月曜日のたわわ〜幼馴染はとてもたわわです〜   作:とちおとめ

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うおおおジャックや!
えぇ武蔵も!?
師匠キタコレ!

良き1年の始まりでした。



妹ちゃんから見たお兄ちゃん

「……狭いですね」

「まあな。でも俺とアイは毎日こんなだよ」

 

 とある日の朝のこと、アイお姉ちゃんの妹である私はその彼氏さん――もう私にとっても家族同然、お兄ちゃんのような存在であるユーさんと共に電車の中にいた。

 どうしてユーさんの傍に居るのがお姉ちゃんではなく私なのか、それは単純に今日お姉ちゃんはバイトであるのと、私の出かける先の近くにユーさんも向かうと知ってどうせなら途中まで一緒に行こうかと言う話になったのである。ユーさんの傍に誰か他の女の人がいることに対してお姉ちゃんは少しだけ嫉妬はするものの、そこは妹である私だったせいか特に何も言われるようなことはなかった。

 正直以前までの私は少しばかりお姉ちゃんに対して独占欲強すぎではないかと思っていた……だけど。

 

「……………」

 

 今までユーさんと接してきたこと全部思い返してみれば、お姉ちゃんがユーさんのことをあそこまで好きになるのも当然かと思った。ずっと昔からユーさんを知っているけれど、ユーさんはいつもお姉ちゃんを守り傍にいたような気がする。もちろん何から何までお姉ちゃんだけを優先するわけではなくて、家族ぐるみの付き合いがあるのもあって私に対してもユーさんは優しかった。

 一緒に遊んでくれるのが楽しくて。

 何か辛いことがあったときに慰めてくれるのが優しくて。

 勉強を教えてくれることが頼もしくて。

 ……ふいに頭を撫でてくれることが嬉しくて。

 その時を思い出すとついつい頬が緩んでしまい熱くなる。

 もし……もしもだ。

 私がお姉ちゃんよりユーさんと長く接していたら、ユーさんの隣にいたのは私だったのだろうか。

 

「……ありえないよね」

 

 ありえないIFを考えてすぐに私は苦笑してそれを否定した。

 でも少しだけ寂しさを感じるのは果たしてお姉ちゃんをユーさんに取られてしまったことか、それともその反対か……。

 少し暗くなった私、そんな私の頭を何かが優しく撫でる。

 私はそれが何なのかすぐに分かった。それはユーさんの手、優しく……落ち着かせるようにユーさんが私を撫でているのだ。

 

「どうかしたか?」

「……ふふ、何でもありません」

 

 ……ズルい、ユーさんはいつもズルい。

 普段何で女性は鋭いんだと言っているくせにこういう時のユーさんこそ鋭い。一瞬こうまで自分の状態を見透かされてしまったことにムッとしたけれど、頭を撫でてもらっている感覚、そしてこの瞬間に身を委ねたくなってしまってどうでもよくなった。

 

「なんでもありません……けど、もう少し撫でてくれませんか?」

「うん? ……了解だ」

 

 ユーさんは少し首を傾げていたけどすぐに笑って撫でるのを続けてくれた。

 あぁでも今の私ってとてつもなくチョロイ女みたいで少し嫌だな。嫌だと思ってもユーさんの温もりに触れていると本当にどうでもよくなってしまうあたり漫画で言うチョロインだ私は。

 お姉ちゃんも結構なものだが……うん、やはりお姉ちゃんと私は姉妹だということだろう。血は争えない。

 

「……えい」

 

 小さく声を振り絞り、思い切ってユーさんに引っ付いてみる。

 同年代の中ではかなり大きいと方だと思っている胸がむにゅりと形を変え、そこそこの圧迫感を感じるが少なくとも触れている相手がユーさんという点は嫌ではない。寧ろ安心する気がする……なるほど、お姉ちゃんがユーさんに触れていると安心できるとはこういうものなのか。

 お姉ちゃんから聞いていた話を実際に体験しているその時、ユーさんが苦笑しながら私に視線を送っていた。

 どうやら私は無意識ながらユーさんにスリスリしながら甘えていたらしい。

 

「妹ちゃんは少し甘えん坊だよな」

「えへへ、未来のお兄さんなんですからいいじゃないですか」

 

 ユーさんがお姉ちゃんと結婚すれば義理ではあるけれどユーさんは私のお兄ちゃんになる。

 結局それが早いか遅いかの話なので、こうしてユーさんに甘えるのも未来の妹である私にとっておかしな話ではないのだ。

 それにしても……と。

 私は今の状態を考えながらユーさんの顔を見上げてみる。

 こうして私という女の子と密着し、あまつさえ胸をこんなにも押し付けているというのにユーさんは特に慌てていないご様子。たぶんだけどお姉ちゃんとずっと同じように電車の中で過ごしていたせいか耐性が付いてしまったのだろう。少しでも慌ててくれれば私としてもからかい甲斐があるというものなのだが……少し残念である。

 でも少しだけ、ユーさんが困る顔を見てみたいなと……私はとあることを口にする。

 

「そういえばなんですけど」

「?」

 

 首を傾げたユーさんだけに聞こえるように、私はそっと囁くのだった。

 

「うちでお姉ちゃんとエッチするのをダメというわけではないんですが……少し声を抑えて欲しいとお姉ちゃんに伝えてくれませんか? 私とお姉ちゃんの部屋って壁が結構薄いんですよ」

「なっ!?」

 

 私の言葉にユーさんの顔が赤く染まった。

 少しばかり話題が意地悪かなと思ったけどそこは許してほしい。だってユーさんがいつも通りにしているから悪いのだ。私は少しだけドキドキしているのに、ユーさんはいつも通りだから……だから少しだけ困らせたくなっちゃったのだ。

 

「……えっと」

「……ふふ」

 

 その狼狽えようが可愛い。

 今の私はとても悪い笑顔を浮かべているに違いない。でも改めて言うが私は別にユーさんとお姉ちゃんに家でエッチをするなと言っているわけではない。恋人同士なら愛し合うのは当然のことだし、お姉ちゃんみたいな可愛い人が彼女でもし私が男で同じ立場なら絶対我慢できないと思うからだ。

 ……何度目か分からないが別にエッチすることはいいのだ。

 ただもう少し私としては声を抑えて欲しい、するなら静かにして欲しいと言うのが本音。ユーさんの困り顔を見たいからとこのような話題を振ったが部屋から聞こえてくる声に私は「あぁ始まったかぁ。下でテレビ見よう」といつもリビングに降りる羽目になるのだ。

 

「……それに関しては申し訳ない」

「謝るほどじゃないんですけど……する前に部屋に来て今からするからなんて言えるわけもないですし」

「そりゃそうだ」

 

 お姉ちゃんと遊んだりするならユーさんの家で……なんて言えるわけない。そうなったらユーさんはうちに来てくれないから私が寂しいもん。

 まあこれは今後の課題というやつだろう。

 別に隣の部屋から声が聞こえても私は恥ずかしいだけで我慢しようとしたらできると思うけど……。

 私はそう考えながらついこの間を思い出した。

 

『あぁ……っ! ダメ……ダメぇ……そこクリクリしちゃいやぁ……!』

 

『奥に来てるのぉ……っ! ユー君のたくさんちょうだい……っ!』

 

「……あかんてこれ」

 

 思わず声に出してしまった。

 ダメだ、改めて思い出したがこれは我慢できそうにない。もしこれを隣の部屋で平常心で聞き続けられるならその人の精神は鋼以上だろう……はぁ。

 

「妹ちゃんから直にそういうこと言われるのは堪えるな……悪い、俺もアイも気を付けるよ」

「お願いします……あ、でも!」

「どうした?」

 

 少し不安になって私はこう問いかけるのだった。

 

「……うちに来る回数を減らすのはやめてください。……私が寂しいですから」

 

 きっと今の私はとても赤くなっていると思う。

 こんな顔を見られるのがいやで思わず顔を伏せたが、そんな私の頭をユーさんが撫でてくれる……本当に落ち着く優しい撫で方だ。

 

「大丈夫だよ……まあ色々と気を付けるけどさ、いつもみたいに何気なくお邪魔させてもらうよ」

「……ふふ、はい!」

 

 ユーさんの言葉を聞いて安心した。

 

「……やっぱり自慢だよね」

 

 結構前になるけど学校で兄のような存在がいると友達に言った時、その友達がどんなお兄さんなのと聞いてきたことがあった。その時私はこう答えたけど、今になってもやっぱりその時の言葉は何一つ変わりはしない。

 

 ユーさんは私にとって自慢のお兄ちゃんだ。

 

 目的の駅に着き私とユーさんは別れる。

 でもその夜、私は少しお姉ちゃんに自慢するのだった……色々と。

 


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