魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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投稿が二か月ほど間が空いてしまいすみません。

とりあえず、特殊タグ活用を続行しています。


第五十四話:証拠と信頼

 リンディ提督の執務室。

 

 そこでは、空中に映ったウィンドウに、何度目かわからないエンディングロールと田村ゆ〇りの歌が流れる。

 一応エンディングに入ったことで、ウィンドウを消すエイミィ。彼女の瞳に光はない。

 

「――こ、これがリリカルなのはです……」

 

 新八は冷や汗流しながら言う。

 もう誤魔化しとかそんなもんは、頭の良いアースラ組の方たちに多分通じるはずもないので、直球でホントの事言った。

 

 なんとも言えない空気の、艦長の執務室。その机の上に載っているのは『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』のDVDが入ったケース(なのはがたまたまバッグに入れて持って来た物)。

 

「…………」

 

 リンディは一言も発さずに口元を抑えて、パッケージの絵柄をじーっと見つめている。リンディのペットなのかは知らないが、執務室の隅っこで一匹の猫が横になっていた。

 同席し、立っているクロノがジト目で。

 

「エイミィ。ミッドチルダで一番の精神科病院はどこだったかな?」

「え~っと……」

 

 エイミィはクロノに言われてパネル操作を始める。

 

「いやホントなんです!!」

 

 さすがにその対応はあんまりだ、と言わんばかりに新八は声を上げて説得し出す。

 

「僕たちの世界だと本当に、あなた方はアニメのキャラってことになってるんですよ!!」

「信じられるかぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 クロノの当然の反応。青筋浮かべる執務官の気持ちは痛いほどわかる。

 新八は涙目で訴える。

 

「でも本当なんだからしょうがないでしょ!! クロノくんはアニメのキャラなの!!」

「ふざけてんのかお前はぁぁぁぁぁあああああああッ!!」

 

 更に激しく怒鳴るクロノ。そして溜めてたモノを吐き出さんばかりの勢いで、捲し立てる。

 

「何を!! どうしたら!! 自分たちがアニメのキャラだなんて!! 暴論を信じられると思うんだッ!! バカなのか!? 君はバカなのか! バカなんだろ!!」

「いやでもクロノくんもちゃんと内容見たでしょ!! 証拠揃ってるでしょ!!」

 

 新八の言葉を、クロノはビシッとDVDケースを指差して真っ向から否定する。

 

「あんなののどこが証拠だ!! どこが!! 裁判に出したら確実に鼻で笑われるレベルだぞ!!」

 

 クロノはDVDケースを手に取り、パッケージを手でバシバシ叩く。

 

「そもそもこのDVDの内容と、君たちから聞いた事件の内容が、かなり食い違う部分が多いぞ!! それでも信用しろとでも言う気か!」

「だってそれは、僕たちが関わって歴史が変わったんだから仕方ないんですよ!! 他に説明のしようがありません!!」

 

 新八もなんとか信じてもらおうときっぱり返す。話にならんとばかりに、クロノはリンディに顔を向け、声を上げる。

 

「艦長もなんとか言ってください!! 僕は正直今、ノイローゼになりかけてます!!」

「新八さん……」

 

 リンディはゆっくりと顔を上げ、DVDのパッケージを指さす。

 

「このパッケージのシーンがありませんでしたよ?」

「いやそこぉぉぉぉぉッ!?」

 

 クロノはシャウト。ツッコミ開始

 

「別にそこはどうでもいいでしょうが!! DVDの内容にあなたからも一言、文句言ってください!!」

 

 リンディは手を組んで真剣な顔で告げる。

 

「なのはさんとフェイトさんの変身シーンは少々刺激が――」

「艦長ぉぉぉぉぉッ!!」

 

 クロノは叫び、リンディは真剣な顔のまま。

 

「やはり少女の全裸シーンを映すのはいかがなもの――」

「艦長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 そんでもう一回クロノは叫ぶ。リンディは執務官に真顔で言う。

 

「落ち着きなさいクロノ。みっともないですよ」

「いや、ほぼあんたのせいですよ」

 

 とツッコム新八。

 

「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ!」

 

 クロノは叫び過ぎて肩で息をしている。すると、リンディは人差し指を立てて。

 

「ただ私としては、あのくらいの歳の子でも、もう少し胸は盛り上がってもおかしくは――」

 

「艦長おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 クロノはリンディの頭をバシッとはたく。

 

「お、落ち着いてクロノ君……」

 

 エイミィは失笑しながらクロノをなだめる。

 

「――さて、新八さん」

 

 頭にたんこぶが出来たリンディは、真面目な顔を作る。

 

「あなたは……なのはさんとフェイトさんの全裸を見てまさか興奮――」

 

「おいゴラァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 クロノは普段のキャラかなぐり捨てて、真顔のリンディの胸倉掴む。

 

「お、おおおおお落ち着いてクロノくん!! 気持ちは分かるけど落ち着こう!!」

 

 エイミィはクロノの両手を掴んで、なんとかなだめる。

 居住まいを正したリンディは再び机に座り、両手を組んで言う。

 

「……新八さん。まさかコレを見せて、私たちに『信用しろ』などと、まだ言うつもりですか?」

「うッ……」

 

 新八は口ごもり、リンディは言葉を続ける。

 

「あなた方が制作した自主映画と、ばっさり切り捨てられることを念頭に置かなかったのですか? 一つ言っておきますが、現状コレは〝証拠〟としてなんの力も発揮しません」

 

 リンディはDVDを前に出しながら、きっぱり言う。

 

「実はあなた方は何かよからぬ企みがあり、それを誤魔化す為にこのDVDを用意したと言う説も考えられます」

「い、いや!! いくらなんでもそれは極論過ぎるでしょ!!」

 

 さすがに新八は待ったをかける。

 本当に自分たちは、悪巧みなど一つも考えてなどいない。ただ、なのはたちの助けになりたいから行動しているだけなのだ。そもそもなんの目的があれば、手間と時間と金がかかる映画を、フェイクとして用意するというのか。

 

 返しを聞いて、リンディは「えぇ」と頷く。

 

「さすがに今のは、少々意地が悪い言い方でしたね」

「やっぱり……信じてもらえませんか?」

 

 新八は俯く。

 

「正直あなた方の世界をこの目で見ない限りは、新八さんの〝アニメの世界〟と言う言い分を信じるワケにはいきません」

「その通りだ!!」

 

 とクロノが怒鳴り、捲し立てる。

 

「バカバカしくて話にもならん!! なんでなのはたちはこんな話を信じられるんだ!! 理解に苦しむよほんと!!」

 

 クロノは腕を組んで不満顔。相当頭にキてるらしい。

 

「で、でも! ユーノくんの平行世界説はどうなんですか!?」

 

 引き下がれない新八は、前に納得させられたユーノの説を突き出す。

 

「それは論理として、中々的を射てはいますが……」

 

 と言ってから、リンディは首を横に振る。

 

「やはり〝今ある証拠〟で我々を納得させれるには不十分ですね。結局はただの憶測と仮説によるものですから」

「そうですか……」

 

 新八はがっくり項垂れる。

 

「なら次は――〝本当のこと〟を話してもらおう」

 

 するとクロノは、鋭い視線を新八に向けた。

 

「ほ、本当のこと?」

 

 目を瞬かせる新八に、クロノは頷く。

 

「ああそうだ。どうやって君が闇の書の事を知ったかだ」

「いやだからさっき説明した通りなんですって!!」

 

 と新八は食い下がる。アニメを見て知った。それ以外の答えなど持ち合わせてはいない。だから他に答えようがない。

 答えを聞いて、クロノは一歩前に出る。

 

「なら取調室に案内しよう。そこでじっくりと――」

「待ちなさいクロノ」

 

 そこでリンディが、前へ出るクロノの襟首を掴む。「ぐェッ!!」とカエルの潰れたような声を出す執務官。

 

「新八さんに何をする気ですか?」

 

 笑顔で訊くリンディに、クロノは後ろを振り向いて説明する。

 

「次元漂流者――いや、もしかしたら〝僕たちの世界の人間かもしれない〟彼を、尋問しようと――!!」

「それは許可できません」

 

 と、きっぱり言うリンディ。

 

「何故ですか!?」

「ただ〝闇の書を知っているだけ〟の彼を、これ以上尋問することはできません」

「し、しかし――!!」

 

 食い下がるクロノに、リンディは説明する。

 

「彼が他に答えを持ち合わせていないと言い張る以上、我々もこれ以上の尋問はできない。それとも、魔法を持たない、まして魔法世界側の後ろ盾が確認できない、そんな新八さんが闇の書をどうこうできる人物であると?」

「うッ……!」

 

 クロノは押し黙り、リンディは更に論破する。

 

「ましてや、何かよからぬ事を考えている人間が、我々の前であんな失言をして何の意味があると言うんですか? 論理的に考えれば、新八さんが悪意を持って闇の書の名前を言ったとは考え辛いでしょう」

「リンディさん……!」

 

 新八は自分を弁護してくれるリンディに瞳を潤ませる。

 

「ですが……」

 

 とリンディは言って、新八に目を向ける。

 

「無論、あなたの主張を我々は信じることはできません。そこはお忘れなきように」

「では、どうするんですか?」

 

 まだ何か言いたげなクロノの問い。

 対してリンディは、

 

「これで終わりにしましょう」

 

 と笑顔で言う。

 

「「はッ?」」

 

 クロノと新八は揃って間の抜けた声を漏らす。

 リンディは説明を始める。

 

「新八さんの話は、次元漂流者と言う点を考えれば絶対に嘘とも言い切れませんが、絶対に本当とも判断できない。当然、我々は彼の情報を信じて動くなんてことはできません」

「え、えぇ、まぁ……」

 

 クロノは戸惑いながら、頷く。リンディは、新八に顔を向ける。

 

「新八さんも〝本当のこと〟を話した。違いますか?」

「は、はい」

 

 戸惑いながら新八は頷き、リンディは少し肩を下げる。

 

「我々は新八さんの言うことを真に受けられない。かと言って、隠し事がないか新八さんをこれ以上尋問することはできない。どちらも膠着状態です」

 

 指で×を作るリンディ。そして艦長は笑顔を作り、

 

「ならば現状維持。この話を忘れろ、とまでは言いませんが、これ以上続けても堂々巡りになる以上は、これで話を終わらせる他ないでしょう」

「た、確かに……」

 

 新八はリンディの意見は一理あると思った。

 このまま新八が本当のことを言い続けたとしても、アースラ組が言ってる事を信じるワケではない。だから、続けても不毛なだけ。

 

 パン! とリンディは手を合わせる。

 

「それでは、このお話しはここまで、といたしましょう」

 

 笑顔で言うリンディとは違い、クロノはまだ納得しきれない様子だった。が、脱力するようにため息吐いて、艦長室を出て行こうとする。

 

「……僕はこれで、失礼します」

「クロノ」

 

 呼ばれ、クロノは扉の前で足を止め、アースラ艦長は子に語りかける。

 

「いくら『闇の書』の名が出たからと言って、頭に血を登らせて冷静な判断力を失うのは、褒められた事ではありませんよ」

「…………」

 

 クロノの拳に力が入る。

 

「……少し、頭を冷やしてきます」

 

 クロノはそう言って、執務室を出る。合ってるかどうかわからないが、事情を知ってるかもしれないだけに、新八としては複雑だ。

 

「私も失礼します」

 

 エイミィと猫も、クロノの後を追うように執務室を後にする。

 

 執務室に残ったのは新八とリンディ。

 さすがにもうここに居てもしょうがないよね? と思った新八は出て行こうと、踵を返す。

 

「じゃあ僕もしつれ――」

「ちょっと待ってください新八さん」

 

 引き留められ、ちょこっとビクリと反応する新八は、ゆっくりとリンディに顔を向ける。

 

「……あの、なんでしょうか?」

「いえ、少々お聞きしたのですが……」

 

 リンディは左手で口元を隠し、顔をとんとんと指で何度か叩く。彼女が何を訊こうとしているのか、新八は予想できず疑問符を浮かべる。

 やがて、リンディは口を開く。

 

「あなた以外でその……『私たちのアニメ』の内容、それも〝この映画の先〟を知っている人間はいますか?」

「えっと……」

 

 新八は頭を掻きながら言う。

 

「たぶん僕以外だと、神楽ちゃんと土方さんは知っていると思います」

「ではお二人も交えて、話を聞いてもよろしいですか?」

 

 リンディの言葉に、新八はきょとんとした顔になる。

 

「えッ? ……も、もしかしてリンディさんは、僕の話を信じてくれるんですか?」

 

 意外そうな表情を浮かべる新八に、リンディは苦笑しながら答える。

 

「クロノの手前、ああは言いましたが、個人的には信じても良いとは思っているので」

「で、でもなんで?」

 

 さきほど真っ向から否定された新八としては、リンディの言葉をいまだに信じられないでいる。

 リンディはニコリと笑顔で言う。

 

「一応これでも、人を見る目は持ってるつもりです。信じていい人間と、そうでない人間を見分ける力は、養っているつもりですよ」

 

 新八はぱぁーっと顔を明るくさせる。

 

「ありがとうございますッ!」

 

 バッと頭を下げる新八。

 やはりこうやって、信じる、と言われるのは嬉しいものだ。それに、仲間が増えたような気がして心強くもなる。

 

「でも、話を聞いたとしても、その情報から局員たちを動かすことはできません。ただ、私個人として、話を聞きたいだけなので。特に闇の書の事に関しては」

「それでも構いません!!」

 

 と新八は顔を上げ、興奮気味に告げる。

 

「僕たちは僕たちで、なのはちゃんの為に頑張るって決めましたから!!」

「フフ。なのはさん達は、良いお友達をお持ちのようですね」

 

 リンディは口元に手を当てて笑みを見せる。

 

「では、早速で悪いのですが、神楽ちゃんと土方さんを呼んで来てもらってもよろしいでしょうか?」

「あッ、ちょっと待ってください」

 

 きょとんした顔のリンディ。新八は苦笑しながら頬を掻く。

 

「たぶん……あの二人は、有力な情報を話せないと思います」

「それは、なぜですか?」

「神楽ちゃんは一応、アニメを見せてあげたんですけど、もう色々細かい情報は忘却の彼方だろうし、人に説明するのも、説明を訊くのも、どっちにも適したタイプでもないので」

「では、土方さんは?」

「土方さんに至っては、ほぼアニメの記憶がない状態だと思ってください。色々あって、もう記憶があやふやだと思うので」

 

 説明するとかなりメンドーなので、かなり曖昧な言い方で新八は誤魔化す。

 さすがに今の土方に〝トッシーだった時に見たアニメ〟の記憶など、片隅もないだろう。

 つまり、とリンディは片眉を上げる。

 

「さきほどのアニメ、アレの先の事を詳しく話せる人間は、新八さんだけだと?」

「えェ、まァ……。ただ、土方さんには一応はおおまかにではありますが、無印以降――まァつまり、未来の事についてはザックリですけど、説明はしてはいます。詳しく語れないとは思いますが」

 

 新八は頭を掻きながら、申し訳なさそうに説明する。

 わかりました、とリンディは笑顔で頷き、告げる。

 

「そう言うことでしたら、土方さんだけお呼びしてもらっていいでしょうか? 念の為に、三人でお話しするのが良いでしょうし」

「あッ、はい。わかりました」

 

 そう言って新八は土方を呼びに行こうと踵を返し、執務室から退室する。

 

 

 そしてしばらくすれば……。

 

 新八が土方を連れて執務室の前へと戻り、鉄の扉を手の甲でトントンと叩く。

 中にいるリンディの「どうぞ」と言う声を聞いてから、新八は「失礼します」と言ってボタンを押して扉を開ける。

 

 執務室に足を踏み入れば、リンディはニッコリと笑顔で。

 

「それでは、三人でじっくりお話ししましょう。椅子とお菓子もご用意してますので」

 

 新八から現状のあらましを聞かされている土方は、肩を落としながら言う。

 

「……灰皿、あるか?」

 

 

 

おまけ

 

執務官クロノ~桂尋問編~その3

 

「これはまた……」

 

 目をぱちくりさせながら、リンディはきょとんした顔でクロノを見る。

 

「…………」

 

 むすっとした表情の執務官。その顔は、至る所に絆創膏やガーゼが張られていた。

 

「母さん……」

 

 とクロノはボソリと呟き、言う。

 

「僕は今初めて、執務官という職が、嫌だと思いました……」

「そ、そう……」

 

 リンディは苦笑し、チラリと取り調べし室のリアルタイム映像を見る。

 

 今、取調室では、桂とエリザベスが『いっせーのせ』をやっている。エリザベスは指ないのに。かと思ったら、今度は狭い部屋で野球やり出したと思ったら、ジェンガやったり、人生ゲームやったり、バトミントンやったり、漫才の練習したり、変化に(いとま)がない。

 

「あいつら……取調室を自分の部屋と、勘違いしてるんじゃないか?」

 

 クロノはジトーっとした目で、桂&エリザベスを見るばかり。

 リンディは苦笑しながら尋ねる。

 

「とりあえず、重要な情報は得られそうですか?」

「その前に僕がノイローゼを得られそうです」

 

 クロノの言葉を聞いて、リンディは乾いた笑いしか出てこない。すると、自分の顔を指す。

 

「なら、私が事情聴取を代わりますか?」

「いえ。それは絶対に許可できません」

 

 とクロノは首を横に振る。

 

「艦長の頭が壊れるかもしれないので」

「そ、そうですか……」

 

 汗を流すリンディに、クロノは「では戻ります」と言って背を向け、また取調室に向かおうとすが、扉の前で立ち止まる。

 

「艦長」

「なんですか? クロノ」

 

 クロノは振り向く。

 

「事情聴取が終わるまで、僕の頭と精神が無事であるように、祈っていてください」

 

 そう言う執務官の顔はどこか、儚げだった。

 

「わ、わかりました……」

 

 リンディは更に汗を流すばかり。

 

 

「桂ぁぁぁぁッ!!」

 

 クロノは気合を入れて取調室に繰り出す。

 

「事情聴取再開の時間だぁぁぁぁぁッ!!」

 

 もうキャラクターの原型が壊れた始めたクロノの目に映ったのは――。

 

「いくよ!! ドローフォー!!」

 

 と気合入った声で取調室の机の上にカードを置く、オペレーターのエイミィ・リミエッタ。

 

「フハハハッ!! 甘いぞエイミィ殿!! ドローフォー返し!!」

 

 と桂がカードを出す。

 

『ならばこちらもドローフォー!!』

 

 とエリザベスがカードを出す。

 

「あちゃーッ!! やられたァ~!」

 

 とエイミィは頭に手を当てて悔しがる。

 

「まさか二人共ドローフォーを温存していたなんて思わなかった~!」

 

 エイミィは計十二枚のカードを引く。桂は得意げにほくそ笑む。

 

「フッ……。俺とエリザベスは常日頃から『ウノ』の腕を磨いてきたのだ。そうそう未来世界の住人などに、遅れは取らんさ」

『我々の力を舐めないでもらいたい』

 

 とエリザベスもプラカード出して自慢げ。(顔は変化なし)

 

「でも、これで終わったワケじゃありませんよ!! これから逆転劇を見せてあげます!!」

 

 エイミィは持ち札が二桁になったカードを構える。

 

「ほほォ? その手札の数で、まだ諦める素振りすら見せぬとは……」

 

 桂は、エイミィの諦めないスピリッツを見て「フッ……」と笑みを零す。

 

「よかろう! ならば大差がついていようと、この桂小太郎――少しも手は緩めんぞ!!」

「望むところです!! こっからが本当の勝負なんですから!!」

 

 とエイミィも強気に返す。

 

『ならば私が一番に上がってみせましょう』

 

 とプラカードで宣言するエリザベスに、桂は目を細める。

 

「ほほォ、エリザベス。言うようになったではないか。だが、いくらお前でも、ウノ一番上がりは譲れぬな」

 

 桂は一番少ない手札を見せつける。

 

「俺が一番に上がり、実力の差を見せつけようぞ!!」

『望むところです!! ですが、一番手札が少ない時が危ういことをお忘れなきよう!』

「まだまだこんな楽しいゲームは終わらせませんよ!!」

 

 エリザベスと笑顔のエイミィも強気に迎え撃つ。

 

「まったく、これだからウノは面白い」

 

 と桂は笑みを浮かべ、笑い声を上げる。

 

「ハーハッハッハッハッハッハッハッ!!」

『「アハハハハハハハッ!!」』

 

 そしてエリザベスとエイミィも、ゲームの楽しさを分かち合うように笑い合う。無論エリザベスはプラカードで。

 その様子を見ていたクロノは笑みを浮かべ、

 

「まったく……」

 

 取調室の机をひっくり返す! カードが宙を舞う! クロノはビシッと指を突きつける!

 

「何をしてるんだッ!! お前たちはぁぁぁぁぁぁ!!」

「我が目前の勝利がァァァァァァァッ!!」

 

 桂は頭を抱え、叫ぶ。エイミィは「やったぁーッ!!」とガッツポーズ。

 

「これでゲームは振り出しッ!!」

 

 そしてエイミィはクロノに笑顔でサムズアップ。

 

「ナイスアシストだよクロノくん!!」

「エイミィィィッ!!」

 

 クロノはエイミィの肩を掴んで、昔馴染みの同僚に問いただす。

 

「君は!! なんで!! この長髪と!! カードゲームなんぞやってるんだッ!? 僕はなんかもう色々悲しいよッ!!」

「クロノくん……」

 

 エイミィは複雑そうな表情になり、

 

「クロノくんもウノやりたかったんだね? 一緒にやろうよ!」

 

 すぐに顔を笑顔にして、クロノにカード見せる。

 

「エイミィィィィィィィィッ!!」

 

 クロノはアホな勘違いする同僚の言葉を聞いて叫ぶ。

 

「貴様ァーッ!! ウノの勝負に途中で横やりを入れるとはなんと無礼な!!」

 

 桂が目を光らせ、クロノを睨む。

 

「お前が言うなッ!! お前にだけは無礼と言われたくない!!」

 

 クロノは桂に怒鳴り、エイミィに顔を向け直す。

 

「なんでオペレーターの君が、取調室でこんなアホと一緒にカードゲームを楽しんでるんだ!?」

 

 エイミィは「いや~……」と言って、頭を掻きながら舌を出す。

 

「お昼のカツ丼届けたら誘われちゃって」

「またカツ丼かぁぁぁぁぁッ!! つうか参加すんなぁぁぁぁぁッ!!」

 

 クロノは喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。

 

「まぁまぁ、落ち着て」

 

 とエイミィはクロノをなだめてから、床に落ちたカードをエリザベスと一緒に拾い集める。そして、クロノに笑顔を向けて。

 

「とりあえず、今度はクロノくんも一緒に――」

「取調室はフリースペースじゃねぇんだよッ!!」

 

 またクロノは執務官からヤンキーにジョブチェンジ。

 

「やれやれ。仕方のない……」

 

 と桂は頭を振り、椅子に座り直す。

 

「そろそろ頃合いか」

 

 桂の態度を見てクロノは、やっと話す気になったか……、と内心どっとため息を吐く。

 

「俺もウノばかりに興じてはいられぬからな。そろそろ取調室も飽きてきたところだ」

 

 桂の言葉を聞いてクロノも椅子に座り、話を聞く体制になる。机は倒れたままだが。

 

 どうにかこの長髪のバカから聴取が取れると思うと、今までの苦労が報われ涙さへ出てきそうだ。正直、たったの数時間で諦めようとも……。

 だが、執務官として、なにより自身のプライドがこのアホから聴取を取ることを諦めさせようとせず、奮起させてきた。やっと真面目な話できると思うと、笑みすら浮かべてしまう。

 

「さて。あなたの事情を訊かせ――」

「はやて殿の(うち)でスマブラをしようではないか!!」

 

 桂は弁天堂が出した一番最初のスマブラの入った箱を取り出す。

 

「それ面白そうですね!!」

 

 エイミィはパンと両手を合わせてゲームに興味を示す。

 

『桂さん。現実のゲームはいいのですか?』

 

 エリザベスの問いに桂は笑みを零す。

 

「フッ……。リアルゲームは少々マンネリ気味だったのでな。そろそろバーチャルゲームに興じる頃合いと思っていたのだ」

 

 桂の説明を聞いて、エリザベスはプラカードを見せて褒める。

 

『ナイス判断!! さすが桂さん!!』

「じゃあ早速始めましょう!!」

 

 とエイミィもノリノリでテレビゲームを始めようとし出す。

 

「あ、すみません。艦長、事情聴取代わってください」

 

 死んだ目のクロノは、折れた。

 

 

「やはり蕎麦は和の心であると俺は思う」

「なるほど。でも、私としてはうどんも和としての代表作であると――」

「あ、桂さん!! このスマブラってゲーム、すんごい面白いね!!」

『すきあり!!』

「ああッ!! しまったぁーッ!!」

「桂さん。次は私と対戦してもらっても、よろしいでしょうか?」

「ほほォ? 俺のマリオは強敵だぞ」

 

 そんで桂の事情聴取は、リンディとあいなった。なぜか余計なペンギンとオペレーターもセットで。

 そうこうしているうちに、桂の事情聴取は数日を用した。ちなみに文章とかにすると、ほぼどうでもいい話が95%を占める。

 

 後に、執務官はこうは語る。

 

 なんか母と同僚は、あの長髪とペンギンとの会話したからなのか、ちょっと変になった――by管理局執務官 クロノ・ハラオウン。

 

執務官クロノ~桂尋問編~完




今度こそアンケートの集計結果の発表です。

1.質問コーナーを投稿か掲載する:28
2.質問コーナーは投稿か掲載しない:24

っと言う事で、ハーメルンに質問コーナーは掲載するということになりました。
結果としては、pixivの方が2の票が多い感じです。
アンケートに答えて頂いた方々、ありがとうございました。

今後の方針としては、

ハーメルンに質問用の小説を作成からの投稿

暇が出来次第、Pixivに掲載していた質問コーナーを順次掲載

と言った流れになります。
これらの流れを最新話に追いつくまでやるつもりです。

現状でこれは、投稿する小説のあらすじにも書くつもりですが、ハーメルンでは感想欄、活動報告、メールで質問を受け付けるつもりです。
活動報告の場合は、最新話投稿報告&質問がある人は書き込む、という感じになります。

感想欄だと内容によっては、削除される場合もあると思うので、もし削除されてしまった場合、メールや活動報告に再度送ってもらうことになると思います。
もし心配な方は、メールや活動報告に送るのでで大丈夫です。



質問コーナーをハーメルンに投稿しました。
https://syosetu.org/novel/253452/

侍と魔法少女~教えて銀八先生版~ 第五十四話の質問コーナーです
https://syosetu.org/novel/253452/64.html

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