これは人外ですか?いいえ、ただの人間です(凍結)   作:爆走ボンバー人間

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オリジナル回です

感動ものになりましたが上手くできていたらいいです


行ってらっしゃい、ミドリちゃん

翌日の朝、俺とミドリさんはミドリさんのおばあさんが入院している

病院にやって来た

 

学校?もちろんサボった

 

時間が何時までもあるとは限らないからなるべく早いほうが良い

 

〈お婆ちゃん……〉

 

ミドリさんは持ち前の明るい笑顔ではなく不安にまみれている顔になっていた

 

「大丈夫ですよ、きっとまだ間に合います」

 

そんな確証何処にもないのに俺はこの人のそんな顔が見ていられなくて

いつの間にかそんな言葉をかけていた

 

一瞬ミドリさんは少し驚いた様子だったがいつもの笑みになった

 

〈うん、そうだね。きっと大丈夫…〉

ミドリさんが落ち着いたところで病院に入って受付の人に患者の

長田さんの病室を尋ねて病室番号を聞き病室に向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室の患者名は長田と書かれていた

 

目的の病室の前まで来てミドリさんを見ると緊張している様子だったが

俺の視線に気づいたミドリさんは大丈夫と首を縦に動かす

 

病室のドアをノックする

 

「はい、どうぞ」

 

中から了承が取れたので失礼しますとミドリさんと病室の中に入ると

ベッドで寝ているミドリさんのおばあさんがいた。

倒れたと聞いていたが体調は安定しているようでミドリさんは

おばあさんの姿を見て安心したミドリさんは今にも泣きそうな

顔をしていた。やはり俺の思っていた通りお婆ちゃんっ子のようだ

 

「あら、これは珍しいお客さんね。あなたは?」

 

「俺は星上院 志希、あなたのお孫さんのミドリさんの知り合いです。

これ、お見舞いの品です」

 

病院に行く途中の果物屋で買っておいたフルーツを差し出す

 

「ご丁寧にありがとう。…あなたはミドリちゃんの彼氏かしら?」

「いや、それはないです」

 

何となく言われそうな気がしたので即否定した

ミドリさんは〈そんな照れなくても良いのに〉と笑っていた

どうやら冗談を言える程度には回復したようだ

 

「ふふふ、面白い子ね。ずっとベッドの上で寝てばかりで

退屈だったのよ。ありがとね、お見舞いに来てくれて」

 

「俺なんかが来て暇が潰せたなら良かったです…

すいませんが今お孫さんがどうしてるか聞いてますか?」

 

一番にこれを確認しておく必要がある

これによってこの後の行動が決まる

もし知っているなら今のミドリさんの伝えたいことを

伝える必要がある

もし知らないのなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前

 

「伝えなくて良いんですか?」

 

〈うん、私はお別れを言いたいって言ったけど本当にそれで

良いのかなって思って…私が本当に望んでいるのはお婆ちゃんが

元気になることだから、私が死んでるって聞いたら多分もう

笑顔になってくれないと思うから…それで…良いの〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これはミドリさんが決めたこと…どんな回答が待っていようとも

俺がとやかく言うことはない)

 

そしておばあさんが出した答えは

 

 

 

 

 

 

 

「…ええ、知っているわ」

 

!知っていたのか。正直まだ知らないものだと思っていた

ミドリさんは悲しそうな申し訳なさそうな顔をしており

お別れの言葉をお願いした

 

「そう、ですか…実はミドリさんの伝言を

「いいえ、その必要はないわ」預かって、え?」

 

必要…ない?それはどういう…

 

「聞かなくても私はあの子のお婆ちゃんだから

分かるの。ここにいるんでしょう?あの子は?」

 

「〈!!??」〉

 

「見えるんですか?」

 

「いいえ、でもあの子はここにいる。ずっとあの子のことを

見てきたんだからそれぐらい分かるわ」

 

「あの子が私のことをどれだけ心配していたのかも、ね」

 

〈!?おばあ…ちゃん…〉

 

この人やっぱりすごいな…理屈じゃなく本気でミドリさんと

心で繋がってる

 

「だから最後の言葉はあの子自身から言って欲しいわ」

 

〈!?おばあちゃん!!〉

 

瞬間ミドリさんは泣きながらおばあさんに抱きつき

おばあさんはミドリさんを抱きしめ頭をあやすように撫でていた

 

〈おばあ、ちゃん!元気で、良かった!〉

 

「心配してくれてありがとね、ミドリちゃん」

 

〈もっと、はや、くに、これな、くてごめんなさい!〉

 

「別に良いのよ、来てくれただけでとっても嬉しいわ」

 

〈こんな、形であっ、て、ごめんなさい!〉

 

「辛かったでしょう?でもこんなになっても私のところに

来てくれて本当に嬉しいわ。ありがとうミドリちゃん」

 

実際には触れ合えていない、言葉は聞こえていない、

なのに二人の会話は成立している

 

本当にミドリさんのことを理解していないと出来ないことで

二人の家族のキズナが可能にしているのだろう

 

〈本当は、もっと、おば、あちゃん、と、いたか、った!

でも、もうこれ、で最後、だと、思うと、辛いよ!〉

 

「…確かに会うのは最後になっちゃうわ。でもねミドリちゃん、

別れっていうのは新しい出会いの一歩なの。今ここでお別れしても

ミドリちゃんが本気で会いたいと願ったなら、いつか出会えるわ」

 

〈願えば、出会える…〉

 

「ええ!おばあちゃんがミドリちゃんに嘘をついたことある?」

 

〈ううん、ありがとうおばあちゃん。これがお別れでも、

新しい出会いに向けて進んでみる!〉

 

そう言うとミドリさんの体から光の粒子が出て

同時にミドリさんの体が透けていく

 

この世に未練がなくなり成仏しかけているのだ

 

「それで良いのよミドリちゃん、もうミドリちゃんは

大丈夫。私も安心できるわ」

 

〈これまで心配ばかりかけてゴメンねおばあちゃん、

今まで私を育ててくれてありがとう!〉

 

「いいのよ、あなたは私の世界で一人だけの可愛い可愛い

孫なんだから」

 

 

 

見ていて家族とはどれだけ素晴らしく美しいか分かる

 

俺にもあんな家族がいたら何も知らずに平凡に生きられたのだろうか?

 

そんなことを考え柄にもないと思う

 

それに本気でそんなことを思えば俺の今までの16年が何の意味も

持たなくなってしまう

 

 

 

 

 

それに俺にはユーがいる

 

俺はユーが側にいればそれだけでいい

 

そのためならどんな事でもやってやる

 

それが俺の唯一の生きる意味だから

 

 

 

 

…さて部外者の俺が水をさすわけにもいかない

 

星上院志希はクールに去るぜ

 

〈あ、志希君待って!〉

 

病室を出て行こうとするとミドリさんに呼び止められた

 

「どうかしたんですか?」

 

〈志希君だいなかったら私、おばあちゃんに会うことが

できなかったかもしれない。だからありがとう!

私をおばあちゃんのところまで連れて来てくれて!〉

 

「そんな大したことはしてませんよ。あなたが

おばあさんに会いたいと願ったから俺はほんの少し

手伝っただけですよ」

 

〈それでも私はあなたに感謝してる。…もう本当にお別れみたい〉

 

光の粒子が溢れるほどに出て行きそれに比例するように

ミドリさんの体も薄まっていく

 

〈志希君ありがとね、またどこかで会えたらいいね。

ユーちゃんによろしく!〉

 

「今度は生きて、俺の家まで来てください。ユーと

一緒にたくさんおもてなししますから」

 

〈ありがと!楽しみにしてるね♪〉

 

「行ってらっしゃい、またねミドリちゃん」

 

バイバイではなくまたね

 

それはまたどこかで再開することを意味している

 

 

 

 

 

 

ありがとう!

 

またねおばあちゃん!

 

 

 

 

その言葉を残しミドリさんは最高の笑顔で成仏した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、家に向けて足を進めている

 

あのあとおばあさんに加護を込めた呪符を渡しておいた

 

無意識に人外を引き寄せないようにする術式と

他の術から干渉されないようにする術式を施してある

 

本来なら裏に関係した者の関係者から裏に関することは

消しておかないと巻き込まれる可能性もある

 

だがあの二人のかけがえのない思い出は消してはいけない

それがあの二人にとってはきっと命よりも大切なものだから

 

だから俺は記憶が消されないようにあの呪符を渡した

 

俺が無かったものをなくして欲しくないから

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
家族のキズナって素晴らしいですね

次回から原作に戻ります

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