貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです 作:カルメンmk2
圧倒的なキャラ崩壊が付きまとうよ。みんな注意するんだ!!
ところで、オッキーがいらしたマスターさんはおられますか?
何、来ましたと? はっはー、地獄に落ちるがいい(血涙
「ようこそ。
人を虜にしそうな柔らかい微笑みを浮かべ、ジェーンと名乗る金髪おさげの少女はこちらに向かって手を差し伸ばした。握手というやつだ。
対し、手を差し伸べられた相手こと、永嗣はというと…………。
「あ? カルデラ?」
「いえ、カルデアですが」
「カルダァ?」
「カ・ル・デ・ア! です!!」
「でかい声を出すでないわ!!!」
「…………………アーチャー?」
「気持ちはわかるがやめておきたまえ。気持ちはよくわかるが、それでは聖女の名折れではないかね?」
器用なことに、綺麗な笑みに怒りのマークを付けて、ムメーに顔を向けるジェーン。ムメーが止めなければ、ぶん殴っているんじゃないかと思われるほどに怒気を顕わにしている。
その二人を尻目に、悪くないもーん、なんて吹けてもいない口笛をしながら中を見回す永嗣。それを見てさらに怒りのボルテージが上昇していくジェーン。
「止めないでください」
「止めるぞ? いや、本当に止めるんだ。仮にも
「今この時は
「何がかね!?」
「騒がしいの。教会の中で騒ぐでない」
「これは憎悪によって――――」
「ステイ! ステイ!! お前も煽るなッ」
「仕方ないの。ほれ、茶を出せ」
「―――――――――!!」
「止めるんだ! 信徒に見せられないレベルの形相になっているぞ!!」
「止めないでください!!」
「およよよ。老い先短い年寄りをいじめるとは酷いのぅ―――あ、死んでおるし若返っておったわ」
「頼むから煽らないでくれ。少し事情があってね、彼女には。いい加減、機嫌を直してくれないかルーラー」
「………………わかりました。罪を憎み、人を憎まず。隣人を愛せとキリストは仰られたのですから」
その割には米神がひくひくとしているジェーン。ムメーは、さらに煽ろうとする永嗣に鷹のごとき眼力で牽制していた。していなければ、ねぇどんな気持ちぃ?ww と妙な踊りでもしながらしていたことだろう。
冗談ではなく、マジで殺すと器用にも殺意をこちらにだけ向けてきたムメーの顔を立てねばなるまいと自重することにした永嗣。先ほどまでの也を潜めて、何ゆえに自分を待っていたのか問いただすことにした。
「招いた理由は何なのかの?」
「………少々お待ちを。―――――ええ、ええ。わかっています。無礼であっても許す心が肝要なのです。いいですね?―――――失礼。貴方を招いた理由は幾つかありますが…………確認も兼ねて、というものです」
「確認? あの青髪と内通でもしておるのか?」
「青髪?………………ああ、キャスターのことですか。彼は確かに内通者です。主に、貴方のような存在を知るために」
「儂はそこまで特別とは思っておらんぞ。どこにでもいる、一般ぴーぽーじゃよ?」
「貴方が一般人なら、それ以外はどうなるというんですか」
その言葉には後ろで控えていたムメーも首を縦に振っている。この爺が一般人なわけがない。むしろ逸般人だ。
「それは置いておくとして………………貴方の目的、願望と言ってもいいですがどのようなものですか?」
「見ず知らずの他人になんでそんなことを言わねばならん」
「自己紹介はしたのですから他人ではないですよ、時雨さん」
「お主、減らず口を叩いて酷い目に遭ったことないかの?」
「審問に際して論破したことはありますよ」
「穏やかじゃないのぅ。まあええわ。さて、目的とな?」
「はい」
「単純よ。師父の理念に基づき、かつては至れなかった領域に至る、それだけのこと」
冥界の女神から英雄に成れと言われたが、それよりこっちのほうが重要だと心から思う。義理も果たすが、
「――――貴方の願いが叶うとすればどうしますか?」
「なに?」
「貴方が至りたいと思うその領域に手軽に踏み込める。そんなものがあったらどうしますか?」
「いらん」
「なぜ? 苦難の道を選ぶというのですか?」
「儂は己の力で至りたいのだ。そんな姑息な真似をしたら、師父にも弟子にも顔向けできぬわ!」
誰かに与えられて、手軽に夢が叶うなど笑止千万である。自分でつかみ取ってこそ、胸を張っていけるのだ。至れずとも、信念を守り、走って、夢見て、逝けたと報告できる。
「そうですか。では、私から問うことはもうありません」
「じゃあ、儂から問わせてもらうか。何ゆえにそのようなことを聞いた?」
「私が
ムメーが居るのはこのためか。次第で、消すと………。
「なるほど。大体は察した」
「聡明で何よりです。いずれ時が来れば、我々カルデアは貴方とともに並ぶことになるでしょう」
「良い並びであれば幸いだの」
「ええ」
味方としてか、利用され合うためなのか。出来れば前者でありたいものだ。
「ところで、4人だけか?」
「出払っている者が二人。半ば離脱している者が一人います」
「総勢で七人、か」
「今は詳しくは言えません。ですが、およそ一騎を除いて友好的ですよ―――――多分」
「今、多分とか言わんかった?」
「居場所は分かっていますが、仲間の一人が強硬でして……。今は様子を見ようと言っているのですがすでに犠牲者も出ています」
―――冒険者を狙った通り魔をご存知ですか?
ジェーンは永嗣に聞いた。知らぬと答えると、返ってきたのはその通り魔が離脱した仲間が関係しているというのだ。
「身内の始末も付けんのか」
「その提案は私もしました。ですが、それはダメだと彼女は反対するのです。不幸中の幸いは被害者が相応に報いを受ける立場の者であったことでしょうか」
「怨恨……誰かから請け負っている?」
「おそらく」
その辺りの事情を知っている仲間が情報を渡さないのだと、ジェーンはため息をついて肩を落とした。
人間関係の面倒くささはわかる。彼女とその仲間の対立は条理でなく、主義主張の行きつく果て、感情論になっているのではないだろうか。信念や誓いの問題だ。
擁護する仲間というのは、下手人に対して思うところがあるのだろう。
「気を付けよう」
「そのようにしてください。少女の風体ですが、姿は見えません。襲い掛かろうとしたときか興味を持って出てきた時に見えるでしょう」
「ギルドへは?」
「内通者は居ますが、我々はギルドには近づきたくありませんので」
「そうか。なら、失礼するかの」
少女の姿をしているとだけわかればいい。バベルに寄りがてら情報収集でもすればいいのだ。
「待ちたまえ」
「んん?」
「スコーンとクッキー、少年と主神の土産だ」
「すまんの」
「あと、返るときは振り向いてはいけない。ここを出て真っすぐ進め。わき目も降らずにな」
「振りむいてはいけない道みたいなことを言うな」
「まさしくだ。それほどにここは秘密の場所だ。特定のもの以外はたどり着けないようになっている」
あのメモの事か?
あと、ジェーンとやら。どうして土産を凝視しているのか?
「想像の通りだ。例え持っていたとしてもこちらが受け入れない限りは無駄だろうがな」
「ほぅ、凄いの。これくれんか? あの辺り一帯に使いたい」
「
「ケチじゃのう」
その大きさに見合った音を発てて、カルデアの扉は閉まった。
ジェーンはムメーの淹れた紅茶を一口飲む。冷めてしまい、香りも飛んで余り美味くはない。ただ、味や違いがわかるほどに飲んでいたのか? と言われたら、いいえと答える。裕福な生まれではなかった。
渋い顔をして飲み終えるとムメーが新しい紅茶とブッシュドノエルを持ってきてくれた。
「物欲しそうに見ていたのでね」
「そ、そんなことしていません!」
「そうなのか? では下げよ―――」
「差し出された食事を断るのは手の教えに反しますからそこへ置いておいてください」
「一言でいうほどかね……………」
「ふぅ………アーチャー。女の子とは甘いもので出来ているのですよ?」
「そして体重計に沈むと」
「え、英霊は完成されているので―――――」
「同じ英霊が作った食べものだが?」
そこまで言うと、ジェーンはスッと立ち上がった。
さすがに怒らせ過ぎたか? と身構えると彼女は小さな声で外に向かう。
「――――運動してきます」
「待ちたまえ。もしかして本当に…………だとすれば、ライダーが居ないのも……?」
「運動してきますッ!!!」
たとえ時代が変わろうと、世界が変わろうと。女は美しくありたいとかく思うのである。
今日は待ち人によく出会うと、永嗣はため息交じりに呟いた。彼の隣には、煮ても焼いても食えなさそうな笑みで話しかけてくる大物。フィン・ディムナが共に歩いていた。
ムメーの言ったとおり、わき目もふらず、振り向きもせずにまっすぐ歩いていたらいつの間にか、表通りに出ていた。振り返れば、その先は真っ暗な裏路地へと続く道がぽっかり口を開けている。
途中で聞こえた声は――――などと物思いにふけながら、バベルへと向かう。予定通りに武器を…………刀を見に行くためだ。
で、バベルに着き、さあ中へと思ったところでフィンに話しかけられた。
「やあ」
「何用じゃ?」
「つれないなぁ。昨日も君を待っていたのだけど?」
「余りにうざったくての。ここしばらくは籠って、剣でも降っておったよ」
「はは。ご苦労様。それで、武器を見に来たのかい?」
如何にも、と通り抜けようとすればフィンはついてきた。
僕らも前回の遠征で酷いことになってね、なんて言いながら付きまとう気まんまんだった。
そして今に至るのである。
「見ていて面白いものでもあるまい」
「一流の冒険者は鑑定眼も備わっているものさ。何ならプレゼントでもしようか?」
「男に興味はないぞ」
「僕も興味は無いよ。出来れば、同胞で勇気のある娘がいいかな」
絵面的に危ない気がするのは自分だけだろうか? 確か、この男は40近いじゃろ? それが少女姿の少女のような
「どこの芸能人じゃ」
「ゲイノウ? なんだいそれ?」
「独り言じゃよ。だが、しかし。酔狂なもんじゃな」
「付き合うことがかな? 冒険者であることかな?」
「付き合うほうじゃよ」
「そっちか。単純だ。君に興味がある」
レベル1でレベル6に重傷を負わせ、自分達でも見たことのないスキルらしきものを使う。
そんな逸材が零細も零細で、底辺に位置するようなファミリアにいるのはオラリオにとっての損失だと思わないか? もちろん、君の家族を侮辱するつもりはない。だが、君の活躍の場は今の場所では遠すぎる。
「ここで恩を売って、スカウトしよう。そういう魂胆さ」
「言い回しは不快だが、率直に来るのは気持ちいいの」
「お褒めに預かり光栄だ。答えも解っているけど、理由は………………物で裏切るような不届き者にはなりたくない、かな」
「概ねだの。そんなやつを迎え入れたとて、何時かは同じことを繰り返す。違うか?」
「その通りだ。ヒトは一線を越えてしまえば何度だって気軽に躊躇いなく超えるからね」
うんうん、と何か思い出したのか苦虫を嚙んだ表情となる二人。超大物と一緒にいるあの男は誰だ? とざわめきまで聞こえる。
なるほど。つまりは、ここで儂と懇意である、知り合いであると印象付けたかったわけか。
「やっぱ、食えんの」
「下ごしらえは大事さ。僕らが懇意にしていると知られれば、他のファミリアもおいそれと出来なくなる」
「あわよくばネタにして………もか」
「想像に任せよう。ここかい?」
ヘファイストスファミリアは超高級な装備を卸すことで有名だが、何もそれだけではない。入ったばかりの新人がファミリア謹製の証である刻印をつけられるわけではない。
そのため、かのファミリアでは一区画を借りて新人や見習いが卸す店を出している。店主と店員はファミリアの先輩で、購入した冒険者に紹介したり、あるいはどんな武器が欲しいのかを聞いて格安のオーダーメイドを請け負う。それを新人たちに伝え、技量を上げるのと同時に専任契約もできるようにしている。このスタイルは他のファミリアでも採用され、このフロア自体が新人御用達の商店街となっているのだ。
さらにこの恩恵は鍛冶師だけでなく、冒険者にも都合がいい。
ギルドで販売されるものは基本的に数打ちの鋳造品のため、品質は比べるまでもない。しかし、真っ当な武器は高すぎて手が出せない。
それを解消するのがこの制度であり、気に入った装備を見つけ、鍛冶氏と専任契約する。冒険者の安全は高まり、鍛冶師は材料の融通や腕前を上げられ一石二鳥なのだ。
「極稀に掘り出し物があるね」
「刀以外使う気はないから、すぐに終わるじゃろうて」
「カタナか………僕も一度は使ったかな。たしかナガマキとか、ナギナタとか」
「ほう! どうじゃった?」
「切れ味もイイし、リーチもある。でも柄が木製で手入れが難しい。金属だけでできるが、次は小人族にとっては重すぎると問題が目立ったね。結局、オーダーした長槍だね」
重さはどうにかなるけど、手入れが迷宮では難しいのがね……………。惜しそうに零すフィンに、軽合金の生まれていないこの世界では仕方ないかと納得する。
拳・剣・槍・薙刀・弓・銃の順番に強さは変わる。槍の三倍段なんて言葉があるほどで、剣で槍や薙刀に勝とうとするには相手の三倍力量が必要とされる。リーチはそれそのものが武器であり、何かしらのカラクリが無ければ剣で長物に挑むのは無謀だろう。
そして、大体それぐらい槍を扱える者は懐に潜り込まれたときの対処も解っているのだ。
「小柄には間合いを潰すのに苦労しそうじゃな」
「まぁね。でも、舐めた敵は全員、穴が増えたけど」
「見てくれで判断するほど節穴なら、目玉を入れる穴が増えたと喜びそうじゃ」
「はは!違いない!」
会話しながら店の中に入って物色していたのだが、店番も客も予想外の大物に目を真ん丸にしている。
気にも留めないで、まっすぐに刀を売っているコーナーに向かう。
到着したはよいものも、十把一絡げのものしか無い。
「どれもこれも変わらんな。前の刀のほうが質がええ」
さて、自分の基準はこの刀なのだが、眼鏡に適う物はない。
同伴したフィンに、借りを作るのはいただけないが店でも紹介してもらおうかと顔を向けると、ごつい男やマッシブな姉ちゃんたちに囲まれて動けないようだ。
ロキファミリアの名誉と体裁もあり、紳士的に対応しているが矢継ぎ早に降り注ぐ言葉に辟易しているフィン。群衆の隙間から、永嗣がこちらを見ていることに気づき、助けてくれと目で訴える。
ニッ! サムズ・アップする彼に助かったと安堵しようとするも―――
(グッドラック!)
(てめぇ、あとで覚えてろよ!?)
何もせずに何処かへ行ったのだ。そう、時雨永嗣はクールに去るぜ。
ジェーンって一体どこのダルクなんですかね? 解説に移ります。
『時雨永嗣』
身体年齢に精神年齢が引きずられている感が否めない今日この頃。煽りスキルは年齢とともにマイルドになったが、若くなったせいで激しくなっている。
容易く願いを叶える方法に対し、即座に断るなどの生真面目さが見られた。
「強請るな、勝ち取れ。さすれば与えられん」
『ムメー』
ファミリアから逃亡中なう。もし、永嗣が願望を叶える方法に縋ったら、容赦なく殺すつもりであったのは内緒である。
渡した土産はとても美味く、やっぱりアイツなんじゃねと疑われることをうっかり忘れている。
「君たちの不養生が招いた結果であって私には何も責任は――――」
『ジェーン』
いったい、どこのダルクか剣士顔か!?
「アーチャー、懺悔なら聞きましょう」
『神会』
もー、いーくつ寝ると、神会だー?
『フィン・ディムナ』
トップファミリアの振る舞いは辛いよと、同期の仲間に零すことがあるという。
永嗣を待ちかまえ、数日たってようやく来たことに安堵している。今日来なかったら、副団長の嫌味が待ち構えていたからだろう。
『極東の武器』
全体的に高い技量が求められる傾向。繊細で、日々の手入れが重要なため深層域でとれる鉱石を使用しない限り、維持コストがバカにならないなどの問題がある。さらにもろいこともあって、病気にかかった駆け出し以外で使うのは、見栄と実力者のどちらかしかいない。
反面、切断力に優れており、修練をした冒険者は鉱石系のモンスターですら両断する。