六香ちゃんが石を砕いて詠唱をする。俺はジャックに斥候をさせてクー・フーリンと並んで召喚の様子を見守っている。
さっきのシャドウサーヴァント戦を経て分かった。『人間ではサーヴァントには勝てない』。封印執行者とかのリアルチートなら分からないが、少なくとも俺じゃ絶対に勝てん。だから、俺は雑魚のつゆ払いは出来てもサーヴァント相手には無力。しかも、六香ちゃんみたいな礼装も無いから魔術も使えない。これじゃタダの魔力タンクだぜハハハ。なんてふざけてる場合じゃなく、本気で俺は六香ちゃんを頼り続けるしかない。
六香ちゃんのサーヴァント、沖田総司。彼女はトンでもなく当たりなサーヴァントだろう。アサシンを超える敏捷に幕末で一際有名になったその剣筋。知名度補正もあって他のステータスも高め。間違いなくこの場ではタイマンなら最強のサーヴァントだ。
だから、六香ちゃんに前を任せ、俺が裏方でサポートする。これしか無いだろう。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!」
光が柱のように立ち上ってサーヴァントが召喚される。クー・フーリンがおっ。と声を漏らして沖田がうげぇっ!?と先程までのおっぱいの付いたイケメンっぷりとは正反対な声を漏らした。
出てきたのは……あー、なんだ。軍人のコスプレした女?マジで誰だあれ。外見の情報だけじゃ真名分かんねーぞおい。
「サーヴァント、アーチャー。第六天魔王、織田信長じゃ!うむ、そなたがワシのマスターとなる事を許そう!」
「織田信長ァ!!?」
「ノッブゥ!!?」
思わず叫んだ俺は悪くない。
いや、織田信長だぞ!?あの天下統一間近まで日本を支配したあの織田信長!史実伝えた奴どうなってんだよおい!沖田総司と織田信長が女とか当時の人間の性別鑑定ガバガバ過ぎだろ!!
ってか、なんか今、後ろから沖田の声が聞こえたような……
「おぉ、おき太。貴様も同じマスターに召喚されとったのか」
「何で寄りにもよってノッブが来るんですか!マスター、返品しましょう。具体的には私の刀で!」
「ハァ!?おき太のようなクソ雑魚病弱サーヴァントの方が返品すべきじゃろうが!!今すぐそのドタマ打ち抜いて返品してやるぞ!!」
「うっさいですね!今回はクールでカッコよくて頼りがいのある美少女サーヴァントとして通そうと思ったのにノッブのせいで全部台無しですよ!」
「ワシだって魔王らしく物凄い存在感と力をアピールしようと思ったのに台無しではないか!!星五サーヴァントだからって調子に乗るでないぞ!!」
「希少価値ゼロの配布サーヴァントに何言われようが痛くありませんねぇ!!」
「貴様ァ!!」
え、えぇ……何で沖田総司と織田信長に面識があるんですかねぇ……って言うか、何なんだよ、星五とか配布って……ソシャゲか何かか。
なんか頭痛くなってきた。けど、あの二人がシリアスな雰囲気をぶっ壊してくれて結構助かった。
いや、だってさぁ……六香ちゃんにマシュちゃん、明らかに気を張り過ぎだし、大人の俺を過信し過ぎてる。そりゃあまぁ、子供は素直に大人に頼ればいいけど、また六香ちゃんとマシュちゃんだけになった時、自分で判断できなきゃ死ぬ。で、二人にはその為の余裕が無い。だから、俺がシリアスブレイクのやり方を教えようとしたんだが……まぁ、あの沖田総司と織田信長が素でふざけてくれるんならそれでいい。
俺も、多分今回だけのレイシフトになるしな。だって英霊が殺し合いする戦場に放り込まれたくねぇし。ジャックとのんびりしながら人理修復待ってるし。
まぁ、それはさておき、だ。沖田総司と織田信長。この二人が日本で呼びだされたってことは、知名度補正がマジでヤバい。少なくとも名前は聞いたことがある沖田総司にアイルランドでのクー・フーリン並に知名度のある織田信長の二人が召喚された。これならアーサー王にすら勝てる可能性がある。
「六香ちゃん、信長のステータスは?」
「えっと……筋力敏捷がC、それと宝具以外のステータスがB、です。宝具は……分かりません」
ん?思った以上にステータスは低めか?あと、宝具は分からんとな?じゃあ、持っている宝具のランクの方で判別するか。
「宝具ですか?宝具は……」
「
ほぅ……ランクは敵によって変化するって事か……三千世界の方はまぁ、分からんでもない。何かに乗ったサーヴァントか騎乗スキルを持ったサーヴァントへのダメージが増加するとかそんな感じか。第六天魔王波旬は……分からん。っていうか、織田信長が英霊として何が出来るのかすらわからん。
三千世界の方は何をするか察しはつくんだけどなぁ……まぁ、そこら辺は実戦で確認するか六香ちゃんから伝えてもらうしかないか。
まぁ、信長はどうやら弓を使うんじゃなくて火縄銃を使うみたいだから、確実に後衛か。沖田が動けない場合は信長を前に出すしかないな。信長の刀も飾りじゃなかろうしな。
ん?袖が引っ張られて……あ、ジャックが戻ってきたのか。で、ジャックちゃんや。その手で持ってる黒い手と鎖付きダガー的な物はなんですかね。
「なんか解体したら拾った」
「そうか……」
何も報告せずに暗殺しちゃったかぁ……可愛いやつめ。ほら、ご褒美に飴やるよ。
「わぁい」
さて、ジャックも戻ってきた所で今後の作戦を考えますかね、クー・フーリンの兄貴。
「そうだな。あと、兄貴とか付けなくてもいいから普通にいこうや」
じゃあ、普通にクー・フーリンと呼ぶことにしますか。
「で、だ。クー・フーリン。俺はここまで戦力が揃ったとなると、何も考えずに進軍した方がいいと思う」
「そうさな。いっちょ思いっきり暴れてみますか、マスターよ!」
人理修復RTAは始まらんと言ったな?あれは嘘だ。俺が今からこの日本の冬木の修復してやんよ!!
じゃあ、ジャック。この紙粘土と信管持ってね。え?これどうするのかって?取り敢えず聖杯の所につくまではコネコネして遊んでてね。
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さて、辿り着きましたは、大聖杯のある空間まで繋がる洞窟。六香ちゃんとマシュちゃんは小動物のように震えながら俺たちの後ろをついてきている。オルガマリーの嬢ちゃん?さらにその後ろでクー・フーリンの横で震えてるよ。使えねぇ。
一番先頭をジャックに気配遮断を使わせて先行させ、沖田、信長、俺の順番で歩き、最後尾にはクー・フーリン。マシュちゃんはまだ宝具が使えないようだから、この先で待っているというシャドウサーヴァントとの戦いでちょっとショック療法的な感じで使えるようにすることにした。
で、しばらく歩くと、だ。沖田が俺達を片手で制して信長も火縄銃を構えた。
「ほう、私に気が付いたか」
その先には、シャドウサーヴァントが、弓を構えたサーヴァントがそこにいた。
「よう、数日振りだな。情けねえアーチャーさんよ」
「そういう割には君も異邦者の力を借りているようだが?クランの猛犬も私程度を倒せないようではその名が廃るな」
「俺はキャスターが本分って訳じゃないんでね。ランサーで召喚されたならそれこそ瞬殺よ」
「ふん。もしもではなく今の話をしたらどうだい?」
「んじゃ、景気よく燃やしてやろうか?」
「やってみろ」
あー……そういう事か。この二人、俗に言う犬猿の仲か。せめて俺の作戦を潰さないようにしてくれという意思を込めて視線を飛ばしたら、とっととやれ、と言わんばかりに手を動かしていた。なら、とっとと準備しちゃいますか。
ジャック、そっちはどうだ?順調?そうかそうか。なら、早く済ませちゃおうな。バレちゃダメだぞ。そうそう、そんな感じで……あー、そこだと崩壊するからもう少し近くにだな……そうそう、そこそこ。ナイスナイス。サムズアップは可愛いからそんな感じで周りに仕込んでくれ。あ、それを舐めたら死んじゃうから舐めちゃダメだ。後で手は洗わせてやるからさ。
「さて、異邦者諸君よ。私としてはここを退いてやりたいのだが、それは無理なのでね。ここを通りたければ私を倒すがいい」
「そうかそうか。ならそうさせてもらおう」
そう言って俺はスイッチを取り出す。シャドウサーヴァントはそれを見て、ん?と疑問形の言葉を漏らした。六香ちゃんやマシュちゃん、沖田と信長も首を傾げ、オルガマリーの嬢ちゃんだけが何かを察したような表情をした。
「これね、ミキプルーンの苗……とかじゃなくて紙粘土の起爆装置」
『え?』
「あばよ、俺の敵に回ったのが不幸だったな!俺の独断と身勝手とその他諸々で命ずる!!爆ぜて、アーチャー!!」
「ちょ、それは一体……」
カチッ。そんな乾いた音が鳴ったその瞬間、アーチャーを中心に大爆発が起こった。
そう、アーチャーが爆ぜた。思いっきり、俺の紙粘土(C4の隠語)によって。
「ア、アーチャーが爆ぜた!!?」
『この人でなし!!』
「ハハハハ!!爆ぜやがったぜ、あの女たらし!!」
「爆殺成功!!スカッとスッキリ爽やかだぜ!!」
「ぶい」
「うわぁ……」
ん?なんかオルガマリーの嬢ちゃんに続いて皆が外道を見るような目で俺を見ているぞ?まぁ、気にしないがな!!勝てばいいんだよ、勝てればよぉ!!それに、クー・フーリンはせいぜいしたぜと言って俺と肩を組んでくるし、俺は決して間違ってない!!
ってか、爆弾如きで死ぬ方が悪いんだよ!!俺でもあれは死ぬけどな!!間違いなく!!
さて、これでアーチャーをぬっ殺せた訳だが、ここで立ち往生していると他のサーヴァントがここまで来る可能性がある。そうなると消耗してアーサー王戦で全力で戦えない可能性がある。まぁ、消耗してようが関係ない処刑方法を思いついたがな!!
「ジャック、新しい紙粘土だ。これを向こうで仁王立ちしているであろうアーサー王の足元に沢山貼り付けてくるんだ」
「うん、おかあさん!後で褒めてくれる?」
「そりゃあ沢山褒めてやるさ。美味しいものも食べさせてやるよ」
「ホント!?じゃ、行ってくるね!!」
「おう。バレたら戻ってくるんだぞ~」
「はーい!」
さて、これでアーサー王を爆殺できれば万々歳だな。で、六香ちゃんにマシュちゃんよ。そんな外道を見る目で見ないでくれ。照れるから。
「いやあ、まさか爆殺するとはのぉ……現代の人間にも畜生はいるものじゃな!!」
「ここまで清々しい外道はこの沖田さんも久々に見ましたよ」
いや、信長に関しては比叡山焼き討ちだったり俺よりももっと外道なことしてんだろうが。沖田も特に外道な事はしてないが、お前に関しては人斬りって言われ続けた一種の殺人鬼だろうがよ。
そう言ってやれば信長は是非も無いヨネと言って目を逸らして沖田は何も言わずに目を逸らした。こっち向け殺人鬼共。
まぁ、昔の人間は基本的に現代だとキチガイか外道か畜生だし、何を言われても痛くも痒くもねぇなぁ!むしろ褒め言葉にすら思えるぜ!いや、まぁ、あんまり外道とか言われたくはないけどさ……だから嫁さん貰えてない訳だし。さて、そんな事をしている内にジャックが紙粘土を仕掛けて戻ってきた。よしよし。ほら、ご褒美の千歳飴。噛むんじゃないぞ。歯がくっついて災難になるから。
さて、ラスボスに会いに行きますかね!ほら、六香ちゃんとマシュちゃんもドン引きしてないで行くぞ。
【悲報】エロゲ主人公、爆ぜる【やったぜ】
令呪で爆ぜさせないんなら、爆弾で爆ぜさせればいいじゃない!!あと、これが一番楽だと思います。ジャックちゃんに紙粘土コネコネさせてサーヴァントの周りに仕掛けてもらえばいいだけだし。攻撃じゃなくて粘土遊びしているだけだから気配遮断はそのままだし
あと、ぐだ子の鯖はおき太、ノッブ、マシュマロで現在は確定。だって、おき太とノッブ強すぎるんだもん……!!
次回は皆で黒い父上をボコボコにしにいくよ!
五人のサーヴァントに勝てる訳ないだろう!!(数の暴力)