GATE くうかんポケモン 彼の地にて、時空を越えて戦えり   作:00G

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前回パルキアお休み回と言ったな。

あれは嘘だ。

というか書いてたらパルキア出しちゃった。


メロメロとかってホント嫌

 自衛隊が特地へと派遣され、パルキアと行動を共にするようになってから幾日か過ぎた頃。

 伊丹率いる第3偵察隊はレレイ、ロゥリィ、保護したエルフのテュカ・ルナ・マルソー、平猫を連れて『イタリカ』という街へと向かっていた。

 理由は、レレイたちが集めたアルヌスの丘での戦闘で死んだ翼竜の鱗を換金しに行くためだ。

 仮設住居で暮らすようになった彼女たちだが、さすがに生活のすべてを自衛隊に任せることはせず、衣食については自弁できるようにと理想を据えている。

 最悪自衛隊に身売りをしようとしたが、翼竜を好きにしてもいいと自衛隊に言われたお陰で翼竜の鱗から得たお金で生活しようということが実現できた。

 翼竜の鱗の採取はやはりコダ村からの避難民たちで行ったが、平猫とパルキアも協力してくれた。

 その事もあってか、パルキアはコダ村の避難民――特に幼い男の子――から好印象を持たれている。

 ちなみに翼竜の鱗集めを手伝ってくれたパルキアは、今回はアルヌス駐屯地で留守番をしている。

 4メートルという巨体もあってか、アルヌス駐屯地の敷地拡張の手伝いを行っており、サイズの合わない工事用ヘルメットを被る姿は妙にシュールだった。

 

 イタリカへと向かう伊丹一行だが、車を走らせている途中道の先で黒煙が上がっているのが見えた。

 明らかに良いことではない。

 炎龍襲撃に続いて厄介事が起こるとは、さすがに伊丹も俺は不幸の星のもとに生まれてしまったんじゃないかと思ってしまう。

 車の後ろから顔を出したロゥリィが『血の臭い』と呟いたのを聞いて、争いがあったのだろうとすぐにわかった。

 それでも行かなきゃならんのかぁ、と思いながらも伊丹はそのまま前進するよう指示を出す。

 

 ほどなくして門が閉ざされた街が見えてくる。

 やはり何か戦闘があったのか、閉ざされた門の周囲にはどこかの兵士の死体が転がっている。

 このまま進んでいけば敵と間違われて攻撃されかねない。

 

「何者か!敵でないなら姿を見せよ!」

 

 案の定、門の上から鎧を着た男の誰何の声が響く。

 

「……どうする?」

 

 他の街にしない?という意味も含めた問いを車内全員にする。

 下手に刺激すれば向こう側から矢の雨という名の歓迎を受けるだろう。

 もしそうなった場合を考えて桑原は無線で交戦できるよう準備をするように指示を出した。

 だがレレイが『私が話をつけてくる』と言って車から降りる。

 レレイに続いてテュカ、平猫、ロゥリィの順に車から降りていく。

 さすがに女性と訳のわからない生命体だけを行かせるのは男としてどうか、ということで伊丹も後を追うように車から降りた。

 

 さて、この後起こることはお察しだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 所変わって門の向こう側。

 イタリカの門の前でピニャ、ハミルトン、グレイの三人は突如としてやって来た謎の集団を門の小窓越しから確認しながら警戒していた。

 警戒しているのはピニャたちだけではなく、イタリカに住む住民たちも例外ではなかった。

 

 待つことしばし。

 謎の荷車から杖を持った少女が降りてきた。

 

「リンドン派の正魔導士か?」

 

 続いて金髪の女性。

 

「エルフまで?正魔導士と精霊魔法の組み合わせは厄介だな……」

 

 後に謎の猫。

 

「なんだあの猫は……魔導生物の一種か?」

 

 最後にハルバートを持った少女。

 

「あれは……ロゥリィ・マーキュリー!?」

「あれが噂の死神ロゥリィですか?」

「ああ、以前国の祭典で見たことがある。 だが油断するな。あれでも齢900歳を越える化け物だぞ」

 

 魔導士にエルフ、謎の魔導生物に死神ロゥリィ。

 もう勝てる気がしない組み合わせに、ピニャはいっそのこと抵抗せず逃げ出してしまおうかと考える。

 

 亜神、そして神の考えは人間には到底理解できぬものだ。

 亜神、特に殺戮と狂気、戦いの神エムロイの使徒であるロゥリィが盗賊と組んでいないなどという確証はない。

 だが彼女が盗賊と組んでいたのならすでにこの街イタリカは墜ちている。

 戦うか。それとも招き入れるか。

 ピニャは目の前の事態に必死に思考を巡らせ、最善の策をとろうとする。

 だが妙案が浮かぶよりも先に、門が叩かれる音が響く。

 

 敵か味方かわからぬ輩がすぐに目と鼻の先にいる。

 

――どうする。自分にはここにいる民兵たちの士気を上げる術などもうない。だが民兵たちはどうすればいいのかとこちらを見ている。亜神であるロゥリィが盗賊に与しているなら先程の盗賊――アルヌスの敗残兵――襲撃の時、もしくはその前の襲撃でイタリカは墜ちている。もしかしたら盗賊と組んでいないかもしれない。そうなればロゥリィを味方につければ戦力として使えるかもしれない。なら強引にでもいいから味方につけよう!そうしよう!

 

 ここまで約3秒ほど。

 自分の判断スピードの早さに自分で驚きながら、ピニャはハミルトンやグレイの制止の声を振り切って門の閂を外す。

 そして、勢いよく門を開け放った。

 

「よくぞ来てくれた!」

 

 ゴンッ!と、何かに強く当たった音がする。

 目の前には視線を下に向ける魔導士の少女とエルフと魔導生物と死神ロゥリィがいる。

 ピニャもつられて視線を下に向けると、緑の斑模様の服を着た男が仰向けて倒れていた。

 よく見れば額が赤く腫れており、先程のゴンッ!という音は開けた門がこの男の額に直撃したのだろうという予想ができる。

 だが、この状況はピニャにとって避けたい状態だった。

 確かに門を開けたのは自分だ。

 これから味方にしようとした矢先にこれだ。

 ピニャは違ってくれと願いながら、訊ねる。

 

「も、もしかして……妾が……?」

 

 『うん』、と三人と一匹が首を縦に振った。

 その結果に、ピニャは血の気が引いていくのを感じ、悲鳴を上げる。

 

「次回!城ノ内、死す!」

「城ノ内って誰だよ!?」

 

 魔導生物の意味不明な発言に体を起き上がらせて怒鳴る男を見て、内心ほっとするピニャであった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 さて、一方で皆が気になるアルヌス駐屯地で留守番をしている我らがパルキアはというと……

 

『………♪』

「………………」

 

 黒いポケモンに寄り添われていた。

 なぜこうなったかは伊丹が門で頭を強打した時間帯からほんの少しだけ遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 モグモグモグ……と、パルキアはまたもや口を動かしながら自衛隊から頂いた『パン』と呼ばれる食べ物を食していた。

 アルヌス駐屯地の敷地拡張工事の協力報酬として手に入れた異世界の食べ物に気分を良くしながら、パルキアはアルヌス駐屯地を歩いていた。

 アルヌス駐屯地に造られた街――といっても規模は小さい――はパルキアが問題なく通れるよう道が広げられる工事が行われ、パルキア自身も自分のために改造されるということを理解していたため工事に協力。

 工事に参加している自衛隊員が食べていたもの、パンを物欲しそうに見続けたことで貰えた。

 計画通り。

 

 パンを食べながら道を歩くパルキアは、この暇な時間をどうしようかと考える。

 正直なところ、早く空間の繋がりを絶ち切ってしまいたいがその方法がわからない現状では急いだって仕方がない。

 3ヶ月以上自分で探してもわからなかったから、もう気ままに行こうというのが今のパルキアの心情だ。

 創造神も『お前の好きにしてもよい』と仰られたので、この異世界特地で長年できなかった『普通の生活』とやらを満喫している。

 

 たまたま足下に子どもがいたのでパンをあげる。

 元いた世界では、パルキアは人間がいてもお構いなしに戦闘するバカ野郎と認識されてしまっているが、あれは時間の奴がいたから暴れただけであり本来はそこまで気性が荒いわけではないのだ。

 

「パルキア様ありがとう!」

 

 にぱーと笑ってお礼をいう子ども。

 だが残念なことにパルキアは特地の言葉は理解できない。

 何時もは平猫が通訳してくれるから問題ないが、今はいないので子どもが何を言ったのかわからない。

 それでも、雰囲気的に察することはできるので一応は小さく鳴いて返事をする。

 

 アルヌス駐屯地で生活するようになってパルキアはそこそこ、いや、かなり崇拝されるようになった。

 特にコダ村の避難民たちからの崇拝がすごい。

 実際助けられたことと、平猫の説明でパルキアは異世界の神様とコダ村の避難民たちに認識されている。

 あながち間違いではないから否定のしようがない。

 小さいがパルキアを祀った祠まで住民たちの手で作られてるとも聞いており、特地で神をするつもりもないパルキアからしたら迷惑な話だ。

 だが無下に扱うこともできないから困ったものだ。

 

 そうそう。

 近々アルヌス駐屯地内にパルキア専用の家が建てられるらしい。

 4メートルの巨体が入る家ということもあり建てられた後はとても目立つ家になりそうだが、ありがたい話である。

 要望として寝心地の良い寝床を所望し、どうやら本当に良い素材で出来た寝床を準備してくれるそうだ。

 平猫経由で金額などの負担を自衛隊に負わせても良かったのか、と聞いたがアルヌス駐屯地で指揮官をしている狭間浩一郎がこれからも世話になるだろうから構わないと言っていた。

 ある程度協力はするがさすがにこちらにも拒否権があってもいい、と信じたい。

 

 ……さて、こう色々と言ったが先程からこちらを観察するような視線をパルキアは感じていた。

 気配を消すことに長けているようで、視線の持ち主の姿は見えない。

 だが伊達に世界が出来た頃から存在している訳でもなく、パルキアはゆっくりとある一点だけを見る。

 

――出てきたらどうだ?

 

 そう言うと、建物の影になっている所からゆっくりと黒いポケモンが現れた。

 闇のように黒い体。

 人魂のように揺れる白い頭と、青い目。

 何かと因縁のあるポケモン、ダークライだった。

 時間の奴と戦った街を守るために抵抗した個体とは別個体のようだが、この世界にもポケモンがいるとは驚きだった。

 いや、ナナの実があった時点で少なからずこの可能性は考えておくべきだった。

 

 さて、今現れたダークライをどうしようかとパルキアは考える。

 ダークライの特性は『ナイトメア』。

 眠らせた相手に悪夢を見せ、タイプ関係なしに相手を眠らせることができる『ダークホール』を専用技として持つポケモン。

 すばやさもポケモンの中ではトップクラスであり、戦うことになったら本気にならねばならないような相手だ。

 パルキアは目付きを鋭くし、久しぶりに本気モードに入る。

 対するダークライは戦う意思を見せて身構える――――ということはなく、指先をモジモジと弄りながらこちらをチラチラと見てきた。

 

 なんだ?と、すっかり戦う気でいたパルキアは肩透かしを食らう。

 頭に?マークを浮かべながら、パルキアは変な物を見るような目付きでモジモジとするダークライをじーっと見る。

 

『…………ソンナニ見ツメラレタラ、恥ズカシイ……』

 

 なんと、言葉がわかるではないか。

 やはり同じポケモン同士では意思疏通が可能なのか。

 さてさて、現実逃避はやめて真剣に考えようではないか。

 目の前にいるダークライは今なんと言った?

 見つめられると恥ずかしい?

 ということはメスの個体ということか?

 いやいや、メスの個体だとしてなぜ見つめられただけで恥ずかしがるのか。

 まあ真っ先に思い浮かぶ可能性が1つあるが、さすがに違うよなぁと思いながらパルキアは訊ねた。

 『どういうことだ?』と。

 

『………初メテ貴方ヲ見テ惚レマシタ。夫婦(めおと)トナル前提デオ付キ合イシテ下サイ……』

 

 そう言って遠目からでもわかるくらい頬――の位置になる――を赤くし、両手を握りながらペコリと頭を下げるダークライ。

 待て待て待て。

 なぜいきなりそうなる。

 要するにダークライが自分に一目惚れして、今こうして告白しに来たと?

 俺ってメロメロ使えたっけ、と全く違うことを考えて頭を冷静にするパルキア。

 さて、ゆっくりと考えていこう。

 元の世界でも、ちょくちょく空間の狭間から出てくるとドラゴン系ポケモンによくモテるパルキア。

 何百、何千という回数告白されているせいでどうやら恋愛感覚が麻痺してしまっている。

 告白されてやけに冷静になれたのもこのお陰かもしれない。

 目の前の告白してきたダークライはまだ頭を下げている。

 パルキアとしては、生涯伴侶となる相手にある程度条件を決めている。

 

 まず第1に種族。

 この時点でドラゴンタイプのパルキアと全く違うが、パルキアはあくまで基準程度としているのでこれはあってもなくても正直どうでもいい。

 

 第2に強さ。

 自身と肩を並べるくらい強くないと意味がない。

 ダークライという幻級のポケモンである時点で、彼女の強さは他のポケモンよりも高い能力を持つ。

 これは問題無さそうだ。

 

 第3に性格。

 どんなに強かろうが、キツい性格の伴侶は絶対嫌だ。

 まだ会ってから少ししか経ってないが、第1印象はクールな感じ。

 めっちゃタイプ。

 しかも、告白して顔を真っ赤にしているギャップもこれまた良い。

 

 第4にどこに惚れたのか。

 肩のしらたまの美しさに見惚れたのなら上の3つをクリアしていても即刻アウト。

 伴侶となってもらうのに、しらたまに惚れられてしまったら嫌なのだ。

 ということでパルキアは自分のどこに惚れたのかダークライに訊ねる。

 

『………目、デス』

 

――目?

 

『………普段ハポーットシタ目ダケレド、戦イ二ナルト凛々シクナル貴方ノ目二惚レマシタ』

 

 うん。伴侶にしても何も問題ないじゃないか、とパルキアは思った。

 

 だがどうしよう。

 破れた世界にいる彼女も好意を示していることをパルキアは知っている。

 モテるオスは辛いぜ。

 

 ダークライは律儀にまだ頭を下げたままパルキアの返答を待っている。

 ホント律儀な娘だなぁと感心しながら、パルキアはダークライの告白に答えた。

 

――気持ちは嬉しい。だが俺に好意を抱いている相手はもう一匹いるし、君を選ぶかどうかはわからない。それでも良いと言うなら、友だちから始めよう。

 と。

 

『……ハ、ハヒッ』

 

 ダークライは感激したかのように口元に手を当てて起き上がる。

 うーん、ホントメチャクチャ良い娘じゃないか、とパルキアはうんうんと唸りながらダークライのもとに歩く。

 近づいて、感激するダークライをひょいと持ち上げて肩に乗せると、適当にブラブラと歩き始めた。

 肩に乗せるとダークライは最初ワタワタと慌てふためいていたが、次第に落ち着いてご機嫌な様子で肩に寄り添っている。

 下手に一匹で行動させていれば侵入者として攻撃されかねない。

 自衛隊からの信頼を得ているパルキアが連れているということで少し位は自衛隊もダークライのことを信用してもらえたらいいな、とパルキアは思っていた。

 

 その後は自衛隊にダークライを紹介しに行ったり、コダ村の避難民たちと会わせてみたりと色々とパルキアは行動した。

 ダークライのテレパスはどうやら特地の言葉で伝わっているらしく、自衛隊がダークライの言葉を聞き取ることに少々時間がかかった。

 でも、狭間は良い笑顔を浮かべながらダークライと握手していたので、ダークライの立場はそう悪くないものとなったのだろう。

 それにしても狭間は偉い人間のはずなのに簡単にダークライを信用するとは、人が良いのかそれとも馬鹿なのか。

 まあでも馬鹿だったら指揮官をやっていないだろうし、人を見る目があるのだろう。

 隣にいた柳田という人間のオスは不信感丸出しで見てきたが。

 

 さて、ダークライを連れて歩いて時間を潰していれば日は暮れる。

 すでに日は沈み、月が夜空の真上で輝く。

 ダークライとは一旦別れ、それぞれ別行動をすることにした。

 ダークライもダークライの生活があるので、あまりここには長居させる必要もないと感じたからだ。

 しばらくしたらダークライもアルヌス駐屯地で生活すると言っていたので、それまでは暫しのお別れだ。

 

 もうこうなれば惰眠を貪るか夜更かしをするかの2択になってしまうが、なぜか妙に何かがあると自分の第6感が告げている。

 長年生きているなかでこういった予感は結構な確率で当たるので、もしかしたらここアルヌス駐屯地に外敵がやって来るかもしれない。

 警戒しておこう、と気を引きしめるパルキアの耳にヘリコプターのプロペラの音が入り込んできた。

 なんだ?と思い、パルキアは音がした方向に飛んでいく。

 そこには、今まさに飛び立とうとしているヘリコプターが数機存在していた。

 どこかに行くのだろうかと思うや否や、ヘリコプターは地面から浮き上がると全機同じ方向へと飛んでいってしまった。

 

――ついていこう。

 

 バレないようにコッソリとヘリコプターの跡を追うパルキアだった。




無口系クール美女って可愛いと思うんだ。

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