問題児たちが異世界から来るそうですよ?~全裸王(ユウシャ)異世界に起つ 作:固竜
お久しぶりです、やっと更新できました!
フォレス・ガロのリーダーであるガルドは今日の一件をとても後悔していた。
今日こそは黒ウサギという強力な駒を、最高の玩具を、最上の箔を手に入れる最大のチャンスだった。今まで何度もアプローチをしてきたが黒ウサギに鼻であしらわれてきた。しかし、“ノーネーム”の存亡を賭けた今回の召喚を行ったという今日こそは黒ウサギを手に入れるには最大のチャンスだったのだ。それだと言うのに・・・、
「くそ・・・くそ、くそくそくそこのドチクショウガァ!」
いったい何をどこでどう間違えたのか。”ノーネーム”が新たに召喚した人材に手も足も出ず、今までしてきた行いを全て吐かされ、勝てる見込みがないギフトゲームを断ることも出来なかった。情けない事この上ない。
自分の屋敷で頭を抱えていたガルドは身近にあった執務机を持ち上げて窓の外に放り投げた。それはフォレス・ガロ結成当時のメンバーに言われ、ただ格好を付ける為に買って目立つように設置した形だけの執務机だった。とても大事な物だった、何があってもこの執務机を見れば短気なガルドが耐える事ができるほどだった気がする。
だが、そんな執務机も数日後には不要になってしまうものである。
「あの女のギフト・・・・・・精神に直接触れる類だ。あんなのがいたらどんなゲームを用意しても勝ち目なんてねえ。クソガァ!あの青臭え貧乳娘共!せめて黒ウサギならよかった!」
本来であれば“主催者”であるガルドは領地内でギフトゲームを用意できるため、相当に有利なゲームを組めるはずである。だが、問題はそのゲームの挑戦者(断罪者)である。
久遠飛鳥にガルドは逆らう事ができなかった。座れと言われれば座り、喋れと言われれば喋る。これはおそらく、久遠飛鳥のギフトが相手を自分の意のままに操る事が出来ると言うことだろう。
久遠飛鳥がいる限り、生半可なギフトゲームでは絶対に勝つ事は出来ない。相応のギフトゲームを用意しなければ無様に負けることは確実だ。では、どうするか・・・。
「失礼します、ガルド様。本日の子供を連れてきました」
頭を左右に振りながら悩んでいるガルドの所に腹心の一人(クマである)が子供を連れて現れた。子供は随分と痩せこけていた、着ている服は白い体操服に皮のズボンだった。
どうせ最近吸収したコミュニティから来た名だけの人質だろう。犬を思わせるような耳をした少年だった。
腹心を下がらせる。
「・・・・・・おじさんが僕を食べるの?」
最初、少年は何も喋らずいた。なので、ガルドはこれからの事について必死に考えていた。ギフトゲームの事を考えると少年を食う事など考えられなかったからだ。
しばらく経って少年がガルドに対して口を開いた。お前が自分を食べるのかと、そう聞いて来た。少年のその声には何か大事な物が足りないとガルドは感じた。その『大事な物』が何なのかは分からなかったのだが。そんなことよりも、ガルドは嫌だった事がある。それは少年の眼だった。
「食べられたいって言うんなら食ってやるよ。何人か呼んで食ってやる・・・ああ、食う所がなさそうだがな!」
ガルドが身体をワータイガーへと変化させ少年に近づく、だが少年は特に怯えた態度を見せずいた。ただただ、ガルドを見つめるだけだった。
「チッ・・・気が変わった」
「・・・?」
普段ならこんな風に恐怖させるような行動はガキが泣いて騒ぐのでしないガルドだったが、今だけはそんな風に騒いで欲しかった。騒いでくれればガルドは少しでもギフトゲームについて考えないで済むと思ったからである。だが、この少年はそんなガルドの期待を裏切ってしまった。
何を思ったのか、ガルドは少年の頭に手を乗せて笑顔で言った。
「実は・・・相談があるんだが」
*
辛くも、初めてのギブトゲーム(着せ替え)で勝利を収めた智樹。対戦相手だった最強の階層支配者の白夜叉(昔は箱庭で魔王と呼ばれていた)と謎の深く固い絆が生まれたのだった。これからも智樹の『漢』の為の戦いは続く…
さて、コンブのパラダイス=ソングを受けてもなんとかブルマーだけは、貰ったマントに包み死守した智樹だったが、そのおかげで問題児な女性陣にゴミを見る様な眼で見られてしまったのだった。イカロスはそんな智樹を見てやはりこう思う。
(笑っている。ああ、今日もマスターは元気だ)
智樹は気絶した。限界が来たのだろう、仕方なしとイカロスより先にニンフが素早く膝枕をした。
智樹が目覚めた時、周りの世界は爆発的に変化していた。それを智樹が例えるとするならば、“モテ男ジャミング”で世界一のモテモテになる位の変化だった。そう、智樹の眼に写ったのは白い雪原と凍る湖畔―――そして、水平に太陽が廻る世界だった!
「・・・・・へ?」
智樹には分からない事だが、この現象を引き起こしたのは白夜叉である。
遠く薄明の空にある星、緩やかに世界を水平に廻る白い太陽が美しい。まるで星一つ、世界一つ創り出したかのような奇跡の顕現を言葉には出来ない。この現象、この世界こそが白夜叉と言う最強の階層支配者を表現していた。
「起きた?トモキ」
「大丈夫ですか?マスター」
智樹が起きた事に気が付いたイカロスとニンフは、同時に智樹に声をかける。何が何だか分からない智樹は身体を起こして改めて2人を見た。
「あれ?さっきまで部屋の中だったよな。・・・ブルマーは!?」
「ここにあります、マスター」
「トモキ・・・ほかにないの?」
混乱はさておき、まずはブルマーの安否を確認。イカロスに手渡されたブルマーを握りしめ立ち上がる。その姿にニンフは呆れるだけだった。
「他・・・?そういや、何があったんだ?」
「マスター、実は―――」
イカロスの説明を受け(所々、ニンフの補足があった)ほとんど分からなかったが、状況を理解した智樹。白夜叉が新たなギフトゲームを始めたらしい。なるほど、湖畔を見ると何かが飛んでいるのが分かった。上半身が鷲であり下半身が獅子である、そんな2種の王を兼ね備えたその姿は幻獣グリフォンだった。そしてその幻獣に跨っている者が一人、獣と言葉を交わすペッタン少女“春日部 耀”である。
智樹がグリフォンの姿を眼で捉える事が出来たのは、離れた場所から全体を見ていたからだろう。それほど、グリフォンの移動速度は速かった。グリフォンが通れば大気が震えあがり、翼を羽ばたかせればその衝撃で氷河が崩れる。その衝撃を受けてなお、耀はグリフォンの背中から落ちはしなかった。グリフォンがどんなに旋回を繰り返しても耀は手綱から手を離しはしなかった。ゴールしたその瞬間まで・・・!
無事、白夜叉のギフトゲームをクリアした問題児一行は眼を覚ました智樹を交え、白夜叉の所へ集まった。白夜叉はゲームの報酬になにか渡すようである。
「ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう。智樹にもサービスだ」
白夜叉がパンッ!パンッ!と柏手を打つ。すると4人の眼前に光り輝く4枚のカードが現れる。
十六夜の前にはコバルトブルーのカード。ギフトネームは“正体不明”
飛鳥の前にはワインレッドのカード。ギフトネームは“威光”
耀の前にはパープルエメラルドのカード。ギフトネームは“生命の目録”“ノーフォーマー”
智樹の前にはブラックのカード。ギフトネームは何も無・・・“呼んだ?”“智樹六道地獄”と、とても薄く書かれていた。これはおそらくバカにしか見えないだろう。
「 ギフトカード! 」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「おっぱい」
「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合っているのです!?それと、智樹さんはおバカ様です!・・・このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!耀さんの“生命の目録”だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」
つまり、レアな便利グッズである。その後も、なにかとギフトカードについて説明した黒ウサギだった。
「そういや、智樹。お前が連れているその三人、エンジェロイドだったか?イカロス、ニンフ、アストレアといえば、ギリシャ神話だが」
「ニンフさんの羽は虹色なのね、綺麗だわ」
「イカロスとアストレアの羽も綺麗」
「御三人様はやはり、空を飛ぶ事が出来るギフトをお持ちなんですか?」
「おんしら2人は黒ウサギに勝るとも劣らない胸を持っているな。眼福眼福」
「空から降ってきた未確認生物デス」
「UMAってことか?俺が世界中を旅してた時はそんな生物見なかったが・・・」
「私達はシナプスで作られたエンジェロイドです」
「シナプスって?」
「シナプスついては答えられません」
「ふーん」
「エンジェロイド・・・昔どこかで聞いた覚えが、どこであったかな」
「ギフトとは少し違うと思うんだけど」
「そうなのですか?ニンフさん」
こんな風に会話を交わしながら9人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動した。
「おかえりですか?」
「うむ」
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
「あら、ダメよ春日部さん。次に挑戦する時は対等の条件で挑むのだもの」
「ああ、吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」
「じいちゃんの話を今度聞かせてくれ」
「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。智蔵の話を沢山用意しておこう。・・・・・・ところで」
白夜叉は先程までの楽しそうな顔をスッと真剣な顔にして智樹達を見た。
「今更だが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているのか?」
「ああ、名前とか旗の話か?それなら聞いたぜ」
智樹はただでさえ崩れかかっている平和と言う名の柱が更に崩れる気がした。
「ならそれを取り戻すために、“魔王”と戦わねばならんことも?」
「聞いてるわよ」
「・・・。では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
ニンフは顔を曇らせる。イカロスはそんなニンフの肩に手を置いた。
「そうよ、打倒魔王なんてカッコいいじゃない」
「“カッコいい”で済む話ではないのだがの・・・・・・全く、若さゆえのものなのか。無謀と言うか、勇敢と言うか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰れば分かるだろ。それでも魔王と戦う事を望むと言うなら止めんが・・・・・・そこの娘二人よ、おんしらは確実に死ぬぞ」
飛鳥と耀に放たれた白夜叉の予言に対して、2人は何も言い返す事をしなかった。元魔王の忠告は物を言わさぬ威圧感があったのだ。
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧はともかく、おんしらの力では魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様はいつ見ても悲しいものだ・・・それと桜井智樹。おんしはそれ以前の問題だ」
「・・・ん?」
たらりと、汗をかく智樹。まさか、自分に声がかかるとは思っていなかったのだろう。ブルマーを頭に被ろうか考えていた所を話しかけられたようだ・・・。
「おんしのギフトカードを見たが何も書かれてはおらんかったぞ。一度、どうするか今一度よく考えよ」
「・・・・・・」
*
白夜叉と別れ“ノーネーム”のコミュニティ領地に辿り着いた一行。箱庭最悪の天災、魔王が残した傷跡を見る事になった。
美しく整備されていたはずの白地の街路は砂に埋もれ、木造の建築物は軒並み腐って倒れ落ちている。要所で使われていた鉄筋や針金は錆に蝕まれて折れ曲がり、街路樹は石碑のように薄白く枯れて放置されていた。まるで、何百年と言う時間経過で滅んだように崩れ去っていたのだ。
だが―――黒ウサギの言葉を信じるとするならばこの光景は3年前からのモノである。
皆が息を呑む中、十六夜だけはスッと眼を細め木造の廃墟にに歩み寄り囲いの残骸を手に取る。少し握っただけで木材は乾いた音を立てて崩れていった。
「・・・断言するぜ。どんな力がぶつかっても、こんな壊れ方はあり得ない」
ニンフは自分の選択を間違えてしまったのではないかと思った。そう、この壊れ方は物理的にあり得ない。膨大な時間をかけて自然崩壊したかのようなこの光景を魔王と呼ばれる存在は一瞬の内に作り上げてしまうのだと理解してしまったのだ。
(どうしよう、アルファ・・・)
ニンフは頼りなくイカロスに目線を向けるが、イカロスも眼を見開いて驚いていた。
「よーし!行くぞ、イカロス!ニンフ!アストレア!」
智樹は気にした様子も無く、走っていこうとし・・・、
「あ、待ってください!そっちはこの間、子供達が掘った落とし穴が 「あれ?」 あ・・・」
「うわああああああああああああ―――・・・!?」
「智樹君!?」
黒ウサギの忠告空しく、穴の中へ落ちていったそうな。ちなみにこの穴は、侵入者対策の穴だったりするのである。
「魔王―――か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか・・・!」
*
さて、所変わって“ノーネーム”・居住区画、水門前。ここでは、先ほどの蛇神との勝負で貰った水樹の苗を、ジンとコミュニティの子供たちが掃除した貯水池へと設置したのだった。
屋敷に着いた、もう夜中だった。来客用の貴賓室に皆集まっている。月明かりに照らされた本拠は少しばかり綺麗であった。
水は用意できた。水といったらお湯、お湯といったら風呂、風呂といったら?
「ゆ、湯殿の用意が出来ました!女性様方からどうぞ!」
黒ウサギの声が響く。酷い状態らしい大浴場の掃除が終わったようだ。
そう、お風呂といったら女湯である・・・否!新大陸である!男性が女湯に入れるのはせいぜい10歳程度まで。それを過ぎた男性が女湯に入れる機会はもう二度と訪れない。女湯がどんな世界なのか、もはや我々に知る術はない!!
「さあ!出番だ!“量子変換機”」
さて、メタモルフォーゼして女湯へGO!新大陸を発見だ!
智樹にギフト?ある訳ないじゃない・・・どうしよ。
最初はイカロス達をギフト扱いにしようかと考えていましたが、ニンフルエンザに罹ったのかな。さすがにそれはどうなんだという気持ちが大きくなってしまいました。ちなみに”呼んだ?”というのはあれです。智樹がイージスを破った、股間から発射されたエネルギーですね。
可変ウィングのコアってギフトかな・・・?と思ったり思わなかったりな日々です。
あ、グリー・・・ごめんね、出番なかったわ。
今回は此処まで、次回は恒例のお風呂回?ではまた智樹の車窓で