“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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とりあえず個人的美学として最強キャラにはある程度弱点を作りたいのよね。
でも無双はさせたい。っつーことで原作的にも都合が良いからこうなりました。的な話です。


人類最強の弱点

人類最強。

この言葉に何か深い意味を感じるか?

確か俺の知るヒーローは人類の中でもっとも重い責任を持つ者のことだ、とか言ってたっけ。

しかし俺が信じられる人間たちは口を揃えてこう言っていた。

『好きなところに雷落とせて磁力も操れてレールガンを振り回す上に速いとか、勝てるか!』と。

いやいや、お前ら諦めんの速すぎないか?

ゴムで全身を覆うことで電気を防ぎ、金属の一切ない場所で俺より生身で強いやつが戦えば多分殺せると思うぜ?

いやまぁ、ゴムなんか着てるじゃ動きにくいし、金属のない環境で戦うとしても俺がナイフや銃弾を持っていない時はないから、無駄なんだけどな。

それにそういう対策をしようとも電磁波で何をされているのか確認しておけばこっちから一方的に攻めることが出来るようになる。

……あれ?よく考えりゃ俺って普通に人類最強じゃね?

いや、それはよく考えなくても分かる事実なんだけどさ、少なくとも人類が星の入った玉を七つ集めると願いが叶う設定のあるマンガみたいに気やら何やらに目覚めなければ鉄やバラニウムを一切使わずに戦闘を行うのは難しいだろうし、金歯や銀歯から感電させることも実は意外と難しくない。

それに、さっき言ったみたいに最大限の対策をされた場合、空気穴から手を突っ込んで脳に電気を流し電子レンジの要領で熱してやれば簡単に死んでくれるだろう。

この世にジュール熱というものがあって良かったよ。

『電気抵抗があるもの』に電気を流せば熱することが出来る。それは素晴らしいことだ。

あれ?つまり俺は実のところ電気だけでなく熱も使えるということじゃないか!

何故今まで思い付かなかったんだろう、熱を使えるということに。

意外にも当然のように電子レンジと同じメカニズムで脳を焼く方法は何度も使ってきたというのに、いまだそれを他の攻撃に転用してなかったのか……

俺のここ3日で一番の不覚だ。

 

……あ、いや待て。ここ3日で一番の不覚は別の奴があったし、これは多分二番目くらいじゃないか?

だってもう片方のやつはこれとは比べ物にならないほどとんでもないミスなんだしさ……うん。

「里見さーん♪」

 

俺のここ3日で一番の不覚、それは聖天子から手紙が送られたのに警戒を怠ってしまったこと。

そのせいで、今なんと自分の家に侵入され、しかも重要な案件を伝えるとかいう名目で様々なセクハラをされているのである。

正直なところ嬉しくもなんともないし逆に気持ち悪いくらいだ。

……チクショウ、コイツが国家元首じゃなかったらすぐにでも殺してティナに甘えて気分を直しているはずなのに。

最悪の気分だ。

「里見さん、何かして欲しいことはありますか?」

 

「帰れ。そして二度と来んなブス」

 

「またまた、里見さんはツンデレですね」

 

ツンデレちゃうわ!

コイツもう殺しても良いかな。何かある度に押し掛けてきてセクハラしてきてしかも何を言っても効かない。

いかに罵ろうとツンデレと言われるわ『新鮮です……』と返されるわ散々な返しを喰らい、あえて普通の人間のようにへりくだって見損なわせようとしてもそれを利用され持ち帰られかけ、完全に無視しているとセクハラが酷くなる。

しかも相手は国家元首な上になんだかんだで悪意も(性的な意味のそれを除く)下心も恐怖もなく接してくる貴重な人間ということもあって下手に物理で傷付けたり殺したり出来んし……

なんというか、人類最強である俺に対してのみ強いって感じだな。

俺は人類でもっとも強いが、逆らえないという意味でティナに負け下手に殺せないという意味で聖天子に負ける……

最強の割に負けすぎだろ、俺。せめて負けるのはティナだけにしておけよ……ティナだったら完全に味方だし絶対に裏切らないから負けたところでなんの問題もないんだからさ。

聖天子の方は今はともかくとしてもいつ俺を切り捨てるかも分からない不安要素だし、出来れば早いとこコイツを安定してどうにかできる秘策でも考えないといけないよな。

 

俺はそんなことを考えつつ、どうにかしてコイツを引き剥がし、さらに退却させる方法を考える。

しかし考え始めた途端に、聖天子は思い出したかのように突然真剣な顔をすると、用件を話し始めた。

流石は国家元首だわ、人の言葉をさりげなく止めるのが上手い。

「里見さん、忘れていたのですが今回は……」

 

……で、一体なんだかね?

とりあえず下らないことだったら追い出そう。そうだそれがいい。

どうせコイツが来てるのはそれを『人類最強でありゾディアックガストレアを撃破した英雄』である俺に依頼するためだろうし、それさえ失敗すればコイツがここにいる理由は消え去るんだ。

あと少しの我慢だぞ俺。あと少しで、思う存分ティナに甘えて気分を完全にリフレッシュ出来るんだ。

「……ある封印指定物の回収をお願いしたいのです」

 

「封印指定物?」

 

なんじゃそりゃ。

字ヅラからしてなんとなく超ウルトラスーパーデンジャラスで今すぐなんとかしないといけない系のアイテムであることは分かるんだが……回収、とはねぇ。

今言うことじゃないんだが俺の能力は基本的に電気を用いるから回収対象機械系のアイテムの場合確実に壊れるんだ。

つまりこう見えて機械系アイテムの回収にはトコトン向いていないんだよ、俺は。

「それで?その封印指定物ってのは一体どんな代物で、どんな形をしているんだ?」

 

とりあえず先にどんな物なのかを聞いておくことにしよう。

最悪物品の種類によっては依頼を断らないといけないし、何よりそもそもの形を知らないと探すことも出来やしない。

 

俺の疑問に、聖天子は現在教えられる範囲でなら、と前置きしてからこう言った。

「えぇ、それはですね「七星の遺産。ゾディアックを呼び出すことが出来るアイテムであり……壊れた三輪車、だそうですね」……話に割り込まないで頂けますか?」

 

しかし、その説明が始まると思われた瞬間にティナが部屋(一応は客間である)に入ってきてサクッと説明してしまった。

七星の遺産?なんだねそりゃ。

名前から考えるのなら、七星さん(家あるいは人あるいは地名)が遺した何かしらのモノということになるが……

何故ゾディアックなんてものを引き寄せるんだ、三輪車よ。

しかもあれだぞ?俺の知る限りゾディアックなんて俺並みの規格外あるいは既知外の存在がいなけりゃ倒せないような奴等なんだぞ?

んなもんどうしてすぐ処分しねーんだよ……爆破しろ爆破。

俺としては、そんなものさっさと消してまえー。と思う他ないがねぇ。

そんなことを考えていると、聖天子が信じられないようなものを見る目でこっちを見ていることに気付いた。

「というか里見さん、一応IP序列は一位なんですから閲覧レベル12はあるでしょう?なぜ知らないのですか?」

……そーいや、あったな閲覧レベル12ってやつ。

正直なところレベル10以降は見てるだけで吐き気がするし自分関係のあることでも無いから見てなかったが……七星の遺産ってのもレベル12があればかなり知ることができたのかねぇ。

「……まぁ良いでしょう。それで里見さん、今回の依頼はその七星の遺産を奪っていったあるペアから回収してほしいのです」

 

物思いに耽りながらも、聖天子が渡してきた紙を受け取る。

そしてティナを手の動作だけで呼ぶと、一緒に内容を確認する。

『依頼内容

・『七星の遺産』の蛭子影胤&蛭子小比菜ペアからの奪還

・成功報酬:100億円

・なお七星の遺産は名前だけであっても機密レベル5なので情報の取り扱いには注意すること

 

追記

・なんらかの原因によって即時に敵に七星の遺産が使用される危険がある場合のみ、その破壊を許可する。

 

天童菊之丞』

 

……ふむ。

つまりは影胤とやらから七星の遺産を奪い取ってくるだけで100億貰えんのか。

ボロい仕事だなこりゃ……

少なくとも相手は恐らく一般的な(国相手にケンカ出来てるし大体序列は元100番台と言ったところだろうが)民警上がりだろうし、奪うことは難しくない。

何故ならあまねく民警はバラニウム製の装備を持っているため、俺の磁力を使えば武器を奪えるし、何より電気を使う俺ならば方法次第じゃいかに対策をされていても簡単に仕留めることができる便利なものだ。

対人戦という場面において電気より使いやすい攻撃を聞いたことはないしな。

相手が都合よく対俺専用の準備でもしてなきゃ大丈夫だろう。

よし受けた。

俺はティナにアイコンタクトで印鑑を持ってくるように伝える。

多分伝わるだろうな、ティナだし……

うん、予想通り持ってきたぞ。流石だ期待を裏切らねぇ。

「それで、依頼は受けようと思うんだが」

 

「はい。それではここにサインを……」

 

聖天子はそう言って紙を裏返し、そこに何故か用意されている欄に名前の記入と印鑑を押すように指示した。

なんでわざわざ裏にそんなもん用意したのかねぇ?

怪しさ満点だぜ。

俺は印鑑を捺すフリをして(インクを付いているように見せかけてスレスレのところで付けていないから捺しても問題ないが) 聖天子の反応を伺うことにした。

これでコイツが何かしら怪しい反応をしなければ問題はないだろう。

 

それとついでにハンドサインでティナにこの紙に変な所が無いか見てもらっておくか?

いや、そんな時間はないよな。

それに聖天子も何かしらの反応を示していたりはしないし、今回ばかりは……

しかし、いくらなんでもこんだけヤバい案件にまで私情を挟んだりはしないよな。と思って本当にインクを付けて捺印しようとしたところで、事件は発生した。

「……」ガチャッ

 

ティナぁぁぁぁぁ!?

ナチュラルにライフル取り出しちゃダメだって!

しかも相手は腐りに腐って色々な意味で終わってても最高権力者ではあるんだから、ダメだってば!

突如として怒りの形相でライフル構えたからには何かしら聖天子の方が許し難くえげつない細工をしていたのは分かったから!

「……東京エリアの存亡が掛かっていると言うのに、なんでロクでもない契約書の方にサインさせようとしてるんですか?え?」

 

「……」

 

……ん?

ロクでもない契約書って?え?

いやいやいや……これは至って普通だし、書いたのもあの菊之丞だからそんなもんがあるわけは……

そう信じつつも、ひとまず多少特殊な電磁波でスキャンを掛けてみる。

 

まず最初に見えてきたのは菊之丞が書いた部分……これを抜いて、他の情報だけを取り出す……よし。

トリックの隠し方はかなり上手いが、少なくともそれを見付ける方法が普通じゃありえないようなものだったからか簡単に見付かった。

なになに?

『契約書

里見蓮太郎(以下、甲とする)を、この契約書への双方の捺印を以て聖天子の所有物とする

甲は乙に対して危害を加えてはならない……』

から始まるこの契約書には、このあと32文にも渡って色々と書かれていた。

その内容は要約すれば結婚しろということになるな。結婚しろの中に俺を束縛しまくる部分があるのが戴けなさすぎるが。

まぁ……ここまでくれば答えは簡単だろうな。

「……おい聖天子」

 

「はい、なんでしょうか」

 

「今すぐ菊之丞を呼ぼうと思う」

 

「えっ」

 

菊之丞(保護者である)を呼ぼうじゃないか。

この東京エリアで唯一この聖天子を抑えられるあの男を……東京エリアオーバー20代部門最強のあの男を。

 

うん、だからほら……その、ティナ?

今は抑えてくれ。ちょっとそいつを殺しちゃうと外交問題とかが発生して俺たちが困るからやめてくれ。な?

「退いてくださいおにーさん、そいつを殺せないです」

 

殺しちゃダメなんだってば!




聖天子
実は原作よりスペックが高い。そして美少女力も高い。
その上決して弱くない。
だから聖居から抜け出したり抜け出る口実を用意しては蓮太郎のところに通っている……が、しかしいまだマトモに相手にされたことがない。
なお、原作より公私混同が激しいため、菊之丞さんからは『史上最高の名君と呼んで差し支えないがちょっと……』的な評価を受けている。

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