月曜日のたわわ〜幼馴染はとてもたわわです〜   作:とちおとめ

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夏期講習ものを書いてセイレンとクロスさせたいなぁなんて思うこの頃。

そうでなくても常木さんヒロインで書きたいなぁと思うこの頃。

まあやりません(笑)


アイちゃんと昼休み、そして……

「ごちそうさまでした」

「はい。お粗末様でした」

 

 今日も今日とて学校の日の昼休み、俺はアイと共に中庭のベンチで弁当をご馳走になった。ご馳走になったという言葉と、アイのお粗末様という言葉通りこの今日食べた弁当はアイの手作りである。普段は姉さんが弁当を作ってくれるのだが、こうしてたまにアイが俺のために弁当を作ってくれる日が付き合いだしてから増えてきた。頻度としては決して少なくはなく朝大変だろうと思いアイに聞いたのだが、帰ってくる言葉はいつも同じ。

 

『花嫁修業ってやつだよ。いずれ……ね? 結婚とかしたらお弁当は毎日作ってあげたいし。それに……お弁当に限らずユー君にはいつでも美味しい料理をご馳走してあげたいからね♪』

 

 結婚は流石にまだ早すぎるのでは……と聞くたびに考えてしまうことだがそんなアイが愛おしくてたまらなくなりいつも抱きしめてしまう。言葉もそうだが文字通り花の咲いたような笑顔も見せられてしまっては、俺にアイの好意を断る勇気なんて一生持てそうにない。

 こうやってアイが俺を溺れさせようとしているならそれは策士と言えるだろう。俺はどうしようもない程に、アイという存在に溺れてしまっているのだから。

 

「どうしたの?」

 

 ジッと見つめていればどうしたのかと可愛らしく首を傾げてくるアイ。

 そんなアイの様子に知らず知らず笑みが浮かんでいるのが分かる。俺はアイの頭をゆっくり撫でながら、何でもないと告げるとアイは「そっか」小さく呟き、俺に身を預けるように寄りかかってきた。

 こうしてアイと一緒にいる時間、家でも学校でもどんな場所でも俺は好きだ。

 学校の中庭という場所であることからもちろん俺たち以外にも人はいる。こうしている今でもそれなりに多い視線を感じてはいるが、俺がアイを撫でるのをやめることはない。色々と吹っ切ってしまったのか恥ずかしさをあまり感じないのもあるが、やめてしまうとアイが物足りなさそうに見上げてくるという図になり結局また撫でてしまうからだ。

 時間の進みを忘れ、しばらくそんなゆったりとした時間を過ごしていた時――アイがぼそっと呟いた。

 

「……幸せすぎてちょっとこの先が不安になっちゃいそうだなぁ」

 

 俺とアイの距離はほぼ無いに等しい、だからこそアイのその言葉はしっかりと俺の耳に届いていた。

 そんなアイの言葉を聞いた俺は続くように答える。

 

「ならその不安が不安でなくなってしまうくらい幸せでいっぱいにしようぜ?」

「え?」

「そうすりゃきっと不安なんてもんはあっちから逃げていくさ」

 

 理屈もヘッタクレもない言葉だが、俺としてはこう考える他ない。

 言葉はさておき俺の伝えたいことはしっかり伝わったのかアイは小さく頷き、腕を伸ばして抱き着いてきた。心地よい温もりと柔らかさがアイを通して伝わってくるそんな状態でアイが口を開いた。

 

「……そうだね。いっぱいいっぱい幸せな時間を過ごそう。不安になんてならないくらい、私をたくさん包んでほしい」

 

 そんな言葉を聞いて俺はとりあえずと前置きをしてアイを抱きしめる。

 

「とりあえず抱きしめてみた」

「えへへ、もっと強く抱きしめて」

 

 痛くないようにギュっと抱きしめれば、同じようにアイの腕の力も強くなりお互いに強く抱きしめ合う形になる。こういった体勢になるといつも思うのだが、本当に飽きないなと俺は内心で苦笑を零す。

 

「アイはこうするの好きだよな」

「うん、大好き。その相手がユー君だからもっともっと大好き」

 

 アイから伝えられるストレートの好意に少しだけ恥ずかしくなってしまう。

 少しだけ照れた表情を俺はしているのだが、生憎とアイはそれに気づくことはなく更に言葉を続ける。

 

「す~き、好き好き大好き♪ ユー君も私のこと好き?」

 

 完全に顔が蕩けてしまっているアイがそこに出来上がっていた。

 俺はそんなアイの問いかけには当然のことながら頷くしかないわけで、そうした場合アイが更に機嫌を良くして更に密着してくるのもいつも通りと言えばいつも通りだった。

 

「このまま寝ちゃいたいくらい」

「残念だけどもうすぐ昼休みは終わっちまうなぁ」

「……おのれ授業め、私とユー君の時間を引き裂くなんて許せない」

「なんじゃそりゃ」

 

 アイの言葉に笑ってしまったがこの時間が永遠に続いてほしいと思っているのも本音である。しかし俺たちは学生の身であり学校に来ている以上これは仕方ないことだ。まあアイにしても本気で言葉に出したようなことを思っているわけじゃない……と思いたい。

 そろそろ教室に戻って午後の準備をしないと行けないのだがアイが俺から離れる気配がない。

 

「アイさんや、そろそろ戻らんと」

 

 そう声を掛けるとアイは小さく溜息を吐き、そしてこう言葉を掛けてきた。

 

「それじゃあ後10秒抱きしめてよ。それで午後も頑張る!」

 

 そんな言葉に俺は抱きしめる力を強くすることで答えるのだった。

 それからきっちり10秒、ずっと抱きしめられていたアイは名残惜しそうに俺から離れ立ち上がる。そうして2人揃って教室に向かう途中、中庭に設置されている缶入れを見てアイが一言呟いた。

 

「あれ、なんかコーヒーの缶ばかり捨てられてるね。みんな眠たかったのかな?」

 

 アイの言葉に導かれるように見てみると、確かにいつもはジュースやその他で溢れているはずなのにコーヒーの缶が多かった。それを見て俺とアイは互いに首を傾げ、どうしてそうなったのかの真相も知らぬまま二人揃って仲良く教室へ戻るのだった。

 

「珍しいこともあるもんだな」

「不思議だねぇ」

 

 

 

 

 時間は飛び夜である。

 今日姉さんが会社の飲み会で遅くなることは分かっていたため、例によって例の如くアイの家で晩御飯をご馳走になったのだ。

 晩御飯を食べた後アイのお母さんや妹ちゃんを交え談笑し、その後アイと少しだけ二人っきりで過ごした帰りのため時間も22時と少し遅くなってしまった。暗くなった夜道を歩きながら自宅へ着くと、家の電気が点いていることに気付く。

 

「なんだ……今日は早かったのか?」

 

 そう考え玄関に入ると姉さんの靴と先輩さんと思われる人の靴が一つ、どうやらいつもより気持ち早く終わっていつも通りに先輩さんに連れて帰ってもらったのだろう。そう思い玄関で靴を脱ぎ、そのまま廊下を歩きリビングに通じる扉を開けようとした正にその時だった。

 

「……好きなんです。先輩のことが……好きで好きで仕方ないんです!」

 

 少しだけ酔っているような声音だが、その言葉を伝えようとする意志はしっかりと感じ取ることができた。

 扉に開けようとしていた手に脳が反射的にストップをかけ動きが止まる。俺自身の動きが止まっても扉の向こう側、姉さんと先輩さんの時間が止まることは当然のことながらない。

 

「憧れだったんです。でも……先輩の優しさに触れて、一緒に仕事をしていく中で段々大きな存在になっていたんです。お酒の勢いと思われるかもしれませんけどそうじゃない……私……私、本気なんです!」

 

 涙声になりながらも必死に想いを伝える姉さんの声が響く。

 今帰ってきた俺としては一体どんな流れでこんなことになったのかは分からないが、とりあえずはと混乱している頭で俺はスマホを使ってアイにlineを飛ばす。

 

『……姉の告白現場に遭遇、俺はどうしたらいい?』

 

 そんな俺のメッセージに帰ってきたアイの返事、それは――。

 

『え? どういうことなの!?』

 

 その返事も至極普通の言葉だった。

 正直予想外な場面に直面してしまったこともあってか俺はリビングに入ることができず、再び玄関に向かい靴を履いて外に出る。

 すっかり冷え切った外気が頬を撫でる中、俺はゆっくりと歩き出した。

 

「……とりあえずコンビニ行こう」

 

 少し時間を潰して帰ってこよう、そう思い俺はコンビニへと向かう。

 ……とはいえ、だ。

 予想外のことで驚いたが、姉さんのあの言葉は勢いもあったかもしれないが紛れもない本心だというのは嫌でも分かることだった。

 俺は姉さんの想いが先輩さんに届くのを祈り歩みを進めるのだった。

 


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