ちょっとマシュの才能化け物級すぎんよ……
私はあの光の中で気を失った。それで、目が覚めると私の前にはシールダーのデミサーヴァントとなったマシュがいて、私がマスターになって、フォウもいて、敵性エネミーに襲われて、オルガマリー所長を見つけて……色々とあった。
多分、私一人なら何も出来ずに縮こまってたと思う。それほどの濃さを持った展開が私を襲った。
それで、私がオルガマリー所長の指示とマシュのサポートで英霊を召喚して新しい仲間を増やそうとした時だった。
「マダ、サーヴァントガ残ッテイタカ」
「さ、サーヴァント!?」
『気を付けるんだ!あれはアサシンのサーヴァント……しかも君達に対して敵対している!』
「聖杯ハ我ノモノダ!!」
私達は真っ黒なサーヴァント……シャドウサーヴァントと出会ってしまった。
「先輩、指示を!!」
「マシュ、まさか戦う気なの!?」
そんなの無理だ。相手は英霊……私やマシュなんかよりも遥かに戦いの経験を重ねて戦いぬいた戦士だ。そんなの相手に、私が指示を出してマシュに戦ってもらっても、勝てるわけがない。
「アサシンは気配遮断で暗殺をするサーヴァント……正面からなら、勝機があります!」
そう言うマシュの顔には冷や汗が浮かんでいた。
きっと、怖さはマシュの方が上だ。だって、これから戦うのは私じゃなくてマシュなんだ。だから、マシュの方が怖いに決まってる。
このまま怖がってたら死んじゃうだけだ。それが分かったから、思い知らされたから、私は魔術回路を起動してサポートの用意に入った。
「マシュ、やるよ!」
「はい、先輩!」
「わ、私もサポートくらいはしてあげるわ!」
オルガマリー所長も手伝ってくれるみたいだ。凄く小動物っぽいけど。まぁ、無いよりはマシって事で。
シャドウサーヴァントはマシュが臨戦態勢に入ったのを見て短剣を投げて攻撃してきた。
「マシュ、ガード!」
返事の代わりにマシュは行動で返す。デミサーヴァントとなって強化された身体能力は普通なら反応できない速度の短剣を撃ち落としてみせた。
だけど、その間にシャドウサーヴァントは接近している。そして、振るわれる短剣。
「もう一回!」
咄嗟に受けたその言葉をマシュは実行する。短剣を受け止め、そのままシールドバッシュ。ここだ。
「アタック!」
「やぁぁぁ!!」
マシュの叫び声と共に盾が振るわれ、一、二、三。三回の打撃の後に一回転して勢いを付けた盾でシャドウサーヴァントを殴り飛ばす。
やった。そんな言葉がマシュから漏れる。私もそう呟いていた。けど、それが油断に繋がった。
「油断しちゃダメよ!」
オルガマリー所長の声と共にマシュの盾を持った腕から鮮血が舞った。
短剣が刺さった。それを認識した時にはマシュは盾を手放してしまっていた。そして、次の瞬間さらに大量の短剣が投げられ、顔をガードしたマシュにさらに突き刺さる。
「うぐっ……!」
「マシュ!!」
マシュの痛そうなくぐもった声が聞こえてくる。このままじゃやられる。そう判断した私はすぐに魔力回路から魔力を持ってきて礼装、この服に登録された魔術を起動する。
「『応急手当』!」
私の言葉をキーにしてマシュに魔術がかかり、マシュの傷が治って短剣が地面に落ちる。そしてマシュも盾を拾って再び構える。
「マスターガ邪魔ダナ……ナラマズハ貴様ダ!」
そんなシャドウサーヴァントの声と共に短剣が私に向かって投げられた。
あ、ヤバイ。これ避けれない。
「先輩!!」
マシュの叫びが聞こえるけど、もう遅い。私が防御するのも諦めたその時、目の前を漆黒が走った。
金属音が響き渡り、私に迫っていたであろう短剣が弾き飛ばされる。
「間一髪だったな、六香ちゃん」
私の前に現れたのは白髪の小さな女の子。少し露出の多い格好をしたその子は後ろから聞こえた声を聞いてマシュが嬉しそうに振り返った。
私もそっちを見れば、そこには、ここに来る前に私達と一緒にいた人がそこにはいた。
「マシュちゃん、君の依頼を果たしに来たぜ」
刹那・エインズワーズがそこにはいた。
その手には物騒なアサルトライフルを持って、右手に令呪を宿して。
「刹那!?貴方も来ていたの!?」
「成り行きでな。ジャック、よくやった。あそこの黒い変態を解体してもいいぞ。ぐっちゃぐちゃのドロドロにしていいぞぉ!!」
「わぁい!!」
ジャック。そう呼ばれた女の子が笑顔でマシュの横に並ぶ。それを見て、ようやく私はあの子がサーヴァントなのだと理解した。
よく頑張った。と私の肩を叩いて声をかけてくれたエインズワーズさんはすぐに鋭い目をして前を見る。私もまだ戦いの途中だったのを思い出して前を見る。
サーヴァントが二人と一人。相手の方が確実に不利なこの状況。確実に勝つ。
令呪の宿った右手を左手で包んでその闘志をもう一回確認する。大丈夫、大丈夫。私なら大丈夫。マシュとエインズワーズさんがいる。だから、大丈夫。
「ジャック!解体は殺した後にして、マシュちゃんの援護をしながら立ち回れ!当たりそうな攻撃は全て弾け!あ、俺にも当たらないようにな!」
「うん!」
「マシュ、その子に攻撃は任せてマシュはシャドウサーヴァントを倒すのに専念して!」
「はい!!」
多分、エインズワーズさんは私達に経験を積ませようとしている。じゃなくちゃ、あの子にそんな指示はしない。だから、ここは甘える。
マシュに足りない物。それは、攻撃力。シールダーという盾を武器としたサーヴァント故に、彼女の攻撃はシールドバッシュしかない。それでも敵を倒せるように、エインズワーズさんはあの子を動かしてくれる。
なら、甘えない手はない。
マシュが走り、あの子が前を行く。そしてシャドウサーヴァントの短剣を確実に弾いて逃した分はマシュが確りと受け止める。
そして、マシュとシャドウサーヴァントの距離が二歩一撃になった時、あの子は二人の間から姿を消し、完全な一対一に持ち込まれる。ここからは私の指示が重要になる。
「マシュ!
「はい!!」
マシュのシールドの重い一撃がシャドウサーヴァントの防御の上から叩きこまれてシャドウサーヴァントの防御が破られる。そこから二回、繋げるように盾が振るわれて、足が地面を離れたシャドウサーヴァントに追撃の素早い攻撃がシャドウサーヴァントを吹っ飛ばす。
これなら。私はすぐに作戦を練り直す。
「マシュ、まだ行ける!
「はい、先輩!!」
マシュが地面に倒れたシャドウサーヴァントの上に跨がり、思いっきりシールドを振り上げる。
これなら。私はすぐにマシュのサポートのために術式を飛ばす。
「『瞬間強化』!!」
「これで、終わって!!」
マシュの声と共に振り下ろされた盾。それは私のアシストもかかって、シャドウサーヴァントの首に当たって、そのまま嫌な音を立てて首を切断した。
「はぁ……はぁ……」
「あ、終わった?なら、ゆっくり解体させてね」
そのままあの子はマシュを退かしてナイフを持ったかと思ったらそのままシャドウサーヴァントだったものを解体し始めた。
流石に見てられないから目を背けて戻ってきたマシュを迎える。
「マシュ、凄かったよ」
「先輩……ありがとうございます」
疲労困憊な様子のマシュを抱きしめて背中を撫でてあげると、安心したのかマシュは私の腕の中で一息ついた。
やっぱり、こうして抱きしめてあげると分かるけど、この子は普通の女の子なんだなって。そう思う。細い体と白い肌。それで盾を振り回してさっきはシャドウサーヴァントを倒した。
私なんかよりも、全然凄いと思うけど、口に出したら謙遜しそうだから言わない。
「はいはい、百合百合しいのはそこまで。凄く眼福でもっと眺めてたいけどな!!ほら、すぐに敵襲に備えるぞ。百合は後でだ」
「は、はい!」
「わ、分かりました!」
って、よく考えたらエインズワーズさんも居たんだった……うぅ、恥ずかしいカモ……って、百合じゃないですよ!?
「ジャック、解体し終わったらまた偵察に出てくれ」
「はーい」
現在進行形でシャドウサーヴァントを解体しているあの子からは目を逸らして、結局油断するなの一言しか飛ばしてくれなかったオルガマリー所長を見る。
エインズワーズさんが出てきてからさっきまでの高圧的な態度が無くなって本当に小動物みたい……可愛いかも。
「マシュちゃんが何でサーヴァントみたいになってるのか、六香ちゃんと譲ちゃんがここにいる訳は今は聞かない。まずはこの特異点を修復するのが先だ」
「そ、そうね……だから、ここはまず戦力を広げないと」
「その通り。早速サーヴァント召喚の準備をする。マシュちゃんは辺り一帯の警備に回ってくれないか?ほら嬢ちゃんはこれ位でしか役に立たねぇんだから早くしろよ!!」
「あなたねぇ!!」
エインズワーズさんはどうやら、辺り一帯に敵性エネミーが入ったら気がつけるような結界をもう張ったみたいなんだけど、気配遮断持ちには無力みたい。だから、マシュは気を緩めることを許されない。
私なんかよりもよっぽどキツい役回り。これがサーヴァントとしての役割なんだと思う。
暫くオルガマリー所長とエインズワーズさんが魔法陣を書いていって、書き終わった所でマシュを呼び出した。
「マシュの盾……宝具を使って召喚サークルを形成するわ。どこぞの用心棒は一人でやったみたいだけど、それだとどんな英霊が呼びだされるかわからない……一言で言うならガチャになるわ」
「こうやって宝具を触媒にする事で相性のいいサーヴァントを絞り込むって訳だ」
つまり、厳選?と聞けばエインズワーズさんはそれ位分かっとけば十分だ、と答えてくれた。
私と相性のいいサーヴァント……一体誰なんだろう?そんな事を考えている内に、どうやら召喚サークルの形成が終わったみたい。だけど、エインズワーズさんがいきなり表情を変えた。
「六香ちゃん!すぐに召喚するんだ!またあの黒いサーヴァントが来る!」
「シャドウサーヴァントが!?」
「名前なんてどうでもいい!ジャックが戻るまで俺が時間を稼ぐ!俺も暴れたいからなぁ!!くそ、ジャックはジャックで敵性エネミーに囲まれてるし、ホント災難だ」
その瞬間、空から黒が降ってきた。
背中に何か沢山背負った、シャドウサーヴァント。名前は分からないけど、武器からして相手はランサー。マシュから触り程度に聞いた、三騎士の中の一騎。とてもじゃないけど、人間じゃ勝てない相手。
エインズワーズさんは有無を言わさずに持っていたアサルトライフルを連射する。初めて聞いた銃声に私は驚いてしまうけど、その中で聞こえたオルガマリー所長の恐喝が私を奮い立たせる。
マシュは武器がないから戦えない。エインズワーズさんが時間を稼いでる間に召喚しないと、全滅する。
「いい、私の後に続いてこれを砕きながら詠唱しなさい!」
オルガマリー所長は懐から虹色の、トゲトゲの石を取り出して私に三つ、渡す。それを手に持って私は魔力回路を起動する。そして、オルガマリー所長の詠唱に続いて私も詠唱する。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
石を一つ、砕く。それが私の魔力になって魔法陣に流れ込み、術式が起動する。何かをマシュの宝具越しに呼び出す。
「―――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
私の頭の中に刀が過ぎった。全てを切り裂く、問答無用の太刀。悪鬼を切り裂き誠を貫く刀が。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ。天秤の守り手よ――――!!」
そして、私の仲間は光の中から現れる。
桜色の和服。腰には刀を携えた白髪の剣士。
「サーヴァント、セイバー。新選組一番隊隊長。沖田総司、推参。問います、あなたが私のマスターですか」
沖田総司。人斬りと謳われた新選組の中でも抜群の知名度を持つ幕末の剣士。
私のような日本人は少なくとも名前は聞いたことがある。そんな、有名な、病に伏した剣士。
「……うん。そうだよ、セイバー」
「では、これより私は貴女の刀となりましょう、マスター」
凄く、頼もしい。
それが私がセイバー……沖田に抱いた最初の感情。優しくも、強い。そんな人。
「此度の戦いは通常通りとは行かぬのは承知済みです。それで……私は何を斬ればいいのでしょうか」
「……あそこのシャドウサーヴァントを。それで、エインズワーズさんを助けて!」
「御意。では……これより、人斬りの刀をお見せしましょう、マスター!」
沖田は腰の刀を抜く。シャラン。と綺麗な音だと私は思った。その刀を突くための構え、平晴眼の構えで持ち、その優しそうな目から一切の慈悲を消して見据える。
狙うのはシャドウサーヴァント、ランサー。エインズワーズの銃の弾が切れてランサーの独壇場になってしまう。その瞬間に沖田は動いた。
何かが爆発するかのような音と共に沖田の姿が消えた。次の瞬間、沖田の姿はランサーの前にいて、その胸を刀で貫いていた。
「は、速っ……」
「仕留め切れぬか……マスター、指示を」
だけど、倒しきれなかった。ランサーは胸を抑えながらも後ろへ飛んで槍を構えた。サーヴァントは霊核を破壊するか、心臓か頭を破壊しないと倒しきれない……だから、まだランサーは倒しきれてない。心臓を破壊できてない。
「せ、先輩!私も戦います!!」
召喚が終わったため、盾が使えるようになったマシュが盾を持って前線へ加わる。
よし、これで二対一。形勢逆転!
「あ、あっぶねー……やっぱ英霊の相手は無茶だったか……」
「エインズワーズさん、怪我は!?」
「大丈夫だ。それより、あのサーヴァントは?」
「彼女はセイバー、沖田総司です」
「沖田総司……女だったのか」
あ、そういえば……沖田総司って史実だと男の人だっけ……沖田が来てくれた安心感ですっかり忘れてたよ……
でも、沖田ならランサー相手でも絶対に勝てる。私にはそんな確信がある。
「六香ちゃん、もうすぐでジャックが戻ってくる。セイバーとマシュちゃんにはジャックの存在がバレないように派手に動き回ってほしい」
「分かりました。沖田、マシュ!
「承知ッ!」
「はい!」
沖田が消えるような動きでランサーを切りつけて、マシュもヒットアンドアウェイでダメージを稼いでくれている。
頭の中に浮かんでくるステータスを見ると、沖田の敏捷はなんとA+。そして、スキルには縮地。なるほど、確かに速い筈だ。
ランサーは沖田の動きについて来れてない。それは即ち、確実な時間稼ぎになれるということ。素で速い沖田に縮地まで合わさっているのだ。沖田が攻撃に当たる訳がない。
流石は最優とも謳われるサーヴァント、セイバーのクラスを冠するだけはある。私は知らず知らずの内に拳を握っていた。
そして、エインズワーズさんの肩を叩く合図で私は沖田とマシュに指示を出す。
「二人とも、下がって!」
「御意!」
「はいっ!」
沖田が高速で私の前まで戻ってきて、マシュもバックステップでランサーから距離を取る。その瞬間、ランサーの後ろの空間が歪んだ。
「殺れ、ジャック」
「此よりは地獄――――」
まず、ランサーの右腕が飛んだ。
「――――わたしたちは、炎、雨、力」
さらにランサーの左手が飛ぶ。
「殺戮を此処に」
そして、ランサーの両足が飛んだ。そして、ランサーを斬り刻んだ正体が、闇を払って現れる。が、正体に気づけたところで、既に手遅れ。
「『
再び彼女は闇を纏ってランサーを斬り刻む。血を吹き出し血に伏せたランサーの体はバラバラで、正しく解体された後のようだった。
ランサーはそのまま消えていき、その後にはランサーを解体した子供が……ジャックが残っていた。
「ふぅ……バラバラになっちゃった」
そんなジャックを見て沖田が刀を構える。それを片手で制して味方だと伝えると、分かったのか沖田は刀を仕舞った。
「そこの人も、解体しちゃっていい?」
と、ジャックは振り返ってこちらを見て指を差してきた。まさか、私?
そう思ったのは束の間。私達の後ろから物音がして、振り返ればそこには、如何にも魔術師です、という風貌をした男の人が立ってた。
あれは……キャスター?けど、シャドウサーヴァントじゃない……正規のサーヴァント?
「おいおい、解体は止めてくれや」
「……返答次第、だな。お前は味方か?」
エインズワーズさんが私達を庇うように前に出て聞く。キャスターは軽く笑うと、敵に見えるか?とエインズワーズさんの言葉を肯定した。
「俺もこの聖杯戦争は無事にとっとと終わらせたいんでね。その為の仲間を探していたってわけさ」
「……お前はこの聖杯戦争について詳しいのか?」
「まぁな。敵の真名を教えれるくらいには」
「そ、それって……」
即ち、このキャスターはこの聖杯戦争に参加していたサーヴァント、という事になる、のだと思う。いや、野良サーヴァントなんているわけないから確定なんだろうけど……
でも、あの人は悪い人じゃない。不思議と私はそう確信してた。
少し険しい顔のエインズワーズさんをつついてそう知らせようとしたら、エインズワーズさんは私に気が付いて私の頭に手を置いて分かってるよ。と言ってくれた。
「ならキャスター。俺達と敵対の意思がないんならこの場で真名を言ってほしい。仲間の戦力くらいは把握しておきたいんだ」
「その程度で信用されるならお安い御用だぜ」
キャスターは顔を隠していたフードを外すと、その声通りの、まるで野獣のような表情で笑顔を作って真名を言ってくれた。
「俺はクー・フーリン。此度の聖杯戦争でキャスターとして現界した。いっちょよろしく頼むぜ」
『クー・フーリン!?』
エインズワーズさん、オルガマリー所長、あとマシュが声を出して驚いていた。
クー・フーリン……?えっと、誰だっけ……
「簡単に言えばケルト神話の中でも物凄く強い英雄ですよ!仲間に加わってくれれば物凄く心強い人です!」
「そっちの嬢ちゃんは日本人か?なら俺の事を知らなくても無理ねぇな。日本だと俺の知名度はイマイチだしな」
へぇ……カルデアに戻ったら調べてみようかな。皆驚いてるし、沖田も表情からは伺えないけどかなり驚いてるっぽいし……物凄く強い人なんだろうなぁ。
「……クー・フーリン。貴方は本当に俺達の陣営に入るつもりなのか?」
「なんだ、不満か?」
「いや、クー・フーリンが仲間なら俺達からしたら勝ちを掴んだようなモンだ。是非とも仲間になってほしい。俺が聞いたのは本当に俺達でいいのか、っていう事だ」
「なんだ、そんな事か。俺はあのセイバーにつきたくなかったからこっちにつく。そんだけだ。んじゃ、契約だけ済ませちまうか」
エインズワーズさんとクー・フーリンが近付いて手を取る。それだけて二人の間に魔力のパスが通じたみたいで、クー・フーリンは助かったぜ、と声を漏らしていた。
対してエインズワーズさんは少し青い顔をしていた。
「エインズワーズさん、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。ちょっと魔力を使い過ぎた……流石に契約する時は自前の魔力を使わざるを得ないからな。維持に関してはカルデアに任せるから大丈夫だ」
あれ?でも、私は沖田とマシュと契約しても普通に余裕があるけど……やっぱり魔力回路の違いなのかな?マシュも私の魔力は常人の数倍はあるって言ってたし……
それに、エインズワーズさんはマスター適正も低いって言ってたから、二体のサーヴァントと契約するのは辛いのかも……
「……さて、クー・フーリン。さっき、アンタはセイバーって言葉を口にしたが……どういう事だ」
「どうもこうも……この聖杯戦争はまだ続いている。俺とセイバーが残っている状態でな」
えっと、それはつまり……
「あのシャドウサーヴァントは……」
「この聖杯戦争に参加したサーヴァントの残骸って言っても過言じゃねぇ。アサシン、ハサン・サッバーハ。ランサー、武蔵坊弁慶。ライダー、メドゥーサ。バーサーカー、ヘラクレス。アーチャーは……すまん、分からん」
うへぇ……ハサンって人以外は全員分かるよ……しかもヘラクレスって、物凄く強いじゃん……聖杯戦争って伝承でも人間辞めてるような人しか集まらないんだ……よかった、聖杯戦争に七人のマスターの一人として巻き込まれなくて。
「で、だ。マスター、これからどうする」
「そう、だな……六香ちゃん。まだ魔力に余裕はあるか?」
「あ、はい。あと一人程度なら契約できます」
「そうか。なら、早速英霊を召喚してほしい。戦力は多いに越したことはない」
「そうだな。他のサーヴァントはどうにかなるとしても、セイバーはヤバイ。そこのセイバーとアサシン、それと盾の嬢ちゃんに俺じゃキツイかもしれねぇ」
そ、そんなに相手のセイバーって強いんだ……
「ちなみに、そのセイバーってのは誰だ?」
「あぁ。アイツは……アーサー王。アーサー・ペンドラゴンだ」
「やべぇ勝てる気しねぇ」
えっ、アーサー王?アーサー王って……あの、エクスカリバー持ってるアーサー王?
日本でも普通に有名だし、エクスカリバーなんて名前だけなら聞いたことあるって人は殆どだし……しかも竜の心臓まであるって聞いたけど……か、勝てるの?それ。
「だから俺も援軍を求めてブラブラしてたんだよ。俺一人じゃ勝てん。対魔力が強すぎる上に魔力放出でかっとぶ化け物が聖杯の補助を受けてるから宝具撃ち放題と来た。ランサーで召喚されたんなら、まだ勝ち目は普通にあったんだがな」
すみません、その話を聞くとタダの怪物にしか思えないんですけど。
そんな私の内心を察したのかクー・フーリンはその通りだと頷いてくれた。逃げたい。
「じゃあ、六香ちゃん。早速英霊の召喚に入ってくれ。辺り一帯の警備は俺達がやる」
ひえぇ……責任重大だよぉ……
首☆チョンパ。基本的にこの作品は腕とか足じゃなくて頭と首と心臓を積極的に狙っていくので鯖脱落時はエグい描写になります
だって腕とか足切り飛ばしても宝具で大逆転されちゃあ意味無いからねぇ!!