魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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第六十五話:騙し合い

 玉座の間。

 博士の頭から小型の怪生物が飛び出したかと思えば、トランスが出現。

 敵意剥き出しのプレシアと対峙する少女は、余裕の態度で話しだす。

 

「え~~っと……まずはこの子の説明からかな~~……」

 

 肩に乗せた小さなクモ型の怪物を指で撫でるトランス。

 

「この子はパラサイト。あなたも知ってるでしょ?」

「ッ! ……あいつの事ね」

 

 説明を受けて、スーツ姿のヤンキー男を思い出したプレシア。

 合点がいったプレシアはリニスに念話を送る。

 

【とことんバケモノ集団ねこいつら】

【えぇ……】

 

 パラサイトの正体が、まさかのあんなモンスター映画のような怪物だと思わなかった。

 

「ちなみにあなたが会った博士はこの子じゃないわよ。この子には今まで影武者をやらせたの」

 

 そこまで言ったトランスは「腹に風穴開けるの見て正解だったって確信したけど」と呟く。

 

 ――どうりで最初の印象から変だと思ったら……。

 

 騙されたとはいえ、プレシアにもわかったことはいくつかある。

 あの博士という男は最初に名乗った通り、目の前の怪物たちにとって守るべき重要人物。こうやって身を犠牲にするのがその証だ。

 

「それで次は、時の庭園の警備装置に引っかからずに私がここまで来た方法よね~」

 

 下唇に人差し指を当てるトランスは、視線を上に向ける。

 

「ん~~、あんまりネタバラしできないから詳しく話せないんだけど~……単純な話し、こっちにはたくさん時間と余力があったってところかなァ……あなたのところの警備装置を攻略するための余力がー」

 

 いやらしい笑みを浮かべる怪物。対して、ギリィと奥歯を噛みしめるプレシア。

 

 警備装置は今まで念入りに最新の状態にアップデートしてる上に、外部からの通信は受け付けないように遮断状態。時の庭園に転移したら即座に監視の網に引っかかるし、離れて転移すれば虚数空間の餌食だ。

 隙のない時の庭園の監視網。それをどうやって攻略したのか、プレシアにはまったく見当がつかない。

 無力化したのか、それとも潜り抜けたのかすらわからない。

 さきほどの口ぶりからしてもタネなど明かしてはくれないだろう。

 

「それで? 見事警備を突破したあなたは、こうやって私をビックリさせるためにここまで来たの? サプライズはこれでおしまい?」

 

 軽口を混ぜたプレシアの疑問。

 トランスはやれやれと肩をすくめて口を逆への字に曲げる。

 

「いやいや、さすがにサプライズはこれだけじゃないし~。ちゃーんと、〝人質〟を助け出すくらいの余裕はあったし~」

 

 トランスの言葉を聞いたプレシアはやはりか、と言いたげな表情を見せた。

 この時の庭園の警備網に引っかからずに侵入できるようなら、人質(アル)を放っておくはずがない。連中がアルの存在を忘れていない限り、まず行う行動だろう。

 すると、残念そうな声でリニスの念話が届く。

 

【……やはり、人質は救出していたようですね……】

【そりゃそうよね。アルはとっくに時の庭園を抜け出して――】

 

 とプレシアが応えていた時、トランスの横に立つ女性が一人。

 プラチナヘアーの白衣を着た女性――つまり、トランスたちに救出された人質であるアルその人。

 

「や~」

 

 なぜか玉座の間にいる白金頭は笑顔を作り、呑気に右手を振っていた。

 

「………………なんでいるの?」

 

 呆れが混ざったプレシアの疑問に答えるように、アルはニコリと笑みを浮かべる。

 

「どうやら君も色々と覚悟を決めたようだし、帰る前に君の頑張りを一目見ておこうかなって思って」

【くッ……!! 人のこと舐め腐りやがって!!】

 

 プレシアは顔面中に青筋を浮かべながら念話で愚痴を零す。

 明らかに自身を見下すような敵の行動に、プレシアの怒りのボルテージもどんどん上昇。

 

【プレシア、落ち着いてください。ここで心を乱しては奴らのペースです】

 

 リニスの念話を受けて、一旦深く息を吐くプレシア。

 冷静な気持ちを維持しつつ、トランスに鋭い視線を向けた。

 

「まあ、いいわ。観戦するならするで勝手にしなさい。巻き込まれたとしても――」

 

 そこまで言ったプレシアは杖の切っ先をトランスに向け、魔法陣を展開。

 

「――私の知った事ではないわ」

 

 目をカッと見開き、雷撃魔法を発射しようと瞬間、

 

「ドッカーーーーン!」

 

 とトランスが大きな声を出す。まるで何かが大きくはじけたかのように、両手を大きく広げたのだ。

 

「「ッ!?」」

 

 相手の予想外な行動にプレシアは若干驚き、魔法を撃ち損ねた。リニスもまた、トランスの意図がわからず混乱している様子。

 

「…………なんのマネ?」

 

 魔法陣を展開しままプレシアが訪ねれば、トランスは小首を傾げた。

 

「う~~~ん、わからない? これから起こるかもしれない事を予告してあげたんだけど?」

 

 ニッコリと笑みを浮かべるトランスが告げた露骨な表現。

 

「ッ!」

 

 すぐに察したプレシアは、自分の傍にあるアリシアが入ったカプセルに目を向けた。

 

「ドカ~~~ン!」

「ッッッ!」

 

 またしても大きめの声を出すトランス。そしてあからさまに驚きを露わにしたプレシアは、すぐに白髪の少女へとサッと顔を向けた。

 プレシアの視線が向けられた瞬間、トランスは握った拳をパッと上向きで開く。花が開いたのか、それとも何かが破裂したのか、どちらとも取れるような表現。

 

 相手の意図を察したプレシアの表情が見る見る青ざめていく。怖いものなしとまで言わんばかりの強き魔導師(はは)は、恐怖という一文字が浮かぶほど怯えていたのだ。

 

【まさか……!?】

 

 ここまで露骨だと、リニスも相手が何を伝えようとしているのかわかっただろう。

 

 アリシアが爆発する――いや、爆殺されそうになっている。

 

 前々から恐れていた脅し、それも一番嫌なタイミングで敵が仕掛けてきたのだ。

 あからさまな怯えの表情を浮かべたプレシアだったが、すぐに殺意の籠った視線をトランスに向けた。

 プレシアの反抗的な態度を見たトランスはきょとんとした表情になる。

 

「ん? あれ? 伝わんなかったかな? じゃあもう一度、ドカ~~――」

「やめなさい!」

 

 もう聞きたくないとばかりに、プレシアは右手を振ってピシャリと言葉を遮る。そして噛みつかんばかりの眼光を敵に浴びせた。

 

「もし私の娘にそんなふざけたマネをしたら――!!」

「死ぬまで私たちを殺す?」

 

 プレシアの言おうとしている事を先回りして言うトランス。

 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる白髪の怪物に対し、プレシアはより表情を険しくした。

 

「死ぬまでどころか死んでもあんたらを滅殺してやる!!」

「ふ~~ん、なるほど……」

 

 ワザとらしく相槌を打つトランスは、不気味に、そして勝気に――笑みを浮かべた。

 

「――なら、存分に殺し合おう」

「なッ……!」

 

 自分が今まで行ってきた脅しが効かない事に対し、プレシアは驚きの表情を浮かべてしまう。

 余裕の態度を崩さないトランスは悠然と語る。

 

「あなたは知らないだろうけど、こっちの目的は七割以上完遂してる。だからあなたと協力関係をこのまま維持する必要はないし、このままあなたと殺し合いに発展したって一向に構わない」

 

 「まあ、そもそも先に仕掛けたのそっちだし」と言葉を付け加えるトランス。

 相手の最もな意見はともかくとして、無暗な脅迫が通じないとわかったプレシア。感情を抑えて、思考を整えながら、声音を低くして問う。

 

「……私を簡単に殺せると思ってるの?」

「いやいや、プレシア様がつよつよの魔導師様なのは知ってる知ってる」

 

 いつも通り茶化すトランスは腕を組みながら難しい表情を作った。

 

「ま~、さすがに~、このままガチコンで戦ったら私瞬殺されちゃうだろうし~」

 

 軽い口調で自己分析を口にするトランス。相手の危機感を感じさせない態度に対し、プレシアは汗を流す。

 

「……なら、なんでそんな余裕の態度なの? あなた、状況わかってる?」

 

 すると、トランスはやれやれと肩をすくめる。

 

「そっちこそわからない? 私を退けても、私よりもつよつよの人が来るってことが」

 

 プレシア様よりもつよつよの人が、と言葉の最後に突きつけれた情報。

 

「そう、そういうこと……」 

 

 相手の言葉の意味を理解し、プレシアは視線を細めた。するとリニスが少し焦り気味に念話を送る。

 

【強がり、の可能性は低いでしょうか? 判断する材料は少ないですが……】

【どちらにせよ、私の状況が不利に傾いてるのは変わらないわ……】

 

 そこまで念話で話したプレシアは『仕方ない。強引だけど……』と頭の中で考えて作戦を切り替えた。

 自身の周りに紫の雷を帯電させた魔力球を展開。さらに杖の切っ先をトランスに向けた。

 

「じゃあ、取引しない? あなたの命は奪わない。それにプロジェクトFも渡すわ。だからアリシアに仕掛けた爆弾を――」

「ダ~~メ」

 

 舌をチョロッと出して、人差し指でバッテンを作るトランス。

 相手がまったく応じない事に対し、プレシアは表情を険しくさせた。

 

「……あなた、命が惜しくないの?」

「別に?  私、自分の命とかどうでもいいし」

 

 即座に答えた怪物。その瞳には、怯えも、恐怖も、一切の余分な感情が宿っていない。

 まさかの回答と態度。さすがのプレシアも驚きを隠せず、息を飲み、汗を流す。

 

「…………組織に忠実な犬って……ワケ? 意外ね」

「まー……犬ではないけど、忠は尽くしてるつもり」

 

 軽く息を吐きながら肩をすくめるトランス。さきほどまでの不気味な瞳は成りを潜めている。

 そこまで話を聞いたプレシアは残った疑問を口にした。

 

「……それならなんで、アリシアの命を脅しに使うの? 必要ないでしょ」

「そりゃあ、無駄な血を流さない方が良いし」

 

 当然の答えだった。戦わないのに越したことはない。

 (プレシア)を無力化するのに一番有効なのは(アリシア)

 そこを度外視してわざわざ戦っても、無駄な労力にしかならないのは当たり前の話だ。

 

「プロジェクトFは? アレを破棄されてもいいの? あなたたちにとっても必要でしょ?」

 

 プレシアは残った切り札を出すが、

 

「そっちもとっくに入手済みって言ったら?」

 

 相手からの返しはあまりにも予想外のもの。

 プロジェクトFの研究データをいつ盗んだ? あの厳重な保管室から? どうやって? と色々な疑問を浮かべたが、一から十まで相手が答えるワケもない。

 プレシアは言葉を震わせそうになりながらも、必死に踏ん張りながら腹の探り合いを続けた。

 

「…………度胸試しなら、後悔するわよ?」

「なら、今からでもそっちで処分してくれてもいいけど? むしろそっちの方がこっちの手間が省けて助かるくらいだし」

 

 汗一つ流さず、眉一つ動かさず、焦りが何一つ見えないトランス。

 やってみれば? と言わんばかりの顔で、プレシアを煽る始末だ。

 さきほど七割方目的が完遂したと言っていたが、プロジェクトFを入手したということなのだろうか。わからないが、相手の態度がそれを物語っている。

 

 不意打ちは失敗、脅しが効かない、取引も通じない、最後の切り札もなくなった。そしてアリシアの命は失われる寸前――。

 

 八方塞の状況にプレシアは俯き、奥歯から血が出そうなほど、ギリィと歯噛みした。

 

「…………そ、そもそも……私とアリシアを生かす理由はなに? ……どうせ後で殺すつもりじゃないの……?」

 

 思わず出た言葉。取引でも脅しでもなく、ただただ追い詰められた上で出てしまった弱音。

 なんの利用価値もない自分とアリシアの命の保証がどこにあるというのか、という疑問。

 

「あなたがフェイトちゃんをどう思っているかは知らないけど、あなたがいないとフェイトちゃん言う事効かないし」

 

 当然の答えが返って来た。

 

 (フェイト)を利用するために、自分を人質にしたいのだ……。

 

 そこまで考えてしまったプレシアは、血が出るほどに拳を握りしめた。

 思わず涙が出そうなほどの、悔しさと不甲斐なさを感じずにはいられない母。

 

 どうする? どうすればいい? なにか打開策は? と、その明晰な頭脳を必死に使って考えを巡らせている中、

 

「それじゃあ、決めましょうか――プレシア・テスタロッサ」

 

 無情にも怪物から告げられた言葉。

 白髪の少女は目を細め、左手を胸に当て、右手をプレシアに差し出す。

 

「無駄死にするか……それとも――娘と自分の未来を守るか」

 

 二つに一つ――。

 

 突きつけれた最終通告に近い選択肢。

 崖っぷちまで追い込まれたプレシアは視線をチラリとカプセルへ――眠る(アリシア)に向ける。

 娘を見つめる母の顔には、悔しさや焦りはなく……ただただ、悲しみと慈しみの感情が宿っていた。

 

 深く息を吐いたプレシア。やがて顔をトランスへと向け、

 

「…………わかった」

 

 と言い、展開した魔力球も魔法陣も消失させた。

 負けたと言わんばかりに、杖を地面に投げ捨てるプレシア。

 

「よくできました」

 

 トランスが満足げに笑みを浮かべる中、

 

【プレシアッ!!】

 

 リニスが念話が届く。主の思考を邪魔しまいとなるべく念話は控えていたようだが、さすがに声をかけずにはいられなかったらしい。

 

【リニス……あなたは時の庭園から逃げなさい。奴らに占拠される前に】

【…………ッ。わかりました……】

 

 現状できる手がないとリニスもわかっていたはず。だからこそ、悔しさを押し殺した声を出しながらも、主の言葉に従う。

 トランスはある物をプレシアの足元に投げた。それは鉄で出来たような簡素な腕輪。

 

「それ嵌めて。魔力封じるから」

 

 なんの遠慮もなく要求を告げるトランス。

 苦虫を噛み潰したような表情をプレシアはしながらも、無言で腕輪を拾い、腕に装着。

 それを見たトランスは息を吐き、こめかみを人差し指で叩きながら独り言を呟きだす。

 

「……さ~~て、これから忙しくなるな~~。折角だしジュエルシードも集めちゃうとして~~……え~~っと……プレシアおば様は使えないから、私が影武者になってフェイトちゃんに命令して~~~……」

 

 なにさせよっかなー、と言うトランスの言葉を尻目に、リニスは時の庭園の脱出を開始したのだった。

 

 

 

 プレシアが捕えられた顛末。

 それをリニスから聞いた新八は汗を流しながら真剣な表情で口を開く。

 

「……つまり、プレシアさんはそのまま掴まって――」

「断頭されたんだな」

 

 と告げるのは腕を組む沖田。

 

「違います! いや確かにプレシアの生首出てきましたけど! アレは偽物ですから!」

 

 怖い事言わないでください! とリニスが青い顔で否定。

 

「プレシアはフェイトのための人質にされてるって聞いたばっかだろ」

 

 土方は呆れた視線を沖田に向けるが、ドS青年は素知らぬ顔。

 そしてクロノはため息を吐いてリニスへと顔を向ける。

 

「とりあえず、彼の事は気にせず話を続けてくれ」

「分かりました」

 

 クロノに促されたリニスは頷き、話を再開する。

 

「――私は時の庭園がクリミナルの構成員たちに占拠される前に脱出を図り、地球の海鳴市へと潜伏してチャンスを待ちました」

 

 「ここまでが、私とプレシアが今に至るまでの大まかな顛末です」と言って、話を終えるリニス。

 事情を聞き終えた土方は腕を組んで「なるほどな」と頷く。

 

「そして現れたアースラの連中に接触して、今こうして俺たちの前に居るってところか」

「はい」

 

 と頷いたリニスは、ふぅー……と息を吐き出して、どこか悲しそうな笑みを浮かべる。

 

「できれば私もプレシアも、事がここまで大きくなる前にフェイトとアリシアを自由にしてあげたかったんですけどね……」

 

 リニスの話を聞いていたなのは、アリサ、すずか、新八、山崎、ユーノはなんとも言えない顔。六人は少し悲しそうな表情で俯くのだが、

 

「うおォォォォォォォォ!!」

 

 と、神楽は咆哮。怒り心頭と言わんばかりの顔で会議室のテーブルに鉄拳をめり込ませたので、テーブルの表面に亀裂が走る。

 突然の神楽の行動に沖田やなのは以外の一同はビックリするが、怒れるチャイナ娘は両の拳を握り絞めた。

 

「あの白髪クソガキ、想像以上にマジでクソッタレだったネ!! 今すぐにでも時の庭園に乗り込んで顔面タコ殴りにしてやるアル!!」

「ちょッ、ちょっと神楽ちゃん!! 共感したのはわかるけど!! でも今は落ち着こう!!」

 

 怒り任せに暴走しそうになる神楽を新八が慌てて羽交い絞めして止める。続いてアリサやすずかも神楽を抑え込む。

 

「時に庭園に行く手段あんた持ってないでしょうが!!」

「か、神楽ちゃんの気持ちはわかるから! ね!」

 

 なんとか気持ちを静めた神楽は、ふんす!! と椅子に座り直し、腕を組む。

 相も変わらず共感性の強いチャイナ娘であった。

 

「あ~……そうだった……思い出した……」

 

 そんな中、アルフが右手で目元を覆ってぶつぶつ何か言っていることに新八が気づく。

 

「あの……アルフさん。どうしたんですか?」

「……銀時も言ってったっけ……あの時のプレシアってアイツだったんだよなー……」

「あ、アルフ……さん?」

 

 新八の言葉にまったく反応しない狼の使い魔。彼女の異変にその場にいるほとんどの人間が気づき始め、使い魔に対して訝し気な視線を送る。

 やがてアルフは歯をギリィと噛み締め、目を吊り上げ、

 

「チクショォォォ!! 思い出したぁぁぁぁぁ!!」

 

 と叫びながら両手で机をバン!! と叩く。

 

「〝あの時〟フェイトに変なことさせたのってプレシアじゃなくてあのトランスとかいう奴だったのかぁぁぁぁぁ!!」

「どうしたアルフさんんんんんんん!?」

 

 突如としたアルフの変貌に新八は仰天し、他の面々もギョッとした。

 新八は頬を引き攣らせながら恐る恐る質問。

 

「…………あ、あの……アルフさん。い、一体……どうしたんですか? ぼ、僕たちにはまったくなんの話だか把握できないんですけど……」

「あ、あぁ……そうだね。……あんた達には中間報告に行った時の話を聞かせてなかったよね」

 

 すぐに怒りを鎮めたアルフは冷静な態度に戻り、困ったように頭を掻く。

 

「どう……説明したらいいんだろうねぇ……。つうかあんまり説明したくないんだけど……」

 

 アルフの煮え切らない態度。対して新八や他の面々は訝し気に眉を顰め、腕を組んだ土方は鋭い視線を向ける。

 

「中間報告って言うと映画であった、お前とフェイトがジュエルシードの回収経過をプレシアに報告しに行った時の話だよな? その時なにがあった?」

 

 狼の使い魔は「しょうがない……」と諦めたようにため息を吐いて、説明を始める。

 

 プレシアに変身したであろうトランスが中間報告にやって来たフェイトに命令。

 それは時の庭園の侵入者(?)である猿飛あやめと服部全蔵に尋問か拷問か分からない仕打ちの強制。内容は、サディスティックなプレイをさせたり、ケツにロウソクぶっ刺したり、果てはプレシア(トランス)にサディスティックなプレイをさせるというもの。(詳しい内容は第三十六話と第三十七話をチェック)

 

「なんで全蔵さんとさっちゃんさんが出てくるんですか!? つうか銀さんが言ってたプレシアさんが変態がどうのってそのことだったんですか!? とんでもねェ風評被害受けてますねプレシアさん!!」

 

 そんで話を聞いた新八は立ち上がって声を上げる。さすがに聞かされた話があまりにも予想外過ぎるのだから仕方ない。

 そして同時に、前にアースラのブリッジでトランスと銀時が話していた話しの内容がやっと分かった新八他一同。

 すると神楽がアルフに顔を向ける。

 

「にしても、アルフ。なんでクリミナルの連中と話したあの時に、さっきみたいな反応しなかったアルか? 銀ちゃんは気付けたのに」

「いや、さすがにあの時はフェイトのことやプレシアのことが衝撃的過ぎたし、そのことで頭がいっぱいで銀時みたく気にする余裕なんてこれっぽっちもなかったよ。その後だって、フェイトの為にどう動くかってことばっか考えたし……」

「なるほど、完全に忘れてたアルか」

 

 と言う神楽の言葉に、アルフは「まー、うん」と頷くのだった。

 やがて混乱気味に頬を引きつらせるのは山崎。

 

「そもそもだけどフェイトちゃんにアブノーマルプレイ強要した意味はなんなんですかね? 前から思ってたけどあのトランスって子の思考回路、ねじり曲がり過ぎじゃありません?」

「まるで近藤さんみたいだァ」

 

 と沖田が言うと、

 

「ええええッ!? 総悟ォ!?」

 

 心外と言わんばかりに驚く近藤。

 

「フェイトみたく、プレシアさんの悪評を広めたかったんじゃない?」

 

 呆れ顔のアリサの言葉に、土方がタバコを咥えながら告げる。

 

「悪評って……完全に別のベクトルの汚名になってんじゃねェか。まぁ、ある意味社会的に殺せるかもしれんが……」

「あと、銀さんは予想を完全に逆に外してますし……僕たちと違ってプレシアさんに〝直接会ってる〟割に……」

 

 と新八が呆れた声を漏らす。

 ちなみに銀時の外した予想とは第四十三話での、

 

『今まで会ったプレシアは私か、それとも本物か。どっちだと思う?』

『最初の冷徹ババアが偽モン。そして再会した変態ババアが本物であることにワンチャン賭けようじゃねェか』

 

 という、トランスとのやり取り。

 ちなみにこのやり取りを本物のプレシアさんが知ったら天パは髪をむしり取られていただろう、と新八は予想。

 

「クリミナルの人たち、よっぽどプレシアさんのことが嫌いだったのかな?」

 

 すずかが困惑した表情で告げ、沖田が顎を手で触る。

 

「なるほど、嫌いか。つまり報復行為ってことかもしれねェな」

「報復……ですか?」

 

 小首を傾げるすずかに、沖田は真剣な声で語りだす。

 

「命は奪えないからこその社会的抹殺。嫌いな奴の評判を徹底的に地に落とす点で見れば理に叶ってる部分もある。フッ、やるな……今度土方で試してみるか」

「おい! 最後にボソッと何言いやがったお前!! なんだそのほくそ笑み!!」

 

 と土方が怒鳴る中、新八は「いやそういう推察とかは今はいいですから!!」とツッコミを入れてからガバッとアルフに顔を向けた。

 

「それよりアルフさん! 全蔵さんとさっちゃんさんまでどうしてこっちの世界にいるんですか!?」

「そんなのあたしは分からないよ……。銀時もあの変態共に質問攻めしてたけど、あいつら結局何にも答えないで姿消しちゃったし」

 

 アルフは困り気味に返し、腕を組んだ土方はため息を吐く。

 

「今は御庭番の忍者共の事は後回しだ。目的はなんにせよ、見つけた時にとっ捕まえて尋問でもなんでもすればいい」

 

 するとクロノが言葉を挟む。

 

「しかしだ。あなたたちの世界の住人とはいえ、少なからずこの事件に関与している可能性があるなら、完全に無視するワケにはいかない」

「下手をすれば、クリミナルたちに協力している……なんて可能性もありえますしね」

 

 とリンディも言葉を付け足す。

 二人の意見を聞いたすずかは不安そうな表情を新八へ向けた。

 

「新八さん。話に出て来た『ぜんぞう』さんや『さっちゃん』さんて前に教えてくれた忍者さんたちですよね? 実は、悪い人たちだったんですか?」

「安心するアル」

 

 そこで口を挟むのは神楽。

 

「あいつらはイボ痔でドMストーカーなだけで悪人ではないネ」

「それじゃただの病人と変態なだけじゃない!! 忍者要素どこ!? あと言っちゃなんだけどストーカーって悪の部類よ!!」

 

 とアリサはツッコミ、沖田は近藤の肩に手を置く。

 

「ですって、近藤さん」

「…………」

 

 新八の姉をストーキングする男は少女の言葉で見る見るしぼむ様に落ち込んでいた。

 落ち込む近藤など目に入ってないアリサは捲し立てる。

 

「そもそもなんであんたたちの世界からやって来る奴らは揃いも揃って変な特徴ばっか持ってんの! もうちょっとマシな侍と忍者は出てこないワケ! つうかこんな話し前もした気がするんだけど!!」

「まったくだな!」

 

 クロノも強く頷いて同意。この短期間で『江戸』の住人たちのアクの強さを嫌というほど味わったのだから、仕方ない反応だ。

 とはいえ二人の言い草に内心ショックを受けた新八は、悲しくなった。

 

 すると沖田がムッとした表情で腕を組む。

 

「聞き捨てならねェな。俺らはいっぱしの立派な侍だぜ?」

「黙れ腹黒ドS!」

 

 とアリサ。

 今度は近藤が腕を組んで毅然とした態度で。

 

「総悟の言う通りだ。あのような変態ストーカー忍者と我ら立派な武士を一緒にして欲しくない」

「黙れ恥部露出変態ストーカー!!」

 

 と新八。

 

 話を脱線させてあーだこーだ言い出す江戸組と魔導師組。

 その会話を止めるために土方が「とにかくッ!!」と言って机をバン! と叩けば、全員は話を中断。

 周りの視線が自分に集まったところで、鬼の副長は声を荒げる。

 

「忍者共は後回しにしろ!! 問題はクリミナルだ!! クリミナル!! もう事件の真相や連中の目的は全てわかったんだ!! そっちに意識を集中させるぞ!!」

 

 沖田が「まァ、それに」と言って言葉を付け足す。

 

「あの御庭番の連中があんな得体の知れない奴らに肩入れしてると考え辛いですしねェ。頭の隅に置いておく程度でさして問題ないでしょうし」

「うむそうだな」

 

 と近藤は頷き、リンディとクロノへと顔を向ける。

 

「猿飛あやめ殿と服部全蔵殿は元は幕府に仕えていた御庭番の忍び。あのような悪逆非道の輩なんぞに手を貸すとは到底思えん」

「?」

 

 江戸の内政事情を知るはずのないクロノは、腕を組んで怪訝な表情を浮かべた。

 クロノの疑問に気づいた新八は「ええっとですね……」言って説明しようとすると、リンディが顎に指を当てながら口を開く。

 

「つまり、近藤さんたちとは役職が違うが、話に出てきたお二人もまた政府に仕えていた人間ではある、という事でいいでしょうか?」

「え、えェ。概ねその通りです」

 

 新八は少し戸惑いながら頷く。

 さすがは提督という役職に就いていると言うべきか。聞き慣れない単語を耳にしてもすぐに頭で整理して、自分たちの世界の基準に当て嵌めてまとめたようだ。

 いや、そもそもリンディは地球文化――それも日本の文化に嵌っている。もしかしたら昔の日本の政治の内容も予習済みかもしれないから、スラスラまとめられただけかもしれないが。

 リンディの言葉を聞いたクロノはなるほどと頷くが、また怪訝な表情を浮かべる。

 

「しかし、君たちや坂田銀時がこちらの世界に来た理由は聞いたが、その『おにわばん』の二人はどういった経緯で時の庭園にやって来たんだ?」

「きっと……」

 

 近藤は腕を組み、真剣な表情で語りだす。

 

「時空間忍術が失敗して『リリカルなのは』の世界へとやって来てしまったのだろうな」

「どこのナルトだ!!」

 

 と新八がツッコム。

 土方が腕を組んで自身の推理を口にする。

 

「まァ、服部と言う奴は知らんが、猿飛とか言う女忍者はとっつぁんと縁がある。きっと妙な頼み事でもされて瞬間移動でもさせられたってところだろうよ」

「とりあえず、後で『はっとり』さんと『さるとび』さんの特徴を教えてください。お二人を発見次第、こちらで保護して事情を伺おうと思うので」

 

 リンディの話を聞いて新八は「分かりました」と頷く。

 すると神楽が語りだす。

 

「服部は前髪で目を隠したイボ痔アル」

「な、なるほど……前髪はわかりやすい特徴だな……」

 

 微妙な顔をしながらも素直に応えるクロノ。

 

「それでさっちゃんは眼鏡を掛けた変態ネ」

「いや、眼鏡はいいんだが……その、痔とか変態とか確認しづらい特徴を言われてもな……」

「そうかァ? 眼鏡の変態って有力な情報だぜ」

 

 首を傾げる沖田は新八を指さす。

 

「そこの新八(めがね)を参考にすればいいんだからよ」

「おいコラテメェェェェェ!! それどう意味だゴラァァァァァァ!!」

 

 一気にブチ切れた新八は立ち上がり握り拳を固めた。

 

「なにを言い出すアルか!」

 

 と新八に続いて怒鳴るのは神楽。

 

「神楽ちゃん……」

 

 まさかあのチャイナが自分の為に怒ってくれたのか? と思って、新八は嬉しそうな表情を浮かべてしまう。

 そして神楽は言い放つ。

 

「ぱっつぁんとさっちゃんの変態のベクトルは違うネ! そこを履き違えんなヨ!!」

「おいコラチャイナァァァァァァ!!」

 

 と新八は大激怒。

 

「すまねェ。俺が間違ってたぜ」

 

 沖田は素直に謝罪し、新八は涙を流しながら食って掛かる。

 

「なんでそこで素直に謝んの!! そんな態度されたら僕がマジで変態みたいじゃん!! ちょっ、やめて!! マジな雰囲気出さないで!! 変な印象をなのはちゃんたちに与えないで!!」

 

 間違ってんのはこいつらだから!! と新八は弁明中。

 青少年弄りを見ていたクロノはため息を吐き、腕を組んで神楽と沖田にジト目向ける。

 

「君たちの関係はあまり詳しくないから言いたくないんだが、人を弄るのも大概にした方がいいぞ?」

「クロノくん!」

 

 自身の味方になってくれたクロノの言葉を聞いて、新八は目を潤ませる。いつも弄り役になる彼からすれば執務官の言葉は結構嬉しい。

 

「とりあえず、猫の使い魔のお陰で事件の裏事情は大体分かった」

 

 そう言って話を軌道修正するのはタバコに火を付けた土方。彼は煙を吸って吐いた後に言葉を続ける。

 

「なら、俺たちがやるべきことは単純だな。プレシアが残した反撃の糸口を使って連中を一網打尽にする、って言ったところか」

 

 真選組副長の言葉を聞いて新八、山崎、アリサ、すずかの表情は自然と引き締まっていた。

 すると真剣な表情のリンディは手を組む。

 

「えぇ……そうですね。なにより全てのジュエルシードが両陣営に集まっている以上、クリミナルはいつ姿を消してもおかしくありません。人質救出のチャンスを考えても、次に打つ一手は失敗できませんね」

 

 上司の言葉を聞いたクロノは顎に手を当てて険しい表情を浮かべた。

 

「問題は……フェイトやプレシア、そしてアリシアを助けるためにも、どのようにこちらが先手を取るかだな……」

 

 クロノの出した議題。

 そして最初に口を開いたのが土方。

 

「まー……リニスがいる以上、時の庭園の場所はわかる。その上、その存在もバレてないと考えるなら――」

「時の庭園に乗り込んで連中をぶっ飛ばすアル!」

 

 土方が言い終わる前に神楽が掌にバシッと拳を叩きつける。

 

「待て待て、さすがに安直過ぎだ。人質がいるだろうが。もうちょっと連中の虚を突くような捻りを入れる必要がだな……」

 

 すると今度は沖田が真剣な表情で口を挟む。

 

「それじゃあ土方さんが時の庭園に一人で乗り込み、マッパで阿波踊りするというのはどうでしょう?」

「どうでしょう? じゃねェだろう!! なにシリアスな顔で下らねェ作戦提案してんだテメェは!! 俺が恥かくだけじゃねェか!!」

 

 青筋浮かべながら土方がツッコム。

 

「なら、マッパで踊る土方に『俺を殺してくれ』というボードを首に下げさせる。そんで土方が奴らになぶり殺しにされている間に人質救出成功。ミッションコンプリート」

 

 そこまで言って親指をグッと上げる沖田。

 

「それただ、お前の土方抹殺ミッションがコンプリートされただけじゃねェか!! つうかそんな変質者見たら殺すって感情が沸く前にただただ不気味で戸惑うわ!!」

 

 怒鳴る土方は親指を下にさげた。

 すると近藤が手を出して「いや待てトシ!」と待ったをかける。

 

「総悟の案はあながち間違いじゃないかもしれん!! 連中の目を引いて思考力を奪い救出の時間を稼ぐという点では有効ではあるぞ!!」

「いや、まあ……たしかにそうではあるかもしれないけど……」

「っということで、俺がフェイトちゃんたちのために一肌脱ごう!!」

 

 そう力強く宣言した近藤は、上着を一瞬で脱いで上半身裸姿にチェンジ。

 

「あんたそれ言葉の(あや)じゃなくてマジで素っ裸になるつもりだろ! つうか今脱ぐな!! いや時の庭園でも脱いじゃダメだけど!!」

「とりあえず裸はやめてください!! 管理局の名誉にも関わるから!!」

 

 土方に続いてクロノもツッコム。だが近藤は引き下がらない。

 

「ならばトシ! クロノくん! 一体どうやって奴らの目を引けばいいんだ!!」

「少なくても裸以外で目は引けると思うけどなー!!」

「あなたもしかして露出狂なのか!?」

 

 真選組を中心にあーだーこーだ作戦を言い合っている時に、新八は『敵の目を引く』という言葉である案を思いついてしまった。

 現状の事件の様相は映画とはかなり違うものになってしまった。なのに、

 

 ――フェイトちゃんとなのはちゃんの……全部のジュエルシードを賭けた勝負でクリミナルたちの目を引く……。

 

 時期的な事も相まって、映画の展開をなぞる形のモノが頭を過ってしまった。

 人間の心理上いたしかたない部分ではあるが、思いついた案はあまり作戦としてはよろしくない。

 映画通りの展開にワザと持っていくというのも心理上抵抗感はあるが、一番の問題は相性だ。なにせフェイトの持ってるデバイス相手では、遠距離攻撃主体のなのはは不利過ぎてしまう。

 あと単純な話し、男としても年上としても、幼い少女に負担を押し付けるのは後ろ髪が引かれる。

 

 頭の中でつい考えてしまった案のせいで、新八の視線は自然となのはの方へと向いてしまう。

 その時――、

 

「……どれだけ……辛かったんだろう……」

 

 今まで口を開かず俯いていたなのはから、

 

「フェイトちゃん……」

 

 とても小さいな言葉ではあるが、聞こえたのだ――悲しみの籠った言葉が。

 

 今まで何度も対峙し、フェイトを気にかけてきたなのは。彼女の置かれた状況の真実を知り、心を痛め、思わず口から気持ちが漏れ出してしまっているのかもしれない。

 

 リニスの話を聞いている間、ずっと悲しみの感情があらわになった沈痛な表情をしていた少女。

 スカートをギュッと握りしめ、まるで自分の事のように悲痛に満ちた表情を浮かべていた。

 

 悲痛な気持ちがありありと伝わって来る少女を目にした新八はなんとも言えない表情で「なのはちゃん……」と呟く。

 

 だが、悲しみと憂いの感情が入り混じるなのはの表情が、徐々にだが真剣なモノへと変化していく。

 まるで瞑想するようかのように目を瞑り、深く息を吐く少女。いくばくかの黙思の後、彼女がまぶたを開ければ――その瞳には強い意志の灯が宿っていたのだ。

 

 なのはは意を決したように顔を上げ、自分の左隣に座る親友たちに顔を向ける。

 

「ねえ、アリサちゃん、すずかんちゃん」

 

 名前を呼ばれ、顔を向ける二人。

 

「助けよう。フェイトちゃんも、プレシアさんも、アリシアちゃんも――みんなで!」

 

 両手をグッど握りしめながら力強く言葉を送る少女。

 なのはの確かな気持ちを受け取り、親友たちは表情を明るくさせ、そしてしっかりと意思を返す。

 

「もちろん!」

「うん!」

 

 アリサ、すずかの応えになのはは笑顔を返す。

 

 ――なのはちゃん、すごいなァ……。

 

 気持ちを切り替えて親友たちの気持ちを後押しする幼い少女の姿に、新八は素直に関心してしまう。

 銀さんとは違う形で、中心になって周りを引っ張っていく人柄があるんだな、と新八が思っていると、

 

「あの、新八さん」

「……えッ? あッ、ん?」

 

 意識外から思わず声をかけられた青年は若干ビックリ。

 いつの間にか自身の近くにいたなのはは、少し言いづらそうにしながらも声をかける。

 

「えっと……その……実はフェイトちゃん救出のための作戦を、ちょっと前から思いついてて、聞いてもらってもいいですか?」

「えッ? う、うん。いいよ……」

 

 ――あんな悲痛な表情しながら、作戦も考えてたんだ……。

 

 ただ悲しいという感情だけで考えを終わらせていなかった九歳の少女にまた関心してしまう新八。つうかホントに九歳? と思わずツッコミの性が疼く。

 

 真選組やなのはだけではなく、他の面々も今後の作戦案を口にしだす。

 

 紆余曲折ありつつも、各々が前向きにテスタロッサ一家救出に向かって気持ちと思考を前面に押し出し始めている。

 そんな状況にリニスは心の底から嬉しそうな表情。

 

 そしてリンディもまた、

 

(さて……これから色々と詰めていかないとですね……)

 

 今後の為に必要な要素を頭の中でまとめていたのだった。




第六十五話の質問コーナー:https://syosetu.org/novel/253452/75.html

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