ヒロインXことアーサー王ことアルトリア・ペンドラゴンが離脱した代わりにアルトリア・ペンドラゴンのオルタ……アルトリアの暴虐面が強調され表に出てきた黒いアルトリアが謎のヒロインXのようにギャグに飲まれた結果生まれた謎のヒロインXのオルタ……謎のヒロインXのようにハチャメチャではなく、文系で比較的大人しい性格の本人曰く根っからのヴィラン、えっちゃんが仲間になった。もう滅茶苦茶すぎて分かんねぇよこれ。
けどまぁ、最初の特異点で出てきた、あの真っ黒なアーサー王……じゃなくてアルトリアか。それがよくもまぁ、ここまで大人しくなったモンだ。言う事は聞いてくれるし、甘味さえ渡しておけば大人しくしてる。気が付いたら沖田を暗殺しようとしてるどこかの青色アホ毛とは大違いだ。
で、そんなえっちゃんを仲間に加えた俺達はもうツッコミをする事もなく、ロマンから第二特異点についてのブリーフィングを開かれ、一同に介していた。
「皆、次の特異点を発見した。今度の特異点は古代ローマ。かの暴君、ネロ・クラウディウスの時代だ」
「ネロ・クラウディウスか……協力を得られるか微妙だな」
「え、何でですか?」
何でと言われてもなぁ……かの皇帝ネロはこの時代まで伝わる暴君。何したかと言えば……まぁ、これに関しちゃ母親が悪いが母親を殺したり、ローマの大火災をキリスト教徒のせいにしてキリスト教徒を迫害、さらに黄金宮殿の建造、ついでに妻を殺したりとか何かもう……やりたい放題だな。あー、あと使用人の少年を去勢して妻の代わりにとか……うん、マジでやりたい放題。
「……口から言うのは憚れるが、まぁ色々とやったんだよ。で、そんな事を権力でやってた人が俺達みたいな正体不明の奴等に力を素直に貸すかって言われると……」
「まぁ、あまり考えられないね。だから、今回は野良サーヴァントを仲間にして最小戦力で……」
「いえ、ネロ・クラウディウスも仲間にできます」
は?俺達は一斉に声の出処、つまりはえっちゃんへと振り返った。
ネロ・クラウディウスを仲間に?あの暴君が?俺達に手を貸してくれる?んな馬鹿な。
「ネロ・クラウディウスは私達の間では赤セイバーとして少しばかり有名なんですけど、彼女はローマのためなら喜んで力を貸しますよ」
いや、まぁ……確かによく考えればネロも皇帝。国への愛が無いかと言われれば否だ。自分の国を少なからず愛しているに決まっている。皇帝になってから数年は暴君なんて言われてなかったんだしな。
と、俺が多少納得している所にダヴィンチが口を挟んだ。
「ちょちょちょ、そこの新顔ちゃん。色々と言いたいけど……『彼女』だって?」
彼女……?あ、確かにその言い方だとネロ・クラウディウスは女だって事になるな……そこの所、どうなんだ?
「えぇ、そうです。ネロ・クラウディウスは女……アルトリア種の一人です。顔は私に、体付きはそこの桜色と同じ感じです」
「えっ、桜色って沖田さんの事ですか?」
「ちょっと待ってくれ……確かに織田信長や沖田総司、アーサー王が女だってのは驚きだった……けど、ネロ・クラウディウスまで女だって!?」
「世の中の歴史家の何人かが死ぬね……」
「六香ちゃんにマシュちゃん。人理修復が終わってもこれはカルデア内の最重要案件な。六香ちゃんが言った通り、これを公表したら世界の歴史家の何人かが憤死する」
誰だよ歴史にネロ・クラウディウスが男だって書いたやつ。出てこいよ割とマジで。
しかも、ネロ・クラウディウスが女だと色んな諸説までひっくり返る……もうこれ分かんねぇな。
「……よし、ネロ・クラウディウスには会えたら協力を要請しよう!」
「おいロマン。現実から目ぇ逸らすな」
「例え僕達の習った歴史の授業が間違っていたとしても!ここは彼女の言葉を信じて作戦を練ろう!」
「聞けや」
……まぁ、耳を塞ぎたい気持ちは分からないでもないけど。あのネロ・クラウディウスまで女……しかもアルトリア・ペンドラゴンにそっくりとか……最早神のいたずらとしか思えねぇな。
けど、そうだとしたら助かった。もしもこれがえっちゃんじゃなくてヒロインXなら、ネロ・クラウディウスの抹殺に全力を注いでいただろうし……あっぶねー。
取り敢えず、俺によじ登ってくるジャックをはたき落として今回の方針はかの皇帝、ネロ・クラウディウスに協力を要請して共闘する。サーヴァント化してるのかは分からんが、こっちにはメディアがいるしジャックもいるから回復に暗殺もできる。殴り合いだって沖田とえっちゃん。後方支援は信長がやれる上に盾役のマシュちゃんもいる。ここに現地のサーヴァントを合わせれば神でも出てこない限りやられはしない。
まぁ、もしもダメなら六香ちゃんがガチャするし……
「出発は早い方がいいだろう。数時間後にはレイシフトを実行するけど、いいかな?」
「俺は特に。六香ちゃんとマシュちゃんは?」
「刹那さん、ノッブが特異点に行ったっきり帰ってきません」
「と、いうか色々とツッコミが間に合わないんですけど」
「令呪使ってでも連れて来い。ツッコミは諦めろ」
ジャックを担いで俺は席を立つ。ジャックは子供のようにきゃっきゃとはしゃぎながらも自ら降りようとはしない。
「俺は準備してくる。後は頼んだ」
「おかあさん、お部屋でゲームやろ?」
「お前これから特異点に行くって聞いてた?」
ジャックの両足を掴んで逆さにして吊るす。それすらも楽しんでいるのか笑顔できゃっきゃとはしゃぐ。信じられるか?この子、切り裂きジャックなんだぜ……?
この子を見てジャック・ザ・リッパーだ!って断言出来る奴が居たら見てみてぇよ。ソイツは完全に頭のネジ外れてるし馬鹿だし何も考えてねぇし……うん、ド阿呆。おう、真名暴きやってみろよ。ここにいる全サーヴァントの。分かったとしてもメディア位だぞ。あ、刀に詳しい奴なら沖田も分かるのか?
取り敢えず、ジャックを逆さに吊らしながら俺は部屋を出る。その後ろをメディアがついてくる。
「賑やかですね〜」
「賑やかすぎて緊張感が無さ過ぎな感じがする」
「まぁ、やる時はやってもらえればいいですよ」
「それもそうか」
「おかあさん……きもちわるくなってきたよ……」
「ははは、もっと酔え酔え」
若干顔色が悪くなってきたジャックを更に揺する。するとジャックの顔色が面白いように変わっていく。
「あばばばば……あ、りばーすしそう」
「よし、リリース」
「にがさぬ。うえええええええええ」
「うぎゃああああああああああ!!?」
「ちょっ、ジャックちゃん振り回したら私にまで被害がぁぁ!?」
ジャックが逆さになったまま、俺がジャックをリリースする前にリバースし、俺に被害が。そしてそのままジャックを振り回した事によってメディアにも被害が。
カルデアの廊下が一瞬にして酔っ払いがやらかしたような惨状に変化した。すぐにメディアが魔術で臭いを消したり吐瀉物を片付けたりしたが、やはり精神的なダメージはかなり大きい。
ダウンしたジャックを背負ってメディアと共に部屋に入る。
「逆さにされて揺すられただけで吐く英霊ってなんか新鮮だよな」
「普通に考えたら吐きますって。そういう拷問された経験が無ければ、ですけど」
「お前は?」
「吐きます」
「ゲロイン化待ったなし」
「美少女に吐かせるド外道マスターがここに。やめて!私に乱暴するつもりでしょ!ジャックちゃんの時みたいに!」
「よっしゃ任せろ」
「きゃーっ!?」
ふざけたメディアの足を掴んでそのままひっくり返す。そして逆さにした状態で揺する。ははは、抵抗してるつもりだろうが、筋力Eじゃ俺をどうすることも出来ないな。
暫し揺すってたらメディアの顔色も面白いように変わっていく。たまにシェイクもしてやればもっと変わっていく。
そしてトイレに連れて行ってさらにシェイクし、完全にメディアの顔が人様にお見せできなくなった所で解放する。
「うっぷ……」
「これでお前もゲロインだ」
「ならばくらえ私の魔術」
「は?えっちょっ」
吐きながら魔術を行使したメディアのせいで俺まで気分が悪くなってきた。何だこの無駄魔術。あ、やべっ、吐きそう。
もう限界。メディアの隣で蹲って俺も吐く。
「て、てめぇ……」
「し、死なば諸共です……」
二人して口からマーライオン。暫くして二人で何してんだと悟ってからメディアがトイレを消臭した。
いやー、ほんとメディアの魔術って色んな事出来るな。流石神代の魔術師。やれるレパートリーはかなり多いな。
「全く、マスターのせいで酷い目にあいました。乙女の口からマーライオンさせるなんて」
まぁ、それに関してはふざけすぎたとは思ってる。けどな、それとは別件で俺の腹の中はまだ修羅場なんだ。
「実は俺はこの場でマーライオンしてお前にぶっかける攻撃ができる」
メディアの肩を掴んで目を見る。そしてメディアの表情が青ざめる。何故なら、俺の表情はかなり真っ青で今すぐにでも吐きそうだったからだ。
「え?ま、まさか……女の子にそんな事しませんよね……?」
「貴様の魔術の強さを呪うがいオボロロロロロロロロロロロ!!」
「キャアアアアアアアアアアアア!!?」
俺はメディアの真正面でマーライオンした。史上最低のマーライオンだぜ。
真面目かと思った?残念、そんな事ありませんでした
ジャックとメディアをマーライオンさせた事はすまなかった。えっちゃんを巻き込む事だけは理性が抑えました