貴方は英雄ですか? いえいえ。まだ一般ぴーぽーです 作:カルメンmk2
処刑BGMが流れると言ったな? アレは嘘だ。
*アイズのレベルが間違えていたので修正いたしました。 H29.2/17
大して高くもない、それでいて無個性な服を二着ほど買い、永嗣とヘスティアは教会へと戻ってきた。
とうに陽は頂点を超えて、傾きかけており、約束通りにミートパイと梨のタルトをヘスティアに振る舞うことにした。
大変、美味しかったようで口元を汚したヘスティアが満足そうな顔でソファに寝転がっている。みっともないと言いたいが午前のことを考えると破廉恥すぎると思い、永嗣は見逃すことにした。
沈黙が二人を包んでいたが、ヘスティアが口を開いた。
「シグレ君。君はどうして神威を恐れなかったんだい?」
「神威? ………ああ、あの圧迫感のことか」
「圧迫感…………まぁ、間違いではないけど。普通は神威を受ければ皆平伏すものだよ?」
―――君はどうして、平伏さなかったの?
ヘスティアは一種の恐怖を滲ませた声色でそう問いかけた。
一般的に、何の特性も持たない神々は地上においては無力な存在である。一般人と同じ程度の身体能力しかもたず、あるのは総じて美しい姿だけだ。そんな神々が身を護るために許されているのが
狂信者であろうと、この神威を放たれればその行動を抑制できる。都市最強の
ヘスティアは続けた。
「僕は神威を放っていなかった。君は無防備に晒されたはずなのに………。ヘファイストスだって、唖然としていただろう?」
「そうさのぅ……………気圧されていないというわけではなかったよ。ただ、退くつもりもなかっただけじゃ」
「どうして? この街は神の統治する街だ。神に逆らうということは―――」
「追放されると?」
「うん」
――――なるほどのぅ、と何ともなしにつぶやく永嗣。
この子どもは追放されたところで逞しく生きていけるという確信がヘスティアにはあった。この子どもは強い。理不尽や非道、不義理、悪意、害意などいくつも味わってきたのではないだろうか。
それこそ、神々の理不尽など当然と思えるようなことだって――――
「儂にも目的というものがある。迷宮はその手っ取り早い方法じゃから、上辺だけでもしておいたほうがよかったか」
「そういうのは神には通じないよ?」
「嘘はつけないというわけか。だが……………実のところ、神威は確固たる信念があれば耐えられるものじゃよ?」
「信念?」
「どんなに恐ろしいものも、その信念が支えてくれるのじゃよ。誇りでもいい。誓いでもいい。自分勝手な掟でもいい。膝をついてはならぬと奮い立たせるものがあれば、どんな恐怖であろうと差し迫る死であろうと見据えられる」
怖くないわけがなかった。あからさまに格上どもに囲まれ、雪崩が迫るような絶命感が麗人から放たれていた。人が抗うことのできない、自然の脅威を体現したような、人ではどうにもできなさそうなあの感覚。
けど、初めてなら平伏しただろう。屈して膝をついただろう。
でも、アレは経験しているのだ。――――
「一番は一度経験しているからじゃな」
「どこかで粗相でも犯してきたのかい?!」
「生前の話じゃよ」
「生前って………君は生きているじゃないか」
「言っておらんかったか? 黄泉帰りじゃよ。ちょいと、経験つんで来いと冥土から送られたんじゃ」
「はぁああああああ!!?」
「うるさいのぅ」
「ちょ、ちょちょちょちょっと待って! 君は生き返ったのかい!?」
「そう言うとる」
だからこその冥界の加護か! ヘスティアは叫びたい衝動を我慢した。どこの世界に、黄泉帰る存在などいるのか。いや、もしかすると……………。
「黄泉帰らせたのは誰だい? もしかして……………ヘルかい?」
「ヘル? なんで地獄が儂を生き返らせるんじゃ」
「―――どうやら、神界に近い価値観なのはわかったよ。道理で僕らの言葉の意味がわかるような態度をしてたんだね」
死者を黄泉帰らせられるのは冥界の神以外には存在しない。勇者を求めるヴァルキリーの大本、オーディンに関係するヘルかと思ったのだが、ヘスティアの予想は外れていた。
「名前からして極東だよね? ということはイザナミかな? でも、彼らは死については厳しいはずだし……………ハデスなんて、絶対許さないし」
「名前は聞いておらんかったからわからんな。女の姿だったのは間違いない」
「冥界の女神…………………………誰だろう? ペルセポネー………? いや、それこそハデスが許すはずが無い」
「まあ、過ぎたことを考えても意味など無いよ。疲れるだけじゃし」
「いやいやいや! 重要な事だよ。これ、他の神に言った!?」
「言っておらん」
「絶対に言っちゃダメだよ! そんなこと知られたら
面白ければなんでもするのが神という存在だ。かくいう自分も、この子達を迎えるまではそうだった。
だからこそわかる。あの連中に引っ掻き回される苦痛と煩わしさが!
「あい、わかった」
「そうした方がいい。あぁ…………………今日だけで百年は経った気分だよ」
「年取ると時間の流れが早く感じるからの」
「失礼な! 僕はまだピチピチの○〇〇○○歳だよ!」
「―――――世間じゃ、それをだな?」
「あー!あー!キコエナーイ!!!」
目を瞑り、耳をふさいで叫ぶヘスティアに、これ以上は何を言っても無駄と判断したのか永嗣は追及を止めた。
察知しすぐにそれを止めたヘスティアも、冥界の女神について考えることにしたようだ。可愛い顔のシミ一つない眉間にしわを寄せ、ムムムと首をひねって、特徴の一つであるツインテールを器用にもにょもにょさせている。
何を言っているかわからないだろうが、とりあえずもにょもにょしているのだ。あのツインテールが。
(えぇ………)
もにょもにょと蠢くソレを見て、ドン引きしている
さらに器用になってビシィッ! ズバァッ! シュパパパパッ! と効果音が付きそうな激しい動きになっている。艶やかで潤いのある彼女のソレは直撃すれば鞭の如き痛打を浴びせそうで近づけない。
ゆえに、永嗣はまさしく触らぬ神に祟りなしと地下室を後にした。天気も良く、ほとほとに光が差し込む廃れた礼拝堂で瞑想し、時間を潰そうというのだ。ぽかぽかとすればそのまま寝入ることもできるだろう。
ともすれば、永嗣は瞑想を始めた。想像するのは師と崇める山門の侍と一騎打ち。
礼など無い。ただ純粋な殺し合い。振るわれる太刀筋はどれもこれもが首を狙う、一撃必殺。守勢に回れば押しきられると絡め手を含めた太刀筋にて応じる。
どうやら功を奏したようで攻勢を止められた。再び、無形の構えの侍に正眼の構えで対峙する。構えから先読みをするのは不可能だ。だが狙われる場所はわかっている。首だ。
ゆるりと振るわれる横薙ぎを避けるのではなく、受け止め、腹を流れるように侍の首へ刃を走らせる。鍔のない刀ではこれを防げない。
しかし、身を屈めこちらの脇をすり抜けるようにして袈裟斬りを決めようとしてくる。剣を即座に動かせぬよう、こちらの剣を押し付けていたのが仇となった。即座に剣をかち上げて致命の一撃を打ち払う。火花が散り、金属と金属が強く擦れあう音が響く。
この無理な体勢では凌ぎきれぬと侍の腹を蹴って下がるが悪手であった。離れる瞬間に足を斬られてしまった。これでは俊敏な侍の動きについて行けない。
あとは詰将棋のように削られていった。されど、こちらも手負いの獣の如く、侍に傷を与えていった。
言うなれば、不利になった時点で思い切りがよくなったのだ。致命のみを避けて腕や足へと集中していく。それでも足りない。
互いに満身創痍といった体となるが、最初に足を斬られたのが祟った。深くもないが浅くもないこの傷は紙一重の差となってのしかかった。
最後はあの剣技を喰らい、今までと同じように敗北で終わった。
「――――――――ふぅぅぅ……………まだまだ遠い」
気づけば陽が大きく傾き、夕焼け色に変わろうとしていた。
この瞑想を行うと、時を忘れてしまうのが難点である。されど弟子曰く、近づくと死にかねないほどに危険な瞑想と言われた。何故であろうか?
「さて、ベルはもうすぐ帰ってくる、か……………?」
はて? 礼拝堂はこんなに荒れていただろうか?
「んん……………? む?」
「ただ今戻りましたー!!」
「おかえり―――随分と返り血を浴びたか?」
「え!? まだ匂いますか!??」
「人生経験でわかるよ。何、普通はわからんぐらいさ」
嗅ぎ慣れておるからのー。慣れたくもないものだがな。
「して、どうじゃった?」
「あ、いや…………………その、5層目まで降りて、そのぉ…………」
「…………………………死んだら元も子もないじゃろう。生きてこそ、次があるというに」
「…………はい。でも! すごい人が居たんですよ!!」
「すごい人?」
「アイズ・ヴァレンシュタインっていう、レベル5の女の人です! ミノタウロスを細切れにしたんですよ!!一瞬でっ!」
ミノタウロスが何なのかは知らんが、レベル5………………確か、この都市では最高クラスに入るとか。どれほどのものだろうか?
「5階層からその、ミノタウロスなるモンスターが出るのか?」
「いや、ミノタウロスは上層じゃなくて中層の…………相当手強いモンスターなんですよ!!」
「ならば、どうして上層におるのじゃ?」
「………………………あれ? なんでだろ?」
「気付かんかったのかい」
そのあたり、ちゃんと教えるべきだと心に決めた永嗣であった。
「むっすぅー……!」
「わ、わわわ……!!」
「おお、随分と上がっておる。合計で――――150ちょっとか」
ベルのステイタスは昨日とは比べ物にならないぐらいに上昇していた。耐久力こそほとんど上がっていないが、力と体力、特に敏捷が段違いで上がっている。
「本当に僕のステイタスですか!?」
「…………そうだよ。それだけ上がったんだよ」
眷属の成長は嬉しいことであるはずだが、ヘスティアは脹れてしまい、かなり機嫌が悪いらしい。
それもそのはず、この女神はベルに一目ぼれしているからだ。神特有の能力なのか、それとも波長というか運命というか。ヘスティアはベルに恋している。
「そうだ! 今日、迷宮に行くときに――――」
朝飯も食わずに迷宮へ向かおうとしたところ、怖気が走る視線を感じて見回していたところをとある飯屋のウェイトレスに声をかけられて自分の朝食を譲る代わりに夜に来てください、と言われたそうだ。
少し長いだと? つまり、カモられたってこだ。
「むきー! ベル君! アイズ某以外にも女の子を引っかけていたのかい!!?」
「え、いや違いますよ! バスケットのお礼に…………神様も行きましょうよ」
「ふんだ! 僕はいいよ。お昼の残りも―――――あ、無いんだった……」
「諦めて来い。隣の席にしてやるからの」
「君はやっぱりいい子だね! よし行こう」
急いで身支度をするようだが、ベルのような駆け出しの冒険者を引き込むのだ。格式ばったレストランという感じではなかろう。
さりげなく、いつもの服に肌の露出を少なくするようにと買わせた青色のカーディガンを着させる。これで背中も見えなくなる。
「買ったその日に使うことになるとは………君は予言者かな!?」
「んなわけあるか。では、ベル。案内を頼むぞい。あと2000ヴァリスぐらいは残っておるから、足しにでもすればええ」
「僕も持ってるから大丈夫ですよ。今日は2700ヴァリスでしたからね!」
「すごいじゃないか。まあ、5層まで行ったのを許すつもりもないけど」
「うぐ!」
「あとでシゴ―――――修正しておくから問題ない」
「頼んだよ」
「味方が居ない!? てか、シゴきって言いかけましたよね?!」
「ん? おお、間違えてもうた――――――調教の間違いじゃ」
「酷くなってるぅううううううう!!」
所は変わり、件の店こと『
豊穣は豊かに実るという意味だが、豊饒は豊かに肥えた土地という意味だ。勉強になったね!
三人はカウンター席に通された。その際、ベルにバスケットを渡した少女が案内をしてくれたのだが、永嗣の表情は若干ながら硬いものがあった。
その硬さが警戒心をまとうには時間は不必要であった。ちらりと横目でこちらを見た少女の顔が今朝がた感じたものに似た印象を受けたのだ。
「あら? どうなされました?」
「うむ。いや………どうにも癇に障ることを思い出してなぁ。今朝がたの事なのだがの」
「あらあら。でも、そんなことは忘れて一杯飲んで食べてください! 美味しいものを食べればすぐに忘れちゃいますよっ」
「だとええがな」
深く追求するのもやめておいたほうがいいか? 上から視線を感じていたとはいえ、似通った視線事態はあるものだろう。
永嗣はそう結論付けた。
ベルを永嗣とヘスティアで挟むようにカウンター席の一角を独占すると、ここの女将であろうか。とても恰幅のいい初老の女が出てきた。
初老といったが、老いは感じさせない、肝っ玉母ちゃんという印象である。席に着いたこちらに、女将は言った。
「よく来たね。あたしが店主のミアだ! シルから話は聞いたよ。じゃんじゃん飲んで食べて、金を落としていってくれ!!」
「は、はい! どれも美味しそうで迷いますね」
「気にすんじゃないよ! あんたアレだろ? あたしでも目を回すかもしれないっていう大喰らいなんだろ? そうは見えないけどねぇ」
「ええええ!!?」
「おや違うのかい? シルはそうだって言ってたけどね」
「シルさーん!!?」
「―――――てへっ☆」
ほんとにカモにされたな、と確信した永嗣とヘスティアである。
白い目でベルを見ていると、それに気づいてメニュー見ましょう! と露骨な話題逸らしを行う。
そして、どれどれどんなものがと、メニューを覗けばあら不思議。
「「「高っ!!?」」」
「はっはっは!味は保障するよ。まぁ、予算を言えば、それに合わせて提供するよ」
「では、4500ヴァリスほどで三人分頼む」
「あいよ。リクエストは?」
「僕は肉で!ワインも頂戴っ」
「僕は…………パスタと魚とエールで」
「儂はパスタと肉。水でええ」
少し意外だったのか、酒ぐらいなら飲めるよ? とこちらを気遣ってくれた。それを断り、その分を二人に回しておくれと告げる。
若いのに出来てるね、と女将は厨房に引っ込んでいく。
がちゃがちゃと食器や調理器具のこすれる音に混じり、声も聞こえることから厨房は一人だけではないのだろう。店内を漂う食欲を刺激するよい匂いが、女将が厨房へ入ったことでより強くなった。
この分だと期待できそうである。
「美味しおうな匂いだね」
「バスケットに入っていたサンドイッチも美味しかったですよ」
「そりゃそうです。ミア母さんの料理は世界一ですから」
いつの間にやらシルと呼ばれていた、油断ならない少女がベルの隣に立っていた。その手には肉に合いそうなワインとキンキンに冷えたエールを手に持っている。
くすんだ銀色の髪をポニーにしている彼女は女将の子供なのだろうか? 似ても似つかぬ容姿だが………………。
「血は繋がってませんよ。ここで働く子にとってはお母さんみたいなものなんです」
「確かに。肝っ玉母ちゃんという風体だの」
「ふふ。その通りですよ。昔は高レベルの冒険者だったんですよ」
「なるほど。だから、冒険者が大勢居るのか」
ヘスティアが納得したように店内を見回す。
厳しい顔と体つきの冒険者たちが思い思いに飯を喰らい、酒を飲んでいる。
「冒険者の方々の間でも好評ですよ。ただ、住み分け自体はできているんです」
「住み分けですか?」
「ええ。夜は冒険者の方々が利用されますが、お昼は一般の方が利用されるんです」
「………………この料金で利用できるのか?」
「メニューを絞れば可能ですよ。量は多く、安くて美味しい。昼間に都市にとどまる冒険者は思うほど居ないんです」
職業:冒険者、叩かぬ者飯食えぬ。とはよく言う。生きるためにも金は必要で、冒険者は迷宮で飯の種を得なければならない。
高い装備と万全の備えの消耗品。整備費用、ギルドへの納税とファミリアと冒険者は大きなモンスター以外の敵が存在するのだ。筋肉で立ち向かえない存在だ。
だが、その分の見返りは大きく巨万の富を得ることだって可能なのだ。
対して、一般人の稼ぎはそこまで多くはない。
恩恵の有無は生産品の質にも影響し、ただの鍛冶屋が作る武器と恩恵持ちの鍛冶屋が作る武器では天と地ほどに差がある。
「ですから、一般の方には格安で提供するんです。値段の差は種類と可愛い女の子とのふれあいで、ね?」
「男が多いからの」
「だから、ベルさんもいっぱいお金を落としていってくださいね」
この店はノルマでもあるんかい?
「あいよ! 本日のおすすめパスタだ。肉と魚、もうすぐ上がるよ!」
「わあ! 美味しそうだね!」
「うむ。美味そうだ。お嬢ちゃん、皿とフォークを一つもらえんか」
「今持ってきますね」
ぱたぱたと埃をたてないように、シルはカウンター内に入った。食器棚から皿とフォークを持ってきてくれた。
言わなくてもわかるだろうが、永嗣は自分のパスタを皿にとりわけてヘスティアに渡した。
「おおお……………君ってやつは…………!」
「空きっ腹に酒は悪いからの」
ベルも自分の分を分けようとするが、迷宮で腹も減っているだろうからやめておけと、二人からやんわり断られる。もともと、大して動いてもいないから腹が減っているわけでもない永嗣である。ヘスティアは二人の眷属ができたとはいえ、毎食、肉や魚を食えるほど裕福ではない。
あまり納得できない、優しいベルは理由を見つけようとするが半分はお前の稼ぎなのだからと、今度は少し強めに言ってみる。
渋々と納得はしてくれたが、ヘスティアも気を使い、女将のサービスで別種にされるていたパスタを少し分けて欲しいとベルに言った。
自分も役に立てた―――よりも、女性に優しく在るべきと亡き祖父に言われ、それを心がけてきたベルは喜んでヘスティアに分けた。
当のヘスティアは、内心で間接キスだぜ、やふぅー! と喜んでいたのだがベルにその気はなかったと言っておこう。
そして待ちかねていたメインがやってくる。
「メインの肉と魚だよ。たんとお食べ!」
「ほっほぅ、これは美味そうだ」
「ううう…………立派なお肉が食べられるなんて、ほんの二日前まで思いもしなかったよ。もしかしてこれは夢なのか!?」
「か、神様! 大丈夫ですよ! 現実ですって!!」
貧窮するヘスティアファミリアにとって、目の前のご馳走はなんとも食欲を刺激するものだ。
とろけるバジルを練り合わせたバターと肉汁のハァァモニィィ!
ムニエルになったサーモンらしき大ぶりの切り身。
真っ赤なソースのかかった輝く照り焼きのチキン。
肉と頼んだわけだが、別々のものとは思わなんだ。つまりアレだろう。
「こいつはサービスだ。これからも贔屓にしておくれよ」
「商魂たくましいの。だが、ありがたい」
「はっはっは! それもあるが、あたしの目は確かさ。あんたらはでかくなるだろうからね。さきに売り込んでおくのさ!」
「ミア母さんがそこまで言うなんて珍しいですよ! 私ももう少しアピールしようかなぁ」
「ふぁっ!?」
「そいつは聞けない相談だぞ、ウェイトレス君! ベル君は僕のものだッ」
「うふふふ、この勝負は最後までどうなるかわかりませんよぉ」
「にゃんだとぅ!!」
げに恐ろしきは女の闘い。女の暗闘。
大人の笑みを見せるシルとポメラニアンのように吠えるヘスティアでは格が違う。この少女、いったいこれまでどれだけの男を毒牙にかけたのだろうか(たんなる勘違い)!
しかし、この女の闘いはすぐに収まった。女将が仕事しな! とシルに拳骨を食らわせ、ヘスティアにあんたも真に受けんじゃないよと叱り飛ばしていったのだ。
悶えるシルをほくそ笑むヘスティアだが、そこはアレだ。同じ穴の狢が何を勝者ぶっておるとチョップを食らわせておく。
ここに仲良く悶える二人の美少女が生まれたのである。―――一人は年齢○〇〇○○歳の年寄りであるが………。
と、ここで終われば楽しい飯話だが、そうは問屋がおろさぬと神(作者)は嗤う。
「にゃにゃ!? ご予約のお客様がご来店にゃ!」
「ん?―――――ななっ!?」
「ん?―――――ああーっ!!」
ついに
次回に回ります。狼狩りは(ゲス笑い
とはいえ、ご指摘があるようにそこまで酷いものにはしないようにするつもりです。神威については、これが作者の限界だった…………………!!
では、解説行くズラよ。
『時雨永嗣』
ヘスティアに死んだことを伝えた、黄泉返りの男。とある連中に知られたら滅殺待ったなしの存在である。
生前の行いと神への価値観から、神威の影響は殆ど受けない。プレッシャーは感じられるがひれ伏すほどではないのである。
「むしろ姿形が見える分、安心できるわな。斬れるし」
『ヘスティア』
黄泉帰った人間こと、永嗣の非常識さに胃を痛め、彼を送り込んだ冥界の神に薄気味悪さを感じている○〇〇○○歳のぴちぴちのぎゃる(笑)
たとえ、彼が常識の埒外であろうとも家族であることには変わりない。彼女は彼の数少ない理解者であり、擁護者の一人である。
ただ、次回は大嫌いな貧乳と対峙するからよろしく!
「最近肩がこるんだよねぇ………(ゲス顔)」
『ベル・クラネル』
原作通り、アイズ・ヴァレンシュタインに救われ、血まみれで街中を爆走。エイナに情報提供を求めている。違う点は憧憬一途の発現時期と、永嗣から貰ったショートソードが半ばで折れている点である。
なお、エイナにそのことは話しており、ギルド支給品のナイフをもらっている。もちろん、借金に加算されてるヨ!
「美人だったなぁ……………」
『神の能力』
地上に降り立っている神は一部の例外を除いて神力の行使を制限されている。そのため、一般人と同じ程度の力しか無いのだが例外が存在する。
いわゆる、美の神、武神、闘神、鍛冶神、薬神などの何かしらを司る神々はその技量や美しさが無くなるわけではないため、彼らは自衛手段が確立している。
例えばタケミカヅチなどの武神はこの状態で永嗣を圧倒できるほどの実力を誇っている。
『山門の侍』
皆様御存知、あのNOUMINデス!
負けているのは、彼を倒したときにセイバーによる致命傷を負っていたためと彼の思い出補正によるもの。ただ、達人同士の戦いは僅かな傷一つで拮抗が崩れてしまうだろう。
『豊饒の女主人』
オラリオでは有名な店。理由としては美味しいこともあるが、最強ファミリアの一つロキファミリア御用達なのと、主人を除く店員が美人揃いであること。さらに、男がいない女だけの店であることから、男性冒険者の利用率が高い。
昼と夜の営業で、昼は低収入の一般人向けに。夜は高収入の冒険者向けと別れている。無論、双方ともどちらの時間に利用してもかまわない。払えるのなら。
「豊穣」でなく、「豊饒」であることに違和感を感じる君は暗闇に気をつけよう。
『ミア・グランド』
豊饒の女主人の店主。ドワーフだが、ドワーフとは思えないほどの体の大きさを誇る。彼女の店で食い逃げを成功させたのは後にも先にも存在しない。
元は一級冒険者のため、腕っ節がある。
「あたしの店で食い逃げたぁ、いい度胸じゃないか。ええ!!?」
『シル・フローヴァ』
銀髪のポニーテール少女。店に訪れる客を見るのが好きで、その観察眼は下手な神々よりも上である。永嗣は、上から感じた視線と似通っているとして、非常に警戒している。
「豊饒の女主人は本日も営業中です。ぜひいらしてくださいね♪」
―――行かせてもらおう。
『持たざる者と持つ者』
現実とは残酷である。