魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

69 / 79
第五十五話:誤魔化すのは、難しい

 リンディの執務室。

 

 土方も交えてじっくりとアニメの話――つまり『リリカルなのはの話』をし終えた三人。

 大まかとはいえ少し長くはなったが、〝リリカルなのはの今後〟をリンディと土方に話し終えた、新八。まあ、主にstsまでだが。

 

「まあ、話は大体わかった……」

 

 椅子に座る土方はタバコを吸って煙を吐いてから、隣の新八へと告げる。

 

「とにかく、今回は相手がリンディ達だったから良かったものの、お前は俺たちん中で一番『リリカルなのは未来』の情報を持ってんだ。もっと発言には細心の注意を払え。いいな?」

「はい! 肝に銘じます!」

 

 勢いよく頭を下げる新八。

 土方はため息をつきながら、安堵したように告げる。

 

「つうか闇の書のとこなんか、危うくヴォルケンリッターどもに色々とバレるとこだったぞ。まー、お前が言ってた事を、あいつらはなんの事だか良くわかってねェみてェだから、案外誤魔化せて助かったが」

 

 ただまァ、少し変な奴と思われたけどな、と土方に言われて、新八ちょっとショック。

 土方は釘を打つように、

 

「今後はマジで気を付けろよ。こんな時に、あいつらにヤケでも起こされたりしたら、目も当てられん。今のごちゃごちゃした状況が、余計にごちゃごちゃして、手に負えなくなるだろうからな」

「は、はい! ホント! マジで気を付けます!」

 

 未来に関する自分の発言がいかに危ういかを痛感し、新八は首をぶんぶん縦に振る。

 机を挟んで話を聞いたリンディは、苦笑い。

 

「まぁ、今後どうなるかは分かりませんが、闇の書に関してはなるべく大きな問題が生じないように、注意していく他ありませんね。今は、フェイトさんやジュエルシードやクリミナルなど、目の前の問題を解決するのが先決です。それに現状は、闇の書をどうこうする為に動くよりも、静観を優先する方が良さそうですから」

「静観……で、良いんですか?」

 

 まさかの答えに新八が不思議そうに尋ねると、リンディは真剣な面持ちで答える。

 

「確かに闇の書は、ロストロギアとして第一級捜索指受けてはありますが、今から強引に確保しようとしても良い結果には繋がらない……私はそう判断しています」

「なるほど……」

 

 と新八は頷く。

 すると、タバコを指に挟む土方が、不可解そうに片眉を上げる。

 

「あの厳格なおめェの息子なら、んな危険なロストロギア『今すぐ封印するべきだ』みてェに進言していると思ってたんだがな」

 

 疑問を訊いて、リンディは苦笑を浮かべた。

 

「まぁ、桂さんと一緒にヴォルケンリッターの方たちを保護した際に、クロノも同じような事は口にはしましたが、はやてさんを事情聴取した際に、闇の書の封印は見送るって話しに落ち着いたんです」

「あー……なるほど……」

 

 一応は、八神はやてのことを知っている新八としては、すぐに納得がいった。

 温厚で心優しいあの少女ならば『ヴォルケンリッターに命じて事件を起こす』といった問題が起こる可能性は少ないはずだ。ただ、後々に起こるであろう問題は、はやて自身の性格の有無に関わらないのが、なんとも歯がゆいが。

 

 リンディは難しい顔を浮かべながら語る。

 

「悠長に時間を無駄にするつもりもありませんが、性急に事を運ぶつもりもありません。闇の書に関しては、慎重に処理していくつもりです。ヴォルケンリッターも現状は特に事件を起こす、というワケでもなさそうですし、無理に敵対関係を作る必要もないですから」

 

 そこまで言ってからリンディは苦笑して「まぁ、現状は片付けるべき問題が山積み、というのもありますが」と言う。

 

 闇の書については先送り、という結果に新八は安堵する。

 

 八神はやてはぱっと見、〝新八の知っている通り〟の性格だろう。

 だったらクロノとリンディが『闇の書ごと封印』、なんて強硬策も取るか迷っている最中に違いない。だから、様子見といったところか。

 時間が経って、どんな判断を下すか、そこは怖いところだが。

 

 話しを聞き、土方は軽く煙を吐く。

 

「まァ、闇の書に関してはあんたら専門職に任せる。魔法素人の俺らが口出ししても、焼け石に水だろうしな」

「それでお願いします。それと――」

「口外するのは控えろ、だろ? 他の奴らにベラベラ喋っても、今はなんの得にもならんしな」

 

 先回りして答える土方に、リンディはニコリと笑みを浮かべる。

 

「えぇ、ありがとうございます。できれば、ジュエルシードの件が片付くまでは、訊かれたとしても、できるだけ混乱や騒ぎを招くような情報を話すのは、控えて説明してください。例え身内であろうと」

 

 言葉の最後辺りで真剣な表情を作るリンディに、新八は尋ねる。

 

「それってつまり……〝ジュエルシード事件が終わるまでの間〟は、闇の書に関しては誰かに口外しない方が良い、と言うことでしょうか?」

 

 リンディは「えぇ、そうです」と頷き、説明する。

 

「ジュエルシードの案件が片付いた時に、どのような状況になるかまでは予想できません。でも、今回の件が片付けば、否が応でも闇の書の問題に当たらなければなりません。それに、クロノが言ったように、〝新八さんの知っている闇の書〟の情報と〝目の前の闇の書〟の情報がすべて一致するとは限らないでしょうし。なるべく、無用な不安や混乱を皆さんに与えないように努めた方が賢明です。せめて、話すにしても『我々のすり合っている闇の書の情報』、しかも、皆さんを不安にさせる情報は伏せて教えるべきですね」

「は、はい」

 

 と新八はぎこちなくなりながらも、頷く。少々頭の中がこんがらがりそうだが、仕方ない。

 土方は咥えるタバコを上下に揺らしながら語る。

 

「まー、妥当な考えだな。そもそもジュエルシード事件が終わった後も、俺らが関わるかどうかわからん以上は、身内だろうが無暗に話すって行為は、控えた方がイイだろう。口が滑りそうな、チャイナや天パや沖田や近藤さんなんかは、間違いなく話さん方がいい。なにしでかすか分からん」

「そ、そうですね……」

 

 なんていうか、部下と上司すら信用ならん、とハッキリ言う土方の言葉を聞いて、微妙な表情を浮かべる新八。まあ、他言無用が中々実行できない方たちなのは周知の事実なので、反論とかは特にないが。

 

「本格的に事に当たる時なら伝えても構わんだろうが、現状は教えても気を揉ませるだけだろ。今は、ジュエルシードとフェイトのことを第一に考えさせた方が良い」

 

 土方の言葉を聞いて、新八も特に反論意見はないので、はい、としっかり頷く。

 そしてリンディも、いつになく真剣な表情で告げる。

 

「それに、未来の情報は本当に必要だと思う時以外は、基本的には口外はしないという形を取って下さい。現在の人間は〝なにもしていない〟ですし、〝なにかをする〟保証もありません。だから下手に教えたりすれば、誰かが〝起こるかどうかも分からない情報〟に踊らされて、誤った行動をしてしまう可能性があるということも、考慮してください」

「わ、わかりました!」

 

 アニメの情報に関してはより一層慎重に扱おうと、新八は肝に銘じた。

 過去の行いの反省、そしてこれからも慎重な言動を――と頭の中で考えている時、ふと、ある事に気付いた新八は、リンディに尋ねる。

 

「……っていうか……食堂でシグナムさん、自分たちの事を普通に『ヴォルケンリッターだ』って、自己紹介してましたよね? アレ、ほっといて大丈夫なんですか? シグナムさんたち、普通に闇の書について色々ベラベラ喋ちゃったりしませんか?」

「あー、そのことですか」

 

 とリンディは思い出しように言い、土方も新八の言った事に気付いて、アースラ艦長に不可解と言いたげな眼差しを向ける。

 リンディはちょっとおかしそうに、理由を説明しだす。

 

「ヴォルケンリッターの方々には、あの時会うまでに、あなた方が〝どういう方々〟なのか話しましたから」

 

 リンディの含みある説明に、土方と新八は脱力したように呟く。

 

「あー、なるほどな……。俺らって、眼鏡以外は魔法の知識も、この世界の知識も、皆無だもんな……」

「そりゃァ……僕らヴォルケンリッターどころか、闇の書って聞かされても、まず分からない側の人間のはずですもんね……。ヴォルケンリッターって自己紹介されても、『あー、へー、ふーん』くらいですもんね……普通は……」

 

 どうやら、なのはちゃんたち含めて自分たちは、ヴォルケンリッターにとって『名乗るくらいなら問題ない存在』と認識されていたらしい。

 そこで新八は、ふと考えた。

 

――あれ? 僕、めちゃくちゃヴォルケンさんたちの前で、闇の書の情報を暴露しちゃったんだけど? なんで変な奴としてか思われてないの?

 

 

 そして、食堂のヴォルケンリッターたち。

 

「なー、さっきの眼鏡さー」

 

 ヴィータが不思議そうに仲間たちに話す。

 

「なんで、闇の書の名前出しながら、地球滅亡がどうたらこうたら叫びながら発狂してたんだろうな」

「闇の書を狙う者だとしても、あの錯乱行動が不可解過ぎるな」

 

 とザフィーラは顎に手を当てつつ、眉間に皺を寄せる。

  

「そもそも闇の書に、そんな危険な機能はないはずよね?」

 

 頬に手を当て、シャマルは不思議そうに小首を傾げた。

 シグナムは腕を組んで、難しそうな表情を浮かべながら話す。

 

「土方という男の話では、どうやらあの眼鏡の青年は、普段から心労(ストレス)が酷いらしく、それに伴って脳のダメージが深刻のようでな。発作のように、頭の中でアニメやマンガなどの創作物と、現実の情報が混ざり合い、あげく興奮状態になってしまうらしい」

「なるほど、だからあんなに錯乱していたのか……」

 

 ザフィーラは腕を組んで、同情したような表情でうんうんと頷く。

 そこでヴィータは、思いついたように人差し指を立てる。

 

「あ~、ならきっと、はやてと一緒に見たドラえもんだな。地球なんちゃら爆弾ってヤツ。それに、桂やはやてと一緒に遊んだFF。そういう感じの情報が、ごっちゃになったに違いないぜ」

「そして興奮しながら錯乱状態に陥る……」

 

 汗を流すシャマルが呟き、

 

「……冷静に考えると、中々に病んでいるな……」

 

 なんとも言えない表情で、シグナムは視線を下げた。

 

「……あの眼鏡、地味な見た目に反して抱えてるもんがヤベーな……。近づかない方がいいぜ」

 

 ヴィータがちょっと引いたような表情で言えば、シグナムは「あぁ、それが正解だな」と言って頷き、話す。

 

「土方も彼の持病については『危険だから、触れず、口に出さず、心の中にしまいつつ、なるべく避ける方針を取った方がイイ』と言われてな。主はやてにも、注意してもらおう」

 

 他の騎士たちも満場一致の意見になる。

 知らないところで、ヴォルケンリッターに変なヤツどころか、相当ヤベー奴認定を受ける新八であった。

 

 

 ヴォルケンリッターたちに悪い意味で注目され、避けられているなど、露も知らない新八。

 とにもかくにも、リンディの執務室では、話がまとまっていく。

 

「まァなんにせよ、俺たちは時期が来るまでしっかり口を閉ざした上で、訊かれても誤魔化せるかどうかだが……」

 

 と言って土方は、ジロリと鋭い眼光で新八を睨む。

 まあ、間違いなくこの鬼の副長は、桂の時にやらかした〝迂闊な発言〟の事を言っているのだろう。

 

 今まで、リンディの執務室で肩身の狭い思いをしていた新八は、椅子から立ち上がり、ここぞとばかりに反論。

 

「で、でも僕だけじゃないでしょ問題は! あの桂さんだって絶対に闇の書の事知ってますよ! ヴォルケンさんたちが目覚めてからもずっとはやてちゃんのところで居候してて、闇の書の事を知らないってことはないですし!! あの人がいつなにを喋るかなんてわかったもんじゃない!!」

 

 ちょっと人のことを盾にしてるようで複雑な気持ちになるが、問題は問題なので指摘する新八。

 

「あー、確かに。桂も桂で問題だな……」

 

 新八の言葉を受け止め、メンドクサそうな表情になる土方。

 回想の時は誤魔化せた。が、今後、桂がどんな風に口滑らすかわかったもんではない。

 するとリンディが苦笑しながら、

 

「とりあえず、桂さんにも忠告をしようとしたんですけどー……」

 

 

『なに? 闇の書? はやて殿が持ってる本のことか?』

 

 と桂が聞き返すと、クロノは頷き説明する。

 

『あぁ。それで、あなたにお願いしたいのだが、闇の書については――』

『はやて殿が持ってるFF新アイテムのことか? 小数点以下の確率で出てくる希少なレアアイテムなのか?  俺は新作FFには詳しくないが、やはり新作のレアイテムのような重要情報は伏せておくべきか? それに次世代機のことも視野に入れて――』

『あぁぁぁぁ……! ――うん……。うん。うん! もうそれでいい。そう思ってるならそれでいい!』

 

 

「――っと言うことで、とりあえず勘違いさせておいた方が良いかと思いまして」

 

 苦笑するリンディの説明を聞いて、

 

「クロノくん……なんて痛ましい……」

 

 狂乱のバカ――その深淵の一部を覗き込んだクロノの心労を推し量り、新八は同情した。

 

「まー、桂はほっといた方が良さそうだな。下手に説明すると逆に危険だ」

 

 だから問題なのは、と土方は言って、新八を再びジロリと睨む。

 

「おめェと俺の、今後の言動次第だからな?」

 

 結局矛先が自分に向いて、いたたまれなくなった新八は、乾いた笑いを浮かべる。

 

「ァ、アハハハ……。じゃ、じゃあ僕……これでー、失礼します。ちゃんとー、口はチャックしますので! 言い訳も考えておきますので!」

 

 そう口早に言って新八は立ち上がり、そのままリンディの執務室の扉を開け、

 

「では、失礼します!」

 

 90度の角度でしっかり腰を折り曲げてから、退室するのだった。

 そんな新八の姿を見て、土方は眉間に皺を寄せる。

 

「……大丈夫か?」

「まぁこれ以上、意地悪く釘を指しても、なるようにしかなりませんよ」

 

 とリンディは笑みを浮かべながら告げ、土方はため息を吐くようにタバコの煙を口から出す。

 

「……そんじゃあ、最後に一つ。今後のことも兼ねて、あんたに頼んでおきたいことがある」

「はい。なんでしょうか?」

 

 土方はあることをリンディに頼むのだった。

 

 

 海鳴市付近の海が見える堤防では、フェイトがマントをなびかせていた。

 

「本当にジュエルシードが?」

 

 フェイトは金髪を海風に揺らめかせながら、後ろにいる男に質問する。 

 

「やっぱどこ探してもないとなると、海だろ」

 

 黒い髪を逆立たせた男――パラサイトは、腕を組みながら言う。

 フェイトはまだ納得しきれない。

 

「まだ探し足りない可能性もある」

「俺の『部下たち』総動員して探させてんのに、一個も発見できねェんだ。そりゃ、海にあって然るべきだろ。つうか、ない方がおかしいと俺は思うけどな」

 

 顎に手を当てながら語るパラサイト。

 

「そう」

 

 フェイトは短く返事し、また海を見つめ直す。対し、パラサイトは片眉を上げる。

 

「んで、どうすんだ?」

「魔力を流し込んで、海のジュエルシードを一斉に発動させる。それで後は――」

 

 フェイトは憂いが伺える表情で、右手に持った刀を見た。

 すると、ニヤリと笑みを浮かべるパラサイト。

 

(そいつ)を使えば、暴走するジュエルシードが十個あろうがニ十個あろうが楽勝なはずだ」

 

 チラリと、フェイトはパラサイトに視線を向け、また海を見る。

 

「……待ってて――」

 

 憂いを帯びた表情で、フェイトは家族の名を呟く。

 

 

 

 場所は変わって、アースラの休憩室。

 

「――えッ? ……マジなの?」

 

 銀時は手に持ったDVDのケースを見て、頬を引きつらせていた。隣にいるアルフは絶句している。

 

 さすがに新八があそこまで騒ぎを起こして、いくら銀時でも無視するはずがない。

 あげく、神楽は身内だからってポロっと『リリカルなのはの事』について口を滑らす始末。

 

 それからもう、あれよあれよと銀時は土方たちを問い詰めるし、近くに控えていたアルフまで興味を示し出す。

 そんなこんなで、ようやくワケを聞き出した銀時とアルフ。

 もちろん説明を聞けば、今自分たちがいる世界は『アニメの世界』などという、ぶっ飛んだ話を真っ向から信じるはずがない。あげく、「ふざけてんのか? 本当のこと言えや。本当ならとっとと証拠みせろやコラ」とキレながら絡んでくる始末。

 

 そこで、執務室からやっと戻って来た新八にDVDケースを見せることで、二人もやっと信じ始めていた。

 

「ま、マジなのかい……銀時……?」

 

 アルフは動揺しながら問いかける。

 一応、主(仮)とするほど信頼を置いている銀時がもし本当に『自分たちの世界はアニメ』だと言えば、ある程度は信じるだろう。もちろん、並行世界と言う説を前置きにしての話ではあるが。

 

「ぼ、僕らは……いつの間にか、アニメの世界とやらに来てしまっていたのか……!?  し、信じられん……!」

 

 流れでちゃっかり話を聞いていた九兵衛も、かなり動揺している。

 

「ですが若!! これはチャンスですぞ!!」

 

 ガッツポーズして声を上げる東城歩。

 

「この世界で若が『魔法少女リリカルきゅうちゃん』になれば、女子力アップまちがいな――」

 

 東城の顎に、九兵衛の女子力(鉄拳)が炸裂した。

 一方の銀時。アルフの問いには答えられず内心で、

 

 ――そ、そうだったのかァァァァァッ!!

 

 超ビックリしていた。

 

 ――どうりで、なのはやフェイトに見覚えあると思った!! あいつら、このパッケージのキャラだったのかァーッ!! 

 

 目から鱗が取れたような、喉に引っかかっていた小骨が取れたような、そんな気分の銀時。

 

「ぎ、銀時……! ど、どうなんだい!? やっぱりあたしらの世界って……!!」

 

 銀髪がダラダラ汗を流しながらずっと黙っているので、アルフは語気を強めて再度質問する。

 銀時はチラリと使い魔に目を向けてから、ため息を吐き、そして頭をポンポンと叩く。

 

「……別に、そんな動揺することでもねェだろ。ユーノも説明したろ? ただ俺らの世界じゃ、おめェらの世界の立ち位置が、ちょっと変わってるってだけの話みてェだしな」

 

 使い魔を安心させるように頭を撫でる銀時。

 

「そう、だね……」

 

 アルフは嬉しそうに、銀時の手の温もりを味わう。

 

「ゴホンッ!!」

 

 突如、新八がワザとらしく咳払いする。

 

「まー、ちょっとショックかもしれねェけど、深く考えてもどうしようもねェさ。世界どうこうの話しだしな」

 

 そこまで言って手を離す銀時に、アルフは微笑む。

 

「そうだな、銀時」

「ゴホンッ!! ウッオホンッ!!」

 

 より強くせき込む新八だが、少し頬を赤くさせるアルフは構わず、

 

「なー、銀時――」

「ゲホォーッ!! ゴホォーッ!! ンゴホォォーッ!! ――って、アホかァァァァァァッ!!

 

 いい加減に我慢の限界らしく、新八は張り裂けんばかりの怒鳴り声を出す。

 すると、真顔に戻ったアルフはジト目を向けた。

 

「なんだよ、眼鏡。主人(仮)と使い魔が話してる時に、一々変なちゃちゃ入れて」

「そうだぜぱっつぁん」

 

 と銀時も便乗し、言う。

 

「こっちはペットの世話で忙しいんだ。風邪の訴えならお近くの薬局で――」

「風邪ちゃうわ!! 話し切り出そうとしてんのこっちは!!」

 

 新八はビシッと銀時とアルフを指さす。

 

「つうかそのラブコメみたいな雰囲気やめてくんない!! この作品はとらぶるでもニセコイでもねェんだよ!!」

 

 銀時は腕を組んで呆れ声。

 

「おいおい、ペットと語らってただけなのにラブコメ扱いかよ。童貞嫉妬眼鏡ここに極まれりだな」

「んだコラァーッ!!」

 

 と新八はキレ、

 

「いや、さっきからスルーしてたけど、ペットじゃなくて使い魔だからね?」

 

 とアルフは訂正。一方、新八はキレたまま青筋を更に浮かべる。

 

「こっちにはイチャイチャしてるようにしか見えねェんだよ!! ラブコメしたきゃ、とらぶるの世界にでも行きやがれ!!」

 

 はいはい、と銀時は飄々とした態度まま。

 

「とらぶるでもニセコイでもゆらぎ荘でも別にいいから、とっとと本題言えって」

 

 そう言われて、新八は居住まいを正して口を開く。

 

「……では、言いますけど……この事はあんまり口外しないでくださいよ? 僕もちょっと前にリンディさんから『あまり他人に喋らないように』と、注意されたんですから」

 

 ちなみにちょっと前に新八は、唇の前に指を立てるリンディから、

 

『クロノには、私があなたの話を信じた事についてはなるべくご内密に。ちょっと傷つくと思うので』

 

 と口止めもされていた。

 

 特に闇の書に関しては、ヴォルケンリッターやはやてたちどころか、現状は銀時やなのはたちにも話さない方がいいと忠告を受けたばかり。

 今はクリミナルやジュエルシードで手一杯だから仕方ないといえば仕方ない。

 

 銀時は片手をぶらぶら振りながら言う。

 

「つうか、俺ら以外でこんな話し、信じる奴なんて皆無だろ? 言ったら言ったで、ただの妄想癖のひでェ頭の変なヤツ扱いだ」

「まー、そこはリンディさんにもクロノくんにも指摘されたとこなので、言い返せませんが……」

 

 新八は少々口を尖らせるが、言ってることは正論なので反論の余地がない。

 

「ちなみに訊きたいんだけどよ?」

 

 銀時はDVDケースを持つ。

 

「コレを見たとして、この先役に立ったりすんの?」

「さーな」

 

 と言って、土方はタバコを吸いながら語る。

 

「正直ここまでDVDの内容と乖離しちまうと、予測不能もいいところだ。出てくるはずのない連中まで出てくる始末なんだからな」

「まぁでも、〝信じる〟っていう前提条件なら、結構な情報源にならないかい?」

 

 アルフの言葉に、土方は「まー、な」と返す。すると、狼の使い魔はニカっと犬歯を見せる。

 

「なら、あたしは見させてもらうよ。これからの為に、必要なんだからさ」

「もうフェイトの秘密も暴露されてるし、他人の秘密みてェなモンを知る心配もねェんだろ?」

 

 頬杖つく銀時の言葉に、新八が頷く。

 

「えェ、まァ」

「なら、情報源の一つとして、俺も見させてもらうとするか」

 

 銀時がそう言って立ち上がると、なのはが勢いよくバッと手を上げる。

 

「もちろん私の変身シーンは飛ばしてください!! 色々恥ずかしいので!!」

「えッ? なんで?」

 

 と銀時は首を傾げ、訊く。

 

「仮面ライダーと同じで、そこが一番の見せ場じゃねェの?」

「ダメなものはダメです!!」

 

 涙目で顔を真っ赤にして訴えるなのは。少女の様子を見て、眉を顰める銀時だが、パッと思いつく。

 

「あッ、もしかして……全裸になんの?」

「ッ!!」

 

 まさかの正解予想に、なのはは更に顔を真っ赤にさせてビックリ。

 銀時は右手を軽く上げる。

 

「別に俺、大人だからそんなのぜ~んぜん気にしないから。だからだいじょう――」

 

 カチャッ、と涙目のなのはが、レイジングハートの先端を銀時に向ける。気を使えない大人は汗を流す。

 

「やっぱ早送りで――」

 

 なのはの目の端に涙の粒が溜まり、レイジングハートの先端にも魔力が溜まる。

 

「すんませんスキップでお願いします」

 

 冷や汗を流す銀時は、やっとなのはが杖を下ろしたことで安堵した後に、新八に耳打ち。

 

「……新八。魔法少女の全裸の写真って、相場いくらくらいで売れ――」

 

 笑顔のアルフが、銀時の頭をガシっと鷲掴み。頭からミシミシと音が。

 

「ホントマジすんません」

 

 そんなこんなで食堂から移動し、余計な局員が来ないであろう少々広めの部屋で、DVD鑑賞会が始まった。

 

 

「――あぁ、なるほどな」

 

 エンディングまで見た銀時は、顎を撫でる。

 アルフは複雑な表情を作りながら、感慨深そうに首を垂れていた。

 

「本当に……僕たちが来ていた世界は、アニメの世界だったのか……」

 

 半信半疑だった九兵衛は、映画の内容を見て信じることにしたようだ。

 

「若ッ!!」

 

 すると、東城が必死な形相で訴える。

 

「ならば早速魔法の修練をし、魔法少女リリカルきゅうちゃんに――!!」

 

 東城のアゴに九兵衛の魔法(アッパーカット)が炸裂した。

 すると、銀時がおもむろに口を開く。

 

「ぶっちゃけ、映画の方がイージーモードじゃね?」

 

 銀時の言葉は最もだと新八も思った。

 

 フェイトは、なんか魔力を吸収するとかいう刀を手に入れてパワーアップ。あげくに母親殺したとかのたまうし、クリミナルとかいうワケの分からん犯罪集団が介入してくる始末。

 なんか、状況の難易度と複雑さが、何段階か跳ね上がったような気がする。

 

「おいおい、俺たちって、もしかして疫病神?」

 

 銀時は耳を小指でほじりながら言う。

 

 その言葉に新八は落ち込んでしまう。

 確かに、自分たちが来てからというもの、この世界の歴史のようなモノがしっちゃかめっちゃかになっている。こうなった原因が自分たちにあるのでは? と思ったことは、新八だって何度もあった。

 

 銀時はおもむろに口を開く。

 

「……俺たちって、この世界にとっちゃ、いらない存在なのかもな」

「そんことありません!!」

 

 と、なのはが銀時の言葉を即座に否定した。

 

「もう私には、映画なんて関係ありません!!」

 

 なのはの言葉を聞いて、銀時も耳をほじるのを止め、必死に訴える少女の言葉に耳を傾けた。

 

「私は、新八さん、神楽ちゃん、土方さん、沖田さん、近藤さんに、凄く助けられました!! アリサちゃんやすずかちゃんと一緒に魔導師を出来ているのだって、沖田さんと神楽ちゃんと定春くんのお陰ですし、心が挫けそうになった時は、何度も新八さんたちに励まされました!! だからいらないなんて事はありません!!」

 

 少女の言葉を聞いた山崎は、涙を流し始める。

 

(なのはちゃん……。地味に俺のこと、忘れてんだけど……)

 

 しかも、山崎の名前は出ないのに、犬である定春の名前は挙がっている事実。

 真選組一、地味な男の反応に気付かないなのはは、ムスッとした顔で。

 

「いくら銀時さんでも、そんなこと言ったら私だって怒りますよ!」

「なのは……」

「なのはちゃん……」

 

 山崎と違い、神楽と新八は、なのはの言葉に感銘を受けていた。

 小さな少女の言葉が、ともにジュエルシード集めをしてきた者たちにとっては、とても心強く、温かいモノであるだろう。

 

 銀時は頭を指でぽりぽりと掻き、

 

「……悪かった。オメェのダチの存在を否定するようなこと言って」

 

 頭を下げはしないが、自分の非を認めた。

 

 一連のやり取りと、なのはの訴えと気持ちを聞いた新八は、思わず考えた。

 彼女を主人公などと揶揄するつもりはないし、そう扱うつもりもほとんどない。が、今のなのははやはり、主人公と思ってしまうほどの風格と言うべきだろうか? そんな心強いモノを感じられる、と。

 

 銀時の謝罪を聞き、ムスッとした表情だったなのはは、ニコリと笑顔を浮かべた。

 

「はい。もう新八さんたちは、私の大事なお友達ですから。あんまり悪く言わないでくださいね」

 

 するとアルフが、眉間に皺を寄せて不満げな表情を作る。

 

「そうだよ銀時。あんたの言葉が正しいなら、あんたを認めたあたしまで否定することになるんだから、言葉には気をつけな?」

 

 でないと、と言ってアルフは牙を見せつけた。

 

「ガブッていっちゃうよ?」

「たく、ホントおっかねェのが使い魔になったもんだぜ」

 

 銀時は頬杖を付きながら言う。

 すると、ゆっくりと手が上がり、

 

「ちょっとよろしいか」

 

 全員の視線が声のした方に向く。見れば、桂小太郎が手を上げていた。

 

 え? いたの? と、この場にいる全員が思った。だって、桂はジュエルシード事件に関係ないから、まったく話に入れない人物の一人。なのに、なぜかいる。

 

「一つ聞きたいのだが……」

 

 と言って、桂は手を下ろして腕を組む。

 

「この映画の二作目に、俺の出番はあるのか? ギャラについて話したいのだが」

「ねーよ。テメェは一生ノーギャラだ」

 

 銀時は冷たくあしらうと、桂は真顔で返す。

 

「何を言う。俺の中の人の大人気だぞ。エヴァも公開してるしな。ギャラを弾まずしてどうする」

「うん。ほんと黙るかもしくは死んでくんないかな、ホント」

「つうか桂さん、なんであんたまで映画鑑賞してんですか?」

 

 ジト目を向ける新八の問いに、桂はあっけらかんとした顔で。

 

「なんか気になったから」

「あんたホント自由人ですね!! 雰囲気察するとかできません!?」

 

 と新八がツッコめば、

 

「つうか手錠はどうしたァッ!?」

 

 土方は指をビシッと突き付け、桂の手が自由になったことを指摘。

 桂は真顔で両手を見せつける。

 

「ヴィータ殿のハンマーで壊してもらった」

「よしわかった!! もう一度手錠してやる!!」

 

 土方がふところから手錠を出そうとするが、

 

「あ、あれ?」

 

 と土方は焦り、汗を流す。

 

「……手錠が、ねェ……」

 

 手錠のストックがない土方が、山崎に顔を向ける。

 

「おい山崎。テメェの手錠をよこせ」

「フハハハハハハッ!!」

 

 突如、桂は高笑いし、言い放つ。

 

「無駄だ真選組よ! 何度手錠をしようとも、その度にヴィータ殿に壊してもらうからな!」

 

 桂の説明に、土方は拳を握りしめ歯噛みする。

 

「小さな女の子頼りで、あんた情けなくないんですか?」

 

 冷めた目で新八が桂を見るが、攘夷バカはスルー。

 銀時はふと、ある事について訊く。

 

「つうかよ、ぱっつぁん。ヅラで思い出したけどよ――」

「ヅラじゃない桂だ」

「おめェ、闇のなんちゃらがどうとか言ってたけど、なにそれ? リリカルなのはになんか関係あんの?」

「ふァいッ!?」

 

 突如の質問に、新八は素っ頓狂な声を上げた。

 新八の反応など気にせず、銀時は平然とした顔でまた尋ねる。

 

「いやだから闇の~……なんだっけ? 神楽」

「闇の絵本アル」

 

 と神楽が言い、銀時が「そうそう」と相槌を打つ。

 

「闇の絵本。おめェ、それがどうとか言ってたじゃん。それなに?」

「いや闇の書です闇の書!!」

 

 新八は訂正し、銀時は再び尋ねる。

 

「いや名前は別にどうでもいいけどよ、その闇の書ってなに? おめー、やたらそれに反応してたじゃん。地球滅亡とかなんとか」

「あッ、えッ……えッ……ええっ~と……」

 

 銀時の問いかけに新八は口ごもり、視線を右往左往させ、汗をダラダラながす。

 

 

 

 今、新八は内心すんごい焦っていた。

 

 ――ヤバイヤバイヤバイ!! いま!? いま聞くの!? このタイミングで!?

 

 まさに寝耳に水。まさか闇の書について触れるどころか、もう忘れてると思ってた人物からの突然の疑問の投げかけ。しかも、まさかのこの場面で。

 

 銀時の問いと新八の歯切れの悪い態度に釣られるかのように、周りの者たちの視線が新八に集まり始める。

 

 ――ちょっとォォォォォ!? みんなめっちゃ見てる! すんごい注目してる!

 

 新八は思わず、このメンツの中で闇の書について知っている、土方へと目を向けると、

 

 ――こっわッ!? めっちゃ睨んでる!? 

 

 ほとんど人間は気づかないが、土方は新八をめっちゃ鋭い視線で睨んでいる。『オメェ、今度は余計なことを言うんじゃねェぞ?』と目で語っている。

 

 ――こェェェよ!! 土方さん!! こッッェェェェェよ!! つうかあんたのおっかない形相に山崎さんがビビッてるんですけど!?

 

 鬼の副長の鬼のような視線――というか鬼の形相に気づいて、山崎は青ざめながら怯えている。

 

 とにかく、このまま黙ってはいらない新八。黙り続ければ、余計に疑惑の念を向けられる。なんとか誤魔化すかしかない。

 はやてちゃんのためにも、ヴォルケンリッターのためにも、なのはちゃんたちのためにも、穏便な感じで説明するしかないのだ。

 

 しかしチャンスなのは、図らずも桂の説明がイイ感じに、はやてやヴォルケンリッターと闇の書の存在を紐づけせずに、切り離してるところ。

 前々回のお話しで、

 

 『FFの新アイテム闇の書……あー、こっちは分んないしどうでもいいな。俺を助けたのは、ポッと出のヴォルケンリッターたちでな』

 

 って言ってた辺りが、ちょうどよく誤魔化しになってる。

 やがて新八は息を深く吐き、コホンと咳払いしてから真剣な表情で告げる。

 

「ロストロギアなので……ヤバイ……」

 

 ――うっは! 僕、誤魔化すの下手過ぎ!

 

 内心、機転の利かない自分を自己嫌悪する。今の回答は、『自分は何か隠してます』と宣言しているようなもんだ。

 だがしかし、

 

「ほ~……ロストロギアでヤバイの? だから管理局が追ってんだな」

 

 まさかの天パが好意的に解釈してくれたので、新八の顔がパ~っと明るくなり、顔をぶんぶんと縦に振る。

 銀時は腕を組んで、なるほどなるほど、と呟きながら納得し、

 

「んで?」

 

 少し目を細める。

 

「へッ?」

「いや、『へッ?』じゃねェよ。ヤベーってどんな感じにヤベーんだよ」

 

 珍しく鋭さを発揮させる銀時の指摘を聞いて、アリサも「確かに」と言って、腕を組みながら自身の考えを口にする。

 

「ロストロギアって言うけど、種類も色々のはずよね。ジュエルシードなんかは、〝手に入れた人の願いを暴走させる〟危険なモノだし。だったら闇の書も、どんな風に危険なのかしら?」

 

 ――アリサちゃん!? 小学生とは思えない冷静な分析やめて!! 変な後押ししないで!!

 

 内心焦る新八だったが、

 

 ――もうこうなればヤケだッ!!

 

 勢いよく立ち上がり、腹をくくる。

 

「僕も詳しい設定とか能力は分かりませんが、なんかアニメで見た感じヤバかったんです! こ~描写がすんごく、ズガガーン!!  シャキーン!! ズババーン!! ジャキーン!! ズゴーン!! グワァ~ァン!! みたいな感じで――!!」

 

 身振り手振り使って、なんとか詳しい内容を伝えないようにしながら、伝える努力した。

 そして新八は最後に、ズッガドガァァァン!! と叫びながら、拳を上げてやり切った表情で、

 

 ――なにやってんだろ、ぼく? アホの子かな?

 

 複雑な感情を抱いていた。内心、涙を流している。

 なんとか誤魔化せたか? と恐る恐る銀時の顔を伺うと、さきほどまで訝し気な眼差しを向けていた天パは、

 

「なにそれ? アホの子かな?」

 

 少し引いていた。

 

 ――うっせェェェよ!! もういいよそれで!!

 

 心で涙を流しながらヤケクソになる。

 神楽は新八を指さしながら腹抱えて笑う。

 

「ブハハハハハ!! 新八!! お前、表現稚拙過ぎて、アホ丸出しネ!! おバカキャラに転向したアルか!!」

 

 ――おめェにだけは言われたくねェェ!! すんげェームカつく!!

 

 やっぱ面と向かってバカにアホ呼ばわりされるのは、心の底から腹が立った。

 

「うむ! 良くわかった!!」

 

 近藤(バカ)はなんでか自信満々に頷く。あの説明で理解できたらしい。

 

 ――近藤さんあんたよくわかってないでしょ!! まあ別にいいけど!!

 

 新八は内心ツッコミ入れながらゆっくりと座り直し、頬を引きつらせながら銀時へと問いかける。

 

「ど、どうですか銀さん? や、闇の書について、わ、わかってもらえました?」

「うん。お前が読解力なくて、アニメは美少女目当て、内容よりも美少女キャラだけに注目してる、ティッシュペーパー並みに薄っぺらい奴だって分かった」

 

 ――そこまで言う!? そこまで言うの!? 酷くない!? つうかそういう理由でアニメ見る層に失礼じゃない!?

 

 新八はあんまりにもあんまりな言い草に、青筋を浮かべながら内心歯噛みする。

 

 ――クッソォォォ……!! 僕だってなァ……!! 僕だってなァァ……!! ちゃんと〝内容にだって〟惹かれたんだチクショォォォ!! 語れるもんなら語りてェよ!! 

 

 だけど、美少女目当ては否定できない思春期新八であった。まぁ、男の子だからしょうがないよね。

 銀時は肘を机の上に置いて、掌の上に顎を乗せながら告げる。

 

「まぁ、今後出てくるかどうかも分かんねェモン気にしてもしょうがねェか。このチ〇コでアニメ見るオタクの言ってた、地球がヤベーってのも、アニメ特有の過剰表現ってことなんだろ。ドラゴンボールでもあるめェし、ポンポン星がぶっ壊れるわきゃねェしな」

 

 ――良かったァァァァ!! マジムカつくけどなんとか誤魔化せたァァァァ!!

 

 と内心安堵する時、桂が顎に手を当てながらボソリと口を開く。

 

「そう言えば、はやて殿が持ってるFFの新アイテムって、闇の書って名前だったっけ? ヴォルケンリッター殿たちが説明してくれてたよーなー……」

「あー、なんか出てきたな、お前の話に。はやてが持ってる本なの?」

 

 と銀時が反応し、新八は固まる。

 桂の話しを聞いて、眉間に皺を寄せる銀時。

 

「つうかよ~、おめェは大事なとこ説明しろよな。なんだよFFの新アイテムって。変な勘違いしやがってよ」

 

 やがて銀時は納得したように、顎に手を当て、うんうんと頷く。

 

「でも、なるほどな。ヅラとぱっつぁんの話の辻褄が合ってきたな。じゃあ、気付いてない管理局の連中にでも、忠告しとくか?」

「ヅラじゃない桂だ」

 

 ――おい桂テメェェェェェ!! 余計なこと言ってんじゃねェェェェェェ!! なんで今更そんな説明すんだァァァァァァアアアアアアア!!

 

 まさかの(バカ)の追撃に内心、怒鳴る新八。

 

 ――いまさら闇の書とはやてちゃん紐付けすんじゃねェコノヤロォォォォォォ!! 僕の努力返せェェェェェ!! 一生FFに閉じこもってろッ!!

 

 桂に呪詛の念を送る新八。むろん長髪は露知らず。

 すると土方が、

 

「ま、まー、俺が知ってる限り、闇の書の機能は大まかに説明すれば、強力な騎士と強力な魔法が手に入る。だから強力なロストロギアとして認定されてる。そんな感じらしい」

 

 汗を流しながらフォローを入れる。

 

 ――さすがフォロ方さん!! 僕より誤魔化し方が上手い!!

 

「じゃあ、闇の書については特に問題はないんですか?」

 

 なのはの問いについて、土方はタバコの煙を吐きながら答える。

 

「そこら辺はあらかじめ聞いておいたが、管理局も対応は考えているらしい。だから〝現状〟は特に問題ないそうだ。だからあんま気にすんな」

 

 ――しかも後々責められないように、上手くボカして説明してる!! さすがフォローの達人フォロ方トシフォロー!!

 

 内心、土方に尊敬の念を送る新八。

 すると近藤が、腕を組みながら意外にそうに小首を傾げる。

 

「あれ? トシ? お前、トッシーとしての記憶って持ってるの? 前にリリカルなのはの知識皆無だって――」

うォォォォォォォッ!!

 

 と、土方はドでかい声で近藤の言葉を遮って、右手で頭を抑え、声を荒げる。

 

「どうしたトシィィィィィィ!?」

 

 もちろん近藤はビックリ。土方は頭を抑えながら、声を荒げつつ語り出す。

 

「きゅ、急にトッシーの記憶がァァァァァ!! 消滅したかと思われたトッシーの記憶が俺の頭の中にィィィィィ!! ピンポイントで闇の書の情報がァァァァァァァ!! でも他の情報は霞がかかったモヤのようにふわふわであんまり思い出せないィィィィ……!!」

「しっかりしろトシィィィィィィィ!!」

 

 苦しむフリをする土方の言葉を、近藤は真に受けて必死に心配する。

 

 ――土方さァァん!? あんた痛いところ突かれると誤魔化し方が下手になんの!?

 

 付け焼刃さながらのへったくそな誤魔化し方に、内心ツッコム新八。

 一方、アリサは沖田へと顔を向け、問いかける。

 

「トッシーって?」

「伝説のオタク」

「伝説って?」

「ああ。それって土方。つまり土方は、伝説のクッソ気持ち悪いオタクってこと」

「えぇ……」

 

 アリサは若干、引く。

 

「お前なにテキトーなこと言って俺の名を貶めてやがんだ!! ちゃんと説明しやがれ!!」

 

 沖田がさらりと、とんでもない風評被害を広めようとしているので、土方は怒鳴り声を上げながら食ってかかる。

 とは言え、なんとか誤魔化せて、新八安堵。

 

 そんなこんなで、わちゃわちゃしている時だった――。

 

『みんなお取込み中ゴメン!!』

 

 部屋の中心部分の空中に、ウィンドウが出現。そこに映るのは、慌てた顔のエイミィ。

 なんだ? どうした? と少しざわめく銀時たち。

 

「……どうしたんですか?」

 

 ユーノが彼女の雰囲気を察して、真剣な表情で訊けば、エイミィは声を上げて告げる。

 

『――フェイトちゃんが現れたの!!』




第五十五話の質問コーナー:https://syosetu.org/novel/253452/65.html



*質問コーナーのルールを、

『回答者が複数の場合は基本的には5人前後になります。』

『回答者が複数の場合は基本的には、5人前後、もしくはそれより少数になる場合が多いです。質問の内容と回答者の気分次第では、例外で人数が多くなることもあります。』

に変更しました。



あとこれ、本当に最近、気付いたんですけど……『魔法少女リリカルなのは×銀魂』のサブタイトルが、

『~侍と魔法少女~』

『~魔法少女と侍~』

ってなってました……。
ピクシブだと『侍と魔法少女』だったのに……。

いや、本当に気付くの遅過ぎました……。
副題を見て、アレ? なんか変だなー、って思った辺りで、「あッ……」ってなって気付きました。

まさか長い間、こん凡ミスしていたとは……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。