問題児たちが異世界から来るそうですよ?~全裸王(ユウシャ)異世界に起つ 作:固竜
日が暮れた頃、噴水広場で黒ウサギ達は別行動だったジン達と合流した。ジンから、なんとフォレス・ガロとゲームをする事になったと聞いた黒ウサギ。なんだか取れかかっている気がするウサ耳を思い切り逆立てて怒った。
ちなみに問題児達の言い分はこうだ。
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!!!!」
誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に、黒ウサギは脊髄反射レベルでつっこみ激怒した。
黒ウサギは激怒した。黒ウサギには次に一息つける時間が何時出来るか分からぬ。だが、いつか彼の問題児達にきついお灸を据えなければならないと決意した。だが、この時黒ウサギは真に理解していなかった。
この問題児達は黒ウサギの予想を遥かに超えていく最凶の問題児だと言う事に・・・。
巨匠と服に書いていそうな智樹は黒ウサギ達とは少し離れた所でニンフと向かい合っていた。イカロスとアストレアは黒ウサギ達の方に居る。
「・・・・・・」
何も言わずに無言な智樹は真っ直ぐにニンフを見つめている。
「あ、あのねトモキ!わたし」
「それは自分で決めたことなんだろ?」
「・・・え?」
いきなり予想外の事を言い出した智樹に驚き戸惑うニンフ。智樹はなお続ける。
「その、ガルドって奴が許せなくて戦おうと思ったんだろ?」
「・・・えっと」
「自分から危ない事をしようとしてるのはダメだけどな。でも、それはニンフが自分で決めた事なんだろ。マスターの命令とかじゃなくて自分の意思で」
「う、うん」
ニンフは智樹の真っ直ぐな言葉を受け入れる事ができず、気まずい気持ちでいっぱいだった。なぜ気まずいのか、その原因はガルドとのやり取りにあった。
*
「私はジンのコミュニティにはいるわ」
ガルドによる勧誘を迷いなく断ったニンフ。まさか即答されるとは思わなかったガルド(ピチピチタキシード)は一瞬何を言われたのか理解するのに時間がかかった。
ニンフの即答に連鎖するかのように飛鳥と耀も言う。
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私も間に合っているもの。春日部さんはどう思う?」
「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」
「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの。ニンフさんも」
「・・・え、友だち・・・?」
「ええ、そう。友達よ」
飛鳥の顔は赤く染まっている。友達になろう―――そう口にしておきながら気恥ずかしかったのだろう。自分の髪を触りながら耀とニンフに問う。
ニンフは友達と言う言葉に戸惑う。どう答えるべきかを自慢の電算能力で考えるが答えは出ない。
耀は無言でしばし考えた後、小さく笑って頷いた。
「・・・うん。飛鳥もニンフも私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」
『よかったなお嬢・・・お嬢に友達が出来てワシも涙が出るほど嬉しいわ』
後はニンフだけだと、飛鳥と耀はニンフを見つめる。ニンフは顔を俯かせ小さな声で――うん――そう言った。
3人の世界に入ってしまい全く相手にされないガルド。んん!っとわざとらしく咳払いしたガルドは顔をひきつらせたまま3人に問う
「失礼ですが、理由を教えてもらっても?」
「どんなに紳士的な態度を取ったり親切な説明をしてくれたりしても、信用する事が出来ないのよ。トモキの安全を考えてもジンのコミュニティの方がいいわ。だから絶対に入らないの、ピチピチタキシード」
「私、久遠飛鳥は―――裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。だとしたら自身の身の丈を知った上で出直して欲しいものね、このエセ虎紳士」
ニンフと飛鳥はそれぞれの考えでガルドに言いきった。―ピチピチ!?― や ―エセ紳士!?― などと小さな声で驚くガルドは当然の様に怒りで身体を震わせる。自称紳士として怒りに身を任せるなどあるまじき行為だ、なので言葉を必死に選び言い放った。
「こ、この小娘共がァァァァァァ!!」
紳士もへったくれも無かった。
「何も知らねえだろうと思って下手に出て見ればなんなんだテメェらのその態度は!?本当なら黒ウサギだけで十分だってのによ!調子に乗ってんじゃねえぞ!?この『貧乳』のガキどもが!胸に全く栄養が行ってねえんじゃねえか、アァ!?」
「ガルド=ガスパー!なんて事をいうんですか!」
ジンは感じた、このカフェテラス周辺の気温が少し変化したような感覚を。
「「「・・・・・・」」」
3人娘は無言だった、その事に気分を良くしたガルドはさらに言った。
「事実だから何も言い返せねえのか?ハッ!悔しかったらその貧相な胸を大きくしてみ
「黙りなさい(・・・・・)」
「―――!?―――!」
ガチン! とガルドの口は不自然な形で勢いよく閉じて黙りこんだ。
3人娘の一人飛鳥は耀やニンフと比べれば胸は大きい。年齢のわりに発育が良いのだ。だが、そんな飛鳥は黒ウサギのエロッティックなボディを見た後だった。
つまり何を言いたいかと言うと・・・3人娘は全員キレていたと言うことである。
その後、飛鳥による逆らう事が出来ない尋問が行われ、ガルドの所業は明らかになった。酷い方法で相手を従わせ、数人の子供を人質を取り、逆らえないようにした。最後には子供達をただ五月蠅くてイライラしたという理由で全て殺してしまったと言う。
まさに絵にかいたような外道がそこにいた。この外道は時間をかければ箱庭の法で裁ける。だが、裁かれる前に箱庭から逃げてしまえばこの外道は箱庭の法では裁けない。
「く・・・くそ・・・!」
暴れようとした所を耀に組み伏せられるガルド。身動きはできず地面に伏せている。また、魔王という脅し文句も通用せずまさに手も足も出ない状況になっていた。
ガルドの言葉にかなり機嫌を悪くしていたが、地べたを這う虫けらの様な情けない様子を見て飛鳥は機嫌を少しばかり取り戻した。
足先でガルドの顎を持ち上げて悪戯っぽい笑顔で話を切り出そうとする飛鳥に、ガルドは一言、
「お嬢さん、パンツが見えていま
わざと紳士っぽく言ったガルドの顔を、最後まで言わせる事無く飛鳥は踏み抜いた。耀は地味に関節技をかけ、ニンフも飛鳥のように踏み抜いた。
「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の“フォレス・ガロ”存続と”ノーネーム“の誇りと魂を賭けて、ね」
そしてギフトゲームをする事になったのだ。
*
ニンフは確かにガルドの所業が許せないものだと思った。だが、貧乳と言われた怒りが許せないと思う気持ちよりも大きいのだ。なので、ニンフは智樹の真っ直ぐな言葉を受け入れる事ができず、気まずい気持ちでいっぱいだったのだ。
「さあ、戻るぞニンフ」
そう言って話を切り上げてしまった智樹の裾を掴む。智樹は一瞬止まるが、その後、頭をかきながら少しゆっくりと歩くのだった。
*
ジンと別れた黒ウサギ達は超巨大商業コミュニティ“サウザンドアイズ”に訪れる事になった。最初こそ真面目にそれぞれ時間軸の違いなどに付いて話していたのだが・・・。
「ど、何処に行くんですか!?智樹さん」
「ウヒョヒョヒョ!」
「あ、スイカがありますよイカロス先輩」
「アストレアさんイカロスさん、勝手にはなれないでください!」
「なあ、なんであいつは2等身何だ?」
「トモキはいつもの事よ」
「お?いらっしゃい。いいパンツそろってるよ」
「ウヒョヒョヒョ!おっちゃん・・・やるな!」
「あたりめえよ!どうだい、いっちょ勝負してみるかい?」
「お姉さん、このスイカは売り物じゃないよ」
「いいぜおっちゃん。勝負し 「なんて物を売っているんですかあなたは!?」 ヒィッ!?」
「ちょ、箱庭の貴族様、その必勝の槍はやり過ぎでぃ!悔しいかな、ここは引くべきか」
「必勝の槍・・・ね」
「分かった、お姉さんのスイカへの情熱に負けたよ。ほら、タネだ持って行きな」
「・・・ありがとうございます」
「ま、まちなさい!下着泥棒」
「違うね!俺はパンツに込められた男の夢を追いかけているのさ!」
「こ、この!(速い!何ですかあの足の速さは!?)」
「このリンゴ飴美味しいわね、春日部さんニンフさん」
「・・・これはおいしい」
「うん、おいしい(今度トモキに買ってもらおう)」
商店へ向かうペリベット通りはとてもカオスな状況になっていた。変態系問題児“智樹”の個人行動をきっかけとして問題児達は好き勝手な行動をし始めたのだ。しかもこの通りには箱庭の世界を回り女性のパンツを集めまくっている伝説のおっちゃん(人間)が露店をやっている。森の賢者さま御用達の露店なのである。
「もう、いい加減にしてください!」
黒ウサギは道の真ん中で神々しい槍を片手に叫んだと言う。
それから数分後、なんとか黒ウサギ一行はサウザンドアイズの店にたどり着く。割烹着の女性店員が看板を下げ終わった所であった。
「まっ」
「待ったなしですお客様。うちは時間外営業はやっていません」
・・・・・・ストップをかける事も出来なかった。咄嗟に時間を確認する黒ウサギ。
「だ、ダメでしょうか。閉店時間2分前ですが」
「例外はありません」
流石は超大手の商業コミュニティ。押し入る客への返答に即答であった。
「そ、そこを何とかお願いできないでしょうか。・・・あと2分はあるのですよ」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」
キャーキャー喚く黒ウサギ。だが、店員は覚めた様な眼と侮蔑を込めた声で対応する。
「なるほど、“箱庭の貴族”であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」
「・・・・・・う」
言葉に詰まってしまう黒ウサギ、しかし十六夜は何の躊躇いも無く名乗る。
「俺達は“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」
「ほほう。ではどこの“ノーネーム”様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
(あ、あの店員。分かっててやってやがる)
女性店員の質問について、人生で一度も見た事の無い神秘的なパンツ達を見てすこぶる冷静になっていた智樹はそう思った。
「その・・・あの・・・私達に、旗はありま
その時だった!空から白髪の女の子が!・・・・・・空からではなく店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女が現れ
「今度こそ!いぃぃぃやほぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィィ!」
なんとアストレアに抱き(もしくはフライングボディーアタック)つかれ、少女と共にクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。
「え、え、え!?きゃあ――――・・・・・・・・・!」
遠くなる悲鳴と共に智樹はしっかりと見た。アストレアのおっぱいが少女によってしっかりと蹂躙されていた事に。
名前を呼ばれた黒ウサギやその他十六夜達は眼を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。
「だ、大丈夫ですか!?アストレアさん!!!」
ハッ! としてアストレアの飛んで行った方へ駆けていく黒ウサギ。
「・・・・・・おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
十六夜と女性店員、どちらも真剣な表情をしていた。2人とも割とマジだった。
黒ウサギでは無くアストレアを強襲した白い髪の幼い少女は、アストレアの胸に埋めていた顔を上げた。
「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」
「ハ!?あまりの大きさについ間違えてしまった」
堂々と胸を撫でる白夜叉と呼ばれた少女、アストレアはあまりの衝撃で意識を失っていた。
「ズリィ!俺も!」
「ダメに決まってるでしょ!」
今にでも駆けだそうな智樹を手を握る事で抑えるニンフ。イカロスはスイカの種が入った袋を見つめていた。
「フフ、フホホフホホ!黒ウサギとは違う触り心地だのう!これはこれで・・・なぜ?そんなの、そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!・・・では今度は黒ウサギの触り心地を」
真面目な顔で黒ウサギの胸へと近付いてくる白夜叉さま。さりげなく丁寧にアストレアを横にして寝かしていたところからにじみ出る紳士さが窺えた。
「し、白夜叉様!こ、こっちに来ないでください!」
白夜叉は黒ウサギに頭を掴まれ店に向かって投げられてしまう。ニンフはその姿に智樹のような奴だと思ったのだった。
*
アストレアが目を覚ました時、最初に目に入ったのは智樹の背中だった。おんぶされていた。
「ん?目が覚めたかな?先ほどはすまなかったのう、ついその胸が魅力的でな・・・」
前方から先ほど突っ込んできた少女が話しかけてきた。それにより他の面々もアストレアが起きた事に気が付いた。
「大丈夫か、アストレア?」
「う、うん」
「歩けるか?」
「うん・・・あ」
「ん?どうした?」
「えっと、まだ歩けないかも」
「そうか、ならもう少し休んでろ」
「・・・うん」
アストレアは降りない。いや、降りたくなかった。
白夜叉に連れられて黒ウサギ一行は白夜叉の私室に案内された。個室というにはやや広い和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、大きな背伸びをしてから智樹達に振り返る。気が付けば、彼女の着物はいつの間にか乾ききっていた。
アストレアの服もなんだかんだと乾いていた。
「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっております本当に」
投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。その声には少なからず疲れが見え隠れしていた。そんな黒ウサギの隣で耀が小首を傾げて問う。
「その外門、って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」
十六夜、飛鳥、耀の3人の問題児達は黒ウサギによる箱庭についての説明を聞いている。そんな中、イカロスは何故か置いてあったこけしに夢中になりアストレアは未だに智樹の背中から降りずニンフはアストレアが羨ましいと睨みつけている。
そして智樹は静かに眼を瞑っていた。
「…………超巨大タマネギ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」
(おっちゃんすげえよ!こっそりくれたこのブルマー。パンツじゃないからいらないっていったけど・・・パンツロボの新装備にピッタリだぜ!)
箱庭を食べ物に例える3人とポケットの中のブルマを握っている智樹。トモキの懐から何かが落ちてきた。
「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分にあたるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は“世界の果て”と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ───その水樹の持ち主などな・・・て、おんし!それをどこで」
トリトニスの滝の蛇神について言っていたであろう白夜叉の顔が驚愕に染まる。白夜叉の視線の先は智樹の足もとだった。いや、より正確に言えばトモキの足もとに有るあのエロ本だ。
周りの視線がエロ本へと集まる。ある者は顔を赤くし、またある者は顔を赤くした。
『ぼよよん、揺れる揺れるおっぱい祭り!私達を脱がさないで~!in教室、運動会編』と書かれたエロ本には破損一つなかった。いや、見た所拾った時よりも綺麗に見える。それを見た白夜叉は少し安堵してトモキに問う
「そ、それは・・・私が数日前に買い物に出た時に無くしてしまった物だ (てっきりパンツ屋のオヤジにパクられたものかと思っておったのだが)」
「え?そうなの(これは返さないといけないのか!?)」
「これはとてつもなく大事なものでな。よくぞ、拾っておいてくれた。・・・おんし、名前は?」
「俺は桜井智樹(そんなに大切な物だったのかよ。それじゃあ返さないとな)」
その瞬間、白夜叉はその顔を先ほど以上に驚愕の表情に変えていた。それはもう、数十年ぶりに会えないはずの知人に再会したかのような顔だった。
「・・・『桜井』だと・・・!」
「ど、どうかしましたか白夜叉様?」
白夜叉が下を向き拳を握る。身体がプルプルと震え始めた。それを見た黒ウサギは心配になり話しかけるが反応はない。
それは数秒か、それとも数分か。この部屋を静寂が支配した。だが、その静寂は白夜叉によって破られる。
突然立ち上がった白夜叉は智樹の方をしっかりと見つめ問い始めた。
「お、おんしは『桜井智蔵』という名前を知っておるか」
「ん?じいちゃん。じいちゃんの事知ってんの?」
「ハ、ハハッ!そうか!あの小僧の子孫か!あの小僧と夫婦になろうと思う奴がおったのか!して、智蔵は健在か?」
「じいちゃんは結構前に・・・」
「・・・・・・そうか(あのゴキブリの様な生命力の持ち主が死んでしまったと言うのか)」
糸が切れたかのように座りこんでしまった白夜叉。相当ショックだったのか目を瞑り上を向く。そして、そのままの状態でこう言いだした。
「桜井家の人間よ。おんしはおっぱいが好きか?」
「え?いきなり何をい
「質問に応えよ!桜井!」
「ひ、ヒィ!?す、好きです!」
「そうか、なら女の子は好きか?」
「好きです」
「パンツは好きか?」
「大好きです!」
「そうか!では、着せ替え人形ごっこは好きか!」
「女の子の着せ替えなら大好きだ!」
「・・・やはり『桜井』だ。私が勝てなかった『桜井』はその意思を繋げたようだのう」
「へ?」
付いていけない黒ウサギ達はただただ静かに事の成り行きを見守っていた。
(おんしの魂はしっかりと受け継がれている様だな智蔵)
白夜叉は着物の裾から“サウザンドアイズ”の旗印―――向かい合う双女神の紋が入った扇子を取り出し、満面の笑みで一言、
「桜井智樹よ、私とゲームをしよう」
刹那、この部屋の障子が開き大量の衣装が入って来た。
それは様々な種類の衣装だった。メイド服、ナース服、婦警服、セーラー服と機関銃、スクール水着、ビキニ、ヒモ、チャイナドレス、ドレスワンピース、魔法少女コス etc.・・・
智樹達はあまりの異常さに思わず息を呑んだ。
*
ゲーム名 “最高の一着”
プレイヤー 桜井智樹、白夜叉
クリア条件 相手に負けを認めさせる
クリア方法 いろいろな衣装を着せ替える
敗北条件 降参する
宣誓 上記を尊重し誇りと御旗の名の下、ギフトゲームを開催します
“サウザンドアイズ”印
「トォォォイウゥゥゥ訳で!始まりました。第21回着替え対決!! 実況は私 “サウザンドアイズ”臨時実況者と解説の飛鳥サンでお送りします」
「いったいどういう状況か分からないけれど一応頑張るわ」
衣装の中から突然現れる実況者、解説に飛鳥を選びサササッとゲームを開始してしまった。衣装を切る人形役は白夜叉には黒ウサギ、智樹にはアストレアである
「まずは小手調べと行こうか、10連早着替え!」
「まずは先攻、白夜叉様は・・・おっと!早い早い早い!10連ちゃん!しかも、一着一着の良さを引き立てる流れるような早着替えだ!」
「あれほど早いのに一着一着どの様な服を着たのかきちんと視認できるわ」
「やるな、でもそれくらい」
「対する智樹選手、白夜叉様と同じく10連早着替えを炸裂させた!!!」
「どちらも普段着の早着替えだわ。黒ウサギとアストレアさん、どちらも顔を真っ赤にしているわね」
「まあ、これくらいは当然だろうのう。では!」
「こ、これは!?普段着の組み合わせを変えて何種類もの衣装としている!!!な、なんと言う速さだ!これにはさすがの智樹選手も」
「いいえ、まだよ。智樹君はまだ諦めていないわ(そ、それにしてもいろいろと過激な物が多いわね。あのヒモの様な物はなんなのかしら)」
「いやあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!?!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!?!?」
「智樹選手、白夜叉様の早着替えについてきています。しかし、人形役の2人の悲鳴が耳に響きますね」
「あれでは黒ウサギ達は何をされているのか理解さえ出来ていないと思うわ」
「これにも付いてくるとはのう。だが、息が上がっているようだな。それでは次は付いて来れはせんぞ」
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ、く、くそ」
「降参かのう?」
「諦めてたまるか!」
「その心意気やよし。では、私も最後まで全力で行くぞ!」
「ウオォォオォォォォォォォォ!!!」
「ここからはそれほど速くはない着替えです!なので2人の衣装のセンスが問われます!」
「智樹君はセーラー服を取ったわ」
「白夜叉様は・・・何とスクールミズギィィィ!!!」
「白いわね」
「俺がただ単にセーラー服を着させると思うか」
「なんと!智樹選手、セーラー服のスカートを外した!そしてそこに広がっている光景はブルマーです!普通に体操服にブルマーではなくセーラー服にブルマーとは憎い。これは是が非でも体操服ブルマーの姿を見たくなりますね!」
「え、えっと。・・・ごめんなさい、わからないわ」
「いいえ、結構です。これは男子にしか分からないィィィ!しかも、アストレアさんのもじもじとしている動きが更に男子の欲望を活性化させる!」
「そうきたか、でもこちらは更にその先へ行く!」
「黒ウサギが来ているのはスクール水着ね、白いわ」
「旧スクだ!だが、これではインパクトが足りないような気がします」
「ここに黒いパーカーをはおらせる。そして!」
「み、水です!白夜叉様が水を霧状にして黒ウサギさんに吹き掛けました」
「黒ウサギの肌が透けて見えてくるわ!なんと言う卑猥な光景なの!?」
「き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?な、何をするんですか白夜叉様!?」
「フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギの肌は格別だのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」
「や、やめて!見えちゃう、見えてしまいます!」
「フフフ、ジャッチメントですの!」
「それもダメです!?」
「いいぞけしからんもっとやれ!フォオオオオオオオオ!!!」
「実況が実況をしていないわ。ど、どうしましょう。足が地面に張り付いてその場から動けない黒ウサギとアストレアさんには同情するわ」
「まだまだいくぞ!」
「ハッハッハ、付いて来れるか?」
「とうとうとう!!」
「ウホホホホホホホ!!!」
「ウヒョヒョヒョ!!!!」
~~~省略~~~
「いったい何着の衣装を着せ替えさせたのか分かりません。両者一歩も譲らない激しい戦いでした。ですが永遠に行われるようなこの戦いも決着がつこうとしています」
「ここまでいくといっそ清々しいわね」
「・・・ふぅ、私とよくここまで争えたものだ。さすがは『桜井』か。だが、それもここまでだ。諦めろ、おんしでは私には勝てぬ」
「・・・・・・」
「童顔な黒ウサギの為の新しい審判服にしようと思っていた一着だぞ」
「あ、あれは!?胸を強調した黒いドレス。漆黒のウエディングドレスだ!大人びたこのドレスがウサギの魅力を大きく上昇させる!こ、これは強力だ。結婚生活13年目の私が心を揺さぶられるほど強力な一着だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あれは良い服ね。ああいうので赤い服があれば欲しいのだけれど」
(じいちゃん、オレ頑張ったよ。じいちゃんに教えられた全部を出し切ったんだ。でも、勝てない。じいちゃんは勝てたんだろ。オレにはいったい何が足りなかったのかな・・・)
「おっと、智樹選手動かない!これは降参か!?」
――――――――――――――――――――――
『一方的だからじゃね?』
じ、じいちゃん!?来てくれたのか!ありがとう。
でも、一方的って?
『押しつけるだけではどちらか一方だけしか楽しめん。そんな一方的なのは間違ってるんじゃね?』
じ、じいちゃん・・・じゃあどうすればいいんだ!どうすれば勝てるんだよ!?
『勝つとか負けるとか小さいな。トモ坊、いい女はセンスもいい。そしていい女とは支え合わなきゃ』
いい女はセンスが良い・・・支え合わないと・・・そっか。
わかったよじいちゃん。オレ、もう一回頑張るよ。
――――――――――――――――――――――
「おーい!アストレア」
「な、なによ」
「お前、どんな服着たい?」
「・・・え?」
「なにをしておる!?」
「ど、どういうことだ!智樹選手、普段着をアストレアさんの所へ持っていき選ばせた!?」
「今までずっと好き勝手していた智樹君がどうしていきなり」
「じ、じゃあこれ」
「これ?なんか地味だな。こんなのはどうだ?」
「これは少し大胆すぎると言うか」
「そうか?似合うと思ったけど」
「そ、そう?」
「ま、いやって言うなら間を取ってこんなのはどうだ?」
「あ、これはいいかも」
「そっか、よしじゃあ着替えてくれ」
「う、うん」
「どういうことなんでしょうか。あまりの変わりように私は小声で話をしてしまいます」
「何故か大声を出したら悪い雰囲気になってしまったわ」
「ごめんな、アストレア」
「え?」
「俺、分かったんだ。女の子の着替えなのに一方的に決めて嫌な思いをさせたらダメだって。せっかくのお着替えなのにどっちも楽しいと思えなければそれは、着せ替えの意味がないんじゃないかってさ」
「着替え、終わったよ」
「おぉ、似合ってるじゃん」
「あ、ありがと」
(どちらの意見も尊重し、どちらも着替えを楽しむ事ができなければ着せ替えの意味がない・・・か。認めたくはないが完敗だ。何処までも一方的だった私では絶対に勝てないな・・・)
「え?白夜叉様!?な、何故両手を上げているんです。いったいどういうことだ!?」
「つまり、白夜叉が負けを認めたということね。長かった戦いも終わりを迎えたと言う訳。おつかれさまでした」
「私の負けだ、智樹よ。今度こそ『桜井』に勝てると思ったのだがのう」
「俺一人だったら負けてたさ。でも、じいちゃんのアドバイスがあったから思い出せたんだ。着せ替え人形の楽しさが」
「ふ・・・そうか。では、勝者には相応の“ギフト”を与えよう。
*
「ふ・・・そうか。では、勝者には相応の“ギフト”を与えよう。
白夜叉はパンパンと拍手を2回打つ。すると後ろからエロ本が飛んできて白夜叉の手の中に収まった。
「実はこれ、どんなにボロボロになっても次の日には元に戻る。今回の事には関係がないのだがのう。これが渡すものだ、『桜井』には丁度良かろう」
白夜叉が渡してきた箱、開けてみるとそこには
「マント?」
「ただのマントでは無いぞ。神性をもつ桜の花びらを合成した特注品だぞ。炎にめっぽう強い」
智樹はそのマントを付けて見る。桜の花びらが描かれたマントである。
(コノハナノサクヤビメ・・・か?)
マントについてそう考えるのは十六夜だった。
この後、智樹のポケットの中にブルマーとパンツが入っていてニンフにパラダイス=ソングを喰らわされてボロボロになったのだが、それは後日。確かなのは、今日この日に白夜叉と智樹の間には固い友情が生まれたと言う事のみである。
う、うわああ!!!
今回ほとんどが会話文しかないよ!見切り発車の地の文無しとか最悪だよ・・・。まあ、ガルドさんを変態にしたりで楽しかったけど。あと、智樹さんがボロボロになった、ワーイワーイ!
ちなみにじいちゃんは強かったよ、エロい事に関しては負け無しだった。なんて言ったって戦士だからね・・・違うか、『桜井』だからね。
今回は此処まで、また次回に智樹の車窓で