もしもブレイブウィッチーズにドリフターズのあの人が来たら   作:ひえん

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愉快な侍三人のお話


おまけ
廃城の侍


 ここは関ケ原、一人の武者が這うように霧に包まれた道を進む。その体は全身傷だらけ、槍が貫通した深い傷もある。そんな満身創痍で幽鬼のような姿でも彼はなお進む。

 

「帰る…必ず、薩摩へ…」

 

 その武者の名は島津豊久、薩摩の大名である島津家の武将である。彼はこの関ヶ原の戦いにて敵中真っ只中から叔父である総大将を逃がす為、命懸けで敵の追撃を迎え撃った。そして、敵将に深手を負わせて退却に追い込むという活躍をしたものの、その引き換えに自身も深手を負ってしまったのである。そんな彼は朦朧としながらも進む。故郷である薩摩へ帰る為に。

 霧は更に濃くなっていく、周囲の様子すらよく掴めない。

 

 すると、当然霧が晴れてきた。だが、周囲の様子は一変していた。まず、先程までとは植生が様変わりしている。更に空気もどこか違う、戦場に漂う血や硝煙の臭いが一切無くなっている。

 

「妙だ…こりゃあ、ついにあの世か?」

 

 豊久の視界が歪む。合戦後と負傷による体力の限界もあったが、咄嗟の出来事で思わず張りつめていた気力も途切れてしまったのだ。もう指一本まともに動かない。そして、倒れ込むその間に、視界の隅にある建物が見えた。しかし、見た事の無い造りである。あれは城か?そう考えるも視界はそのまま暗転する。

 

「人だ…これは武者か…?」

「何事か、黒い化け物がまた空に出たか?」

「人です。しかも、武者にございます」

「武者だと…生きておるのか?」

「ええ、辛うじて…といったところですが」

「手当てしてやれ、運が良ければ助かるやもしれん。しかし、面白いのう…ここに来て三か月、やっと新たに見つけた人間がまた武者とは…」

 

 何者かの話し声が聞こえるが、豊久の意識はそこでついに途絶えた。

 

 

 

 草木が覆うガリアの片田舎、いくつかの廃屋が点在する集落跡を二人の女性が歩く。

エレオノール・ジョヴァンナ・ガション軍曹…エリーとグレイス・メイトランド・スチュワード少佐、二人はウィッチで構成された音楽隊であるルミナスウィッチーズに所属している。

 ここガリアはつい先日、第501統合戦闘航空団の活躍によってネウロイの制圧下から解放された。そして、この国が故郷であるエリーは軍の広報任務として部隊長であるグレイスと共にガリアを訪れたのである。そして、その任務の合間を縫って、エリーは陥落前に自分が住んでいた地域へとやってきたのだ。

 

「もしかして、この家に住んでいたの?」

「はい。実は一つ気になる事があって…昔、猫を飼っていて、疎開する時にその子を連れていけなかったんです」

「猫か…あの騒ぎの中じゃ厳しかったものね」

「ええ。あの頃はいつもその猫と一緒に遊んでいて…ああ、近くの廃城なんかでも遊んだりしていたなあ」

「え?お城があるの?」

「ええ。古い小さなお城です、近所の子達と秘密基地にしていたり」

「見てみたいなあ…」

 

 グレイスの目はキラキラ輝いたようにエリーへとその視線を向けていた。

 

「ほら、リベリオンってそういうの無いじゃない?ヨーロッパのお城とかってちょっと憧れちゃったりするのよねえ」

「あー、そのー…綺麗なお城ではないですよ?」

「ふーん、でもなあ」

「…行ってみます?」

「是非!」

 

 そんなグレイスの圧に負け、エリーは話に出た城へと歩き出す。獣道の様に細い道をしばらく歩くと、そこには古ぼけた石造りの城があった。二人はそのままその城へと進んでいく。

 

 

 

「人です、人の姿が見えます」

 

 城の物見塔から一人の武者が言う…その武者の名は那須与一、平安時代の武者である。その手は自然と自身の武器である弓を握る。しかし、階下からそれを止める声が響いた。

 

「いや、待て。そやつらは何者か?また武者か?」

 

 その声の主は織田信長、言わずと知れた戦国の世にて天下を取りかけた大武将である。そして、更に別の声が飛ぶ。

 

「で、やって来たのは誰ぞ。敵か?敵ならば首を獲るが」

 

 そんな物騒な事を言いながら刀を抜きかける男…島津豊久は窓から様子を探る。それに対して与一は声を抑えて言った。

 

「見えました、女子が二人。見た事の無い身なりです」

「女子が二人だけだと?どういう事だ…」

「つまらん、それじゃあ手柄にならん」

 

 向かってくる二人は女性だと聞くと、豊久は刀を抜く手を引っ込める。それに対して信長は一瞬考える素振りを見せると言う。

 

「いーや、待て。これは好機とも言える」

「はあ?どういう意味じゃ」

「俺が本能寺からここにすっ飛ばされて半年、この地でお前ら以外の人を見ていない。だが、周囲の建物には確かに人が住んでいた痕跡があった。つまり、何らかの理由でこの地を一時的に去っていた住民が戻ってきたのかもしれぬ…」

「なるほど。で…ここがどこだか聞くと」

「ああ」

 

 しかし、監視を続けていた与一の声色が変わる。

 

「どうでしょうかね、片方の動き…歩き方や身のこなしはどうも素人とは言い難い気がします。多少なりの稽古を受けた様子がある。ただの百姓のそれには見えない」

「何?では、密偵か?」

「道案内を連れた斥候…なんて事も」

「怪しいのなら…用心に越した事は無い。お豊、仕事だ」

「斬るか?」

「いーや、捕まえる。情報だ、とにかく情報を得るのだ…かかれ!」

「応よ」

 

 そして、三人は音もなく立ち上がると上の階へと急ぐ。待ち伏せる為である。

 

 

 

「おお、なかなか雰囲気あるじゃない」

 

 目を輝かせながらグレイスは城の中を見回す。しかし、エリーは首を傾げた。なんか当時と物の配置が色々変わっているような…城の中の様子を一目見てそう考えていたのだ。すると、突如異変が起きた。グレイスの背後に上から人が降ってきたのだ。

 

「え!?」

「何!?というか、誰!?」

 

 そして、グレイスの喉元に刀の刃が突き付けられる。戦地で扶桑のウィッチや士官達が持つ実物の刀を幾度も見た経験から、混乱しつつも彼女は確信する。

 

「た、隊長…後ろに侍が、侍が…」

「え、嘘…?これ、本物…」

 

 対抗する武器もない、絶体絶命の事態にグレイスの顔が青ざめた。

 

 

 

「貴様らは何者か?答えねば首を斬る」

 

 豊久は怪しげな女性に刀を突き付けながら言う。しかし…相手の話している言葉が全く理解できない。

 

「何言うちょるのか分からん…日本語ではなか。こりゃあ南蛮人か?」

 

 豊久はそう言うと、玄関に向けて言う。

 

「おい、第六天魔王!南蛮語は喋れんのか?俺にはさっぱり分からんぞ!!」

「馬鹿言え、俺だって分からんわ。そういうのはな、専門家の仕事なんだよ!」

 

 玄関の戸の向こうから火縄銃を構えた信長が現れる。その髭面の男性の姿を見たエリーは咄嗟に周囲を見回す。すると、薄暗い通路の奥にもう一人いる…鈍い光がギラリと輝く。あれは弓矢だ、こちらを狙っている。銃と矢で狙われている事に気付いたエリーの顔も青ざめる。グレイスが最早人質同然の状態で手が出せない、それ以前にストライカーユニットも武器もない。そして、どうしてこんな所に言葉の通じない時代錯誤なサムライがいて、自分達を脅しているのかという疑念にも襲われていた。

 

 矢を構えながら与一も部屋の中へと入ってきた。そして、信長に尋ねる。

 

「信さん、その南蛮人って?」

「ああ、異国…大陸のずっと奥深くから船に乗ってやってきた連中だ。日本にこの銃なんかを持ち込んだ」

「へえ、という事は…ここはその南蛮とやらで?」

「分からん、こんな服見た事も無いし、話もさっぱり通じん。正直、お手上げだ」

 

 すると、豊久が言う。

 

「この二人、俺の姿を見て侍と言っとったわ。つまり、日本の事は知っちょるかもしれん」

「ほう、どれどれ」

 

 それを聞いた信長は豊久に指をさし、青ざめた表情を浮かべる二人の女性に聞く。

 

「これ侍?分かる?侍」

「サムライ!サムライ!!」

「じゃあ、これは?これこれ」

「カタナ!カタナ!!」

「ふむ、確かに知識はある。じゃあ、あれは?」

「That's an arrow!」

「ふむ…分からん!さて、困った。言葉が通じんとどうしようもねえな」

 

 そして、信長は女性に刀を突き付ける豊久の姿を見ると気まずそうに口を開く。

 

「なあ、やっぱりこいつら間者とかじゃないんじゃね?武器も持ってないし、そもそも手ぶらだし」

「はあ?今更何を言うか。捕らえるように言うたのはお前ぞ」

「しかしだな…傍から見ると、やべー扱いされるのは間違いなく俺らの側だろ」

 

 信長がそう言うと、その場になんとも言えない微妙な空気が漂う。どうすんの、これ?という考えが武者三人の脳裏を駆け巡っていた。そのまま豊久と与一の視線が信長に向けられる。何とかしろよ、と念のこもったズシリと重たい視線で。

 そして、捕まえた二人も何か言っている。言っている意味は分からないが、その表情から何が言いたいのかはおおよそ分かる。場をなんとか収めたいのだろう。そんな一同の雰囲気に気づいた信長が頭を掻いて何か言おうとしたところで再び異変が起こる。

 

「なんじゃこりゃ!?」

 

 大量の紙が城の中に突如として吹き込んできたのだ。そして、その紙の群れは一点に集まる、まるで人が覆い隠れる事が出来るような大きさである。そして、その中から声が響く。

 

「刀を収められよ」

 

 その紙の山から二人の人影が現れ、場の面々は唖然と口を開く。しかし、与一は紙を見てある事に気が付く。

 人形の紙…これには見覚えがある。まじないや儀式等に使う紙、京の都の陰陽師なんかが使う類である、と心の内で考えた。つまり、この人物は…

 

「貴様ら…鬼か?物の怪か?」

 

 その人影を豊久は射るような瞳で睨みつける。どこからともなく突如として現れる…とても人間業ではない。よって、この人影を化け物の類と疑う事は自然であった。それに対して、二人の内の一人…男性がこう答える。

 

「私は安倍晴明(はるあきら)と申す」

「はるあきら…まさか、晴明?安倍晴明か!」

 

 その名を聞いた信長は驚いたように言う。

 

「はい、のちの世ではそう伝わっているそうで」

「そりゃあ凄い…それならあれも納得だ。あんたも飛ばされてきたのか?ここに」

「ええ、京の都で普段通りに過ごしていたある日、突然に」

「同じ立場の人間がいてよかったわい。で、ここがどこだか分かるか?」

「あなた方がいた時代よりも遥か後の時代とはある意味で言えます…しかし、事情が複雑。別の世と言えば通じましょうか…ここに日本は無い。扶桑という国が同じ位置に存在しています」

「扶桑…そいつは国の呼び方の問題ではないのか?」

「世の成り立ちからして別物と言えます。そして、ここでは当たり前のように術が存在している」

「術…今やったようなヤツか?」

「いえ、私が使う術とは別のものです。そして、それは魔法と呼ばれています」

 

 しかし、そこで豊久が口を挟む。

 

「よう分からん話じゃのう…で、誰だ、そいつ。信の知り合いか?」

「知らんのか?安倍晴明だよ、あの有名な」

「知らん、どこの誰ぞ」

「え、ほんとに知らんの?」

「知らん」

 

 すると、晴明は自己紹介を始める。

 

「私は安倍晴明と申します。京の都で陰陽師をしておりました」

「京…つまり都人か。で、京のおんみょう寺の坊主ちゅう訳か」

「…陰陽師です」

「おんみょうじ…寺ではないか。で、京の坊主はそんな妙な服を着ちょるのか。頭も丸めとらんし…奇抜じゃのう」

 

 豊久の発言に晴明は頭を抱える。

 

「これはこちらで仕立てた服です…」

「あー…そこの豊久は薩摩生まれで戦しかできない残念な子だから、気にしないで…」

 

 信長が晴明に頭を下げながら言う。

 

「服を仕立てたちゅう事は…近くに人は住んどるのか?」

「いえ、現在この国…ガリアに民は住んでおりません。皆、他国に逃げております」

「国から逃げた…?どういう事か?だが、そん前に…お前らは何しにここに来た」

 

 その豊久の問いに晴明は答えた。

 

「私はあなた方の様に異なる世界から飛ばされてきた人々を保護しているのです」

「そいは同情によるもんか?どうもしっくりこん」

「同情…まあ、それもありますが…実のところ他の目的もあります」

「ほう、やはりそうか」

 

 すると、晴明は視線を背後に向ける。そして、その視線の先には眼鏡をかけた女性が立っている…晴明と共に現れた人物だ。

 

「この後ろにいるのは我が弟子、オルミーヌ。彼女は更に別の世界からこの世界に飛ばされた人間です」

 

 それに信長が首を傾げながら口を開く。

 

「更に別とはどういう事だ?」

「全く似通った点が無いのです。国名、文化、言語、地理…あらゆる面で。そして、私の使う術とも、この世界に存在する術とも違う術の力を彼女は有している」

「つまり、何が言いたい?」

 

 それに対して与一が口を開く。

 

「力が欲しい、そういう事でしょう。目的は分からないけど」

「いえ、厳密には知識や技術を集めるという目的です。もしかすると、世界を自由に行き来する力もあるかもしれない…」

「なるほど。で、こちらにはあなたの様に術の類を使える人間はいませんが…どうするおつもりで?」

「衣食住は提供しましょう。その先はまあ後々考えるとして…で、そろそろそちらの女性達を解放してもいいのでは」

「…あっ!」

 

 その一言で三人はやっと武器を引っ込めた。二人の女性は力が抜けたようにへなへなと座り込む。そして、慌ててオルミーヌが介抱し始めるとそれを見た信長は晴明に問う。

 

「で、こいつらは何者だ?」

「ウィッチ、この世界で魔法という術を使える者です。そして、彼女達は軍人」

「軍人?これが?全く大した事がなかったが」

「それは当然でしょう。彼女達が戦う相手は人ではない、怪異やネウロイと呼ばれる化け物です」

「化け物?もしや、あの空に浮いていた真っ黒なやつか?」

 

 晴明は頷く。

 

「おそらくそうでしょう。ここガリアはつい先日までその化け物に土地を全て占領されていましたから」

「人が逃げたって話はそれか」

「ええ」

 

 そんな会話を続けていると、座り込んだグレイスが晴明に問う。

 

「リベリオン陸軍少佐グレイス・スチュワードです。その、あなた達は何者ですか…?」

「我々は十月機関の者です」

「じゅ…十月機関!?」

「少佐、彼らについてはこちらで対処致します。ただ、ここで見たものは他言無用でお願いします。いいですね?」

「わ、分かりました…」

 

 

 

 そうして、二人のウィッチは解放された。そのまま城から集落跡へととぼとぼ歩く。

 

「ひどい目にあった…」

「ごめんなさいね、私があんな事言い出さなければ…」

「隊長のせいじゃないですよ。それに二人とも無事だったから…ん?」

 

 すると、猫の鳴き声が響く。エリーはとっさに顔を上げた。視線の先には廃屋があり、そこにはエリーがかつて飼っていた猫の姿があった。ただ、そこにいたのは一匹だけではない。

 

「もしかして、あの猫がさっき言っていた子?」

「はい、そうです…色々あったけど、これで安心しました」

「どうする、連れていく?」

「いいえ、やめておきます。あの子にはここが一番でしょうから」

 

 彼女の猫には既に家族がいた。よって、その生活を壊してしまうのはよくないと考え、エリーは猫に別れを告げると静かにその場を立ち去るのであった。

 

 

 

 二人は車に乗って、地上部隊が展開する近くの町へと移動。そこで一先ず休憩をとる事にした。車から降りて手近な椅子に座る。すると、エリーはグレイスに質問を飛ばす。

 

「あの十月機関って何なんです?」

「大昔から魔法なんかを研究している組織よ。それで怪異とかネウロイとの戦いでも各国にかなり貢献しているの。だから私程度じゃ頭も上がらないわ」

「あー、だから素直に言う事聞いたんですね」

「そうよー、世の中面倒な事だらけなの。しかし、あの侍達って結局何だったのかしら…」

 

 すると、傍から声が飛んでくる。

 

「面白そうな話をしているじゃない、詳しく聞かせなさい。スチュワード少佐」

 

 グレイスとエリーがその声がした方へと振り向く。そこには一人のド派手な格好をした人物が立っていた。

 

「…えーと、どちら様でしょう?」

「あら、失礼しちゃう。スポンサーの顔も知らないだなんて…あたし、他の出資者より地味だったかしら」

 

 すると、エリーが仰天したように口を開く。

 

「サ…サンジェルミ伯!?隊長、サンジェルミ伯ですよ!ガリアの大貴族でたくさんの領地を持っている凄い大金持ちです!!」

「ガリア出身だけあってそっちはあたしの事知っているのね」

「えっ!?」

 

 エリーからその名前を聞いたグレイスの顔が青ざめて勢いよく頭を下げる。確かに聞き覚えのある名前だったからだ。

 

「失礼しました、サンジェルミ伯!お顔を拝見したのはこれが初めてでして、部隊がこうして各地で活動出来ているのも数多くのお力添えがあったおかげと…」

「まあいいわ。こっちもルミナスウィッチーズのレコードなんかの売り上げでがっぽがっぽよ。これからもよろしく頼むわ」

 

 そして、グレイスが恐る恐るサンジェルミ伯に質問する。

 

「しかし、サンジェルミ伯は何故こちらに…?まだ一般人は国外に疎開中のはずでは…」

「ネウロイがいなくなったから自分の領地を見に来ただけよ。悪い?」

「いいえ、何の問題もありません!」

「で、少佐。十月機関がどうしたって?」

「あー、それがその機密でして…」

「あら、面白い事言うわね。あたしに機密なんて無意味よ、無意味。あなた、あたしの立場知っているでしょ?」

「…あはは、そうですよね」

 

 冷や汗を流しながらグレイスは先程あった事を語る。そして、それを聞いたサンジェルミ伯はニヤリと笑う。

 

「ふーん、十月機関…面白い事をしているじゃない」

「ええと…サンジェルミ伯、どうする御積もりで?」

「決まっているじゃない、調べて見に行くわ。だってサムライよ、サムライ。面白そうじゃない」

「はあ」

「それに、気に入らないの。裏で連中がこそこそ動いているというのが」

 

 そうしてグレイスが猛烈なプレッシャーに押しつぶされていると、エリーが驚いたように声を上げる。突然、真っ黒な色をした大きな鳥が車の上に降りて来たのだ。

 

「大きい鳥…うわ、なんか怖い顔してる」

「え、何?鳥って…どこ?」

 

 グレイスにはその鳥の姿が見えていないらしい。エリーがポカンとした様子でその鳥を見ていると、サンジェルミ伯が口を開く。

 

「あら、あの鳥は誰の使い魔?」

「使い魔…?あ、そういう事か…いえ、私達のではないです」

「ふーん、じゃあ精霊ね。で、あの鳥はあなたに用事があるみたいだけど」

「へ?」

 

 その鳥はエリーへと視線を向けたままである。

 

「というか…サンジェルミ伯は使い魔や精霊の姿が見えるんですか?」

「そりゃあ、あたしぐらいになるとその程度は朝飯前よ。あなたの肩の上にいる猫も丸見え」

「はあ…」

 

 ウィッチ以外に使い魔や精霊の姿を見る事はまずできない。だけど、この人なら何が出来ても不思議じゃないか…そう考えつつ、エリーはその鳥へと近づいていく。この鳥がルミナスウィッチーズのあるメンバーに大きな影響を与える存在であるとは知らずに。

 




ルミナスウィッチーズが無事終了したのでおまけを投稿。
鹿児島弁はよく分からない…

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