げどう☆ぼまーとしりある☆きらー   作:黄金馬鹿

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すまない、眠いから今日は短いし投げっぱなしなんだ……!


其の十二

 ここいらで俺の過去について話そうかな、と思う。というのも、思い出すだけ、とも言える。まぁ、ジャックとメディアに夢の中で見られたらしいし、自分でも偶には思い返してみるべき、かと思った。

 俺の家はエインズワーズ……本家エインズワーズからの派生であり、分家に産まれた。『世界を救うために戦う』。そんなクソみたいな理想のもとに魔術を受け継いでいった家庭の次男。

 しかし、俺は魔術を仕込まれて時計塔へと送り出された。伊達に何百年も前から続いている家だ。魔術だけはご立派……とは言えなかったのが俺の家だ。

 置換魔術というのは割りに合わない魔術だと世間では思われている。いや、極めようとすら思わない。それを極めたのが本家であり、分家は停滞をしている。故に、俺は散々馬鹿にされた。家を、家族を、俺の存在意義すらも。

 だが、俺は別段何とも思わなかった。それもそうだ。俺にとって魔術は、面白そうなものっていうのが幼い頃からの認識だったからだ。だから、別に進んで学ぼうともしなかったし、魔術でデカイ顔している人間なんて羨ましくも無かったし、凄いとも思わなかった。

 だけれども、その中で俺は知った。魔術師殺しを……衛宮切嗣を。かつての記録で、俺は知った。

 近代兵器を使って魔術師を狩る、魔術師としてのクズ。魔術を捨てた愚か者。だからこそ、だからこそ俺は彼を真似しようと思った。

 他にも色々と……俺が荒れた原因になった事はあったが、それは割愛しよう。とてもじゃないが、軽く話せる内容じゃないし、俺が銀の弾丸なんていう吸血鬼殺しにしか使えない物を持っている原因にもなる。

 まぁ、それで、だ。俺は魔術師殺しに憧れ、彼へ近づくために近代兵器に手を出した。丁度その時に荒れていた俺は、ちょっとやらかした。

 時計塔の魔術師を、数人殺した。俺を散々馬鹿にしてきた愚か者を、ただ他の事でムシャクシャしていたから、うるさかったからという理由で頭を撃ち抜いた。そいつ等を殺した後、置換魔術で適当な山奥に放り込んで後から埋めたっていうのが俺の殺人処女を捨てるまでの過程だ。

 それから俺は殺人というものが如何に簡単かを知った。だから、俺は金を集めるついでに魔術師殺しとしての二つ名を売るため、用心棒をやる事にした。これが二十歳の頃だった。

 八年。もう八年だ。理不尽に巻かれてストレスを解消するためにタバコを吸い始めてから、八年。用心棒が今や人理を修復するために戦う正義の味方ときた。

 子供を守ることはしてきた。罪無き人を守る事もしてきた。圧政者を殺害した事もあった。魔術師を数十人殺した事もあった。そりゃもう、色んな事を……まぁ、やってきた。中には英雄と呼ぶ奴もいた。人殺しと糾弾する奴もいた。殺してやると包丁を持って走ってくる子供もいた。今でこそ、カルデアという場所で落ち着いたが……とてもじゃないが、俺は六香ちゃんとマシュちゃんの隣に立っていい人間じゃない。

 外道であっても畜生ではない。そんなことは無い。俺は、畜生だ。人を殺し金を受け取り、その金でまた人を殺すために武器を買い漁る。あぁ、なんて吐き気のする。

 俺はジャックのやってきた事を笑えない。コルキスの魔女となったメディアに罵られても何も言えない。信長から畜生と言われても言い返せない。沖田から人殺しと蔑まれても受け入れるしかない。六香ちゃんとマシュちゃんから犯罪者と言われ距離を取られても詰められない。

 そんな、糞みたいな事をやってきた俺に、人類史の守護なんて、とてもじゃないが荷が重すぎる。

 

 

****

 

 

 夜になった。六香ちゃんとマシュちゃんは肩を並べて木を背にして眠り、英霊達はローテーションで気を休めながら周りを警戒している。俺は時計を見ながら魔法陣を書いて、中心にマシュちゃんの盾を置いて既にサーヴァント召喚の準備を終わらせている。

 夜。それは畜生外道が蠢く時間でもある。そして、生き物が一番気を引き締めなければいけない時間でもある。

 ワイバーンが果たしてゆっくりと眠らせてくれるのか。それは分からない。だが、二人も増えた英霊達に任せればどうとでもなるだろう。

 俺はその中の一人、マリーと並んで焚き火の前に座っていた。マリーは何だかご機嫌に鼻歌を歌っている。確か、彼女は譜を書いた経験があった筈だ。それに、このヤケに聞き心地のいい声も俺の気持ちを安らげてくれる。

 

「ねぇ、もう一人のマスターさん?」

「なんだ?」

 

 ふと、マリーが声をかけてきた。警戒心がないのか、馴れ馴れしいだけなのか……どちらにしろ、心を開いてくれているのなら嬉しい。

 

「改めて、ありがとう。民を守るために戦ってくれて」

「……別に、守るためだなんて」

 

 俺は一人で逃げようとした。メディアとジャックを置いて。褒められるようなことを、俺はしていない。

 

「いいえ。貴方は確かに守ったわ」

「どうしてそんな事を……」

「守る気がない人なら、自分の身を守るためにサーヴァントを二人とも、無理矢理連れて行くでしょう?」

 

 だから。

 

「ありがとう。守るために、自分の切り札でもあるサーヴァントを動かしてくれて」

 

 …………

 

「……勘違いするな。アレは俺が逃げれるからと思っただけだ。それに、あの時、メディアはテコでも……」

「令呪。使わなかったでしょう?」

 

 マリーが指をさしたのは、俺の右手の令呪。前の戦いで一画使ったが、日付を跨いだため、回復している。

 令呪。サーヴァントへの絶対命令権。対魔力を持たないサーヴァントなら、これを使った命令には従わざるを得ない。対魔力を持ったサーヴァントでも、限定的な事なら確実に動く。そんな、絶対命令権。

 

「貴方はあの時、メディアさんを令呪で呼び戻してジャックさんに担がせ、逃げるという手段が取れた。なのに、それをしなかったのは……」

「悪い、時間だ」

 

 俺はマリーの話を遮った。もう、一時だ。英霊を召喚しなくては。

 

「おーき様。おかあさんはね、ツンデレだから素直に褒められると照れちゃうんだよ?」

「ジャックゥ!?」

 

 そしてここでジャック、まさかの裏切り。いや、ツンデレじゃないけど!?ってかそんな言葉どこから習った!?ロマンか、ロマンなのか!?あいつ後でぶっ殺す!

 

「あらまぁ。そうでしたのね」

「うん。だって、おかあさんって褒められた時はいっつも……」

「はい、そこまでにしようなジャック!ほら、飴玉だぞぉ!」

 

 ジャックの口に向かって俺は飴玉をシュートした。口を開いていたジャックの口に飴玉は見事に入り、ジャックの口が閉じた。

 この子、最近、いい性格になってきたよな……悪い方向で!!

 ま、まぁいいか……もっと悪い方向に進むよりはまだマシだ……取り敢えず、英霊を召喚するか。

 

「こほん……素に銀と鉄――――」

 

 石を砕くごとに魔力が魔法陣へと送られ、魔法陣が活性化する。そして浮き出、回転し始めたリングを俺はただ無感情に見ていた。

 そして、感じる。英霊との繋がりを。その繋がりから持って行かれる魔力を。その魔力の大さに俺の意識が持って行かれかける。だが、今は一時。俺の魔力が、魔術回路が活性化する時間帯。最高潮の時間帯だ。故に、半分朦朧とした状態で詠唱を続ける。

 

「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ――――」

 

 魔法陣から、英霊との繋がりがより強く、より強固になっていく。そして、なんか嫌な予感がする。

 感じる英霊の霊基はとんでもない。メディアよりも強い、つまりは神代の魔術師を超える性能を持った超大当たりサーヴァントだ。だが、それでも嫌な予感は止まらない。

 そして、光の柱が現れる。もう、止められない。っつか、詠唱終わっちゃったよ。

 

「サーヴァント、セイバー。宇宙の果てというか平行世界の果てから登場です!私の名前ですか?真名は内緒なので謎のヒロインXと名乗っておきましょうか!!え、お前アサシンだろって?そんな馬鹿な……何ぃ!?アサシンだと!?聖杯め、余計な事を……まぁ、いいでしょう!私こそがセイバー。それ以外は別の何かです!パチモンです!邪神セイバーです!故に私はセイバー!私がセイバー!!さぁ、人類史でも救いながらセイバー殺しましょうか!!あれ?何でマスターらしき人は頭抱えて蹲ってるんですかねぇ……はっはーん、これは私の溢れんばかりの星五サーヴァントオーラに平伏したくなりましたか!」

「大ハズレ引いたって後悔してんだよ……!!」

 

 大当たりかと思ったら大ハズレだったよ……何かもう……何かもう!!

 

「ってか、何でジャージ着てマフラー着けて帽子被ってんだよアーサー王!?」

「なぁっ!?わ、私はアーサー王などではありません!コスモユニバースを、平行世界の次元を超えたヒロイン・オブ・ヒロイン!セイバー・オブ・セイバー、謎のヒロインXです!!」

「どっからどう見ても外見だけは俺達が数日前に戦ったアーサー王じゃボケェ!!」

 

 あー、なんか……あー……

 

「お前の起源がギャグって事は分かったよ!!あの黒いアーサー王の方が万倍王様っぽいわ!!」

「黒セイバーは暴君ですよ暴君!私の方がカリスマスキルのランク高くてより高貴!!故に青セイバーこそがセイバー!そして王!!それ以外のセイバーは死んでくれませんかね……!!ってか死ね」

「お前のセイバーへの殺意は何なんだよ……!!」

 

 俺の中のアーサー王のイメージが崩れてゆく……

 

「まぁ、冗談はさておき……私こそが謎のヒロインX。セイバー・オブ・セイバーです。人類史が崩れるとセイバー殺すどころか私も死にかねないっていうか、昔の私が消えてその先の私も消滅するので、召喚に応じました」

「どうしてもセイバーは殺したいのかよ……」

「私こう見えても強いですよ?セイバー殺せますよ?沢山殺せますよ?だから早く殺させてくださいよ。そこのルーラーでもいいですよ。あれアルトリア顔ですし」

「えっ、私ですか!?」

「やめろ……やめろ……!頼むから俺の中のアーサー王を壊さないでくれ……!!あとジャンヌにエクスカリバーを構えないでくれ……!!」

 

 取り敢えず……もう寝よう。これは夢。きっと夢だ。

 

「残念だけど、現実だよ」

 

 黙ってろよモーツァルト……!!




実際、謎のヒロインXを召喚したら何とも言えなくなると思う。そんな訳でラストは謎のヒロインX(エクスカリバー&モルガン持ち)です。

コイツがいると一瞬にして場面の纏まりが無くなるから怖い。ジャックちゃんの教育に悪いのがまた増えたなぁ……

あと、ウチの謎のヒロインXはどんな場面もギャグに変えます。基本ギャグにしていきます。あと、クラスはちゃんとアサシンですよ?まぁ、ダブルクラスみたいな事になってますけどね……!

謎のヒロインX……一体誰トリアなんだ……

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