魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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今回、『カオスオーバー』さんと『閃火・ムーンライト』さんの投稿キャラが登場します。


第六十話:大魔導師の過去

「アリアリアリリリシアァァァアアアアッ!!」

 

 どういうことだオラァァァァッ!! と気持ちを込めて、眼光を光らせたプレシア。白衣の男の顔面を鷲掴み、後頭部を折れた大木の幹に叩きつけた。

 

「――ァァァァアアアウチッ!!」

 

 と、悲鳴を口から漏らす男の後頭部は、バコォーン!! と木にめり込む。

 

「アリシアリリシアシアアリシア!?」

 

 男の顔面を鷲掴み、目の血走ったプレシアは必死な形相で問いかけた

 白衣の男が口から出すのは、苦悶ではなく、

 

「一体いつまで言語中枢イカレてんの!? いだだだだッ!! なにこの握力!? 大魔導師じゃなくて狂戦士じゃん!!」

 

 聞いてた話と違う!! といった焦りと困惑と悲鳴。

 

「私の娘はどこだ!! アレはなんだッ!! 説明しろボケ!!」

「人語に戻っても支離滅裂!!」

 

 どうにかギリギリ理性が戻ったプレシアはいきなり無茶苦茶な問いかけ。

 

「私のアリシアッ!! 私の娘ッ!! だから私の(アリシア)はどこだァァァァッ!!」

 

 必死に問い詰める母(狂人)。

 すると白衣の男はプレシアの後ろ――無機質な瞳で右手に刀を持った金髪の少女――に、ビシッと指を突きつける。

 

「あ、あなたの娘はあそこにいるじゃァァアアりませんかーーー!!」

「今更とぼけるんじゃないわよッ!! 〝アレ〟はあの子の体を乗っ取った別の『ナニカ』ッ!! さっき〝あなたが説明した〟通りねッ!!」

 

 プレシアは顔面を掴む右手にさらに力こめ、顔と頭を圧迫。

 白衣の男は「いだだだだだ!!」と悲鳴を漏らしながら、ジタバタ体をバタつかせる。

 

 信じたくはなかったが、この事実を受け入れる他ない。男の話を聞き、娘の様子を観察するうちに、ようやく状況を理解してきたところなのだ。

 

 受け入れがたい状況をなんとか飲み込んだところで、プレシアの手の力が弱まり、

 

「よ、ようやく理解してくれましたか……。娘ジャンキーの狂戦士さん。まったくもォ~、すでに頭に老化現象が――」

「…………」

「いだだッ!! いだだだだだだだッ!!」

 

 とりあえずムカついたので右手に力を込め直すプレシア。

 

 さきほど、謎の白衣の男はプレシアにこう説明した。

 今、アリシアの体を操っているのは、アリシアと言う少女の意思ではない――少女の持つ刀型のデバイスなのだと。

 

「私の大事な〝娘〟はどこに行ったの!?  体だけあったって、そこに(こころ)がなきゃなんの意味もないのよッ!!」

「いだだだ!! いだだだいだいだいだいッ!!

 

 プレシアの目から涙が零れ始める。

 

 もしかしたらアリシアが生きているかもしれない、という希望を抱いた矢先にこれだ。娘の体は得体の知れないデバイスが乗っ取ってしまった。

 会社の次はデバイスに奪われる。

 自分と娘に安寧をもたらすことのない神すら、呪ってしまいたい気分だ。

 

「今もあの子の体に娘の意思――魂は残っているの!? 答えなさいッ!!」

 

いだだだだばぼじょばがばだだもばじょばがばま!!

 

 とりあえず悲鳴しか返ってこないので、答えを聞く為に握力を弱めるプレシア。

 白衣の男は頬を汗を流しながら、頬を引き攣らせつつ答える。

 

「…………え、えェ……ちゃんと残っていますよ……。ただ、刀に体を乗っ取られている限りは、あなたの娘さんの意識が表に出ることは永遠にないと思いますが……」

 

 プレシアは「ならッ!!」と言って白衣の男の顔面を離す。

 「ぉぅ……!」と尻もち付く男など放っておいて、プレシアはアリシアに向き直る。

 

「あんな剣、折ってしまえば問題ない!!」

 

 射殺さんばかりの視線をアリシアが手に持つ刀に向けつつ、プレシアは左手に出現させた杖の先端を刀に向けた。が、白衣の男は首を横に振る。

 

「それは無理ですよ」

「なんですって!?」

 

 プレシアは白衣の男をキッと睨みつけ、目を光らせながら再びアイアンクローの構え。

 

「タイムタイムタイムタイム!!」

 

 白髪の男は木に背中をくっ付けながら、横向きにした手のひらの中心に縦にした左手を差し込む、待ったのポーズ。

 

「そ、その(デバイス)は魔力を吸収する機能を有していまァァァす! 魔法が効かなくてはどうしようもないでしょォォォ!」

 

 慌てた白衣の男の説明。たぶん嘘はないだろう。

 話しを聞けば、プレシアはありえないとばかりの表情。思わず、無機質な瞳で自分と白衣の男を見るアリシアが持つ、刀に目を向ける。

 

「そんなデバイス……私でも聞いたこと……」

「……あなたが知らないからと言って、別に『ない』と断言できるモノではないでしょう」

 

 余裕を取り戻したのか、白衣の男は立ち上がりながらやれやれと首を横に振る。

 

「それに製作者の名を聞けば、魔力吸収の能力を備えているデバイスが〝存在している可能性がある〟と思うはずですよ」

「なら勿体ぶった言い方をしないでさっさと教えなさい!! 一体あんなふざけたデバイスを誰が作ったって言うの!?」

 

 白髪の男は待ってました言わんばかり口元を吊り上げ、告げた。

 

「――アトリス・エドワード」

 

 プレシアの目が見開かれる中、男は言葉を続ける。

 

「この名前、あなたもご存じですよね?」

 

 そんなの魔導師――いや、ミットチルダで教養を身に着けた者なら誰だって耳にする名だ。それこそ、歴史の授業で耳にするほどの人物。

 だが、その名を耳にしたからといって、はいそうですかと信じるワケもなし。

 

「あまりふざけたこと抜かしているとただじゃおかないわよ?」

 

 プレシアの目が一層鋭くなった。

 デバイス技術の基礎を生み出したとか、アルハザードに到達したとか、そんな経歴が残った人間がアトリス・エドワード。なら、確かに魔力を吸収するデバイスを作り上げていたとしてもおかしくはないが。

 

「たしかに、アトリス・エドワードは教科書に載るような天才よ。でもね? それは初期のデバイスを生み出した人物の一人だからであって、そんな魔力吸収とか人体乗っ取りとかが出来るシロモノを作製できる技術が当時あったかは、甚だ疑問ね。そもそも現在だって、そんなデバイス生み出そうとして、生み出せるモノではないはずよ」

 

 自分の娘の体を乗っ取っているデバイスがアトリス作の物であるなど、常識的な考えを持てばありえない話だとすぐに分かる。

 アトリスが作製したと思われるデバイスは未発見のモノが数多くあると言われてはいる。が、発見されても起動できないくらい。もし起動できたとしても、特異な能力は確認できないという話がほとんど。

 白衣の男は、両手を軽く上げながら軽い口調で。

 

「まーまー、そう喧嘩腰にならず……。現状は『アトリス・エドワードが作ったされるデバイス』が存在して、あなたの娘の体を乗っ取っているってことなんですよ」

「ならなに? 魔力を吸収するトンデモ機能を有したアトリスが作ったデバイスが、人様の娘が偶然手にして、その体を乗っ取られた、とでも言いたいワケなの? まさに天災の起こした不幸な事故ね」

 

 そこまで言って、プレシアはより視線を鋭くし、怒気を強める。

 

「それとも――あんたが強引に渡したのかしら? 自分の作ったデバイスを」

 

 紫色の魔力と共に、プレシアの周りにバチバチと電気が放電し始めた。

 

 これは下手したら、目の前の科学者然とした男が、この人間の体を乗っ取るという奇妙なデバイスを製作し、娘であるアリシアに渡したと考える方が自然である。理由は今のところ分からないが。

 

「……まァ、どう推理するかは、あなたのご自由に」

 

 汗を流す白衣の男はふっと鼻で笑った後、「ただ」と言って言葉を続ける。

 

「あなたの娘――アリシア・テスタロッサの現状はさきほど私が説明した通り」

 

 白衣の男の言葉にプレシアは苦虫を嚙み潰したような顔になる。事実がどのようなモノにせよ、アリシアが今現在肉体をデバイスのようなモノに乗っ取られているというのは事実なのだ。

 

「なるほど……」

 

 プレシアは目を閉じ、怒りを静め、静かに言葉を紡ぐ。

 

「アリシアの体はデバイスに乗っ取られ、そのデバイス自体に魔法は効かない。現状、アリシアの肉体を取り戻す手段はない……」

「さすが大魔導師。ご理解が早くて助かる」

 

 パチパチと白衣の男は手を叩く。

 

「なんて――」

 

 プレシアは力強く土を蹴り、

 

「い う わ け ないでしょがァァァァ!!」

 

 白衣の男のどてっぱらに飛び膝蹴りをお見舞いした。

 

ア゛ウ゛ヂッッッッ!!」

 

 口から唾液と悲鳴を漏らす白衣の男。彼の体はちょっと浮き上がり、やがて横にバタリと倒れて、撃沈。

 

 邪魔者を排除したプレシアは、すかさず後方に振り向く。

 

 杖をアリシアに向け――いや、厳密には持っている剣に向け、紫色の雷撃を放つ。

 

 だが、白衣の男の言葉通り剣はまったくダメージも受けず、微動だにすらしない。当たった雷撃が霧散してしまうところを見るに、魔力を吸収されたのだろう。

 魔力が効かないと言う話は事実だったが、かといってプレシアは動揺していない。寧ろこれは想定の範囲内。

 

 一瞬の隙をついた攻撃で、アリシアの体を乗っ取っている刀の気を逸らしたと読んだ。脱兎の如く駆け出し、娘の左手に向かって手を伸ばす。無論、剣で手を切られるかもしれない、なんてリスクを気にしている余裕もない。

 剣を持つ手さへ抑えれば、子供と大人の力の差。握っている剣を引き離すくらい簡単なはずだ。

 魔力が効かないなら物理的に娘と刀を引き離せばいいだけの話なのだ。

 

 ――取ったッ!!

 

 と確信したが、

 

「無駄」

 

 『アリシア』はプレシアの手首に峰内を食らわせ、手の軌道ずらし、そのまま峰を母の肩に叩きつける。

 

「うッ!?」

 

 たかだか五歳の腕力とは思えないほどの圧力と打撃が肩に加わり、プレシアは苦悶の声を漏らす。両手両膝を地面に付けてしまう。

 しかも、次に起こる現象でよりプレシアの顔は苦しみに歪む。

 

「魔力……が……!」

 

 服越しとはいえ、自分に(デバイス)の刀身が触れているからか、凄い勢いで魔力を吸われるプレシア。

 魔力量の多い彼女だからこそ魔力にはまだ余力はある。が、これが低ランクの魔導師だった場合は、砂漠の砂が水を吸うように、たちまち魔力を吸収されていたに違いない。

 

「この器は幼く、貧弱で脆い。その上魔力をまったく持たない」

 

 『アリシア』は刀を持たない利き手とは反対の手――右手を顔の前まで持っていき、握っては開く仕草を繰り返す。

 

「だが、本体である『私』の魔力を使って強化すれば、成人女性の突撃を防ぐくらいは造作もないことです」

「まだ……よ……!!」

 

 プレシアは必死な思いで、杖をアリシアの体に向ける。

 刀を魔法で破壊することは叶わない。でも、娘の体に非殺傷設定の魔法を当てることで気絶させ、デバイスの呪縛から解く、という方法が残っているはずだ。

 幼いアリシアなら、それほど大きな魔力攻撃でなくても気絶を狙えるだろう。

 

 だが、

 

「ッ……!」

 

 杖を持つプレシアの手は震え、瞳から涙が流れる。

 娘でないモノが今のアリシアの体を操り、自分に危害を加えていると頭では理解している。

 でも心が――魔力弾を幼き愛娘に撃たせてくれなかった。

 

「……高い魔力量。高濃度の魔力の充填を確認できます」

 

 アリシアの口は喜ぶような言葉を出すが、その声音も顔もまったく平坦なモノ。まさしくデバイスのような機械染みたものだ。

 無機質な瞳がチラリと、プレシアへと向く。

 

「あなたは〝必要〟なので、殺しません」

 

 アリシアは無機質な目で苦しむ母を見下ろす。

 

「だが、一度無力化を――」

「……もうやめなさい」

 

 すると、腹を抑えた『白いワンピースを着た、褐色肌の白髪の少女』が、アリシアの肩をポンと叩く。

 無機質な目がジロリと、青い顔をした白髪の少女を見据える。

 

「何故ですか? プレシア・テスタロッサは『私』を排除しようとしました。一度、無力化する必要があります」

「いやいや……彼女の力じゃ、あなたを排除することはできないって」

 

 引き攣った笑みを浮かべて右手を軽く振る少女。そして、彼女の視線がチラリと、地面に倒れ伏すプレシアへと向く。

 

「彼女自身がよ~く理解して――いたたた……!」

 

 痛みに耐えきれなくなったのか、お腹を抑えながら蹲る白髪の少女。

 

「…………分かりました」

 

 アリシアは刀の峰をプレシアの肩からどける。対して、プレシアは過度な魔力消費により息を乱し、汗を流す。

 

「ハァ、ハァ、ハァッ!! ……くッ!」

 

 だが息も整わぬまま、プレシアは白髪の少女を睨み付け、

 

「必ず……あんたたちからアリシアを…………ん? いや、えッ? んん? ちょっと……待って……?」

 

 プレシアは〝白髪の少女の背中〟を見て目をパチクリさせる。

 背中を丸め、お腹を両手で抑えながら「ぅぅぅ……いつつつ……!」と唸り声を上げている少女。

 今さっきまでいなかった存在に、ようやく気付いたプレシア。反骨心が如実に表れた怒りの表情が、戸惑いの表情に変わっていた。

 

 視線を受けて、白髪の少女は顔だけプレシアへと向け、頬を引き攣らせながら、フッと口元を吊り上げる。

 

「……大した、気骨ねいつつつ…………。まー、そう慌て、んんいたたた……。さっき私が言ったのは、あくまでデバイスの能力の一旦であり、アリシアちゃんの現状のうちの一つを説明したに――」

「いや、ちょっと待ちなさい。そもそも、あんた……誰?」

 

 そう聞きながら周りを見渡せば、さっき自分がKOした白衣の男がいなくなっていた。

 白髪の少女はお腹を摩りながらニコリと。

 

「私はね~……さっきあなたに飛び膝蹴りを受けた人です」

「…………はッ?」

 

 思考停止するプレシアに、白髪の少女は続けて。

 

「さっき、あなたと話してた白衣の男に変身してました」

「……はッ?」

「トランスちゃんです♪」

「はッ?」

「かわいいかわいい美少女トランスちゃんです☆」

「はッ? コロスゾ?」

「ひッ!? こ、こわッ……!」

 

 トランスと自己紹介した白髪の褐色少女は、すぐさまアリシアの後ろに隠れる。青い顔しながらぶるぶる震え始めた。

 

「…………」

 

 まあ、変身魔法とか、そんなところだろう、とプレシアは予測。

 ビビる白髪少女が白衣の男に変身してたのか、もしくはさっきの白衣の男が自分の制裁を逃れるために少女の姿に化けたのか。まあ、どっちにしろ、殺意は鈍らないが。

 相手の言葉から、いろいろと冷静に推測したプレシアは息を吐き、本題を戻す。

 

「……それで、どういう意味なの? デバイスの能力が一つじゃないって」

 

 たとえ予想外の出来事で思考停止させられても、再び殺意の籠った眼光を飛ばすプレシア。

 対し、白髪の少女は青い顔のまま、アリシアの背中から離れて数歩前へと出る。

 

「え、えっと~……い、今のアリシアちゃんはちょ~っと、複雑な状態にあってね~。まずはそこをご説明しましょう」

 

 実験が失敗し、大事故を引き起こした魔導炉のある施設の方へと、トランスの顔が向く。

 

「アリシアちゃんは~……あなたの実験の失敗のせいで……一度死んじゃった」

「ブッコロス」

「ひッ!! も、モンスターペアレンツ!?」

 

 再びアリシアの背中に隠れてガタガタ震える白髪少女。

 だが、プレシアの溢れんばかりの殺意は弱まるどころか、膨れ上がる。

 

「ナニイッテンノアンタハ? モシソウナラ――アンタヲ八つ裂きに――!!」

「い、いやいやいや! そ、そう早とちりしないで! アリシアちゃんは命を落としてないから!! いや、落としたけど!! いやアレ? なんだっけ?」

「ハヤクシロ」

「え、えっとォォォ…………そ、そう! 体は死んで~……けど魂だっけ? とにかくアレ…………精神な的なアレは……そ、そう! デバイスに精神がある的なッ!!」

「ナニイッテンダオマエハ?」

 

 殺意がまったく減少せず、ただただ疑問が増大しただけ。

 わからないが殺す、と殺意の感情を放つプレシア。

 対して、白髪の少女は青い顔で、アリシアの肩の後ろから顔をちょくちょく出しながら、

 

「わ、私にとっても未知の超技術なので、詳しい事はー、わかりませんすみませんごめんなさい……。ただ、簡単に説明するとねー……」

 

 プレシアの様子を窺いつつ、説明を続ける少女。

 

「肉体は~……えっと……そう。ゾンビみたいなもの、だっけ? えっと、とりあえず、体は死んでて……でも、魂がデバイスの中でギリギリ生き残ってる状態……だったっけ? アレ? これでいいんだっけ?」

「ハッ? ウチノカワイイ娘ガ、ゾンビダト?」

 

 シニタイヨウダナ? と、もう殺意MAXで睨みつけてくるプレシア。

 対して、白髪の少女は目をギュッとつむって、アリシアの背中の後ろで体を丸めて隠しながらガタガタ震えていた。

 

 理性がすでに崩壊寸前、文字通りのモンスターなペアレントになった母。目の前の現実から目を背けるように、頭を垂れ、地面を見つめる。だが、ゆっくり顔を上げ、冷静な表情で。

 

「……そんなバカな話を、はいそうですかと信じるワケないでしょ」

「うわ……急に冷静になった……」

 

 ひょこりとアリシアの背中の後ろから顔を出す白髪の少女は、汗を流す。やがて、顎に手を当てながら。

 

「……じゃあ、あなたの娘からデバイスを取り上げる? そしたら、魂は体に戻って、あなたの娘は肉体と一緒に完全に死ぬでしょうけど」

 

 と言いながら、トランスはアリシアの手からデバイスを取ろうと手を伸ばす。

 

「やめてッ!!」

 

 が、悲痛な声を受け、トランスの手は止まる。白髪の少女は、プレシアに顔を向け、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ほら、いくら冷静に考えても、デバイスを取り上げたとして、あなたの娘が無事かどうかなんて、あなただって自信を持てないでしょ? 宿主を保護する為の……デバイスの補助機能だったけ? まー、そんな感じの機能が働ているらしいけど……まぁ、私も教えられた事から語ってるに過ぎないし、さっき抵抗したみたいに下手な事はしない方がいいわよ?」

 

 八方ふさがりな状況に、プレシアはまた頭を下げ、うな垂れる。

 もう、娘の為にどうすれば良いのか、わからない。どうすれば、娘を無事に元に戻せるのか、わからない。何をするのが正解なのか、わからないのだ……。

 

 トランスははうまくいったと言いたげな顔で、うんうんと語る。

 

「……そもそも話、あなたが娘を事故で死なせた。だけど、その娘は私たちのデバイスで助かった。だから、私たちを恨むのは筋違いってこと」

 

 プリシアはゆっくりを顔を上げ、睨みつけつつ、不可解そうに尋ねた。

 

「…………なら訊くけど……なんであなたたちは今すぐに、アリシアからデバイスを取り上げないの?」

「ま~、そう聞くでしょうねー……。ただちょっと、こっちにも事情があってねー。そこで、今の状況に合わせた、お互いに損のないピッタリの提案を提供しようと思うんだけど~」

「……私に……何を、させたいの?」

 

 詰問するプレシア。

 デバイス以外での狙いなど、現状を考えたらおのずとわかる。

 アリシアを狙ってないのだとしたら、狙いは間違いなく、その母であり魔導工学研究者である自分――プレシア・テスタロッサ。それが目の前の謎の少女の狙いに違いない。

 

「さすが、頭が良い。状況を考え、相手の目的を読み取る。私の欲しい答えをずばりと口にしてくれる」

 

 白髪の少女は、しゃがみ込む。両手片膝を付くプレシアの顔と視線を合わせるように、下へと頭を傾け、ニッコリと満面の笑みを浮かべた。

 

「――あなたに完成させて欲しい〝モノ〟があるの」

 

 

 

 

 それから三週間が経過した。

 

 ――たった一人の娘を救うため。そして、娘と二人でもう一度幸せな人生を手に入れる為。

 ――〝あの小娘(クソガキ)〟と出会い、『提案』を受け入れた私は、行動を起こし始める。

 

「……また、引っ越しか。君も性急なことだ」

 

 プレシアの住んでいる寮の一室で、長身の黒いボブカットの女性は生気が抜けたような声を出しながら息を吐く。

 

 この白衣を着たいかにも顔色が悪そうな女性は――ナハティ・ウェン。

 彼女はプレシアの学生時代の友人であり、そして研究者仲間の一人でもある。

 

 ナハティも一時的とはいえ、技術研究者としての高い能力を買われアレクトロ社に派遣という形で『次元航行エネルギー駆動炉ヒュドラ』の開発に参加していた。ちなみにこれはあまり知られていないが、駆動炉に『ヒュドラ』と言う名が付いた要因の一つがこのナハティだったりする。理由はかなりどうでもいいが、どっかの世界の神話から取ったらしい。

 

 隈を携えたナハティの三白眼に見つめられ、プレシアは真剣な表情で口を開く。

 

「アリシア。アリリリシア。アリアリアリリシ――」

「すまない。とりあえず、その宇宙後みたいなので話すのはやめてくれないか? 翻訳するのが割と大変なのだが」

 

 若干汗を流すナハティ。

 どうやら、またアリシア成分が抜けた影響が出てきてしまったか、と思いつつ、プレシアは心をどうにか落ち着ける。

 

「……悪かったわ。ここ最近ショックな出来事が多くていささか混乱していたの」

「たく、聞いてた通りの子煩悩だな。うちのご主人様のご友人様は」

 

 とヤンキーみたいな口調で耳穿りながら話すのは――ナハティの連れ。

 見た目は、ロングドレスの上に白いエプロンを着て、編み上げブーツを履いたメイド。髪の色は情熱的な紅蓮で、瞳は深海の如く深い蒼碧だ。

 プレシアは見慣れないヴィクトリアンメイドにジト目向ける。

 

「あなた、誰?」

「あん? なんですかコノヤロー。ナハティ様のメイドロボットのメアリ・アンヴィーアスだコンチクショー」

 

 ナハティのメイドと名乗る女性――メアリがすんごい鋭い視線で睨んでくる中、プレシアは古き友人に顔を向けた。

 

「なにあの子? アレ、ホントにあなたのメイド? ただのメイドの皮被ったヤンキーにしか見えないんだけど? つうかロボなのに名前が人間みたいよ」

「いや、すまないな」

 

 と、ナハティは一ミリも申し訳なさそうではない顔で、

 

「アレはいかせん気位が荒くてね。ヤンキーの皮被ったロボットだと思ってくれればいい。ちなみに名前は私が付けた」

「あなた……確か魔導ロボット工学を専攻してたわよね」

「あぁ、そうだよ」

「つまり、あの見た目メイドの皮被ったヤンキーはロボットなの?」

「あぁ、私の自信作の一つだ」

 

 言葉は自慢げだが、顔と声は生気が抜け落ちたようなナハティに、プレシアは訝し気に目を向ける。

 

「アレ……自信作なの? 見た目完全に人間なのはいいけど、態度がメイドからかけ離れているわよ? 用心棒にでもしたら?」

「うん。私も常々そう思ってる」

「全部聞こえてんぞコラァッ!!」

 

 メイドロボは青筋立ててめちゃくちゃ怒鳴る。ロボなのに。

 だが、プレシアはスルー。

 

「私は荷物運びを手伝えるロボットを寄越して欲しいと言ったのよ? 誰もヤンキーロボ連れてこいなんて言ってないんだけど?」

「あんなのでもいないよりはマシだ。我慢してくれ」

 

 とナハティ。

 

「おいゴラァ……! まずテメェらを段ボールに詰め込んでやろうかあん?」

 

 紅蓮髪のメイドロボはすんごいメンチ切りながら、その髪の色のように赤いオーラ燃やす。

 プレシアは眉間に皺を寄せてナハティを見る。

 

「他の荷物運び用のロボットは?」

 

 ナハティは頬を掻く。

 

「それが、つい最近研究費の為に、全部他の企業に売ってしまったね。スタ〇ク社だとかオズコ〇プ社だとか。まぁ、色々と」

「随分な大企業ね。名前伏字だけど」

 

 プレシアは「それで」と言って、自分とナハティにすんごい至近距離でメンチ切ってくるメイドロボに視線を向けた。

 

「なんでこのヤンキーだけ残したの? 絶対売った方が良いと思うわよ」

「あん?」

 

 とメアリが青筋浮かべるが、ナハティは無視して、

 

「仕方ないだろ。私だってこんな腐れヤンキー残したくなかったが、こいつが鼻からオイル垂らしながらすり寄ってくるもんで仕方なく――」

「よしわかった!! そこに直れ!! 脳天に風穴開けてやる!!」

 

 メアリは一瞬で両手の裾から拳銃は出し、プレシアとナハティに銃口を突きつけた。

 プレシアは冷静な表情でナハティに顔を向ける。

 

「あなたなにロボに質量兵器持たせてるのよ。ヤンキーどころかヒットマンじゃない」

「アレは私の開発した魔力弾を発射する銃だ。決して質量兵器などではない。ちなみに、ヒットマンと言う意見には私も賛成だ」

 

 とナハティも真顔で返す。

 

「なにこいつら? なんで銃口向けられてこんなに冷静なワケ?」

 

 メアリは困惑するように眉間に皺を寄せ、「あほくさ」と言いながら袖に銃をしまう。

 プレシアはチラリとメイドロボを見て、ため息を吐く。

 

「まぁ、いいわ。ないよりはマシね……。ナハティ。じゃあ、とっとと荷物運び初めてくれないかしら?」

「ん?」

 

 呼ばれて反応したナハティは、ソファーに座りながらカロリーメイトを口に咥え、マンガ読んでいた。

 それを見てプレシアは右手で頭抱える。

 

「……あのね、ナハティ。いくら古い友人とはいえ、私はあなたにちゃんと引っ越しの代金を払ってここに呼んでいるのよ? なんで指示出すあなたはくつろいでいるのかしら?」

「まーまー、そう慌てるな。メアリを見てみろ、準備を進めているぞ」

 

 チラリと、プレシアはメイドロボに視線を向けると、

 

「すぅ~……ハァー……」

 

 とタバコ吸っていた。

 その姿を見て、プレシアは頬を引きつらせながらマンガを読んでいるナハティに目を向ける。

 

「……あの、ナハティ。ロボットがタバコ吸って突っ立ってるだけよ? つうかアレ、ロボットじゃないでしょ? アレ、その辺から連れてきたただのレディースのヘッドかマフィアのヒットマンじゃないの? もしそうなら、あなたに代金文の荷物きっちり運んでもらうわよ」

「まぁ、見ていたまえ。(じき)に分かる」

 

 含みのある古い友人の言葉に、プレシアは訝し気に眉間に皺を寄せ、また視線をメアリと名乗るメイドロボに移す。

 

「よし……」

 

 メアリはタバコを口にしたまま、目を開くと、その蒼碧の瞳が光を輝き始める。

 

「ッ……!?」

 

 プレシアが少々驚く間に、メアリは凄まじい勢いでマンション内にある荷物を次から次へと外にある小型次元航行艇に乗せていく。

 その勢いたるや、引っ越しの業者十人呼ぶよりも凄いかもしれない。さらにプレシアの部屋がある階層は五階なので、重い段ボールをいくつもバランスよく持って運んでいく様はまさに圧巻の一言。

 

「す、凄いわね……」

 

 プレシアも次々から次へと消えていく段ボールを見て汗を流しながら唖然とし、ナハティはマンガに視線を向けながら少し自慢げに語り始める。

 

「まー、普段のメアリではできない芸当ではあるのだが。あの子の咥えてるタバコは、私が作ったタバコ型の魔力チャージャーだ。アレを咥えてる間のメアリの出力は見ての通りだよ」

 

 話しを聞いて、プレシアはナハティに呆れ気味の視線を向けた。

 

「……なんでそういうわざわざ凝った造りにするの? ロボ抜いたら、アレもうタバコ加えたヤーさんよ?」

「口調と相まって似合ってはいるだろ?」

「まぁ、荷物が片付くのならなんでもいいわ……」

 

 プレシアが呆れ顔でため息を吐く頃には、

 

「荷物の積み込み終わりやがりました~」

 

 メアリがリビングのドアからひょっこと体の半分を出して、敬礼のポーズで報告。それを聞いてプレシアは満足げに笑みを浮かべた。

 

「さすがにナハティの作品ね。仕事が早くて助かるわ」

「手のひら返しすげーな。んで、これで終わりか? ご友人様」

 

 メアリの質問に、プレシアは首を横に振る。

 

「いいえ、まだ私の研究用の機材が残ってるわ。寧ろ、そっちが本番と言うべきかしら。言っとくけど、部屋の荷物以上に慎重に扱わなければならない物ばかりだから、この部屋の荷物の数倍以上は大変よ」

「え゙え゙~……。クソメンドくさ」

 

 とメアリは露骨に嫌そうな顔。それを見て、プレシアはゆっくりと製造主に顔を向けた。

 

「ナハティ。あのロボット、仕事が終わったら解体して部品売ったら?」

「おー、それはグットアイデ――」

「殺すぞコラッ!!」

 

 目を吊り上げるメアリだが、すぐに表情を戻して「あぁ、それと」と言って何かを手に取って摘まみ上げる。

 

「コレ、どうする?」

 

 メイドロボが襟首を掴んで持っているのは、気絶して白目剥いている男。それを見て、プレシアはギョッとしてしまう。

 

「ヴェ、ヴェルサス先輩!?」

 

 この無残な気絶状態の男はプレシアが学生の頃に世話になった先輩だ。

 

 アッシュブロンドのツンツン頭に、淡い黒の澄んだ瞳。無精髭の精悍な顔立ちが、今は白目剥いて口から涎垂らしていた。

 

 メアリは引き気味にヴェルサスと呼ばれた男を見る。

 

「この生ごみ捨てていいか?」

「いや、ダメよッ! その人、学生の時代の先輩なのよ!」

 

 とプレシアは声を荒げ、メアリは眉間に皺を寄せる。

 

「え~……こんなどこぞの不良だかヤーさんだか分かんない奴が?」

「あんただって人の見た目どうこう言えないでしょ!」

「メアリ。なぜヴェルサス先輩は気絶してるんだ?」

 

 ナハティが問いかければ、メアリは真顔で。

 

「折角俺が荷物運びしている時、コイツが階段上ってきたんだけど、なんか不審者ぽかったから飛び膝蹴りを鳩尾(みぞおち)に喰らわせて意識奪った」

「いや、なにしてくれんのあんた!? その人管理局員なのよ!!」

 

 さすがのプレシアも汗を流しながら凄まじい剣幕でツッコム。

 いくらなんでも学生時代の顔見知りの先輩で、今は現役の管理局員を飛び膝蹴りで気絶させられたなどと聞いて冷静でいられるはずもない。

 するとナハティもマンガに顔を向けたままうんうんと頷く。

 

「そうだぞメアリ」

「うへ……この不潔そうな無精髭がご主人の先輩で管理局員かよ……世も末だな」

 

 とメアリは露骨に嫌そうな顔。

 

「だからあんたみたいなヤーさんロボに言う資格ないでしょ!」

 

 プレシアはツッコミ入れ、ナハティはやれやれと首を横に振りつつメアリに命令を与えた。

 

「その人はプレシアだけでなく私の学生時代の先輩でもある人だ。それに今日は客人のようだしな、あんまり無下に扱ってはいかん」

 

 メアリは「へーい」と頷き、手に持ったヴェルサスを見る。

 

「焼却炉行きでいいですね?」

「全然わかってないじゃない!!」

 

 ツッコムプレシアとは対照的に、ナハティは少し頭を傾げた後に、無気力な声で。

 

「……まー、それでいいかな」

「いやダメに決まってるでしょ!! あなたが一番無下に扱ってるじゃない!!」

 

 プレシアがツッコミ入れる中、ナハティの指示を受けてメアリは嬉しそうに「了解♪」と敬礼して姿を消す。するとすぐにプレシアが慌てて止めようと、

 

「ちょっと待ってぇぇッ!! 先輩を強制的に遺灰にするのはやめてぇぇぇッ!! そのままだと私が月曜だか火曜だかのサスペンスの容疑者になっちゃうからぁぁぁッ!!」

 

 ――そんなこんなで、私のアリシアを救うための引っ越しの準備はなんとか、滞りなく進んでいった……。うん。とりあえずは、進んだ……。

 

「――まさか着いて早々、鳩尾に膝蹴りを貰うと思わなかった……」

 

 と、鳩尾を撫でながら頬を引き攣らせるのは焼却処分をされずに済んだヴェルサス・イザード。

 

「すみません……。折角来て貰ったのに……」

 

 プレシアは申し訳なさそうに謝り、横に立ったナハティとメアリは腕を組んでうんうんと頷く。

 

「まったく、私たちの先輩に対してとんだ無礼を働いたものだ」

「反省しろよな」

「ごちゃごちゃ言ってないであんたらも謝れ!!」

 

 青筋浮かべたプレシアは、ナハティとメアリの頭をガシっと掴んで、グイッと強引に下げさせた。

 対して、被害者のヴェルサスは怒りの表情も作らず、やれやれと首を横に振る。

 

「まったく……ナハティのロボットはかなりユニークなのが多いが、そのメアリとかいうロボットは今まで見た中でもピカ一だな」

 

 ヴェルサスはそこまで言って「それで」と言葉を付けたし、腕を組みながらプレシアに顔を向ける。

 

「なぜ俺を呼んだんだ? そっちは会社の事と……アリシアちゃんのことで、ゴタゴタしていると思ったんだが……」

 

 アリシアの話題で少々言い辛そうにするヴェルサス。

 プレシアは二人の頭から手を離し、説明を始める。

 

「少々また引っ越すのですが、住居を移動させる前に〝管理局員〟である先輩に伺いたいことがあったので呼んだんです」

 

 話を聞いてプレシアの意図をある程度読み取ったのか、ヴェルサスは視線を鋭くさせた。

 

「なるほどな。で、その用とは?」

「『人の意識を乗っ取るデバイス』についてなにかご存知ありませんか?」

 

 プレシアの言葉を聞いて、ヴェルサスだけでなくナハティも訝し気に視線を細める。

 

「意識を乗っ取るデバイス、か……」

 

 ヴェルサスは顎に指を当てて思案するが、やがて首を横に振った。

 

「管理局に努めてもう十年近くになるが、そんなデバイスの情報は耳に入ったことがないな」

「そう……ですか……」

 

 プレシアは残念そうに顔を俯かせる。

 もしかしたら管理局員であるヴェルサスならば、あの奇妙なデバイスについての情報を得るきっかけになるかと思ったが、そんな甘くはなかったようだ。

 ヴェルサスはチラリとナハティに視線を向ける。

 

「ナハティは何か知らないのか? 俺以上に機械関連については詳しいと思うんだが?」

「私も一度プレシアに訊かれたが、そんな奇妙キテレツなデバイスについての情報は知らないよ」

「プレシアがお前にではなく、俺に訊いている時点でそうだろうと思ったが」

「だったら訊くなよ無精髭」

 

 とメアリがジト目向けると、ヴェルサスは頬を引き攣らせていた。

 

「ナハティ、それはホントにロボットなのか?」

「自信作だ」

 

 ナハティは若干ドヤ顔で答え、ヴェルサスは呆れたようにため息を吐き、プレシアに顔を向ける。

 

「しかし、なぜそんな人の意識を乗っ取るデバイスの情報なんて知りたいんだ?」

「『人を乗っ取るデバイスが作られている』と言う変な噂を小耳に挟んで、研究者としてちょっと気になったもので」

 

 苦笑いを浮かべて答えるプレシアに、ヴェルサスは「なるほどな」と失笑を浮かた。

 

「まぁ、よくある根も葉もない噂だろう」

「あぁ、その通りだな」

 

 と、頷くナハティ。

 

「人間を乗っ取る機能を持ったデバイスなんて作られた暁には、間違いなく違法なデバイスとして取り扱われる上に話題に上がらないワケがないからな」

 

 言葉の最期に「まー、そもそも作ってなんの利益が得られるのかは分からんが」と付け足すナハティ。

 ヴェルサスは薄く笑みを浮かべる。

 

「とりあえず、もし何か情報が入ったら教えよう」

「お手数おかけしてすみません」

 

 とプレシアは頭を下げ、誰にも自分の顔が見えない時に残念そうな表情を浮かべた。

 

 ――やはり、管理局にも『あのデバイスの情報はない』か……。

 

 そして顔を上げれば、ニコリと笑みを浮かべた。

 

「荷物の整理が出来次第、ナハティと引っ越し前に食事をしようと思うんですが、先輩もどうですか?」

 

 ヴェルサスは腕を組んで口元を吊り上げる。

 

「そうだな。今日はオフだし、構わんぞ」

 

 

 

 

 荷物の整理は、時々文句を言うロボメイドのメアリが滞りなく終わらせた。

 

 そして、時刻は夕方。

 

 プレシア、ナハティ、ヴェルサスは、私物が一切残っていないリビングにある備え付けのテーブルを間に挟んで、四脚の椅子に座っている。

 ヴェルサスは、机の上に置かれた『料理』を見て訝し気に眉間に皺を寄せた。

 

「……なぜ、カレーオンリーなんだ? もっと色々な料理を作るかと思っていたのだが?」

 

 ヴェルサスが料理を担当したロボメイドに視線を向けると、開発者であるナハティが気だるげな表情で告げる。

 

「ちょっとばかし、テキトーに料理ナビをインプットしたらカレーしか作れないバグが発生してしまってな」

「ホント色々斜め上のことしてくれるわね、このヤーさんカレーロボは……」

 

 プレシアは頬を引き攣らせ、カレーライスが盛られた皿が乗った机を見てヴェルサスは汗を流す。

 

「サラダすらないのか……」

 

 ヴェルサスは呆れたような視線をナハティに向ける。

 

「そのロボットの人口頭脳、一度ちゃんとチェックした方がいいんじゃないか?」

「後ついでにあなたの脳みそもちゃんとチェックした方が良いと思うわよ」

 

 プレシアもジト目向けるが、メアリの開発者は平然とした顔で返す。

 

「まぁ、カレーでもいいじゃないか。みんな大好きだろ」

 

 ヴェルサスとプレシアはため息を付く。

 すると、ヴェルサスは言い辛そうではあるが、ある話を切り出す。

 

「しかし……想像とは違って……元気そうで安心した」

「そこは私も気になっていたな」

 

 とナハティもプレシアに顔を向ける。

 

「子煩悩の君が、〝娘の死〟で憔悴しきって廃人にならず、この短期間で引っ越しする上、そこまで普通の反応を返せるのは、少々不可解だな」

「さすがに憔悴はしても、廃人にはならないわよ……」

 

 ――まぁ、なっちゃうかもしれないけど……。

 

 と、プレシアは内心で自分のもろさを自覚して言うと、ナハティは更に言う。

 

「てっきり、娘が死んでも生き返らそうと、人造生命の技術とかに手を付けると思ったんだが」

 

 ――ちょっとなんで半分くらいは当ててくんの!? あんたまさか連中の回し者なんてことないでしょうね!! 

 

 内心で古い友人にツッコミ入れつつ、友人たちの疑問も最もだと思う。

 プレシアはとても深刻そうな表情を作り始め、語る。

 

「……まだ……〝アリシアが死んだ〟って……実感が持てないの。悲しみとか、怒りとか……それすら通り越して……心が死んだような……そんな感じ……。たぶん……その内、酷くなるかもしれないわ……。だから、療養のために、こんな嫌な思い出しかない場所から離れて……静かな場所で……一人になろうと思って……」

 

 理由もそれなりに尤もらしいし、瞳を揺らすところなんか我ながら迫真の演技だな、と自画自賛するプレシアであった。

 

「なるほど」

 

 とナハティは納得する。

 ヴェルサスはスプーンに手に持ちながら、口を開く。

 

「…………なるほど、わからんでもないな。それで、プレシアはどこに引っ越したんだ? ミッドから離れた住居のようだが」

「――『時の庭園』です」

 

 引っ越し先の名前を聞いて、ヴェルサスはスプーンを動かす手を止める。

 

「……時の庭園。あそこは確か……」

 

 ナハティにチラリと目を向けるヴェルサス。

 

「研究所にしていた次元間航行も可能な移動庭園とか、だいぶ前に話していなかった? ナハティ」

「あぁ。つい最近、プレシアが私から買い取ったのでね。今では彼女のものさ」

 

 ナハティの言葉を聞いて、ヴェルサスは訝し気にプレシアを見る。

 

「気持ちが落ち着いたら、何か新しい実験でも始めるつもりなのか?」

「そう……ですね……。前に進む準備も兼ねて、ってところでしょうか……」

 

 プレシアは視線を斜め下に落とす。

 

「悩んでばかりも……いられませんから……」

 

 本音を交えたプレシアの独白を聞いて、ナハティはマジメな顔で。

 

「やっぱり思い切って人造生命を――」

「いや、違うから」

 

 ピシャリと否定するプレシア。

 

 ――つうか、こいつホントに勘が鋭いわね……。嘘付くのが下手じゃなくて良かった……。

 

 我ながら無駄に嘘つくの上手いな、と思う一児の母。

 

「そうか……」

 

 ヴェルサスはプレシアの言葉と雰囲気で何か察したのか、それ以上追及しようとはしない。

 そして、プレシアは微笑みを浮かべつつカレーをスプーンで掬う。

 

「じゃあ、冷めないうちに食べましょう。学生時代の話でも交えながら」

 

 プレシアと学生時代の友人たちとの会話は中々に盛り上がった。

 

 ヴェルサスは自身の持つレアスキルと才能を買われ、局員として高い評価と実績をどんどん得ていること。

 ナハティは学生時代は生物の解剖ばっかしまくってほとんどの同級生をドン引きさせたこと。

 などなど、現在や過去の話で引っ越し祝いは結構盛り上がって行った。

 

 

 そして時間も夜遅くなり、最後につまみを食べながら少し高いワインを飲もうという辺りになると、ヴェルサスは「付き合いたいが、実は明日は仕事なのでな。さすがに支障をきたすので、俺はこの辺で失礼するよ」と言って、寮を後にした。

 そして寮の――プレシアとアリシアの家だった部屋のリビングには、プレシアとナハティの二人とメイドロボのメアリだけとなった。 

 

「しかし……先輩がいなくなった今だから言うけど……」

 

 と言って、プレシアは横に座るナハティに目を向ける。

 

「誰かさんは〝会社を使って〟、また随分と稼いだそうじゃない。お陰で倒産寸前らしいけど」

 

 グラスに入ったワインを少し口にしたナハティは、ニヤリと口元を吊り上げた。

 

「その誰かさんだって、あんなアホな会社が起こした事故には思うところがあったってことだろう」

「まぁ、誰かさんが平然と犯罪者紛いなことしてくれたお陰で、私も難を逃れたワケだけどね……」

 

 プレシアはまたワインが入ったグラスに口を付けるナハティに呆れと関心が混ざったような視線を向ける。

 

 そう、実は『アレクトロ社』の上層部は魔導炉暴走事故は『研究主任であるプレシア・テスタロッサの管理責任能力のなさが原因である』と言う形で、魔導炉の事故を片付けるつもりだった。

 だがしかし、アレクトロ社上層部の人間たちが研究者たちに魔導炉の起動を無理やり押し進めさせるだけでは飽き足らず、安全管理をいくつも度外視させる、スケジュールをどんどん切り詰めさせ、研究者たちに休む暇すら与えずに実験を推し進める、などなど。

 とにかく上げればキリがないほど、ヒュドラの開発から運用に関するまで、アレクトロ社の落ち度をまとめた資料と音声記録が送られた。それこそ、一つの小説にできそうなほど量を。匿名で――。

 

 んで、そんな違法スレスレどころか違法な行為を誰がやったかとプレシアは考えた……。

 そこでパッと浮かんだのが、あの会社に勤めていて、十代の頃から趣味の研究の資金のためとかで、モラルから逸脱した行為で資金集めしていた友人の顔が浮かび、あッ……もしかして……、と予想した。

 

 プレシアはワインを少し飲んだ後、「とは言え……」と言って話しを切り出す。

 

「誰かさんは会社の上層部連中からたんまり口止め料をせしめた後、今度は実験に無茶な指示ばかりを要求してきた連中の不祥事をまとめた資料を、管理局に匿名で暴露」

 

 プレシアは「どこぞの誰かさん、いつか後ろから刺されそうね」と呆れた視線を、アレクトロ社の株に大ダメージ与えたであろう人間に向ける。

 三白眼の女は、ワインと一口すすり、ククク、鬱屈した笑い声を漏らす。

 

「私があんな間抜け共に返り討ちに遭うと? そもそも、私に金を払った連中はとっくに地位も名誉もなくして、今はどれだけ自分の罪を軽くしようか奔走している最中だろうな」

 

 あッ、バラした……、とプレシアは思った。まあ、告げ口する気はサラサラないが。

 

 ナハティはまた、クククと普段は滅多に見せない愉快そうだが鬱屈した笑い声を漏らし、プレシアは少しばかし関心したように笑いを零す。

 

「ホント、準備が良い事ね。早々に会社を辞めた後から、狙っていたのかしら?」

「あんなアホな追加の機能やらシステムを持ってくるだけでは飽き足らず、スケジュールをバカみたいに切り詰めてくる兆候が垣間見えた時点でな」

「メイドロボにアホな機能やシステム組み込むクセに」

 

 呆れた眼差しのプレシアの言葉にナハティはやれやれと首を横に振る。

 

「アレはもともと個人の趣味で作ったモノに入れた機能だ。多くの人間が関わる共同の研究なら少しは自分をセーブするさ」

「あッ、少しだけなんだ。あなたって、意外に公私混同は分けようと努力するのね」

「私とて、研究者としての端くれだからね。多くの人間たちと共同研究をするとき、自分のペースだけで研究を掻き乱すのはナンセンスとは思ってるよ」

 

 ナハティはそう言ってグラスの赤い液体を飲み干した後、「それに」と言葉を付け足す。

 

「最初こそ、中々気の合う連中もいたからね……。最初は割と楽しめたんだが」

 

 そこまで言ってナハティは真顔で。

 

「ただま、君の前任の主任がはっきり言って〝無能なクソ〟だった時点で離れて正解だったな」

「ホント、前主任の資料管理の杜撰さ目に余ったわ……」

 

 プレシアが頬を引き攣らせながら言えば、ナハティは「あとスケジュール管理も雑だったな」と漏らす。

 そしてプレシアは思い出す。

 引継ぎの時に、ナハティから言われた、

 

『あの駆動炉の研究に参加するのはお勧めしないぞ。いや、マジで』

 

 って言葉。

 マジで当時の自分はあの会社辞めなかったんだろう? と後悔するプレシア。まあ、結局自分も職を失うことと逆らうことのデメリットばかりにしか目がいかず、上の命令に異議を唱えきれずに従ってしまった、歯車の一つでしかなかったということだろう。

 

 拳で頬杖をつくナハティは、グラスを揺らしながら、しげしげと赤い液体を眺める。

 

「……まぁ、何も起こらなければ、さすがに隙もないし、何もする気はなかったんだが……まさかあそこまでの暴走事故が起こるのはさすがに予想外だった」

 

 おかげでやりやすかったがな、と言いながら、ちょっとあくどい笑みを浮かべる友人を見て、プレシアは視線を別の方向に向ける。

 

「……だからこそ、研究を台無しにした奴らを許せなかった。初期の研究メンバーとして……。なにより……〝子供一人が死んだ〟と言う結果まで付いてくれば」

「いやいや、別に私はそこまで情が深いワケでもないし、君ほどの被害者ではないさ……」

 

 頭の良さと決断力で難を逃れたナハティだって、会社の無茶なごり押しに巻き込まれた被害者だろう。

 あげくの果てが、自分が関わっていた研究が事故を起こし、人が死んだというならなおさら。

 

 そしてこの被害者の一人たるナハティは、無理な駆動炉実験の原因となった人物たちをまとめた資料をわざわざ作って管理局に提供したのである。わざわざめんどうな特定よりも、会社の不祥事と一括りすれば楽にも関わらずだ。

 

「きっと上層部に苦労させられた人たちは感謝しているわよ」

 

 とプレシアは笑顔で言うが、ナハティは視線を下に向けて「どうだろうな」と言って言葉を返す。

 

「会社を傾ければ、当然職を失う者たちもいるぞ? 路頭に迷う者たちがな」

 

 目を細め、どう思う? と問いかけんばかりの顔をするナハティにプレシアは、

 

「――別にいいんじゃないかしら?」

 

 あっけらかんとした顔で答え、それを聞いたナハティは少し意外そうな顔になる。

 

「なぜ、そう思う?」

「だって、私とアリシアの時間を奪ったあのクソ共が諸悪の根源であり、そんな連中がふんぞり返ってのさばり続ける会社なんてどうなろうと知ったこっちゃないわ。そもそも、あんな連中を放逐しない会社なら、結局はまた今回みたいな事が起こる可能性だってあるワケでしょ? なら、いっそ一撃ぶちかました方が世の為よ」

 

 プレシアの言葉を聞いたナハティはまたくくく、と笑いを零す。

 

「まぁ、あんな無能ばっか上に立ってる会社は、これからなんとかしなければいずれ瓦解するだろ。いくら事故と言っても、あそこまでアホなこと連発して、防いでしかるべきだった事故を許してしまったんだ。とてもじゃないが、あんなブラック会社は落ちるとこまで堕ちるのは目に見えてる」

「それでも会社に縋り付きたいなら、そいつらでどうぞ会社を盛り返してください、とでも言う他ないわね。まー、まともな考えの人間が残れば、再起の可能性も十分あるでしょ」

 

 クスクス笑うプレシアはテキトーなこと居ながらワインを口にし、ナハティはよりおかしそうに笑いを零す。

 

 プレシアが知っている限りでは、今回の騒動がきっかけなのか、『アレクトロ社』を辞職している人間が結構いるらしい。さすがに子供の死を責任転嫁(しかも死んだ子供の母親)にする会社はヤバイと思った人間も多かったようだ。

 ちなみに、プロジェクトのメンバー内、この二人と仲がそれなりに良好だった者たちは、ナハティが既に新しい職を紹介しているという話を、メンバーの一人からプレシアは聞いていた。

 

 酒が少し回ってきたのか、ナハティは半笑いになりながら言葉を口にする。

 

「しっかし、君も言うね? 以前の君ならさすがにやり過ぎだと私をたしなめるところだろう?」

「いいのいいの! あんな会社にあんなクソッタレ連中。一回痛い目みた方がいいのよ。プロジェクトの皆もすんごいスカッとしたって喜んでたし!」

 

 上機嫌で手を横に振るプレシア。

 

「そうかい。それは良いとこしたね」

「ホントホント! なんで昔の私はあんな会社辞めてやらなかったのかしら? 今頃こんな事にはならなかったのになー!! 昔の私のバカヤロー!! ヒック」

「こりゃ、酔ってきやがりましたねー……」

 

 メアリはジト目を酔っ払い二名に向けるが、顔に朱がかかり始めたお二人はおかまいなしに捲し立てる。

 

「ホントあのクソ副主任には頭にきわた!」

 

 と、プレシアは机をバン! と叩く。

 

「ヒック。なにあの四角眼鏡? ホント一回眼鏡たたき割りたくなったわよチクショーッ!!」

「まったくだな! あの時のクソデブもマジムカつく! 脳みそにまで脂肪が回ってるんじゃないかと内心常に思っていたよ!」

「そうそう! 脳みそメタボリック! あんたもムカついてたのね! 自分の太ってるから舐めてんのか? みたいな愚痴を聞かされた時は、アレはホントに腹が立ったわ!! 知るかクソ! って言いたくなったわ!」

「それにあのハゲ上司! アレ絶対ハゲてたね! アレ絶対、頭が後退間近だったね! それでハゲのコンプレックスに関するイライラを部下にぶつけてたのは、マジでクソだと思ったね!」

「アハハハ! そうそう! 一回ズラ取って、残った髪全部引っこ抜いてやろうとか思ったわよ!」

 

 アハハハハハッ!! とワイン飲み過ぎて、完全に元社会人二人による愚痴暴露大会になってしまった元プレシア邸。

 そして夜はさらけていく……。

 

 

 

「……さてそろそろ」

 

 プレシアは席を立ち上がり、ナハティも「そろそろお開きか」と言って立ち上がろうとするが、少し体がよろけてしまい、すぐにメイドロボが「大丈夫ですか、酔っ払いご主人様」と言って体を支える。

 その光景を見たプレシアはおかしそうに笑いを零す。

 

「あら? 意外にメイドらしいこともするのね?」

「あん? 俺は頭のてっぺんから下まで完璧なメイドだよコノヤロー」

 

 と、メアリはガン飛ばしながらナハティを支え、玄関口に向かう。プレシアも後に続くように歩いて行く。

 そして、玄関から外に続くエスカレーターや階段に続く寮の廊下にまで出ると、プレシアは帰ろうとするナハティとメアリを見送る。

 

「結構酔ってるみたいだから、気を付けて。まー、そのヤンキーロボが入れば大丈夫だとは思うけど」

「誰がヤンキーロボだ」

 

 とメアリ。

 

「君こそ、ちゃんと酔いは醒ますんだぞ? 前に私は風呂で死にかけた」

 

 ナハティの言葉を聞いて、プレシアはつい笑みを零す。

 

「……フフ、気を付けるわ」

「では私はこれで」

 

 そう言って、ナハティはメアリに肩を貸してもらいながら寮を後にしようと歩き出す。しかし、いくばく歩いた後、「あー、それと」と言って足を止める。

 

「私と違って君はもう骨の髄まで研究者と言うワケじゃないんだ。大事な何かを失った辛さは、研究や酒で誤魔化しきれるほどでもないだろう」

 

 プレシアは相手に自分の顔が見えてないと思い、少しばかし悲しそうながらも嬉しさも垣間見える表情で。

 

「……えぇ、善処するわ」

 

 プレシアの言葉を聞いて、ナハティはやれやれと困ったような笑みを浮かべた後、またおぼつかない足取りで歩き出し、左手を上げなる。

 

「本当に助けが欲しいなら、連絡の一つでも寄越してくれ~」

 

 今、助けられてる人間の言葉じゃないわよ、と思いつつ、プレシアは苦笑しながら去って行く旧友の背中を見送るのだった……。




今回はプレシアの過去であり、もうずいぶん前(数年前)から送られていた『カオスオーバー』さんと『閃火・ムーンライト』さんの投稿キャラお披露目回となりました。

いやホントに、この投稿キャラたちを登場させるまで時間かかっちゃいました。
まさかここまで期間が長くなるとは、当初はマジで思いませんでした。
カオスオーバーさんと閃火・ムーンライトさん、ホントにすみませんでした……。

『カオスオーバーさん投稿キャラ』
・ナハティ・ウェン
・メアリ・アンヴィーアス

『閃火・ムーンライトさん投稿キャラ』
・ヴェルサス

ちなみに、それぞれ設定に変更を加えつつ登場させることにしました。


第六十話の質問コーナー:https://syosetu.org/novel/253452/70.html

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