ワイバーンの駆除。それが終わって少し経ってからという所で信長とマシュちゃん、それからよく分からない金髪の少女に背負われて六香ちゃんがやってきた。きっと、あの金髪の少女がジャンヌ・ダルクなのだろう。ジャンヌ・ダルクは確か享年十九歳。なら、見ただけで分かるほどの若さでも不思議ではない。ってか、こっちには見た目十四歳と幼女がいるんだし若いからって驚かん。
「沖田さん、先に行ってくれてありがと。あと、ジャンヌ。途中から背負ってくれてたけど大丈夫だった?」
「はい。こう見えてもサーヴァントですから、六香さんなら何時間でも背負えれますよ」
やはり、ジャンヌ・ダルクだろう。六香ちゃんを下ろして手に具現化させた旗からは多少の神秘を感じる。
六香ちゃん、マシュちゃん、ジャンヌは街の惨状を見て絶句しているが、メディアが守った人々を見てホッとしている。
「よくぞあれだけ守ったものだ。お主の事だから、逃げるかと思っておったぞ」
「思ったし実行したさ。けど、メディアが残るって言ったもんでな……」
だから、俺一人で逃げようとした、とは言えなかった。だが、信長はそれが分かっているのか、それが普通じゃ。よう頑張った。と背を叩いてきた。
何だろう、この……教師と語り合ってる感じは。やっぱ人生の大先輩の言葉は違うなぁ……!あと、信長のカリスマが若干俺に効いてる気がする。そのおかげもあってか多少は感じていた罪悪感が薄れた。
「マスターよ。この場はもうワイバーンの気配はない。すぐに撤退すべきじゃ」
「え?何で?」
「ワシ等は敵のルーラー……黒ジャンヌに何処に居るかがバレておるのじゃろう?戦闘能力の無い民草の居るこの場でドンパチやる気か」
信長は気絶から目覚めてこちらを怪訝な表情で見ているこの町の住人を指さした。確かに、それは全く持って正論だ。この場を戦火で燃やすわけにはいかん……って、ちょっと待て。
「敵のルーラー?黒ジャンヌ?それってどういう事だ」
「後にせい。ここで話し込んで人質を取られて不意を突かれたいか」
ぐっ……確かにそうだ。ここは一国の主で軍師でもあった信長に従うとしよう。信長は殆どの戦で勝利を収めてきた天才であり鬼才だ。そして、相手がジャンヌ・ダルクだとしたら、戦をした数が多く、少数の兵で多数を討った事もある信長の方に人の動かし方は軍配が上がる。
なら、信長の言葉には従うべきだ。それほど、織田信長という人物を俺は評価している。日本人の血が混じっているから、とも言えるけどな。
「なら、信長。足はどうする?」
「ジャンヌはマスターを背負え。人斬りは刹那を担げ。ジャックはメディアを抱えろ。ワシとマシュマロおっぱいサーヴァントは走る。今すぐこの場から退散するぞ」
「デミサーヴァントです!!」
なるほど、確かにこれなら人の身である俺達でも英霊並みの速さで移動できるな。あと、マシュマロおっぱいに関しては激しく同意する。出来れば触りたいが、そんな事考えて実行したらジャックか沖田をけしかけられるかもしれないので止める。ジャックか沖田に追われたら死ぬ。割とマジで。
『皆、残念だけど手遅れだ……もうすぐそこにサーヴァント反応が複数ある……』
「何じゃと!?何をしておった!!」
『すまない……寝落ちしてた……!!』
「ドクター、後で吊るします」
『何処で!?どの部分を!?』
「あと、私のガンド撃ちの的です」
『六香ちゃん!?』
「俺は吊るされてある下で奇妙な踊りをする」
『このキチガイ、容赦無いしクッソ下らない事考えてる……!!』
容赦してたり下らない事考えてなかったらキチガイ名乗れねぇんだよなぁ……!
とにかく、六香ちゃんや。戦闘服に着替えろ。そっちの方が多少は英霊の力……キャスターの魔術とかもレジストしたりしてくれるだろう。え?恥ずかしい?ほら、おじさんの予備のコート貸してあげるから、ね?
さて、だ。暫く待っていると俺達の目の前には五騎のサーヴァントが現れた。
あれは……ランサー、セイバー、ランサー、キャスター、キャスターか?これ……
「お前のサーヴァント、クラス偏りすぎてんなぁ!!」
「ハァ!!?いきなりどういう事よ!!」
っしゃあ、さっそく喧嘩売るぞオルァ!!ついでに煽る!!
「お前含めてランサー、ランサー、セイバー、キャスター、キャスターとか馬鹿じゃねぇの!?聖杯戦争でキャスターはそこまで有利取れないって習わなかったのかお前!?」
「ど、どこがキャスター二人よ!!どうみてもライダーとアサシンでしょうが!!ついでに私はルーラーよ!!ル・ウ・ラ・ア!!」
「ラ・ン・サ・ア?」
「ぶち殺がすわよアンタ!!?」
やっべぇ楽しい。ほら、ジャック。行ってらっしゃい。
「杖持ってるからキャスターだろうがよどう見ても!!あとお前のそれ槍だろ!まさか、槍なのにランサーじゃないの……?どれだけ槍の才能無いんだよプークスクス!」
「これの何処が槍よ!!旗!旗よこれは!!」
「え?お前タイマンするとき旗振り回して戦うの?タイマンなのに?布で相手をどうやって倒すんですかねぇ!!」
「そんなのこの先端の矛でぶっ刺すに決まってんでしょ!」
「じゃあランサーじゃねぇかよ!!」
「違うっつってんでしょうか!!エクストラクラスのルーラーよ私は!!」
「お前ルーラーだからって全部綺麗にまとまると思うなよアァン!!?」
「何でキレてるのよ!!キレたいのはこっちよ!!」
「え?何この子、いきなりキレるとか……怖いわー、最近の若者怖いわー……」
「キレてないわよ!あと最近の若者でもないわよ!!」
「じゃあババアだな!!やーい、外見少女のババア!!お前の中身ババア!!」
「お前ェ!!言うに事欠いてババアとは何事よババアとは!!」
「え、ちょっ、ババアがキレてる……ひくわー、ババアが年甲斐もなくキレるとかひくわー……」
「ババアじゃないって言ってんでしょうが!!」
やっべぇ、超楽しい。話しが脱線しまくって相手も味方も呆れてるけど超楽しい。ほら、ジャック。さっさとやる。相手がいつ逆上してくるか分からないんだからさ。
「アッタマくるわねアンタ!!燃やすわよ!!?」
「あ、俺ババアには萌えないんで……」
「漢字!!漢字が違う!!今明らかに漢字が違った!!流石の私でも分かったわよ!!」
「ババアは大人しく熟女好きの所に行っておいてくれませんかねぇ!!」
「何の弁明も無しかアンタは!!」
「俺、ババアの戯れ言には耳を貸さないようにしてるんだ……!!」
「誰がババアよ!どこが戯れ言よこのキチガイ!!」
「お褒めに預かり、光栄です」
「褒めてないわよ!!」
「キチガイにキチガイって言葉は褒め言葉だって学んだようだなぁ!!残念ババア!!」
「いい加減にしないとぶっ殺すわよ!!?」
まぁ、とにかくだ。剣持った女……男?と槍持った男はセイバーとランサー、仮面付けてない方の杖持った女はライダー、仮面付けてる方はアサシンか。
後いないのはアーチャー、キャスター、バーサーカー……アーチャーは遠距離攻撃を得意とするからこういう場には来ない。キャスターもそうだ。きっと今頃、あの黒ジャンヌの住処で拠点を作っている。そして、バーサーカー……野放しだな。バーサーカーを制御するのなんて出来てたまるものか。
なら、アサシンとセイバーには脱落してもらいましょうかねぇ!!
「ええい!バーサーク・ランサーとバーサーク・アサシン!!そこのキチガイをぶっ殺しなさい!!」
「ぬぅ……我は女の血の方が好みなのだがな……」
「私もよ……この子、完全に頭に血が上ってるわね……」
おっと、マズイマズイ。動く前にやらねば。
「なぁそこのランサー!!っていうかジャンヌ・ダルク・ジュニア!!」
「誰がジュニアよ!!どうせならブラックとかオルタとかカッコいいのにしなさいよ!!」
「これさぁ!!紙粘土の起爆装置なんだけどさぁ!!既にお前らの足元に紙粘土設置してあるんだよねぇ!!」
「……は?」
「ハハハハハハ!!弾けて混ざれぇ!!」
カチッと黒ジャンヌに見せ付けた紙粘土の起爆装置のスイッチを押す。その瞬間、五騎のサーヴァントが足元から爆ぜた。
「汚え花火だなぁ!!ジャンヌ・ダルク・オルタ・ブラック・ジュニア・自称ルーラー・ランサー!!なんかスパムみてぇな名前だなおい!!」
『……うわぁ』
煽るだけ煽っておいて初手で爆破。堪んねぇなぁオイ!!あと、後ろの方々や。そう、ジャンヌ含めてだ。何ドン引きしてんだ。こっち向けよおい。
さて、相手さんはっと……
「くぅ!誰がスパムみたいな名前よ!!」
ジャンヌ・ダルク・オルタ・ブラック・自称ルーラー・ランサーはかなりボロボロだが生きているな。そして、ランサー、ライダーはほぼ無傷だが、アサシンとセイバーの姿が見当たらない。
ふむ、消し飛んだな。ジャックにはアサシンとセイバーは確実に殺せるようになるべく足元付近に大量に仕掛けておけって言っておいたしな。流石ジャックだ。ほら、ご褒美に練り飴をあげよう。マシュちゃんと六香ちゃんと一緒に食べておいで。
「よくも私のサーヴァントを二騎も消し飛ばしてくれたわね……!」
「不意打ちに気付けねぇ司令官とかいる意味あんのぉ!?」
「ここですら煽るかお前はぁ!!」
まぁ、煽る意味ってのは相手の正常な判断力を失わせるためでもあるんだけどな。で、沖田さん沖田さん。少しいいかな?そうそう、お前だよお前。
「もういい!バーサーク・ランサー!アイツ等をぶっ殺しなさい!!」
そう言って黒ジャンヌは背を向けて残ったサーヴァントと共に去っていった。
なるほど、自分のサーヴァントに絶対の自信を持っているのか。
「一人減った分は我が補おう。さぁ、来るが良い」
バーサーク・ランサーは槍を構え佇む。その構えは隙がなく、相手は余程の手練だという事が見るだけでわかった。
「なら遠慮無く。我が宝具こそはこの身に纏いし――――――誓いの羽織」
そして、俺達の前に出た沖田の体が一瞬ブレる様に消え、次の瞬間には桜色の和服が誠の文字を背負った浅葱色の羽織へと変化し、その刀も違う物へと変わっている。
ブーツなのは……まぁ、ツッコミはすまい。ただ、沖田のステータスは軒並みアップしているだろう。この中では沖田が唯一の近距離戦闘を得意としているサーヴァントのため、沖田にバーサク・ランサーの相手を頼まざるを得ない。
「ほう……ならば、そこの外道が初手で爆破をしたように、我も初手で貴様等を殺しにかかろう」
その瞬間、バーサーク・ランサーの周囲に赤黒い魔力が集まっていく。まさか、宝具か!?
「メディア!防げるか!?」
「逃げます」
「ですよねぇ!」
有無を言わずに背中を向けて走り出したメディアを見て俺も後ろへ走り出す。だが、それと入れ替わるようにジャンヌが前へと出た。
「沖田さん、私の後ろへ!」
「承知!」
ジャンヌと沖田がスイッチしてジャンヌが前へと出る。
「神よ、我が同胞を守り給え!!」
「血に濡れた我が人生をここに捧げようぞ」
ジャンヌの旗に光が集まっていき、バーサーク・ランサーの体が内側から変形していく。
「
「
ジャンヌの旗から光が溢れ、壁を作る。そして、バーサーク・ランサーの体の内側から飛び出した血に塗れた杭が壁を破らんとする。
だが、その壁は破られることなく、杭を防いでいる。
しかし、カズィクル・ベイか……カズィクル・ベイ……串刺し君主……そうか!串刺し公、ヴラド三世か!!
「沖田!相手の真名はヴラド三世!!ドラキュラの元となった人物だ!!」
「ヴラド三世……!?なるほど、ならばこの剣にかける容赦はありません!」
「ほう、我が名を暴いたか……して、それに何の意味がある?名を暴いたか程度で我を倒せるとでも思っておるのか?」
確かに、ヴラド三世は普通に戦えば強敵だろう。ドラキュラという今や幻想の中に消えた神秘はとてもじゃないが普通のサーヴァントでは太刀打ち出来無い。
だが、相手が神秘なら、こっちにはそれを打倒出来る手段がある。
「笑止!貴様が妖怪変化の類だと分かれば後は我等の物よ!妖怪変化なぞ、我が火縄銃の元で塵と化してくれようぞ!!」
そう、信長だ。彼女のスキル、天下布武・革命は神性を持つ相手……いや、神秘を内包する相手には例え神だろうが負けることの無い特攻を生み出す。それは、相手がドラキュラとて変わらない。故に、ここは信長と沖田の独壇場だ。
「ノッブ、援護を頼みます!」
「応!ワシへの攻撃は全てお主に任せるぞ、人斬り!!」
「ジャック、沖田と一緒に信長をサポート!メディアは後方から回復と支援魔術!」
「うん、やるね!」
「任せてください!」
「私も前で戦います!宝具が来た場合は私に任せてください!」
「わ、私も……流石にトドメは刺せませんけど、前で相手の攻撃を防ぎます!!」
戦いにおいて何よりも怖いのは数の暴力。それをヴラド三世は分かっているのか、表情が若干険しくなった。
当たり前だ。こっちはサーヴァントが六人。しかも、一人は自身へのメタを持っていると来た。これで焦らないわけがない。
さて、まずは一人目……いや、三人目か。サーヴァントを打倒して人理を修復しますかね。
デオンくんちゃんとカーミラさん退場のお知らせ。ちなみに、この特異点で参戦している敵サーヴァントの中ではこの二人が一番厄介でした。
デオンくんちゃんノッブの三千世界が通りますが、高めのステータスと宝具によるゴリ押しでノッブを倒す事すら可能ですし、カーミラさんはジャックちゃんの宝具が刺さりますが夜に戦わないジャックがお荷物になるうえに、相手も気配遮断を持っているので、不意打ちで宝具を使われた時点でこちらの敗北が濃厚になります。ノッブの相性ゲーも通じませんし。
何気にこのパーティ、ノッブが落ちると負け確定レベルの欠陥パーティです。騎乗神性特攻が敵サーヴァントに刺さりまくるんですよねぇ……!なお、ノッブ本人が日本で召喚されて知名度補正マックス状態のステータスなので普通に強いから余程の事が無ければ落ちません
あと、味方サーヴァントですが、近い内にもう一人増えます。キチガイ枠です。この人が加わるとノッブ敗北で詰みとかいう状態になりません。ヒントはアサシン。