もしもブレイブウィッチーズにドリフターズのあの人が来たら   作:ひえん

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いよいよ最終話。
勢いとノリでゴリ押し気味でございます。


ドリフターズ

 別れは唐突にやって来る。それがこの日の朝であった。直が別の部隊に行くこととなったのだ。

 

「直さん、本当に行っちゃうんですか?」

「そう言うな、こんな時こそ明るく送り出してやろうじゃないか。士官に転勤は付き物だ」

「大尉、無茶しないでくださいよ。くれぐれも他の人に迷惑はかけないように」

「大尉がいなくなると寂しくなるなあ」

「ただまあ、これでこの基地は平穏になるかもね…いてて、ギブ!ギブ!!」

「まったく…達者でね」

「また、必ずお会いしましょう…約束ですからね!」

「直さん、落ち着いたら手紙くださいね!」

「まったく…死ぬなよ」

 

「そう簡単には死なねえよ。じゃあな、チビ。ああ、そうだ。貴様にこいつを預ける」

「これは?」

「日本の小説だ、飛龍艦内にあった本を貰ってきてやった。未完の本だが、しっかり読めよ!それと、またな!!」

 

 そして、502の隊員たちが手を振って別れを告げながら、紫電改はペテルブルグを飛び立った。朝の陽ざしを背に浴びながら。

 

 

 

 

 

 それから暫くの後の事…

 

 第502統合戦闘航空団は連合軍と共に一大作戦に臨んでいた。目標はこの方面のネウロイの巣「グリゴーリ」、それを叩き潰してこの方面のネウロイを完全に駆逐するというものである。

 そして、作戦は最終局面。502の面々はネウロイの巣に突入、内部でのネウロイとの戦闘で各隊員は残弾を撃ち尽くし、その止めの一撃は雁渕ひかりの手に託された。

 

「これで…最後!」

 

 ひかりは残り一発の銃弾を巣のコアに撃ち込んだのであった。

 

「やった!502がやったぞ!巣が消えた!司令部に打電しろ!!」

「よし、これでこの地域は安泰だ…長かった」

 

 各地で兵士たちが歓声を上げる。上空からは502の隊員たちがフラフラと降下してくる。既に弾薬、魔力、体力を使いつくしており、一刻も早く帰還せねばならない。何人かのストライカーユニットは煙を吐き、今にも止まりそうな状態だ。

 

「まったく、みんな揃ってストライカーが不調とは…」

「いつもの三人の物を壊す癖が伝染したのかしら」

「さあ、さっさと帰るぞ。ブレイクウィッチーズ!」

「その名前は勘弁して」

 

 そんな時である、急報が飛び込んだ。

 

「オラーシャ内陸部より、多数のネウロイ移動中!間違いない、巣の跡を目指しているぞ!!」

「何!?」

 

「東方上空で哨戒中の700SQが接敵、複数の中型ネウロイ!700SQは退避開始。701SQを支援に向かわせた」

「各飛行隊、戦闘続行不能な規模の損害を受けています!地上部隊も同様!!」

「何?502は…無理か」

「消耗しきっています、これではとても戦闘なんて…」

「くそ!スオムスに応援要請だ!大至急!!!」

 

 敵侵攻の一報が飛び込み、蜂の巣を突いたような騒ぎになった司令部のドアが突如勢いよく開く。そして、奇妙な身なりの人間が一人、司令部の中にずかずかと入り込んでくる。

 

「あらやだ、大作戦の割には随分としけた建物ね」

「誰だ!い、いや…あなたはサンジェルミ伯!何故ここに!」

 

 それを見た兵士が呟く。

 

「おい、誰だ。あの変人」

「シッ、聞こえるぞ。あれはサンジェルミ伯、ガリアの大貴族で世界中の政財界、軍事関係者と幅広く交友を持っているという大物だ」

「なんでそんな貴族様がこんな最前線に?」

「知らん。あ、聞いた話だとあの貴族、なんでもここ80年ぐらい変わらず同じ姿だとか…」

「なんだそりゃ。流石に嘘だろう…」

 

 サンジェルミ伯は来て早々そこの指揮官に向かって言った。

 

「ネウロイの巣撃破おめでとう。でも、困っているそうじゃないの」

「ええ…まあ、新手の敵が現れましたが…現状余剰戦力皆無でして」

「なるほど。絶賛大ピンチという事ね。そんな皆さんに良いお知らせを持ってきました」

「なんでしょう?」

「頼れる増援を連れて来てあげたわ」

「なんですと!?」

 

「遅れて申し訳ない」

 

 更にもう一人司令部に入ってきた。見た目で判断する限り、東洋人である。

 

「その服装…まさか、魔術結社の十月機関か!?」

「お初にお目にかかる。十月機関の長、安倍晴明と申します」

「今更そんな連中が戦力になるとでも?大昔から続く怪異退治の専門家集団だが、ネウロイには無力ではないですか」

「我々がストライカーユニットの戦力化にどれ程協力したか…もうお忘れか?まあ、それはともかく…私は増援の手助けに来ただけです。戦力は実質サンジェルミ伯が用意した物となりますので」

「そうそう、呪いとかそういうのではないわ。まあ、ちょっと変わってるけど…ああ、連合軍総司令部直々の命令書もあるわ。さて、そろそろ来るかしら」

 

「レーダーに感あり!なんだこれ…高度約1万2000mに機影?しかも速い…ネウロイか?」

「味方よ」

「なんですって?そんな高高度を高速で飛ぶ機体なんてまだ実用機には…」

「あるのよ。まあ、拾い物だけど」

「はあ?」

 

 そして、外の見張りが叫んだ。

 

「見えた!あれだ!」

 

 戦場の上空、遥か高高度に飛行機雲を引きながら1機の4発機が飛ぶ。塗装は無く、機体は日光を反射して銀色に輝いていた。

 

「こちらシルバーアロー、制空隊及び地上部隊へ。あー…地上に真っ黒な一群がぞろぞろ動いているのが見える。おや、空中にも多数…中型が30体ぐらいか?」

「了解、そのまま監視を続けろ。何かあればすぐ知らせよ。制空隊、各機攻撃準備。手筈通りにかかれ」

「了解、片っ端から落とすぞ!しかし、あのB-29も味方にいると便利だ」

「一番槍は我々が貰っておくぞ。後は任せる!」

 

 戦場近くでは502のウィッチ達が敵発見の報告を受けて地上に降りていた。手近な所で急いで補給を受けようとしていたのである。だが、そこの地上部隊の指揮官は引き留めようとする。

 

「無茶だ、あれだけ戦って体力もまともに残っていないだろう!」

「いや、前線に残された連中を見捨ててなどおけない。だから弾をくれ」

「ええ、せめて時間ぐらい稼がせてください!」

「いや、しかし…」

「な、なんだありゃ!?」

 

 その刹那、頭上を轟音が飛び去っていった。その音は後方の司令部まで響く。

 

「あれはジェット戦闘機!?いやまさか…ノイエ・カールスラントでまだ試作中のはずじゃ…」

「ええ、“ここ”ではまだ実戦配備されてないわ。“ここ”ではね」

「サンジェルミ伯、それはどういう…?」

「おっと、それは後でのお楽しみ」

 

 ドイツ空軍のマークを付けた3機のジェット戦闘機…Me262はネウロイの群れに向かって真っすぐ進む。

 

「見えた!中型ネウロイとやらだ。さーて、米軍のコンバット・ボックスとどっちがマシか」

「小隊長!いつも通りにやるだけでしょう。おおっと、撃ってきた」

「よし、攻撃開始!」

 

 ネウロイから放たれた光線に怯むことなく、3機のMe262はタイミングを見計らって主翼下にぶら下げたロケット弾R4Mを一斉に放った。その数、3機合計で70発以上。まさに面制圧といった状態でネウロイの群れにロケット弾の雨が飛び込む。そして、うまく命中した弾の信管が作動、弾頭が炸裂して周囲に破片が飛び散った。炸裂炎と破片をもろに浴びたネウロイはたまらず編隊を崩す。

 

「よし、やったぞ!一度退避する」

 

 Me262は一度旋回してネウロイの群れから離れる。そして、散り散りになったネウロイの群れに向かって様々な戦闘機が襲い掛かった。機種もラウンデルもバラバラだ。

 

「菅野一番から各機、獲物が崩れた!かかれ!ブチカマセー!!」

「言われなくとも!海軍さんに負けちゃいられん。疾風と陸軍航空隊の強さを見せてやらねば」

「おっと、日本やドイツにばかりカッコいい思いはさせんよ。アメリカ陸軍航空隊の意地を見せてやる」

「やれやれ…RAF(イギリス空軍)もいるんだがなあ。しかし、なんでこんな所で戦っているんだが…」

「まあ、気にすんな。敵がなんかよく分からんバケモンになっただけさ。こうなったら米海軍戦闘機乗りの精強さも見せないと」

「そうだな、活躍したら下の連中がうまい酒を奢ってくれるかもしれない」

「ああ、それにそこらでウィッチのかわい子ちゃんたちも見てるんだろ?こんな時こそやる気出さないと」

 

 その最後の二言に対して一斉に無線が飛び込む。

 

「おい、貴様ら!真面目にやれ!!」

 

 紫電改、四式戦闘機、P-51D、タイフーンにF4U、G.55等々…様々な戦闘機が轟音を鳴らしながらネウロイに空中戦を仕掛けた。

 

「あれはいったい…どこの国の戦闘機でしょうか?」

「ああ、この世界の戦闘機ではないわ。よその世界から流れ着いた戦闘機とパイロットよ」

「噂で聞いていましたが…まさか本当だったのですか!?」

「ええ、私やそこの晴明も同じくそうだもの」

「えっ」

 

 地上ではまた別の一団が動き出していた。彼らが見つめる先には陸上を疾走するネウロイの群れ。中型と小型で構成された一群である。林に挟まれた細い一本道を突き進む。

 

「来よった、来よった。うじゃうじゃおるわい…囲地にぞろぞろと入って来よった。よーし、今だ。やれ!」

 

 命令が下ると即座にネウロイの群れの前に石の壁が次々とせり上がる、針路上に置かれた札によるものだ。それに反応してネウロイは止まろうと減速を始めるが間に合わない。次々と壁にぶつかっていく。そして、その後ろのネウロイも連鎖的に接触。玉突き状態となり、中型ネウロイは次々擱座。小型ネウロイはその倒れ込んだ中型ネウロイに潰される物もあった。

 

「与一!仕掛けろ」

「承知」

 

 林の中から幾本もの矢が飛ぶ。矢には爆薬が括りつけられている。それが動きを止めたネウロイの群れに次々と突き刺さる。そして、炸裂。いくつかの小型ネウロイはそれを受けて行動不能に陥った。攻撃を受けたネウロイは周囲に制圧射撃を始めるが、相手の位置をまだ掴めていない。

 

「おお、やっぱり凄いな。この火薬ってやつは…よし、弓衆は移動。このまま相手に見つからないように」

 

 弓矢を持った平安武者の命令を受けて配下の兵たちが次々動く。その兵達には特異な点が一つあった。普通の人間より耳が長いのである。

 

「エルフは機敏だからこういう時便利」

「与一さん、どこから撃ちます?」

「よし、あの大きな木の向こうにしよう。第二射用意。それと、信さんに連絡」

 

 次の矢が飛ぶ。そしてその刹那、別の林から猛然と複数の戦車が飛び出す。それらの車種と国籍はやはりバラバラである。

 

「戦車隊前進!戦車乗りの真髄をこの世界の連中に見せつけて教育してやれ!目標正面、撃て!!」

「機銃手、かまわん!手当たり次第に撃ちまくれ!!」

 

 ティーガー、M4A3、T-34、コメット等の各種戦車が砲撃開始、中型ネウロイに砲弾を叩き込む。精強無比、幾多の修羅の巷を掻い潜った歴戦の戦車乗り達は動けない目標に容赦なく砲弾や銃弾を撃ち込む。

 

「大きいのはあらかた片付いたかのう…あの細かいのはおい達の獲物ぞ!構えぃ!走りながら撃つ!!島津豊久ぁ、推参!!!」

 

 猿叫が鳴り響き、鎧兜の一群が各々銃を撃ちまくりながら小型ネウロイに襲い掛かった。そして、その一群の指揮官は迷い無く間合いに飛び込むと、勢いよく刀を抜いて振り下ろす。まともに刀を受けた小型ネウロイはばっさりと両断された。

 

「ほほう、京の都の陰陽寺…?の坊さんのまじないはすごいのう…あんなに硬かった化け物がぬるりと切れる…よーし、兵子ども!今こそ功名時ぞ!!このまま斬り伏せぇ!!!」

「応っ!」

 

 その中でも身長が低く、ずっしりとした体つきの戦士たちは大斧を振るって小型ネウロイを叩く。それに負けじと島津十字の家紋を付けた指揮官たる武者も刀と小銃でネウロイを潰す。

 

「この銃もすんごいのう!!よう当たる!!!」

 

「なんておっかねえ随伴歩兵だ…あ、誤射すんなよ。あんなんでも味方だ」

「ひえー、サムライこえー」

「あんな斧でぶん殴るドワーフも大概だ…」

「ああ、スクラップが増える増える」

 

 戦車隊はその乱戦を軽く引きながら見ていた。いざとなれば戦車砲や重機関銃で直ちに援護するのである。そして、離れた高台からそれを見守る髭面の胡散臭い男が一人…織田信長である。彼は豊久一行の強行突撃を見て呆然とした顔である。そして、その周りで同じように異世界から流された魔導士オルミーヌ等の面々も頭を抱えている。隣に置かれた無線機からは薩摩武士とドワーフの叫び声がひたすら鳴り響く。

 

「ああああっ…もう、お豊は無茶苦茶しおる…」

「ノブさん、どうしましょう…」

「どうにもならん!それともあれか、なんとかミーヌ!お前があの“すとらいかあ”とかいうやつ履いて戦うか?」

「いい加減名前覚えろジジイ!というか無理です、私があれを使っても動かせません。使う術が別物過ぎます!」

「なんでえ、使えんのう」

「はー、そうですか。石壁出すのやめてもいいんですけど」

「あ、すんません。ほんとすんません…(しかし、未来は兵器も技術もやはりすげえな。これ揃えてもう一回やり直してみてえなあ…)」

「与一さーん!お豊さんの援護を!!すぐに!!!あーもう、この世界に飛ばされて凄い魔導士に弟子入りできてラッキーって思ったのに、なんでこんな目に!!」

「あー!じいちゃんがまたどっか行っちゃう!」

「うるせー!大人しくさせる為に木苺を与えておけー!!」

 

 司令部や現地部隊は皆混乱していた。突如現れた援軍、それはまだいい。だが、その航空機も車両も見た事のない国籍マークが描かれている。挙句の果てには鎧兜の武者である。理解が追い付かないのも無理はない。

 

「どう、増援は?部隊名は第50独立混成戦闘団…ドリフターズよ」

「ドリフターズ…漂流者ですか。まさにぴったりの名前ですな。しかし、サンジェルミ伯。よその世界から来た兵士たちが何故この世界の為に戦ってくれるのでしょうか?」

「ああ、国籍と身分と給料を保障するって言ったら喜んで力を貸してくれるって。それに彼らは今まで人間相手に戦争してきたの。それで化け物相手に戦って人助けできるなら…そんな調子で戦ってるわ」

「人間同士で戦争を…?」

「ええ、よそはこっちと違う苦労が色々あるのよ」

「兵士たちの事は分かりましたが、えーと…あのファンタジー感全開な連中と侍達はどこから…」

「んー…更に別の世界から…?多分。あれは晴明がどっかの森の中から拾ってきたからよく知らん」

「えぇ…」

「サンジェルミ伯!豊久殿が勝手に突っ込みました!!」

「なぁんですってぇ!!!」

 

 一方、戦場に程近い502の面々は空を見上げていた。その視線の先で繰り広げられていたのは多種多様な戦闘機とネウロイの空中戦である。

 

「あっ、あれ!直さんの紫電改!」

「本当だ!つまり、あれが例の異世界から飛ばされた連中の部隊か!」

「凄い性能…それにジェット機まで飛ばすなんて」

「おい、高高度になんか飛んでるぞ。飛行機雲を引いてる」

「あれは爆撃機?高度は1万m以上かしら…大尉が言っていたB-29?」

「まったく、連中も普通の戦闘機で無茶苦茶やるな」

「まさに命知らずというかなんというか…」

「あ、また落とした」

「弾と魔力と体力さえ残っていればボクも負けないんだけどなあ」

「無いものは無い、諦めろ」

 

 彼女たちはその空中戦を見物し、思い思いに感想を言い合っていた。空戦の様相は戦闘機隊が勢いで押し切るような形になり、ネウロイは次々と数を減らしていく。

ここまで彼らが善戦できた理由は対ネウロイ用に十月機関が準備した武器弾薬があったからこそであるが、対ネウロイ用として弾や刃に一つ一つに術や魔力を込めた清明の弟子達の苦労は恐らく語られないであろう。

 

 戦場から少し離れた洋上では一隻の艦艇が航行していた。その艦は空母飛龍…この世界の同名艦との混同を防ぐ為に「飛龍丸」と仮の名前が与えられ、艦種も特設通信支援艦とされた。しかし、それは仮の艦籍であり、修理の際に装備を色々と変更したものの実質は空母のままである。艦内では整備員や乗組員が忙しそうに駆け回って艦載機の発艦作業を進めている。ネウロイ追撃の為の攻撃隊である。

 そして、その甲板上では日本海軍の士官服を着た男性が一人、空を見上げながら呟いた。

 

「今回は勝ったかなあ」

 

 

 

「よし、勝った!」

「…ああ、見ていてヒヤヒヤものだったわ。あの人はどうしてこう無茶ばっかり」

「まあ、直さんですし」

 

 戦場上空のネウロイは全て撃墜、陸上のネウロイも撃破か撤退に追い込まれていた。502のウィッチ達はとりあえずトラックに乗って手近な野戦飛行場に移動中であった。そこで整備員達と合流するつもりなのだ。すると、頭上を戦闘機が飛び越していく。脚を降ろしている為、このまま目的地の滑走路に降りるのだろう。そして、トラックも滑走路脇にたどり着く。ウィッチ達はボロボロになって飛行不能なストライカーユニットを抱えながらトラックから降りる。すると、無線から久々に聞く声が鳴った。

 

「菅野一番、菅野一番。今から着陸する!」

「了解。見物させてもらうぜ」

「おー、チビじゃねえか。いたのか」

「うるせえ、502全員勢揃いだ。ヘマすんなよ!」

「うっせえ、そっちこそちゃんと見てろ!芸術的な着陸を見せてやる」

 

 そして、黄色い二本のストライプを付けた紫電改はするりと着陸した。主翼の銃身周りは発砲炎と硝煙で煤けている。かなりの数を撃ったのであろう。それだけであの空戦の凄まじさが見て取れる。飛行場の整備員達は見慣れぬ機体に困惑しつつも急いで駆け寄っていく。そして、機体が停止するとコクピットから直が勢いよく降りてきた。そして、502の面々も紫電改へと駆けていく。

 

「直さーん!」

「おお、雁渕!元気にしとったかー、えー」

「私やりました!ネウロイの巣に止めを刺したんですよ!!」

「ほー、すごいすごい」

「あ、ひどい。この人絶対嘘だと思ってる」

「本当ですよ」

 

 ひかりの戦果に疑問を抱く直に下原が笑いながら事実だと告げる。

 

「ああ、下原ちゃんが言うなら本当なんだな。雁渕、よくやった」

「あ、ありがとうございます」

 

 褒められたひかりが恥ずかしそうにしていると、ラル達もやってきた。

 

「まったく、こんなに早く再会するとは思わなかったぞ」

「まあ、おかげで助かりましたけど」

「全員ボロボロじゃないか。無茶すんなぁ」

「大尉には言われたくないなあ。あんなにネウロイに噛みついていたんだから」

「バカヤロウ、あれぐらい普通だコノヤロウ」

「まあ、お互い無事でよかった」

「ああ。さっきは4機落としてやったわ」

 

 そして、直枝が直に言った。

 

「ああそうだ。お前が出ていく時に置いて行った小説読んだけどなあ、読みごたえは確かにあったが…社会背景違いすぎてよく分からんぞ」

「あ?それぐらい想像力で補えバカヤロウ。貴様それでも読書家かぁ?」

「解説無しだと無理だって言ってんだろ!知らん単語や固有名詞なんてどうしろってんだ!…そうだ、今度はこっちの小説読ませて同じ気分にしてやる」

「ほーう、かかってこい」

 

 小説の感想でどうのこうのと論戦を始めるダブルカンノを見てサーシャとロスマンが頭を抱える。

 

「ああ、熱心な読書家っていうのも考え物ね…」

「仲がいいのか悪いのか…」

 

 こうして、戦闘は終結。オラーシャ北部に平穏が蘇ったのであった。

 

 この戦場跡の幾人かの大騒ぎは別として。

 




こうして第50独立混成戦闘団…ドリフターズの初陣は勝利で幕を閉じた。
第502統合戦闘航空団の大戦果と共に

という事で完結となります。
短編から勢いで連載を始めたものの、どうにかこうにか完結まで持ち込むことができました。これも読者の皆さまから頂いたたくさんの感想のおかげでございます。

ほぼ勢いで胴体着陸(機体全損レベル)したような最終話ですが、楽しんでいただけたら幸いです。

という事でこれまでありがとうございました。またどこか別作品でお会いしましょう。

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