げどう☆ぼまーとしりある☆きらー   作:黄金馬鹿

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質よりも量。戦場の掟であって常套手段。数が無ければ戦には勝てない。

ドラゴ◯ボールじゃないんだから、基本は質よりも量ですよ!質よりも量!!


其の五

 暫く歩いて辿り着いた。大聖杯の目前に。既に最初に潜入していたジャックはあそこ。と指をさした。そこには黒い鎧を身に着け、黒い剣を持った女がいた。具体的には沖田に似た女がいた。

 アーサー・ペンドラゴン。また女か、とは思ったが、彼女が発する雰囲気というのは正しく王。信長が発するのとは別の、王としてのカリスマを感じる。そして、その黒い剣からは、魔術師としては三流の俺ですら分かるほどの神秘を感じるし、とてつもない魔力も感じる。

 別格。ここまでで戦ったどのサーヴァントよりも格上。次元が違うとも言えるほどの雰囲気を感じる。これが、アーサー・ペンドラゴン。黒に染まり悪へ墜ちた王。俺達が生き残る上で戦わなくてはならない相手。

  クー・フーリンから聞いた情報では、あの華奢な見た目からは考えられない剛力の持ち主。筋肉ではなく魔力放出でカッ飛ぶ化け物。ここの誰でもあれとの力比べには勝てない。だが、そうだとしても、戦わなくてはならない。人類のために。

 倒したその時がこの特異点の修復に繋がり、クー・フーリンが消える時になる。

 

「―――ほう。面白いサーヴァントがいるな」

 

 喋った。凛としたその声は可愛らしさはなく、王としての声。

 膝を無意識のうちについてしまいそうだったが、ジャックが服の袖を引っ張って正気に戻してくれた。だが、アーサー王の視線を受けたマシュちゃんの体が震えていた。六香ちゃんがマシュちゃんの肩を抱いて何とかしようとしているが、それでもマシュちゃん の震えは収まらない。

 

「―――てめぇ、喋れたのか」

「何をしても見られている故にな。案山子を決め込んでいただけだ」

「そうかいそうかい」

「今回は面白い宝具を見たのでな―――構えろ、娘。その守りが真実かどうか、私が試してやろう」

 

 なんかいきなりアーサー王が試すとか言ったらアーサー王の剣に黒い極光が集まってきた。ちょっ、いきなり宝具かよぉ!!

 しかも、あれは、不味い。ここにいる誰もが防げない。防げるとしたら、守りに特化したサーヴァント、シールダーのクラスに入るマシュちゃんの宝具が解放出来たら、になるだろう。だが、そんな博打、俺は好きじゃないんでな。

 

「させるかっての!!」

 

 発火装置、リモコンを取り出してその場で着火。リモコンから乾いた音が鳴ったと共にアーサー王が爆発する。念には念をと、あのアーチャーのシャドウサーヴァントの時に使った量の倍の紙粘土を使ったんだ。

 これで死んでなきゃヤバいんだがなぁ……

 

「|卑王鉄槌≪ヴォーディガーン≫!!」

 

 ―――だが、俺の切り札は吹き荒れる暴風によって無効化された。

 うっそだろおい。アーチャーを木っ端微塵に吹き飛ばした量の倍の紙粘土だぞ……それをいとも簡単にどうにかするかよ……

 

「マシュちゃん!宝具で防げ!!」

「そ、そんな……私、まだ宝具が使えないんですよ!」

「言ってる場合か!さもなくばここで全員死ぬか!?」

 

 厳しい言い方だが、それでも俺たちの力じゃ、もうあれは防げない。

 星の生み出した聖剣。その暴力的な神秘の魔力から放たれる単純にして凶悪な魔力の濁流は俺たちの誰 にも防げないし相殺できない。

 出来るのは、盾の英霊をその身に宿した彼女、マシュちゃんしかいない。それが皆分かっているからか、沖田と信長がマシュちゃんの手を引っ張って彼女を最前線に押し出す。

 

「宝具なんて適当に叫んで使うもんじゃ!ほら、気張って声をだすんじゃ!!」

「自分の中のこれだ!っていう名前を叫んで魔力を武器から解放するだけでいいんですよ!私なんて本来は宝具じゃない技を宝具として使ってますし!!」

「これだっていう名前……」

 

 そ、そんな適当でいいのかよ……まぁ、でも英霊には英霊しか分からない事があるのだろう。ここは英霊の沖田と信長に任せるとしよう。

 

「そうじゃ!何をしたいか、どんな宝具か、全てを理解し武器から放つ!」

「あなたはその盾で何がしたいんですか!」

「この盾で……私は……!」

 

 マシュちゃんの目付きが変わった。これは、いける。

 

「正規の英霊じゃないからとか気にするでない!そんなもん、騙してなんとかせい!」

「偽装登録ですよ偽装登録!誰も怒りませんって!」

「真名……偽装登録……!」

 

 マシュちゃんから俺でも分かるほどの魔力が漏れ出していく。それを見て沖田と信長がマシュちゃんの後ろに隠れる。おい、そこは隣にいてやれよ。俺たちも後ろで守られにいくけどさ。

 

「宝具、展開します―――|仮想宝具 疑似展開/人理の礎≪ロード・カルデアス≫!!」

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め―――|約束された勝利の剣≪エクスカリバー・モルガン≫!!」

 

 マシュの盾 から光の魔法陣のようなものが展開され、俺たちを守るように巨大となってアーサー王から俺たちを隔てる壁となる。

 そして、アーサー王のエクスカリバーから放たれた黒き極光の濁流はマシュちゃんの展開した光の壁に激突する。もの凄い衝撃が俺たちに伝わり、マシュちゃんは歯を食いしばって耐えている。俺たちはその小さな背中を見守る事しか出来ない。

 そして、何秒か……マシュちゃんからしたら何分、何時間にも感じた時間が終わる。つまり、マシュちゃんは聖剣の力を防ぎ切った。それは即ち、こちらの反撃の番になる。

 

「セイバーに令呪を持って命ずる!全力でアーサー王を打倒せよ!」

「承知!!」

「続いて令呪を持って命ずる!アーチャー、その力の全てでアーサー王を粉砕せよ!」

「是非もなし!!」

 

 最初から念話で打ち合わせしていたのか、六香ちゃんが令呪を使って、今回限りの強化を二人に施す。カルデアの術式で現れた令呪は一日で一画、補充される。故に、最終決戦ならこうやって大盤振る舞いしても後々補充されるのだ。

 んじゃあ、まぁ……俺も使っちゃいますかね!

 

「令呪を持ってキャスターに命ずる!無駄になった紙粘土の恨みをその力で果たしてやれ!!」

「おうよ!クランの猛犬の異名は伊達じゃないって事、見せてやるぜ!」

 

 ジャックは……うん、すまない。まだなんだ。だからもう少し、もう少しだけ待っててくれ。な?お前の出番は後であるからさ。だからそんな涙目にならないでくれよ、頼むから。

 まぁ、これで反撃開始だ。まずは前衛である沖田が動いた。

 スキル、縮地。ランクはBだが、それは完全に人間の行えるそれを超える。人間を行う縮地が瞬間移動のような高速移動なら、サーヴァントである沖田の縮地は何か。

 ワープだ。

 

「―――遅い」

「ッ!?」

 

 沖田の姿が俺たちの前から一瞬にてアーサー王の後ろにワープする。そして放たれた平晴眼の構えからの突きをアーサー王は超人的な反射神経で避ける。あの反射神経……尋常じゃないな。となると、沖田並みの敏捷を持っているか、それとも心眼スキルか直感を持っているか……もしくはその両方だろう。

 なら、長期戦は沖田の不利だ。沖田の戦い方を学ばれたら沖田に勝ち目はない。

 だが、忘れるな。これはタイマンじゃない。俺たちによる多対一のリンチだ。

 

「退けい、人斬りぃ!!」

「アンサズ!!」

 

 後ろからの火縄銃と炎による援護。アーサー王は再び消えた沖田を見てからすぐに弾丸と炎を見る。そして、弾丸を弾いて炎を鎧で受けた。

 しかし、当たった炎は掻き消えるかのように小さくなり、鎧を少し炙るに終わった。あれは……対魔力か。それも、かなり高い。これじゃあ、魔術の類は通用しないと考えたほうがいいな。クー・フーリンもやっぱりな、と声を漏らしているし。

 あれ、これ、オルガマリーの嬢ちゃんってただのお荷物じゃね?

 

「流石に三人は厄介だな……」

「無明三段突きィ!!」

「また不意打ちか!」

 

 再び現れた沖田の不意打ち気味の、彼女の代名詞、三段突きが放たれ、全く同時に放たれた三つの、額、首、心臓を狙った突きは上半身をずらし、首を守って頭を動かされた事によって避けられ、防がれた。

 しかし、心臓を狙った一撃は当たったようで、心臓からではないが、アーサー王の体からは血が流れていた。

 

「貰った!!|大神刻印≪オホド・デウグ・オーディン≫!!」

 

 そして、アーサー王の血を見た瞬間、クー・フーリンが計十八ある原初のルーンを全て開放する。その瞬間、オーディンの力がこの世界に現界し、アーサー王を中心にこの場を蹂躙する程の突風と竜巻が、質量をもった風が吹き荒れる。

 

「ぐぅぅ!卑王鉄槌!!」

 

 しかし、それすらもアーサー王はその魔力を風として噴出することでそれを防ぎきって見せる。だが、それす らも余興。神の名を語った宝具ですら、まだ本命ではない。

 本命は、織田信長の宝具だ。

 

「三千世界に屍を晒すがよい―――天・魔・轟・臨!!」

 

 信長を赤黒い魔力のオーラが包み込み、その姿を空へと浮かす。そして、信長の声に合わせ、虚空には無数の火縄銃が現れる。

 その数、三千。文字通り三千の火縄銃が信長の声に合わせて展開された。たった一人、アーサー王を殺すがためだけに。アーサー王も流石にヤバいのか、その手の聖剣に魔力を溜めて再びあのビームを放とうとする。

 けどなぁ、それならこっちだってやれる事はあるんだよなぁ!!

 

「令呪を持って命ずる!聖剣を持った手を宝具で切断しろ、ジャック!!」

「うん、切るね」

 

 その瞬間、俺の横にいたジャックが一瞬でアーサー王の横へ転移(・・)する。超限定的な、手を宝具で切断する。この行動のためだけに使われた膨大な魔力を秘めたブースト装置、令呪による恩恵を得たジャックは、即座に第二の宝具である暗黒霧都(ザ・ミスト)を発動し、アーサー王と自分の付近のみを霧で覆う。

 その瞬間、ジャックの宝具、聖母解体の効果が、夜、霧、女の条件を経て、最大となる。

 

「解体聖母!!」

「何っ!!?」

 

 アーサー王が咄嗟に動く。だが、ジャックはそれよりも速い。

 闇夜を纏った高速の五連撃。令呪による後押しを惜しむ事なく使ったその連撃はアーサー王の両腕を切断し、足の筋すらも斬り刻んだ。

 ナイスだジャック!誰もが手を握ってそう叫ぼうとした瞬間、その隙を逃すまいと信長が宝具を開帳する。

 

「良くやった幼子よ!ならばしかと見るがよい。第六天魔王信長が宝具!武田が騎馬隊を破りし天下の軍略!!これが魔王の、三千世界(さんだんうち)じゃぁ!!」

 

 その瞬間、三千の火縄銃が一斉に火を吹く。

 三千の火縄銃による飽和攻撃。先程、風を巻き起こす宝具は使い、聖剣はなく、身を捩り少しの風で銃弾をどうにかしようが、まだまだ弾丸は残っている。

 詰み。それは即ち、俺達の勝ち。

 

「ふっ……よくやった」

 

 そんなアーサー王の言葉が聞こえたと思った次の瞬間には、アーサー王の体は三千の火縄銃に貫かれ、そのまま消滅した。

 俺達は正真正銘、あのアーサー王に勝利した。

 しかし、安息は訪れなかった。

 

「いやぁ、見事見事。まさか君達があのアーサー王を倒すとは思ってなかったよ。藤丸六香君?それと……刹那・エインズワーズ」

 

 レフ・ライノールが、先程アーサー王がたっていた場所と入れ替わるように、現れた。




また回復すると分かっているからこその令呪連打。流石のアルトリアもこれには敗北。

だって、沖田の無明三段突きが既に初見殺し臭いのに、そこにノッブの三千世界とジャックの令呪ブーストフルパワー解体聖母とか勝てるわけ無いだろいい加減にしろ!!

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