げどう☆ぼまーとしりある☆きらー   作:黄金馬鹿

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ふと考えた。この作品のヒロインは誰だって。

居なかったよ。


其の十一

 信長の火縄銃で勝ち確定……と思えたこの戦いだが、かなりの膠着状態に押し込まれていた。と、言うのもヴラド三世の宝具が全方向に放たれているため、沖田、ジャック、ジャンヌが近付けずにいる。マシュちゃんは六香ちゃんの事故死を防ぐために盾を構えて後ろへ下がってもらっているし、俺自身もメディアの後ろにいる。信長の火縄銃は全身から放たれている杭のせいで通らず、一度放った三千世界も杭を集めて防がれた。

 数で負けているのなら手数で勝機を伺う。なるほど、これはウザい。しかも杭は再生可能なため、斬っても折っても生えてくる。

 

「流石にウザったいのぉ……人斬り!どうにかならぬか!」

「ちょっとキツいですね……無明三段突きでも無理かもしれません」

「ちぃっ、ジリ貧じゃな……」

 

 信長の問に沖田は難色を示した。現に、沖田は自分に向かう杭を斬って接近を試みているが、どれも成功していない。

 俺等の致命的な弱点。それは、手数の不足ではなく、爆発力の不足。一転突破の沖田と相性ゲーの信長、条件の厳し過ぎるジャックに回復のみのメディア、ステータスは高いが爆発力のないジャンヌに守る事に特化しすぎたマシュちゃんだ。

 こういう場面で相手を吹き飛ばす事が出来ないのは辛いものがある。

 だが、それはヴラド三世とて同じ。ヴラド三世は全身から杭を生やしているせいで身動きが取れない。故に、杭を伸ばしても俺等にはマシュちゃんとメディアがいるため届かず、サーヴァント達は軽く対処が出来る。

 千日手、とでも言おうか。中々に面倒な事になった。

 

「信長。生前はこういう時、どうしてきた」

「ぬぅ……こんな事滅多に起こらんからのぉ……ただ、完全な膠着状態というのはこの世には無い。この後に待っているものは奴の魔力切れかワシ等の魔力切れじゃ」

 

 ヴラド三世は常に宝具を展開しているため消費が早い。だが、こちらも信長が一度三千世界を使い、沖田も宝具を開帳済み。無明三段突きも一度放っており、六香ちゃんの魔力もそこまで余裕が無い状態だろう。

 俺自身もメディアのペインブレイカーでそれなりに持って行かれているし、置換魔術だってタダではない。

 

「ならば、一転突破しかない、か。それも悪くなかろう」

「手があるのか、信長」

「ワシに任せい。マスター、宝具を二回使う。気張れよ」

「う、うん!」

「人斬り、無明三段突きじゃ。真正面からブチかませ」

「……策があるのなら、やりましょう。失敗したら斬首です」

「サラッと脅すのやめない!?」

 

 ここでも沖田と信長はいつも通りだが、パスを通じて二人に魔力が満ちていく。沖田が信長の前に立ち、信長は三千の火縄銃を展開する。

 

「行けい、人斬り!!」

「一歩音越え、二歩無間―――」

 

 沖田の姿が消える。そして、沖田へと伸びてきていた杭が一瞬で切断され、沖田の姿がヴラド三世の前へと現れる。

 

「三歩絶刀!無明、三段突きィ!!」

 

 そして、沖田の神速の三段突きが放たれる。しかし、それをヴラド三世は既の所で己の槍で防いだ。

 だが、その直後に信長が動く。

 

「三千世界に屍を晒すが良い、吸血鬼よ!天・魔・轟・臨!!これが天下布武の三千世界じゃぁ!!」

 

 そして火を吹くのは三千の火縄銃……ではなく、千の火縄銃。それが、収束されて放たれた。

 沖田は咳き込みながらも既の所で逃げ、ヴラド三世へと弾丸が飛来する。が、ヴラド三世はそれを杭で弾いた。

 

「温い!!第二陣、放てい!!」

 

 そして、さらに千の火縄銃が火を吹いた。それによりヴラド三世が急遽生やした杭が全て折られ、貫かれた。

 

「くっ……これほどまでの威力が……!」

「これが本家本元の三段撃ちじゃ!第三陣、放てい!!」

 

 そうして放たれた三度の千の火縄銃による斉射は確実にヴラド三世を貫いた。

 しかし、それでもヴラド三世の顔は変わらなかった。いや、笑っている……!?

 

「我が汚れた人生を捧げよう……」

「令呪を持って命ずる!!ジャック、今すぐにヴラド三世を殺せ!!」

「遅い!血塗れ王鬼!!」

 

 ドラキュラは頭と心臓を銀の弾か杭で打たれなければ死なない。なら、火縄銃で上下に分割した程度だからではヴラド三世は死なない。

 それ故に、ヴラド三世はもう一度、宝具を打てた。そして、俺達のサーヴァントにそれを防ぐ術はない。

 ジャックは何かが来るのは分かっていた。故に、避けれたが近すぎたがために右腕を貫かれ、そのまま千切られた。信長も心臓と頭は守ったが、両腕、腹、右足を貫かれ、沖田も避ける事ができず右腕を貫かれ、左足を根本から千切られた。

 ジャンヌ、メディア、マシュちゃんはギリギリで反応でき、俺はジャンヌに、六香ちゃんはマシュちゃんに守られた。

 

「糞が!真祖用の銀の弾丸でもくらいやがれ!!」

 

 もう既に限界なのか、杭が消えた所で俺は銀の弾丸をヴラド三世の額へ向けて撃った。その弾丸はヴラド三世の額を貫いた。

 くそっ、何で気が付けなかった……気付ければ被害は抑えられたのに……!

 

「ぐっ……悔やむな、刹那……!!」

 

 俺の表情を見たのか、信長は足を貫かれたのにも関わらず、その両足で立っていた。

 

「勝ちは勝ちじゃ……そして、これを悔やむな、()()!!そして数の暴力による慢心を捨てい!!数で勝ろうと奇策は容易に数に勝る!!」

 

 学ぶ……学ぶ、か。

 

「……分かった、信長」

「それで良い!あと、早く治してくれないかナ!今にも死にそうなほど痛いヨ!!」

 

 その言葉に放心していたメディアが気が付いたのか、負傷したサーヴァント達に宝具を使って回復させていく。あぁ、魔力が減っていく……ちょっと魔力キツイかなぁ……!

 緊張感の欠片もないぺいんぶれいかーというロリっ子の声を聞いて魔力がガリガリ減っていくのを自覚しながら俺は六香ちゃんの前に立つ。

 

「あ、う……」

「別に叱るつもりはないさ」

 

 六香ちゃんも分かっているのだろう。戦いの最中、自身がサーヴァントに指示を飛ばせなかった事が。それ故か、彼女は俺を見て一歩退いたが、俺は距離を詰めてサイドポニーで纏めている髪の毛を乱暴に撫でる。

 

「わっ……!?」

「信長の言葉を聞いたろ?学べって。謝るな、死ななきゃ気にしねぇよ。だから、精一杯学べ」

 

 そう。六香ちゃんはつい数日前まで一般人だった女の子なんだ。そんな彼女が実戦で指示を飛ばせないなんて当たり前だ。むしろ、冬木では上手くやり過ぎていた位だ。

 それに、俺だってヴラド三世の弱点を知っているのに思い出せなかった。同罪だ。だから、小言は言っても叱りはしない。

 次があるのなら次で上手くやればいいだけだ。幸いにも、六香ちゃんのサーヴァントの信長は戦略スキルを持っている。六香ちゃんが多少ミスをしても信長が挽回できる。なら、学ぶには持ってこいの状況だ。

 

「その通りです。むしろ、私はマスターを褒めたい位ですよ」

 

 足を治した沖田がこっちへ来て六香ちゃんへと声をかけた。

 

「えっ……?」

「マスター、あのヴラド三世を相手によく逃げませんでしたね。普通の人なら腰が抜けてますよ」

 

 あぁ、それもそうか。相手はあのドラキュラ。ヴラド三世だ。しかも、明らかに普通じゃない戦い方をする、ヴラド三世。それを見ても声は失えど決して逃げなかった六香ちゃんは褒められこそされど叱られる事はない。

 何も出来ないのが当たり前なのだ。

 

「先輩、大丈夫です。まだ私達は未熟です……ですから、一緒に強くなりましょう」

 

 そして、マシュちゃんが優しく六香ちゃんに声をかけた。

 

「マシュ……うん、私、頑張るよ」

 

 六香ちゃんはマシュちゃんの言葉で決意したのか、その瞳に熱が篭ったように俺は見えた。

 信長と沖田、そしてマシュちゃん。彼女達がいれば六香ちゃんは大丈夫だろう。スパルタ式の脳筋なら世界を救うんだからボケっとするな、とか言うんだろうけれども、それで六香ちゃんの心が折れたら元も子もない。

 だから、俺達は何と言われようと六香ちゃんは叱らんさ。これが半年後とかで全滅の危機に貧した時、とかなら流石に一喝位はするが。

 

「……皆さん、お優しいんですね」

「普通だ普通。俺達は軍じゃないんだ。だから、多少の甘さはいいだろう?ジャンヌ・ダルク」

 

 俺に声をかけてきたサーヴァント、ジャンヌ・ダルクに俺は何の遠慮もなく言葉を返した。その言葉にジャンヌはえぇ。と頷いた。

 

「しかし、ゆっくりとしてる暇が無いのは事実です」

「分かっている。だからこそ、俺は情報を集めようとしたんだが……」

「なら、こちらで集めた情報を渡しましょう。既に織田信長さんが策を考えていますが、やはり軍師は多い方がいい」

「信長に勝てる奴なんて諸葛孔明とか毛利元就とかしか思い付かねぇんだけどな……まぁ、この時代での奇策は俺でも考えられる。教えてくれ、ジャンヌ」

 

 俺とジャンヌは共に少し離れて情報の交換に入った。一方的だけどな。

 その結果、分かった事は多いようで少なかった。

 相手はルーラー、ジャンヌ・ダルク。ジャンヌ自身にもそれはよく分かっていないが、ただ、彼女を倒さぬ限りこの国は崩壊する、とのこと。そして、この時代の王は既に敵のジャンヌ、黒ジャンヌに殺されている。そのため、軍は統括されず、駐屯地にいた軍人達が戦うのみ。

 そして、敵の黒ジャンヌは竜の魔女と呼ばれ、竜を使役している。対してジャンヌはルーラーとしての特権はほぼ無く、サーヴァントとしても成り立て、という状態らしい。そして、相手の黒ジャンヌは確実に七騎……先程三騎削ったため、残り四騎、サーヴァントを従えているとのこと。

 なるほど、実に厄介だ。

 

「信長、どう思う」

「面倒、の一言じゃ。こちらには軍がない。対して、敵は軍を持つ……どちらが有利かは言わずともじゃ」

 

 やはり、か。

 だとすれば、勝機は……

 

『敵の本拠地に殴り込む』

 

 これしかないだろう。狙いを黒ジャンヌ一人に絞り、確実に殺し、フランスを元に戻す……それをするには。

 

「暗殺、か?」

「爆殺もある。どちらにしろ、正攻法ではやっておれぬ。ワシの相性ゲーも通じぬしな」

 

 つまり、黒ジャンヌは騎乗スキルも神性スキルも保持していない。信長の特攻が入らない、という事か。

 となると、こちらの戦力は実質、沖田とジャンヌだけ。夜ならばジャックも加わる。しかし、もし黒ジャンヌが対軍宝具を持っていたのなら。ジャンヌの宝具が間に合わなければ確実に壊滅する。

 だとすると、高火力……制圧力のある宝具を持つサーヴァントが必要、か。

 

「刹那。あと一人、サーヴァントを召喚できるか」

 

 どうやら、信長も同じ思考に至ったらしい。

 

「今日は無理だが、明日の深夜、午前一時なら可能だ。その時間帯は俺の魔力が活性化する」

「ふむ……ならば、その時に召喚したサーヴァントで作戦を考えるぞ」

「あぁ、待ってくれ。それならカルデアのダヴィンチに作らせたい物がある。それが作成可能か聞いてから、何重にも作戦を練らないか?」

「ふむ……是非もなし。言ってみよ」

 

 俺は信長に俺の考えていた対城用の最終兵器の事を話した。それを聞いた信長は暫く呆然としたあと、笑い始めた。

 

「ハハハハ!!良いぞ、それは良い催しにもなる!!ワシが許可する。それも作戦の一つとして組み込もうぞ!!」

 

 よし、信長からは許可を貰った。後は夜中にダヴィンチに連絡をするか。

 で、だ。

 

「後ろの見物客二人。お主らは仲間か?」

「敵ってんなら今すぐ爆破するぞ」

 

 俺と信長は後ろを向いて火縄銃とグレネードランチャーを構えた。既に治療を終えたジャックには辺り一帯を捜索してもらった。その結果、隠れる気もない、明らかに出る機会を失ったサーヴァント二騎を発見した。

 何でジャックに暗殺させなかったかと言えば……まぁ、敵意が無かったから、だ。っていうか、ジャックの報告から、二人の会話も判明したが……まぁ、端的に言うと正義の味方っぽく出る機会無くなっちゃったけどどうしよう?という会話だった。

 俺が全く警戒心を顕にしていない事から信長も警戒心をすぐに引っ込めた。

 って言うか、林の中から赤くて大きな帽子が見えてるんだよなぁ……!!

 

「まさか、私自ら出る前にバレちゃうなんて思わなかったわ」

「いや、モロバレだよ、流石に……」

 

 出てきたのは男と女……いや、少女か。その二人組。どうやら、男の方は流石にバレていると分かっていたらしい。

 ってか、あの二人……サーヴァントだ。明らかに人間とは違う、神秘を多少なりとも纏っている。

 

「……端的に聞くぞ。お前達は俺達の味方か?」

「平和の使者は武器を持たない……この言葉でお分かりかしら?」

 

 ……なるほどね。味方ってことか。

 相手の誰かがキャスターだとしても、あの二人は魔力を使っていない。攻撃型のキャスターでも攻撃するためには多少なりとも溜めがある。それが無いということは二人は俺達の敵ではない。確実に。だから、俺と信長は顔を合わせて銃を下ろした。

 

「ワシ等としてはお主達を仲間に加えたい。だが、真名も分からぬ者を仲間としては見れぬ。故に、真名を言ってもらう」

「私としても、貴方達が味方なのか……この国の味方なのかを、一人の王紀として問いたいわ」

「ほう……それならば、ワシ等の答えは是、よ。我が名は第六天魔王、織田信長なり」

「私の名はマリー。マリー・アントワネットよ」

「僕の名はアマデウス。ちょっと略すけど、アマデウス・モーツァルトさ」

 

 ま、マリー・アントワネットにモーツァルト、だと……!?

 

「貴方がかの……私は沖田総司」

「ジャック・ザ・リッパー」

「メディアです」

「ジャンヌ・ダルクです。共に戦いましょう、マリー・アントワネット王紀……で、いいんですよね?」

「えぇ。でも、マリーで十分よ。憧れのジャンヌ」

 

 ……な、何気に俺、とんでもない光景を見ているぞ……かの聖女、ジャンヌ・ダルクに王紀マリー・アントワネット……フランスを代表するビッグネームでもある二人が握手をしているなんて……

 やべぇ、カメラカメラ……あ、スマホしかねぇ!構わん、撮れ!!

 

「興奮するのも分かるが抑えい」

「す、すまん……だがな、やっぱ教科書に載るような人が、時代を超えて手を合わせるってのはやっぱ興奮するもんでな……」

「分からんでもないがの」

 

 この写真、普通に家宝レベルになるぞ……ってか、マリー・アントワネットって肖像画よりも何とも……幼く見えるのな。

 もしかして、メディアと同じで若い頃の姿で現界しているのか?確か、マリー・アントワネットはスタイルはかなり良かったっていう記述があった筈……

 

「貴方がこの村を助けたサーヴァントのマスターね?」

「え?あ、あぁ」

 

 とか思ってたらマリー・アントワネットが俺の前に来た。近くで見ると余計美少女に見えるな……こりゃ役得ってやつか。

 

「この村の民を守ってくれてありがとう。優しいのね」

「ぅ、ぁ……あーっと……俺はメディアに言われて残っただけだ。礼はメディアに言ってくれ」

 

 そこまで純粋な笑顔と好意を向けられると流石に照れるんだよ……ってか、マジで美少女過ぎるんだが……!

 おい、そこの信長、メディア。ニヤニヤすんな。特にメディア、お前の部屋にある人形燃やすぞゴルァ。

 

「まぁ、照れるのも無理はないさ。マリーの笑顔はとても素晴らしいからね」

「同感だよ、モーツァルト……」

 

 んでもって、モーツァルトか……まさかモーツァルトが英霊になってるとはな……何でもありか。

 

「僕の名前を知っている、という事は僕の名は少しは広まったのかな?」

「少しどころか、世界中でアンタの名は知れ渡ってるよ」

「そうかい……まぁ、それはどうだっていいんだ」

 

 どうだっていい、か。確か、モーツァルトは幼年期にマリー・アントワネットに告白したんだったか……

 ……まぁ、今モーツァルトが何を思ってるのかは分からん、な。

 

「僕はマリアの味方だ。だから、マリアが守るこの国の味方であり、君達の味方だ。力は不足しているが、頼ってくれたまえ」

「そうさせてもらうよ。俺個人としては、あのモーツァルトに出会えて光栄の極みだ」

 

 そんな訳でまぁ、色々とあったが、マリー・アントワネットとヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが仲間になった。

 ……って、はぐれサーヴァントってなんだよ。誰に召喚されたんだよ……もういいや。詳しくは考えないようにしよう。




木曜日には皆でソロモンをフルボッコにするイベントが始まりますね

ウチのジャックちゃん、絆マックスまであと五十万の絆ポイントが必要だよぉ!!

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