またとある一角
「ほら!ほらァ!早く来ねェと、
この地に現れた邪竜は、魔法使い、観光客等関係なく蹂躙をしている。
勿論この事態に対してこの地者達、魔法使い、魔術師、陰陽師達は己が立場に関係なくこの男を止めようと動いている。
「誰かあの男を止めろ!」
「なんなんだ!あいつは!」
巨大な手甲爪を両手に着け、弱者を蹂躙するその姿は邪竜のようでこの男の教示そのものだった。
彼は英雄を望んでいた。
「テメェらみたいな雑魚共に俺を止められるわけないだろォ!
彼の求める英雄は彼にこの道をいだかせる原因は軍事帝国アドラーの護国の英雄であるクリストファー・ヴァルゼライドその人である。彼は
「どうしたァ!どうしたァ!
それでもなお、彼に立ち向かうものはいなかった。今まで相対していた者達は彼の強大さに怖じ気づき、地べたに座り込んで震えているのだ。
そんな抵抗を見せない者とか関係なく
「嫌だ。」
「嫌だ、死にたくない!」
「誰か…。」
「「「助けて!」」」
刈り取られていく命達は最後に懇願するように叫んだ。
助けを求めたから助けが来るというのはあくまでもご都合主義と言うものだ。しかし、存在そのものがそれを体現する者もいる。それが、
「待たせたな!」
光の英雄と呼ばれるもの達である。
刀に似た剣を両手に持ち、身体から黄金の炎を発しながら飛ぶように来て、邪竜の前に立ちはだかる様に立つこの男は、黄金の炎が纏い翼のように揺らめいているその姿は【
「カハァ!良いぜ、良いぜ、なぁ!悪しき
その男、
かの邪竜の前に立ちはだかるリヒトはこの状況を打破する方法を考えていた。
『あやつの目には光の英雄しか映ってない。そこはわかるか?』
「ああ。」
『ならば、お前がやることは一つ。』
「ああ!」
リヒトは邪竜に向けて突っ込んでいった。
邪竜の興味は対面のリヒトのみ。故に、彼は正面から立ち向かっていったのだ。
「うぉぉぉーーーっ!」
リヒトは光輝く炎を纏いその推進力を活かして、邪竜に向かって飛翔するが如く突っ込んでいく。
「カカッ!カカカカカ!ああ、来いよォ!」
邪竜はその光を見て幸喜の笑みを浮かべた。
自らの望みし者がやってくる。
己を倒すために、
さぁ!
さぁ!
光の英雄よ!
悪しき邪竜を討ち果たして見せろォ!
そして、二人はぶつかった。
「
「貴様の背中に魔剣を突き立ててやるゥ!」
彼らの言葉が重なる。
「「故に滅びろ!勝つのは
リヒトは
「創生せよ、天に描いた星辰を――我らは煌めく流れ星 」
「愚かなり、無知蒙昧たる玉座の主よ。絶海の牢獄と、無限に続く迷宮で、我が心より希望と明日を略奪できると何故なにゆえ貴様は信じたのだ」
「この
「融け墜ちていく飛翔さえ、恐れることは何もない」
「罪業を滅却すべく闇を斬り裂き、飛べ
「勝利の光に焦がされながら、遍く不浄へ裁きを下さん」
「我が墜落の暁に創世の火は訪れる」
「ゆえに邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶えろ」
リヒト同時に
「天昇せよ、我が守護星―――鋼の
「美しい――見渡す限りの財宝よ。」
「父を殺して奪った財宝、真紅に濡れる金貨の山は、どうして此れほど艶めきながら、心を捉えてはなさぬのか。」
「煌びやかな輝き以外、もはや瞳に映りもしない。誰にも渡さぬ、己のものだ。」
「毒の息吹を吹き付けて、狂える竜は悦に浸る。その幸福ごと乾きを穿ち、鱗を切り裂く鋼の剣。」
「巣穴に轟く断末魔。邪悪な魔性は露と散り、英雄譚が幕開けた。」
「恐れを知らぬ不死身の勇者よ。」
「認めよう、貴様は人の至宝であり、我が黄金に他ならぬと。」
「壮麗な以降を前に溢れんばかりの欲望が、満ちた屍肉を蘇らせる。」
「故に必ず喰らうのみ。誰にも渡さぬ。己のものだ。」
「滅びと終わりを告げるべく、その背に魔剣を突き立てよう。」
二人の詠唱が終わりに近づいた。
そして、
「「
二人の声が再び重なった。
「
「
片や意思の強さだけで超克する赫怒の炎。
片や形在るものへ訴えかけ、己が意のままに作り変える 物質再整形能力。
その二つがぶつかったのだ。
リヒトは先ず推進力を活かしてファブニルの心臓を穿ちに行った。
しかし、そんなことファブニルは予想しない筈は無かった。
「カカッ!んなこと予想通りすぎだろォ!」
ドゴーン、ガガガガ
ファブニルは地面を変形させてまるで竜を連想させる巨大な何かを作り出し防いだ。
そして、その何かは口を開き、牙の様なものを連続掃射した。
「その程度!」
リヒトは炎を更に燃え上がらせ牙を防いだ。
彼らの本質は光の亡者。
どちらか上回ろうとそれを凌駕し、覚醒し、進化していく。
それが何度も何度も繰り返し、
更に、
更に、
力を高めてゆく。
リヒトはどんどん炎を高め、
ファブニルは形成する物質の強度、それがもたらす被害を拡大していく、
「「うぉぉぉーーーっ!」」
二人がぶつかり合ったそこは、爆心地のようになっていた。
彼らが戦い始めた時、周りの者達が民間人の避難を優先していなければ、この地に死体が増えていただろう。
『このままでは埒が明かん。どうする片翼よ!』
彼の片翼が話しかけてくる。
「ああ、それは!(奴は必ず滅ぼす、勝つのは俺だ!)」
思考の中の一人称が変わり、煌翼の影響を更に受け始めた。
「俺は英雄になるんだ!俺を救ってくれた英雄のように!」
リヒトは再び覚醒した。
しかし、ファブニルはそれを見て口角を上げた。
『ああ、我が片翼よ!お前のその意思、俺は尊敬しよう!』
「おい、どうした?」
『俺はお前が
『ならば、俺も成長するべきだ。ああ、リヒトよ。今までありがとう。お前のことを心から尊敬する。』
「ヘリオス?」
『俺は英雄の後継者ではない。英雄の後継者はリヒトだ。ならば、俺はお前を助けよう。英雄が取り零す者も、孤独となる英雄も俺は
「天昇せよ、我が守護星―――鋼の
「荘厳な
「勝利の光で天地を焦がせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる。」
「絶滅せよ、破壊の巨神。嚇怒の雷火に焼き尽くされろ。人より生まれた血脈が、英雄の武功と共に、汝の覇道を討ち砕く。」
「天霆の轟く地平に、闇はなく。」
「蒼穹を舞え、天駆翔。我が降誕の暁に創世の火を運ぶのだ。」
「『ゆえに邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶えろ。』」
「是非もなし――さらば蝋翼、我が半身。焔の
「天空を統べるが如く、銀河に羽ばたけ不滅の
「――
「
焔の系譜が顕現した。
ここに新たな
極大な光の柱が空へ突き抜けた。
「カカッ!カカカカカ!」
ファブニルはその光に飛び込んだ。
「ヘリオスなのか?」
リヒトの前にいる男は悠然と立っていた。
「
彼はリヒトにそう言い、
「さぁ!俺に着いてきたいものはこの光に飛び込め、己の星を手に入れてみせろぉ!」
そうして幾人が光の中に飛び込んだ。
それを見ていた男達がいた。
その内の二人が光を眺めて何かを決心したように頷いた。
「おい、薫、慶一。お前ら、何を!」
二人は親友の方を向いて、
「「すまん。達也、ポチ、小太郎」」
二人は光に向かって飛び込んだ。
「あ"あ"あ"あ"あ"!」
そして、光は消失しその場にヘリオス達は消え去った。
だが、それでも空には