げどう☆ぼまーとしりある☆きらー   作:黄金馬鹿

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幕間のお話


其の七

 オルレアン。カルデアの発見した特異点の一つであり、俺達が向かわなくてはならない場所。そこは聖杯戦争が開催されていない、中世。

 それが何を指すかというと、冬木のように、英霊が七人しかいないとは限らない、という事だ。もし、英霊が何人も敵に回ればどうなるか。決まっている。マスターの魔力という枷のあるサーヴァントが負けるに決まっている。

 維持はカルデアの電力により行われるが、宝具等の魔力は俺達マスターから持って行かれる。だから、前回の戦い。俺はかなりギリギリを行っていた。

 ジャックの宝具が四回。クー・フーリンの宝具が一回。令呪でアシストしたにも関わらず、これだけで俺の魔力はカツカツになった。だが、次の相手がこんなカツカツで勝てるとは限らない。

 故に、俺は新たなサーヴァントを呼び出すことにした。ジャックという遊撃、沖田という前衛、信長という後衛、マシュちゃんという壁。なら、足りないものは何か。

 そう、回復だ。俺達の回復とジャックの外科手術だけでは流石にキツイものが出てくる。故に、回復が出来るサーヴァントが、キャスターが必要となる。

 

「でもねぇ、この英霊召喚システム、フェイトではそこまで狙った召喚は出来ない。それは分かってるね?」

「俺、ガチャは一万円突っ込んだら目的のキャラ出せる人間だから平気平気」

「英霊の召喚と課金を一緒にしないでくれるかなぁ……!!」

 

 まぁ、ここの召喚システムじゃあ、そう簡単に目的のサーヴァントを引けないってのはかなり辛いけどな。

 これでジャックみたいな反英霊じゃなくてマジモンの反英霊が出てみろ。内部分裂の可能性すらあるんだぞ。まぁ、狙うのはキャスター。それも、回復特化の。んでもってマトモな英霊。

 

「さて、んじゃまぁ、召喚しますかね!」

 

 懐から聖晶石を取り出し砕く。その魔力を得て魔法陣は英霊を召喚する。

 六つの光の球体が現れ、回転する。その色は白。高速で回転していき、やがて一つのリングとなる。その瞬間、俺の魔力が一気に魔法陣へと持って行かれる。

 やべぇ、この英霊、中々の大物だ。魔力の持っていかれ方からそれがハッキリと分かる。思わず膝をついてしまうが、まだ気絶する領域じゃない。心配して肩を貸そうとするロマンを片手で制して回転するリングを見つめる。

 リングは三つに分かれ魔法陣の外側を回転し、そして収束。光の柱となる。

 そして、光の中。召喚されたサーヴァントが光の中を歩き、俺の前へ姿を表す。

 

「サーヴァント、キャスター。メディアです。あの、よろしくお願いします。マスターさん」

 

 よっしゃ、キャスター!!って、メディア?メディア……メディア……コルキスの魔女かよ!!?

 

「え?あ、あの、何で距離を取るんですかぁ!?」

「い、いや、反英霊だと分かったからつい、な」

「あっ……そ、そうですよね……大人の私って色々やらかしてますし……」

 

 ……ん?大人の私?それってどういう事だ?

 サーヴァントってのは、確か全盛期の姿で召喚されるはずだが……って、メディアもよく見てみたら、史実だと成人はしていた筈なのに子供の姿にしか見えない……

 おい何でだよダヴィンチちゃん。

 

「はいはい。これは恐らく予想なんだけど、彼女、メディアはイアソンに誑かされる前、つまり裏切りの魔女としてその名を轟かせる前の、純粋で素直な魔術師の姿で召喚されたんだ。だから、本来召喚される姿じゃなくて、子供の時の姿で召喚された。違うかい?」

「あ、はい。その通りです。でも、私には大人の頃の記憶もあるので……」

 

 英霊ってのは中々難儀なもんだな……だがまぁ、そういう理由なら俺は特に拒まない。裏切りの魔女となる前のメディア……そうだな、仮称するならメディア・リリィか……彼女なら問題はない。

 俺が危惧していた事は、反英霊を召喚した事でカルデアが滅茶苦茶となり、六香ちゃんとマシュちゃんの調子に影響が出ること。そして俺への問題が生じること。

 ジャックに関しては、あの時限りだと俺自身が自分の事しか考えてなかったから受け入れた。まぁ、今となっては貴重な戦力だが。

 

「まぁ、まだ裏切りの魔女ではない貴方なら俺は歓迎しよう。世界を救うため、オルガマリーの嬢ちゃんを裸に剥いて全世界の恥にするために協力してくれるか?」

「さ、最後のはちょっとお断りしますけど、前者の方は勿論です。攻撃的な魔術はそこまで得意じゃありませんが……一緒に頑張りましょう!」

 

 チッ、神代の魔術師が味方になってくれたらオルガマリーの嬢ちゃんを涙目にして自尊心バキバキにしてあの高圧的な態度を真正面から組み伏せて生き返ったのが間違いだと思うほどの恥を全世界に晒してやれたのに……

 まぁ、それでもメディアが仲間というのはかなり有り難い事だ。魔術師としては三流もいい所の俺と一般人だった六香ちゃんじゃあ、もしもキャスターを相手にした時、分からん殺しでやられちまう可能性もあった訳だし。メディアが攻撃魔術を使えないってのならそれもまた良し。メディアには完全に後方での回復に努めてもらえる。

 

「さて。それじゃあ、仲間のサーヴァントとの顔合わせの後にちょっと訓練に出よう。俺と六香ちゃん……もう一人のマスターとの連携とか、色々と考えなきゃならんしな」

「はい、わかりました」

 

 まぁ、目的の回復特化キャスターが来てくれたわけだし、六香ちゃんの沖田と信長を主体とした戦い方と連携、考えなくちゃな。

 

 

****

 

 

 サーヴァントの霊基っていうのは再臨させる事で更なる力を得られる。と、言うのも科学と魔術を融合させたせいか、その副作用とも言わんばかりにカルデアに召喚されたサーヴァントっていうのは多少なりとも弱体化している。

 この中でサーヴァントとして完全な力を保有しているのは信長とジャックのみ。沖田は宝具が一つ封印されている状態で、メディアも魔力に少し枷がかかっており、現段階だと攻撃魔術が一切使えないという不具合が発生している。

 それを解決するのが霊基再臨だ。これをやれば、沖田の封印された宝具も開放され、メディアも大人のメディアのような攻撃魔術が少しなら使えるらしい。

 で、それを行うために何が必要かと言うと……

 

「ほーら、沖田さ〜ん。種火ですよ〜」

「ちょっ、マスター……もう食べれません……無理ですって……」

「メディアァ!!鳳凰の羽根とゴーストランタン食いやがれぇ!!」

「羽根なら分かりますけどなんで無機物を食べさせようとするんですかぁ!!」

 

 こうやってサーヴァントに直接食わせるのが効率がいいってわけだ。

 いや、まぁ食わせるんじゃなくて体内に取り込ませるってのが一番正しいんだが、サーヴァントに合った種火……まぁ、素材を取り込みやすくするための銅、銀、金各種の種を体内に取り込ませてから素材……まぁ、骨だったり塵だったりランタンだったりを体内に取り込ませる。

 そして食わせてから待つこと数時間でサーヴァントの霊基は再臨される。

 だから、元からサーヴァントとしては全力の信長とジャックには縁のない話なのだが、沖田さんとメディアは現在進行形で地獄を見ている。

 

「もう、沖田さんは人一倍食べないと素材が取り込めないんだからいっぱい食べないと」

「いや、その、ホントお腹がヤバくて……よくもこんな設定考えたな作者ァ……」

「作者って誰?」

「え?なんかそんな電波が……あ、なんか経験値とかコハエースとか変な単語が頭を……」

「あ、この後沖田さんには歯車と羽根と牙を計四十九個食べてもらうから」

「やべぇ逃げなきゃ」

「令呪を持って命ずる。完食するまで立ってはいけません」

「マスター貴様ァ!!」

「口開けろメディアァ!!」

「無理無理無理!!ランタンは無理ですってば死んじゃいますってばそれ以前に飲み込めませんってば!!」

「ならばこのまるごしシンジくん型粉砕機で細かく砕いて粉末してやろう」

「頭から入れて口から出たものを飲ませようとしないでくださいよぉ!!って、そのワカメなんだか既視感あるんですけどぉ!!」

「ならば令呪を持って命ずる!!手段は問わんから飲めメディア!!」

「マスター貴方って人はァ!!」

 

 いやぁ、カオスカオス。まぁ、この後はまるごしシンジくん型粉砕機で粉砕した素材をオブラートで包んだ二人が死んだ魚のような目で飲んでた訳だが。

 吐きそうな二人の背中をマシュちゃんとジャックが擦り、俺は信長と隣同士で座って昼間っから酒を飲んでいた。

 

「よい催し物だったぞ、エインズワーズ」

「俺の事は刹那でいいぞ、信長」

「そうかそうか。ワシも今やサーヴァントじゃ。こうして対等に語り合うのが一番故にな、そう言われるとワシとしてもやりやすい」

 

 信長の杯に酒を注ぎ、信長も俺のジョッキにビールを注ぐ。まぁ、チョイスする酒の種類に関しては出身が出るな。

 俺は日本生まれだけど海外にいる事の方が多かったし、信長は生粋の日本育ち。南蛮好きだが、まぁ根っこは日本人だ。

 何でか今はダサTとホットパンツといった堕落した現代の女って感じの格好してるが、気にしない。沖田も似たようなもんだし、ジャックは何処ぞのお姫様かってほどのフリフリのドレス着てるし。メディアは特に服装に変化はないが。

 

「ここの施設を使ってワシの事を調べてみたのじゃが、やはり男として伝わってるようじゃな」

「まぁ、昔の日本ってのは男が城主だったり大名だったりってのが当たり前だったからな。仕方ないだろ」

「いや、これはワシがわざとやった事じゃ。ワシの性別を知る者はワシと親しかった者だけじゃ」

 

 となると、秀吉、家康の三英傑だったり、柴田勝家、前田利家、明智光秀、森蘭丸といった面々か。

 

「……ってか、お前さんの子孫。あれ、お前が産んだ子から続いていったのか?」

「んな訳無かろう。ワシにはお濃がおった。子供は全員養子じゃ」

 

 あー、そういう事か。なら、信長の子孫は本来存在せず、織田本家の血筋ってのは信長で完全に途切れちまってると。

 やっぱ昔の有名人の性別が違うって分かると歴史の教科書だったり何やらが根底から崩れてきて面白い面白い。そういうのが分かるだけでもサーヴァントってのは召喚してみたい気分になる。

 そういった歴史をその口から語れる人間と語らうってのはそれだけで楽しいもんだしな。だから、俺も信長やメディアといった庶民系じゃなく人の上に立った経験のある人間には敬意ってのを払いたくなる。俺なんかよりも経験豊富で語り上手だからな。

 

「しっかし、現代の酒も美味くなったものじゃ」

「技術の発展もあるしなぁ。そろそろ月見の時期でもあるし、そんときゃどうだ?」

「ふむ、良かろう。ワシも久々の月見を楽しむとするかの」

 

 まぁ、んでもって話が分かること分かること。こういった度量の広さってのも人を従え導いた人間特有なのかもしれないな。

 こんな人達を道具としてしか見ず、見下している現代の魔術師が如何に愚かか。こうやって英霊本人と語ってれば嫌にでも分かる。

 

「で、さ。信長さんよ。アンタ、望みとかはあるのか?」

「望み、か。そんな物、生きている内に殆どやりきった。ここにあるのは娯楽を求め、死後に機会があるのならドデカイ事を、と適当な事を望んだうつけ者よ。その結果が世界を救う、などと言う大層ご立派な物に巻き込まれた。まぁ、それでこそ救国の英雄として座に登録されたワシの仕事なのだろうがな」

 

 ふぅん……英霊にも色々とあるわけね。

 

「で、刹那よ。お主は何の為に戦っておる」

「あ?何の為か?」

 

 そりゃあ、まぁ……

 

「金だよ、金。人間は現金なもんだろ?」

「確かに、それはそうだ。だが、お主……外道であれど本物の畜生ではあるまい。本物の畜生では、な。」

 

 …………外道であっても、ねぇ。

 

「そういえば、お主。金のためとは言っておったが、己を雇う金は少なめにしていたようだな」

「それがどうした?そんなの、新規が入りやすいように……」

「名が売れた今、少し雇い金を高くしようが常連や金持ちはお主を雇う。金が欲しいだけならそれだけでいい筈じゃ」

 

 それは……

 

「それに、魔術師殺しと呼ばれた所以……もしや、それは弱き者を守るため、魔術師と戦い続けたが故に……」

 

 その言葉を遮るように、俺はジョッキをテーブルに叩きつけた。信長はそれを見てそうか。と一言だけ言って杯を口に付けた。

 ったく、これだから英霊ってのは……自分でも自覚してない事をすぐに理解しやがる。

 

「勘違いしないでくれ。俺は金のために戦っている。最初の客が魔術師を相手してくれと言ってきたから俺は魔術師殺しとして名を売る事にした。その後はあれよあれよと話は進んで低賃金で依頼を受ける便利屋って言われるようになった。だから金額は変えなかった」

「……ふむ。お主、中々の道化よの。そこまで己を隠す事に何の意味がある」

「……俺は正義ってのが嫌いだ」

「ふむ……中二病か」

「ち、ちがわい!!」

「なら反抗期じゃ」

「もう過ぎとるわ!!」

「ハハハ、よい。お主がそこまで意地を張るのならこちらもその意地を貫かせてやろう」

 

 ったく……これだから英霊は。

 

「どれ、お主とワシ。二人揃って極悪人じゃ。極悪人は極悪人同士で酒でも飲むとしようではないか」

「ケッ……お好きにどうぞ」

「フハハハ。是非もなし」

 

 杯とジョッキ。多きさの違う二つをぶつけて音を鳴らす。まぁ、こうやってご老体と会話しても伝えられない事をズバズバと伝えられる事も、貴重な経験だ。さっきまでの怒りは全部ビールと一緒に流し込んでしまおうか。

 今度は日本酒でも飲んでみるかな。




ここの霊基再臨はこんな感じ。いつもサーヴァント達が酷い目に合うよ!!

そんでもって新しい仲間はメディアリリィ。やったね!回復要員が出来たよ!!

あと、ジャックちゃんはカルデアだと普通の服着たりコスプレさせられたり可愛らしい服着せられてるよ!!

あと、ノッブが凄いイケメンなんだけど!!

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