそうな理論とこじつけで誰もができる可能性があるレベルまで貶められている。実際には、第5の獣が放ったものであるため不可能である。
 

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