――――ヴィラン連合 アジト
「やあ、骸無。仕事は無事に終わったようだね」
「はい、“先生”。こちらに反抗してきたヴィラン組織は壊滅させました」
任務の結果を報告する骸無。
今回はヴィラン“連合”に属さないヴィラン組織をつぶすことだった。
報告内容にオール・フォー・ワンは満足げに笑う。
「けっこうけっこう。それで、相手はどうしたかな?」
「……皆殺しです。討ち漏らした者はいないでしょう」
逆らった愚か者は全員あの世行きにした。
そう語る骸無の表情は平然としており、罪の意識などない。
ようやく完成した……。
オール・フォー・ワンは自分が手掛けてきた怪物がついに完全になったことに思わず笑い出しそうになる。
改造された強靭な肉体に多くの個性を受け入れる器。
与えられた個性を十全に活かす知性と技術。
そして、ようやく手に入れた、機械のごとき非情の心。
これこそ、オール・フォー・ワンが求めた
「そうか。それで、ほかに報告は?」
「組織の殲滅中に3人組の
うち中年男一人は重傷を負わせましたが、地面を滑走する男と飛び跳ねる少女が中年男を抱えて逃走。
“荼毘”を名乗る炎の個性を持つ男の邪魔もあり、逃がしました」
「ふむ。君から逃げるとは彼らもなかなか強運らしい。
まぁ、問題はないさ。たいした勢力でもなさそうだ。それに、目的は達成してるだろう?」
「はい。組織の使っていた“トリガー”は回収。バイヤーもテスターも殺害リストの人物は全員殺しています」
骸無の言葉を受け、手元の書類に目を通す。
殺害リストに添付された顔写真には全員バツ印がついている。
左目に眼帯をつけた少女の書類を最後に、一通り目を通したオール・フォー・ワンは報告の出来事を些末事だと一笑する。
最高戦力とも呼べる骸無は完成し、愛弟子の死柄木はまだ慣れないながらも問題なく協力組織と交渉を進めている。
ならばステージを進めるだけだ。
そう、オール・フォー・ワンは断じて宣言する。
「骸無。例の計画を開始しよう。ついに時が来たようだ」
「“先生”、それでは?」
「ああ、世界をひっくり返す時だ」
計画は練りに練った。
奴らを食い殺すための牙も爪も砥ぎ終えた。
かつて憧れ、一度潰えた「魔王の座」
そこに再び返り咲くときがきたのだ。
「今度、雄英のヒーロー科が合宿をするそうだね。君もそこに参加してくるといい。
……幼馴染の彼とも積もる話もあるだろう」
「……フフッ、ありがとうございます。成果をお待ちください」
骸無の喜色に満ちた歪んだ笑みは、十年来の幼馴染への殺意を隠せていない。
次に会った時には、いままでのようにその拳を止めることはないだろう。
もはや、緑谷出久として生きるよりも改人・骸無として生きる道を選んでしまったのだから。
対“平和の象徴”
オール・フォー・ワンの要求を満たす存在となった骸無。
だが、万能ともいえるオール・フォー・ワンですらこのときはまだ気が付いていなかった。
骸無の中で、オール・フォー・ワンが意図せずして植えた種子が芽吹いていたことを。
それは、超人社会が生み出した“化け物”である。
そう知るのは遠い未来ではない。
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オマケ 次章予告(っぽいもの)
「決着をつけようか。かっちゃん」
――――骸無
「出久、俺は、おまえに……」
――――爆豪勝己
「くそ、やられた!」
――――相澤消太
「虎ぁ! ピクシーボブが! ラグドールが!」
――――マンダレイ
「襲撃に、雄英が何も対策してないと思ったかヴィランども!
ヒーローをナメるな!!」
――――ブラドキング
次回、『雄英合宿攻防戦』編
短いですが、アフターを投稿しました。
次回は雄英合宿編。
そこからクライマックスに移ります。
お楽しみに。