転生ショタ魔王はお好きですか?   作:kimito19

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第1話  転生先は⁉

目が覚めると天井があった。俺をのぞき込むいくつかの顔らしきものが見える、だけど目前のものがよく見えない。数年の時が流れると、俺の見た目はようやく人間で五歳くらいだ。実際に年齢も五歳なのだが、はっきり言うが俺はどう見ても人間ではない。なぜそんなことを言うのかと言うと、別に尻尾があったり翼があったりはしない。だが答えは俺の頭にあるこの小さな角だ!そう、俺は人間じゃない魔族なのだ。魔族は元々寿命が人間の何十倍もあるため成長がとてもゆっくりなのだ。そして、魔族にも人間と同じように階級が存在する。平民、下級悪魔、中級悪魔、上級悪魔最後に魔王。俺の一族は中級、可もなく不可もなくといったところだ。生きることにも特に苦労しないといった点では別に不自由はない。

 

「ミクル、出るから用意して!」

「は、はい、ご主人様!」

 

麻袋のような服しか着用していない彼女は、奴隷番号396番通称ミクル。奴隷制度もちろんある。奴隷は昔の大戦で、多くの人間を捕らえることに成功した当時の魔王が奴隷として人間達を生かし、今では下級悪魔以上の悪魔達一人一人に一人以上の奴隷が着いている。

奴隷は通常のメイドや執事といった召し遣いとは違う。召し遣いとは自らの階級より格上の者には、分け隔てなく接するが奴隷は自分では主人を決める権利はなく、決められた主人だけに一生従う。それが召し遣いと奴隷の違いだ。

ミクルは俺の特注ブーツやグローブを用意し、俺はそれらを着用し出ていこうとすると、

 

「また、朝からお散歩ですか?カリス」

「マルティネス母様。はい、これから行ってきます」

 

このロングの黒髪でボインの女性は今の俺の母親。名前はマルティネス・ボティス。召し遣い達の前や他人の前では気品溢れる女性だが、俺や家族の前ではかなりの親馬鹿ぶりを発揮する。胸が気持ちいいのは内緒だ。母様は脈絡もなく俺を抱きしめると俺の頭を撫でた。本人曰く最低一日一回は俺の頭を撫でなければ、一日やってられないらしい。

 

「はぁ~カリス貴方は何でこんなに愛らしいのかしら…」

 

母様は俺を抱きしめ撫でてご満悦のようだが当の俺はと言うと、

 

「もが、ももが、がががも、もがが……」

 

母様の胸は気持ちいいが、息が出来ないのがいつもの難点なのだ。

 

「お、奥様…ご主人様が苦しそうです」

「あら、ごめんなさい大丈夫ですかカリス?」

「は、はい。大丈夫ですマルティネス母様…」

 

俺は軽く目を回すが、すぐに意識を取り戻し屋敷の外へ出ると庭に剣を持ち素振りをしているラルス・ボティス父様が居た。更にもう一人我が家のメイド、メーティス・クロスが洗濯物を干していた。

「散歩かカリス!」

「はい、ラルス父様」

「行ってらっしゃいませカリス様、道中お気を付けください」

「うん、メーティス分かったよ。行くよミクル」

「はい、ご主人様」

 

俺はミクルと共に外に出ると、俺は山に入った。俺の家は田舎にある。お陰で店やらなにやらはかなり不便だったりするが、こんな風に身体を鍛えたりするにはちょうど良かったりする。

 

「ミクル、いつもの場所に行くよ」

「分かりました」

 

けれど、単純に身体を鍛えるだけじゃ面白くなんてない。そう魔法だ。自我が目覚めたのは生後一年後だ、まずは文字を覚えた。それには母様やメーティスが手伝ってくれたから覚えるのに苦労はしなかった。それからは、母様の書斎に置いてあった魔導書を手に取った。自我が芽生えたあたりから、自分の頭に角の存在を知り薄々魔法があるんじゃないのかと思っていたが、母様の魔導書が目に入り魔法の存在を知った。魔導書の近くには、実は分かってておいているのかと思えるように、魔法の教本が置いてあった。俺は手に取り、四年間その教本をみっちり読み基本の練習を行った。今では屋敷から離れた更地で練習を行っていた。

ちなみに基本の一つである、魔力制御と言うものがある。簡単に説明するならば、通常ある程度放出されている魔力を放出されないようにする訓練の事だ。俺はそれをほぼ完ぺきに出来ているため、父様や母様は夜中によく俺には魔法の才能がないのではと、よく喋っているのを見かけた。訓練とはいえ心配させるのは胸が痛むが、野望のためには仕方がない。俺の野望、それはこの理不尽な世界を破壊しることだ。

 

「それじゃあ始めようかな」

「お気お付けくださいご主人様。無茶をなされますと奥さまや旦那様が悲しみます」

「分かってるよ、ミクル風情が俺に命令しないでよ」

「も、申し訳ありませんご主人様!」

 

俺はそう言いミクルの方を向くと、山道を歩いたからか腕や足に切り傷があった。俺はため息をつきながらミクルに近寄り、その場にしゃがみ込み回復の魔法を使った。

 

「い、いけませんご主人様!私なんかにご主人様の貴重な魔力を消費するなど!」

「黙れ、お前に傷があると俺が黙って魔法の練習をしている事がバレるし、それに回復魔法の練習にもなるんだから、お前の傷は練習台になるんだから有り難く思え。それから奴隷に傷があると俺たちボティス一族の品位が下がる」

「そ、そうですね。申し訳ございません」

 

教本によると、魔法とは術者のイメージによって作られると書かれていた。俺は今までに何度も魔法を使ってきた、だからイメージがどれだけ大切かは理解している。

今回のミクルの傷は浅くというかかすっているだけ。イメージは皮膚を生成している細胞が分裂するイメージだ。ミクルの傷に両手を添え、傷が癒えるまでの経緯をイメージし力を送ると、ゆっくりと光始めるとみるみると傷が治っていった。

「あ、ありがとうございます」

「言っただろただの練習なんだから、礼を言われるいわれはない。それより始めるから早く水筒を出して」

「す、すみませんご主人様!」

 

ミクルは慌てて水筒を取り出すと、俺はそれを受け取り地面に水をばら撒いた。この水はそこら辺にある普通のただの水だ。

俺は両手を翳すと淡く光り始めた。すると地面にばら撒いた水が円型に集まり空中に浮遊した。これは水を使った魔力制御の練習だ。通常は、さっきの通り体外に放出しないようにするのも基本的な練習だ。けれど、これはどちらかというと実践向きな練習になる。自身の魔力で自由自在に水の形を変える練習は基本中の基本だと教本にも書いてあった。だがまずは土やら石やら埃やらを俺は取り除き、ある程度綺麗な状態にするとその後、水の形を変えていった。丸、三角、四角といった単純で簡単な形から人の形などの複雑な形を作り魔力制御の練習をする。ルールとしては水滴を落としてはいけない、それくらいだ。

俺は準備運動の気持ちでこの訓練をし、次は応用的な魔法の練習をしようとしていると、

 

「た、助けててててええええ!魔獣よおおおおお!」

 

この山の近くの村から悲鳴が聞こえてきた。

魔獣、魔力を持つ生物が力を暴走させ無作為に、人や魔族などの生物に敵対する生物の事を指す。

魔力は様々な生き物が持っている神秘と言える力。人間や魔族はもちろん、空を飛ぶ鳥に地を駆ける動物、水を泳ぐ動物から昆虫、更には植物まで魔力を持っていると言われている。主に人間や魔族には数百年前に発見されたらしいが、ここ百年以上は野生の動植物が魔獣化している。魔獣化に関しての理由は今だ分かっていない。

 

「今の声、この山の裏にある村からか…」

「い、いけませんよご主人様!魔獣を相手にしたと奥様や旦那様に知れたら、お仕置きされてしまいます!」

 

う、お仕置きか………流石に嫌だな……外見年齢は五歳だが、精神年齢はおっさんだからな……

 

「けど、そうも言ってられないよ。あの村も我が家の管轄なんだから」

 

俺はそう言って、ミクルの抱き上げた。というかお姫様だっこだ。

 

「ご、ご主人様!い、いけませんこんな事!」

「うるさい、奴隷と一緒に歩いていたら何人犠牲になると思っているんだよ。それにこっちの方が断然速い!」

 

俺はそう言って駆け出し端まで行くとそのまま飛んだ。身体を空中に投げ出し、木から木へ飛び移り移動を繰り返した。村へ近づくころには俺の体は上空数十mの位置に居た。流石にこのまま地上に降りれば、いくら多少鍛えているとはいえかすり傷では済まない。俺は靴底に風というより、ロケットのジェットをイメージしながら風魔法を使った。すると、落下速度はゆっくりと落ちていき俺は村民の前に立った。

 

「皆さん、僕はボティス家の長男カリス・ボティスです。誰かけが人はいますか!」

「カリス坊ちゃま。いいえ、けが人は誰もおりません。それより討伐部隊はどうなっておりますか?」

 

老いた一人の爺さんが俺に尋ねてきた。その様子は酷く怯えているように見えた。俺はその様子を見てどこか哀れに思えた。誰かが「来た!」と叫ぶと、俺たちの正面に十匹ほどのやせ細った野犬が立っていた。その目は赤く、体からは赤黒いオーラが出ていた。この二つが魔獣の特徴だ。

 

「お爺さん、ここの土地、多少変形しますがいいですか?」

「カリス坊ちゃまそれはどういう意味でしょうか?」

「質問を質問で返さないで下さい。どうなのですか、構わないのですか?いけないのですか?」

 

俺は村民の方を振り返ると村民はうんと頷いた。

 

「ミクル、村民の皆さんをもう少し下がらせて」

「わ、分かりました。皆様、申し訳ありませんが、ご主人様の命で皆様はもう少し後ろにお下がりください!」

 

ミクルは叫びながら村民たちを下がらせようとすと、魔獣犬(今命名)がこちらに駆けだしてきた。

俺は片手を翳した。イメージするのは炎、そこまで強くなくていい最初は小さな火種が空気中の酸素を燃やし更に微粒子を燃やしていく。その繰り返しを縦でも上でもなく、横に広げるその工程をはっきりとイメージした。

俺から放たれた炎はイメージした通り横に広がった。

 

「すごい、詠唱無しで魔法を使うなんて……」

 

この世界の魔法はやっぱり詠唱とかあるのか、この魔法はほぼ独学だから詠唱なんてないが。

この炎は威力はそこまで強くない、というよりは無い。だがしかし、魔獣犬は驚き真後ろを向き逃げていこうとした。そう、それが俺の狙いだった。けれど、それが俺の作戦ではない。魔獣は放っておいたら別の村を襲う、そんな事はさせたくない。いいや、させないあんな理不尽な事が起きてはいけないんだ。

俺は逃げる犬たち全体を囲う様に魔法で巨大な土の壁をつくった。だがその壁には二箇所穴を開けておいた。それは天井と正面の二箇所、そこに今度は約直径十cmをイメージした威力のある火球をぶち込み直ぐに正面と天井の蓋をし、数十秒たつと俺は巨大な土の壁に肉体強化をした腕で小石を思いっきり投げると、土の壁に小さな穴が出来ると一気に燃え上がるというより、爆発に近い現象で燃え上がった。確かバックドラフト現象とかいう現象だ。今回のこの騒ぎは俺の予期せぬことだったが、丁度いい実験も出来た。この世界でも前世と同じ様に化学現象が起きることが確認できた。

そして、先ほどの魔獣犬はというと土壁の残骸の中から、犬たちの肉塊が発見された。

ちなみに爆発した周辺はと言うと、多少田畑が焼けてはいるがすぐにもとに戻るだろう。

 

「「うおおおおおお!」」

「ありがとうございます、ありがとうございます!」

「こんなに小さいのに、魔法を扱えるだけでもすごいのに無詠唱だなんて……」

「ありがとうございます、カリスお坊ちゃま」

「いえ、大したことはしていませよ。では僕はそろそろ帰りますね、ミクル帰ろう」

「は、はい!」

 

俺はその後ミクルと一緒に屋敷に帰った。




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