無意識少女は海を漂う   作:恋し石

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こいしちゃんの作品がもっとふえますように…


第一章〝雨の心〟
大海に漂う無意識


 

 ザァー…ザァー…

 

 波の音がこだまする。見渡す限りに広がるのは青。一面が青の海であり、地平線まで広がっている。雲のスキマスキマから顔を出す太陽が海を照り輝かせ、少し眩しい。見慣れたものではあれど、その美しさはなにか惹かれるようなものをもっている…そんな気がする。

 

 凉しさを感じる海風に黄緑色の、肩程の長さの髪をなびかせながら、両腕、両手を広げて全身に風を感じさせる。その姿、まさに鷹の如し…。

 

「んん〜今日もいい天気だね!」

 

 同時に、少女の服に取りつけられた紺色の管、その管が集結している目玉のような丸い物も揺れている。しかし、その目は閉じており、瞳を見ることはない。

 

1人の少女が甲板で思ったことをつぶやく。

 

「今日はなにしよっかな〜?………………う〜〜ん……………………………………………………よし!部屋の模様替えしよ!おしゃれは女の子の嗜み?だっけ?……ま、いっか!」

 

 ぶつぶつ呟きながら少女は船室へと向かっていく。ドアノブを回しつつ部屋に入るが、しだいに気持ちが萎えてきた。

 実は、見渡して、——さあやろう!——と、思ったけど、アイデアが全然浮かばないのだ。

 

 ——というか、1回やったことあるよね、って案ばかり出て来るんだけど。

 

 ——う~ん…なんか昨日も同じようにやってたような…

 

 ——そう言えばいつから此処にいるのだろう…

 

 人差し指を顎に置きながら首をかしげる。ぶっちゃけ頭の上にハテナマークが出てもおかしくない。否、もう出ている…

 

 そして、数分思考にふけってひとつ…

 

 ——うん!思い出せないね!ま、いいけど♪

 

 少女はそれなりにカラッとしていたようだ。

 

 

 

 

 

「ここも飽きたなぁ〜。」

 

 船の端に座りながら足をぶらぶらさせている。時折吹く海風が体を少しヒンヤリさせるも気にするまでもない。

 

 特になにかを考えているわけではないが、おもいつきは突然。きっかけなどない。それが少女の生き方である。これまでも、これからも。

 

「また無意識旅行と洒落こもっか♪」

 

 頭の上に電球のようなものが現れ、ピカっと光ってそのままふっと消える。本人にも仕組みは分からない。最も、本人にとって気にするようなことでもないことは言うまでもない。

 

 自身の思いつきに従って船室へと荷物を取りに行く。荷物、と言っても基本的に軽装だから常備がほとんど。だから、取りに行くものは1つしかない。

 軽い足取りで壁に立てかけているものに手をかける。自身がこの世界に来た時から一緒にいる黒い帽子。少しよれているけど、それは今までずっとかぶってきた証。長年使用してきたけれど、傷はほとんどない。大事にしてきたことが、その帽子を右手でポンッとかぶる少女の笑みからも感じられる。

 

「今日吹く風に流されて、カラッポの私を満たすものに会えるかなぁ?会えたらいいなぁ〜」

 

 1人ごちる少女はまさに夢見る少女。晴れ晴れとした笑顔でドアを再度開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギィー…ギィー…

 

 少女がいなくなった船は、全体が軋むような音をひとりでに響かせる。それは船が泣いているようにも聞こえる。

 甲板にはところどころに血のあとがある。帆にはドクロのマークがあり、海賊船であることが分かる。しかし、端々はボロボロであり、ところどころには大小様々な穴が空いている。嵐の中でも畳まずにそのままであったことがその様を見る限りでも分かる。

 船室は甲板よりも血痕がひどい。拷問部屋と称されても過言ではない。壁一面には全長1m70cmから80cmぐらいの十字架が順番にかけられている。上下左右の端々には木の杭のようなものがささっており、実際はそれで壁に縫い付けていることが分かる。根本からはドス黒く赤い液体が流れた跡あり、壁にも重力に従って伝った跡がある。無論、すでに乾ききっている。また、少女の帽子を立てかけるための杭がドアのすぐ横に1つ刺さっている。

 部屋は元々船員が食事をしたり集まったりする部屋だったはずだが、机や椅子はなく、以前の様子は微塵も感じることができない。よくよく見ると、木の杭に机や椅子の足のなごりがあると分かる。

 全体の空気が重く、明かりの部屋の暗さが相まって怨念が漂っているようにも思わせるふしがある。

 そして最後に、机や椅子がなくなった床には血で大きく文字が書かれている。縦書きで、幼さが感じさせるように、

 

——きゅうけつきがはいったらはっきょうするへや――

 

 ………いろいろ台無しである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女は大空を飛んでいる。

 

 顔は正面を向いているけれど、表情はない。まさに人形のようであり、感情を感じることはない。

 速度はあまりない。帽子が飛んでいくことがないように、無意識に調節しているようである。

 行き先などない。示すは、己の無意識のみ。

 

 並走するニュースクーはその姿に気がつかない。人が飛ぶという奇怪な現象を前にしているにもかかわらず、驚くこともない。見えていない、それが答えである。

 

 そして、近くに船が見えたので、進路を変えてそちらに向かおうとするとき、体にかけているカバンが通りかかる何かに流されて、その中から新聞が1つ落ちた。驚いて、回収しようと首を振り向かせるが、時すでに遅し。風に流され、バラバラになってしまった。——あ~あ、今日もお駄賃が減っていく……——少しがっかりしたニュースクーは諦めて再び船の方へと羽ばたいた。

 

 

 

 

 

 ヒラヒラと舞う新聞。その中から手配書が1つ、外れて飛んでいく。

 

 

 無幻の狂人 コイシ

 懸賞金︰4億1000万ベリー

 




始めはこの位の量で。展開が増えたら文字数もふえるはず!


追記

手配書の金額を2.7億から4.1億に変更しました。
それに伴って第三話を修正しました。

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