げどう☆ぼまーとしりある☆きらー   作:黄金馬鹿

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そうだ、ローマ行こう


其の二十二

 レイシフト、時を超えていくという何とも言い難い感覚が全身を包み、浮遊感と落下する感覚が交互に襲い、そして地に足が着く。そこから瞼を持ち上げると、そこにあるのは見慣れない草原だった。

 ローマ。第五皇帝ネロ・クラウディウスの納めるローマの地であると、何となくだが感覚で分かった。そして周りを一通り見渡せば、そこには俺のサーヴァント達と立香ちゃんとマシュちゃん、そして彼女が率いるサーヴァント、沖田と信長。

 全員の無事を確認してすぐ、俺はジャックに向けて手を振るう。それを合図にボロ布を纏ったジャックの姿が消える。それが辺り一帯の探索だと言うのは立香ちゃんや他サーヴァントには伝えてあるので、誰もそれに驚いたりはしない。それから暫くその場で待機して奇襲に備えていると、少し遠くから戦闘の音、人の悲鳴や剣を交える音が聞こえてきた。その音を聞き、俺は立香ちゃんへと視線を向ける。それを受けて立香ちゃんは少し悩んだ。

 

「見に行こう。もしかしたら、皇帝ネロの軍に恩を売れるかも」

「そういうの、嫌いじゃないな。んじゃ、行くか」

 

 基本的にサーヴァントはマスターの命に従う。それはマシュちゃんも同じであり、彼女も立香ちゃんの案に頷いた。沖田と信長も特に異論はないようで頷き、俺のサーヴァント達は強制連行。まぁ、二人とも反論はしていないが。

 サーヴァントを引き連れて少し移動すると、戦場が見えた。

 その戦場では、かなり少ない軍勢が大規模の軍勢と互角に戦っていた。何故数の暴力をものともせずに戦えているのか。それが謎であったが、その原因は二つの軍が交わる場所で正しく無双状態の赤色の麗人がいたからだ。

 

「くらえ!なんか最近沸いてきた記憶の中から再現した攻撃あたーっく!!」

 

 なんか、赤色の剣を持った赤色の女性が空から炎を纏って地面に突き刺さり、そこを中心に爆発が起こっていた。その顔がえっちゃんに似ていた事から、十中八九、彼女はネロ・クラウディウスだ。

 おいおい、この時代の人間までサーヴァント化しているのかよ。まさか生身って事はあるまい。

 まぁ、叫んでた内容に関してはスルーで。ああいうのはほら……なんか、電波的な物を受信してるから、こっちの常識だと会話が噛み合わない事が多いし……最近立香ちゃんとかがそっち方面に突き抜ける事があるから、それの経験で放っておくのが一番だと気づいた。

 さて、ネロ・クラウディウスを発見した事だし、ロマンに知らせておくか

 

「Dr.ロマン。皇帝ネロを発見しました」

『えっ、もうかい?こっちにはサーヴァント反応はないんだが……』

「おいおい、冗談キツイぜ?アレでサーヴァントじゃないとか、有り得ないだろ」

 

 有り得ないよな……?おい、メディア。何で首を横に振るんだ。まさか、マジであれが生身の人間なのか?

 

「アーサー王がビーム撃ってたりする世界で何を言ってるんですか?」

「うん、えっちゃん。それ言われると何も言えねえわ」

 

 まぁ、ネロ・クラウディウスもそういった人外連中と足を並べる様な存在だった、という事でいいだろ。

 相手の旗はどちらとも赤と金の旗。同じ旗だが、細部が異なっている。という事は、どちらもローマの兵なのだろう。なら、殺すのは今は止した方がいい。その認識を共有しながら俺と立香はすぐにサーヴァント達に命令を飛ばしていた。

 

「沖田は皇帝ネロとスイッチ。信長は沖田の援護をしながら軍の遠距離攻撃を支援。マシュは私に流れ弾が当たらないようにしながら前線で暴れて」

「えっちゃんは沖田とマシュちゃんと一緒に戦ってくれ。メディアは軍の負傷者の治療を」

 

 加えてジャックには相手の指揮官を潰すように伝えておく。ジャックはここからかなり離れた場所まで移動していたため、呼び戻す形になる。敏捷が最高ランクのジャックでも戻ってくるのには暫く時間がかかる。

 俺達の命令を聞いたサーヴァント達はすぐに交戦準備に入り、ネロ・クラウディウスの攻撃が止んだその瞬間、前線をさらに押し上げるようにえっちゃんが突っ込んだ。突っ込んだえっちゃんは赤色に発光する両刃のエクスカリバーを目の前で高速回転させながら突っ込み、勢いが止まった所で両刃エクスカリバーを空に放り投げ、両手から電撃を放ち左右の敵を無理矢理吹き飛ばす。その攻撃から生き残った敵はすぐに信長の火縄銃により撃ちぬかれ、その弾丸の雨霰の中を沖田が縮地で潜り込み、全力の刺突で軍の一角を一瞬で壊滅させる。更に壊滅した軍の頭上をマシュちゃんが取り、シールドを地面に叩きつけてその衝撃で敵軍を宙に浮かす。それをネロ・クラウディウスが一瞬で蹴散らす。

 この一瞬の攻防が起こった中、驚くことは相手の軍は全員生きている、という事か。えっちゃんの両刃エクスカリバーは吹き飛ばすだけ。沖田の突きも納刀したままの勢い任せの一撃、信長も急所は外して弾を貫通させている。殺害はしていない。完全な無力化をしている。

 

「お主等、何者だ?ローマの者ではないようだが」

「それは後でお願いします。今は、目先の軍の殲滅を」

「うむ。それもそうか。では、上げていくぞ!!」

 

 そしてジャックも到着したらしく、敵軍の奥の方では悲鳴が響いて指揮官らしき人物が空を舞っている。お手玉みたいに空を舞っている。

 まぁ、これなら俺がロケランで爆破とか手榴弾を投げて絨毯爆撃とかする必要性はないな。立香ちゃんを連れてメディアの後ろで待機している事にする。

 しかし、英霊……サーヴァントというのはやはり凄い。生身の人間なんてまるでそこに存在しないかのように蹴散らしていく。沖田総司、えっちゃんことアルトリア・ペンドラゴン……で、いいのか?もうえっちゃんが何なのか分からなくなってきている。それと織田信長。沖田は剣の道を極めた英雄の一人であり、信長とえっちゃんは言わずがなの大英雄クラス。そんな彼女たちが雑兵の百や二百で止まる訳がない。

 幾らサーヴァントに物量をぶつけようと、質で上回らない限り止まる事が無い。そんな規格外が英雄だ。物量で何とかなるのは英雄対英雄の時だけだ。

 故に、止まらない。最低限の魔力消費で三騎のサーヴァントは前線で暴れつくし、援護や暗殺も最低限の魔力で済ませる。俺達も魔力の消費は最低限の状態でメディアの後ろで敵のローマ軍に中指を立てることが出来る。煽り顔ダブル中指だ。

 それから暫く経ち、完全に相手のローマ兵は無力化された。ここまで何があったかは、説明する事もない。サーヴァントが大人げなく無双し続けただけだ。

 

「うむ、何とかなったな。異邦の者達よ、救援、感謝する」

「まぁ、こちらにも色々とあるので……それと、失礼ですが、貴女はローマ帝国第五代皇帝、ネロ・クラウディウス陛下でありましょうか?」

「その通りだ。何だ、余の事は知っておるのか。と、言う事はブーディカからの援軍か?」

「ブーディカ……!?あ、いえ……それに関しては色々とありまして……」

「む、そうか……まぁ、よい。よいぞ。そなたらからは何とも言えぬ倒錯の美を感じた。それはそうとて、そなた等がブーディカからの援軍でないとしたら……異国の者か?」

 

 異国の者……まぁ、それで合ってるが、そう言ってしまうと後で何か面倒な事になるかもしれない。ここは俺達の素性はある程度話ておかないとな。

 それに、ネロ・クラウディウスからは俺達への警戒が見える。そりゃあ、変な恰好をした人間たちが一騎当千の活躍を見せているんだ。幾ら友好的な雰囲気を醸しだしていても、それすら罠という可能性はある。それを捨てずに俺達を警戒しているネロ・クラウディウスには、怪しまれない程度に俺達の素性を話さなくてはならない。

 未来から人理修復をするために来ました協力してくださいなんて言おう物なら警戒心はMAXの状態で固定されてしまうだろう。だからこそ、ここは慎重に話さなくてはならない。うーん、どうやって言うべきか。

 

「えっと、ネロ、陛下?でいいのかな……その、私達はカルデアっていう組織に所属しています。人理修復……じゃなくって、この地で起きている普通じゃ有り得ない事を解決するために来ました」

 

 とか思っていたら後ろに居た立香ちゃんが前に出てきてネロ・クラウディウスに説明した。なるほど、それなら必要最低限の事は説明しているな。

 

「有り得ない事、か……なるほど、この現象達を解決する組織とな。それなら余にも覚えがある。それを解決するのであれば、余はカルデアを歓迎しよう。嘘もついてないようだしな」

 

 ん?嘘もついてないって、読心でも出来るのか?と思っていたらえっちゃんが小声でネロ・クラウディウスについて説明をしてきた。

 ネロ・クラウディウスこと赤セイバーは皇帝特権というスキルを持っており、それによってある程度のスキルを短時間だが身に着けることが出来るとの事。剣を振るって戦っているのもセイバー、剣士として必要な技能やスキルをその都度付与しているから、だそう。

 なんだその便利能力。俺にもくれよ。そしたら色々と便利だしさ。

 

「では、そなた等を余の治める都、華のローマへと案内しよう!そこで今回の戦での報奨も与えよう!」

「ありがとうございます、ネロ陛下」

「なに、そなた等には助けられた。当然の事よ」

 

 まぁ、貰えるのなら貰おう。それに、こういった時代の街並みとか食事とか建物の中とかは興味がある。っていうか見なきゃ損だ。折角のレイシフトっていう貴重な経験だ。街並みを写真に収めたりするのもいいだろう。間違っても歴史家に見せちゃいけないがな……

 

「……そういえば、そなた等はそこの男の伴侶なのか?」

 

 素直に気になったのか、ネロ・クラウディウス……あーもうネロ陛下でいいや。ネロ陛下が聞いてきた。

 ふむ、そう見えちゃう?見えちゃったりする?そんなに俺がモテる男に見えちゃう?いやー、やっぱ皇帝は分かってるなー。

 

『冗談を』

「だろうな」

「泣くぞ?」

 

 俺のサーヴァントを含めた全員が手を横に振った。どうやら俺は頭おかしい人間としてしか認識されていないらしい。しかもネロ陛下の言葉はその言葉に納得したようだった。

 ちくせう。




実は一からシナリオを読み返しているので新宿は手付かずだったり。一応新宿のアーチャーと新宿のアサシンの真名は予想済みですけど。

五章に突入したら主にインドによるパワーインフレによってカルデア勢が蹴散らされる未来しか見えません。希望はラーマ王、貴方だけだ……!!

それと、ふと思ったんですけど、メディアのペインブレイカーなら離別の呪いをどうにか出来る様な……もしも出来たらフルパワーに愛のパワーを累乗させたハイパーラーマ君が円盤や剣をぶん投げてサルンガから対国宝具乱射する最終兵器と化するんだよなぁ……




すみません、流石に盛りました。まぁ、それでもラーマ君張り切っちゃうだろうなぁ……w

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