問題児たちが異世界から来るそうですよ?~全裸王(ユウシャ)異世界に起つ   作:固竜

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何となく考えてた事


黒ウサギ「神々の王の慈悲を知れ。
     インドラよ、刮目しろ。
     絶滅とは是、この一刺。
     焼き尽くせ、『日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)』!!」

ペルセウスの騎士達「な・・・なんだ!?ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

黒ウサギ「ふ……是非もなし」



カルナさんがカッコイイからつい・・・。



~だって、お腹が空いちゃったんだもん~

 桜井智樹は戦略用エンジェロイドタイプαイカロスのマスターである。何を今更と思うかもしれないがこれはとても重要な事だ。

 

 

 

 イカロスはかつてシナプスで空の女王と言われて恐れられた、第一世代最強のエンジェロイドである。その性能はマッハ24での飛行が可能で圧壊深度3000m、無酸素活動時間連続720時間(約1ヶ月)という。

 また、彼女の武装も負けず劣らず凄まじい。

 トンデモ兵器と言われても仕方がないような性能をしているイカロス。彼女にとって人間を滅ぼす事などスイカ畑に湧いた害虫を駆除する位に容易い事だろう。

 

 もう一度言う、桜井智樹は戦略用エンジェロイドタイプαイカロスのマスターである。イカロスを使えば世界征服なんか簡単に出来るだろう。片手で?いや、片手すら使わずにただ言えばいい。”世界を俺の物にしろ“と言えばいいのだ。例えイカロスが心の中でどう思おうが関係ない。

 エンジェロイドにとってマスターの命令は絶対なのだから。

 

 そんな桜井智樹は今・・・。

 

 (や、ヤバイ・・・。俺達帰れないんじゃないか!?)

 「大きな白いウナギですよ!イカロス先輩!(食べれるかな?)」

 『誰がウナギだ、誰が!?』

 「よそ見してんじゃねえよ」

 『っ、舐めるな小僧!』

 

 やっと、やっと事の重大さに気が付いた智樹。あの手紙に書いてある事が本当ならば自分達は帰れない。その事に気が付いた智樹は一人恐怖した。だが、気が付くのがほんの少しばかり遅すぎた。智樹は今、アストレアに抱えられて激しい戦いを見ていたのだ。大河に住む大きな蛇と十六夜の冗談の様な戦いを。

 

 アストレアはとてもテンションが上がっていた。

 

 

 

 十六夜が黒ウサギに気付かれず世界の果てを見に行く時の事。あの金髪おっぱい・・・腹ペコ天使アストレアは空腹がすでに限界を迎えていた。

 

 今日、会長が始めた意味の分からないドッチボールで運動した彼女はお腹が空いていた。今日のイカロス先輩の作る夕ご飯はなんだろうとか、夕ご飯早く食べたいなとか、明日の朝ご飯はなんだろうとか考えていた。だが、イカロスの持ってきた封書を見てすぐ事態は最悪の方向へと向かう。

 アストレア達は異世界に居た。しかも高さ4000mの高さだった。夕ご飯前の事だった。そう、つまり・・・夕ご飯を食べそこなったと言う事!いつもならそれでも耐えられた、だが今日は耐えられなかった。だから、空から降りてくる時に見えた大河を思い出したアストレア。彼女は同じく何処かに行く十六夜に付いて行く事にしたのだ。

 河=釣り=魚と言う式が頭の中に出来上がったアストレア。式が出来ただけで驚愕に値するが・・・。近くに湖があった事を思い出さないあたりやはりアホの子なのだろうか?

 ニンフはもっと詳しい話が聞きたいと言って行かなかった。智樹はアストレアを一人にするのは不味いと思い付いて行く、イカロスはマスターの同行。

 腹ペコ系問題児が現れた、黒ウサギの苦労は増えるばかりである。

 

 

 “世界の果て”そう呼ばれる断崖絶壁がある、そこには箱庭の世界を8つに分かつ大河の終着点トリトニスの大滝がある。その近辺に住んでいる神格持ちの蛇神に智樹達が出会う頃。

 

 箱庭二一〇五三八〇外門、ペリベッド通り・噴水広場前。

 それほど人通りが多くないのが特徴のこの場所。それはやはり“世界の果て”と向かい合っているからだろう。

 

 そこで待っていたコミュニティのリーダー、ジン・ラッセルと黒ウサギたちが合流する。

 

 「・・・え、あれ?4人いませんでしたっけ?全身から俺問題児オーラを放ってる殿方と変態二等身様と天使のような女性が2人」

 「あぁ、十六夜君の事?彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!“と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」

 「トモキ達はお腹が空いたって言うデルタの付き添い。イザヨイの行く方に河があったはずだから一緒に行ったのよ」

 

 何故止めないと言う黒ウサギに自分勝手な答えで困らせる元祖問題児2人。ニンフは一言

 

 「アルファが居るから大丈夫よ」

 それだけだった。

 

 黒ウサギにはイカロスの実力が分からない。だが、この中で常識人のように見えるニンフが言うのなら強いのだろうと思った。しかし、それでもだ。

 

 「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」

 

 ジンが蒼白になって叫ぶ、そう、黒ウサギはそれが心配だった。ニンフが言った通りならあの問題児達はトリトニスの大滝の近くに居る事になる。もしかしたら神格持ちの龍や蛇神などと出会ってしまうかもしれない。そうなれば最悪、新しく呼んだ新たな人材を4人も同時に失うかもしれないのだ。

 ジンは幻獣の危険さや事の重大さを3人に訴えるが、ゲーム参加前にゲームオーバー?とか冗談を言って肩を竦めたり、アルファがトモキを守るに決まってるとか言うだけだ。

 

 黒ウサギは心の中でため息を吐きながら行動を開始する。

 

 「ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 「分かった、黒ウサギはどうする?」

 「ふっふっふ、“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやりますヨ!」

 

 語尾が強くなる黒ウサギにジンは思った。

 (今の黒ウサギに何を言っても怒らせそうだ。いったい何をされたんだろう?)

 

 黒ウサギの艶のある美しい黒髪が、怒りのオーラが全身から流れ出ると同時に淡い緋色に変わっていく。外門めがけて空中高く跳び上がり外門の脇にあった彫像を次々と駆け上がる。そして外門の柱に水平に張り付いた黒ウサギは、

 

 「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」

 

 そう言って、全力で跳躍し弾丸のように飛び去った。

 

 

 黒ウサギが智樹達を探し始めて早くも半刻が過ぎようとしていた。上空4,000mから見れば“世界の果て”は彼らには大した距離に見えなかったのかと考える黒ウサギ。だが、実際は途方もなく遠いのだ。しかも、道中は森林を横断する事になるため初見で辿り着けるとは思えない。空を飛べるようなギフトがあればまた違ってくるのだが・・・。

そこまで考えて黒ウサギは思い出した。彼ら4人のうち2人は背中に羽が生えていなかったかと。

 

 「こ、これは本格的に不味いのでは!?」

 

 焦りを募らせ走る黒ウサギだったが、周囲の森林から聞こえる怪しい呻き声に足を止める。

 

 『・・・・・・今度は兎だ』『天使の次は兎が来たぞ』『この辺境に“月の兎”が来やがった』『飛んでいった小僧が言った通りだ』『足止めするか?』『ゲームを挑むか?』『“月の兎”を相手に?』『しかし何を挑む?』『力か?』『知恵か?』『それとも勇気か?』『ハッ!馬鹿な、何で挑んでも勝ち目などないぞ』

 

 箱庭の外に出る事が少ないウサギが現れたのだ。森の魑魅魍魎達が物珍しさに黒ウサギを一目見るため集まって来たのだろう。だが、黒ウサギは見世物として付き合ってやるような時間がない。それにそんな気分でもない。

 

 「あのー森の賢者様方。申し訳ありませんが黒ウサギは急いでおります。要件がないようですので先に行かせてもらいますね」

 『・・・・・・』『・・・・・・』『・・・・・・・・・』

 

 無視するのは簡単だがそれは箱庭の貴族として気分が悪い。一応断りを入れてからまた歩みを始める黒ウサギ。だが、それに待ったを入れる声が一つ。

 

 『待ってください、お嬢さん?』

 

 その声の主は茂みから聞こえる。魑魅魍魎とは違う、静かな声と蹄の音が響く。現れたのは艶のある青白い胴体と額に角を持つ馬。そう、幻獣のユニコーンだった。

 

 「こ、これはまた、ユニコーンと珍しいお方が!“一本角“のコミュニティは南側の筈ですけども?」

 『それはこちらの台詞です。箱庭の東側で兎を見る事など、コミュニティの公式ゲームの時ぐらいだと思っていましたよ―――と、お互いの詮索はさておき。貴方は誰かをお探しの様子。もしもそれが私の想像通りなら私の目指す方角と同じです。森の住人曰く、彼は水神の眷属にゲームを挑んだそうですから』

 「うわお」

 

 やはりと思った黒ウサギ。クラリと立ち眩み、そのままガックリと膝を折った。

 

 「本当に・・・・・・本当に・・・・・・なんでこんな問題児をぅ・・・・・・!」

 

 怒りを通り越して泣きたいと思う黒ウサギ、いやちょっぴり涙が出てきていたかもしれない・・・。ユニコーンが自分の背中に乗るように提案するが丁寧に断った。正直に言えば彼よりも黒ウサギの方が足が速いのだ。

 

 「…うぅ、それでは先に向かいますね」

 『そうですか、分かりました。ごぶうん―――おっと!』

 

 その時だった、突如、大地を揺らす地響きが森全体に広がった。すかさず大河の方角を見ると、彼方には肉眼で確認できるほどの巨大な水柱が幾つも立ち上がっている。

 

 「・・・・・・」

 

 思わず涙が引っ込んだ。黒ウサギは心の中で本日何度目かになるため息をする。ユニコーンは苦笑いしながら数歩下がる。

 

 『気を付けて。君の問題児にもよろしく』

 

 頷く黒ウサギは智樹達が居るであろうトリトニス大河を目指して走り出す。風を追い抜き、木々を撓らせ光の如く森を走り抜けていく。

 そんな黒ウサギを見て森の魑魅魍魎達は思うのだった。

 

 『やはり、あの天使と同じく勝ち目がなさそうだ』『あの首輪に見覚えがある』『あぁ、あれか』『あの時の天使とも実力差があったな』『・・・・・・帰ろう』

 

 

 

 




他にも考えていた事

ニンフ(そう言えば、黒ウサギの声って少し私に似てたわね。今度一緒に歌おうって誘ってみようかな)



なかなか話が進まないけれど、次はなんとか皆のアイドル白雪姫ちゃんの登場になると思います。

~6月3日~
少し付け加えました。

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